夜の帝王の一途な愛

ラヴ KAZU

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三年の月日が二人を変える

なんで俺はあゆみさんを覚えていないんだ

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「飲み物は何をお作りしましょうか」

あゆみは凌をじっと見つめて固まっていた。

まるで夢見る少女のように、心臓はドキドキ高鳴っていた。

「名前を聞いてもいいかな」

「あ、はい、えっと、あゆみです」

凌はあゆみの手をとって、甲にキスを落とした。

「緊張してるのかな、ホストクラブは初めて?」

「いえ、二回目です」

「前回はどこのホストクラブへ行ったの」

「ここです」

「そうなんだ、その時は誰を指名したのかな」
「麻生さんです」

「えっ、俺?」

あゆみは自分の言葉にしまったと思った。

覚えてないよね。

「あ、あのう、三年も前なんで覚えてないですよね」

「いや、こんな可愛らしい女性を忘れるはずはないんだけど……」

凌はあゆみの手を引き寄せ、耳元で囁いた。

「お詫びに今宵は素敵な夜を提供するね」

あゆみの鼓動は爆発寸前だった。

「カクテルでいいかな」

「は、はい」
あゆみは酒が飲めないのだ。

この時、全く凌の言葉は耳に届いていなかった。

カクテルを作ってもらい、あゆみは一気に飲み干した。

顔が熱って、身体が熱くなってきた。

凌はすぐにあゆみの変化に気づいた。

「大丈夫?酒は弱いのかな」

ダメだ、また三年前と同じ失態を晒しちゃう。

あゆみは急にソファから立ち上がった。

足が自分の意思とは違う方向に向かった。

凌にもたれかかってしまった。

「おっと、大丈夫じゃないな」
凌はあゆみをソファに横にならせた。

おしぼりをおでこにあてて、手を握った。

あゆみは睡魔に襲われて眠ってしまった。

なんで俺はあゆみさんを覚えていないんだろう。

自分を指名してくれたお客は、顔と名前を忘れない。

三年前だろう。

しかも、こんなに酒が弱いんなら、尚更だ。
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