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第十章 素直になれない気持ち

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「予定があるんなら仕方ないですよ」

「そんなもんか、俺は毎日でも加子を抱きたいのに」

蓮也は声を荒げて不満を爆発させた。

「加子さんは、社長に一度手放されて、不安なんですよ」

「あの時はああするしか仕方なかっただろう」

「女性の一度離れてしまった気持ちを取り戻すのは容易なことではありません」

「でも、昨夜は満足していた様子だったぞ」

「身体と心は別です」

そう言えば、加子の口から愛してるの言葉がなかった。

俺は加子の身体の熱りを沈めるために過ぎなかったのか。

「社長、加子さんを取り戻したいのなら、一生懸命信頼してもらえるように
頑張ることです」

「わかった」

この時の蓮也は素直だった。

蓮也はその日から加子にアタックを開始した。

大河原会長との食事の日、蓮也は加子のマンションの前で、

加子の帰りを待っていた。

もちろん、マンションの裏では若林が待機していた。

そこへ高級車がマンション前に停まった。

高級車から降りてきたのは加子だった。

そして、後部座席から大河原会長も降りてきた。

「おじ様、今日はご馳走になり、ありがとうございます」

「加子、わしも久しぶりに楽しかった、また年寄りに付き合ってくれ」

「とんでもないです、おじ様は素敵な紳士ですよ」

加子は満面の笑みで微笑んだ。

「じゃあ、また明日な」

そう言って大河原は車に乗り込もうとした。

その時、蓮也の姿に気づいた。

加子に会いにきたんだな。

大河原は蓮也を挑発するかのように、加子の腕を引き寄せ抱きしめた。

「おじ様?」

加子はびっくりして、離れようとした。

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