お前は俺の指示に従え〜意地悪な外科医との契約結婚

ラヴ KAZU

文字の大きさ
9 / 29

しおりを挟む
私のおでこにチュッとキスをして「バーカ、嫌なら無理するな」そう言って最上さんは私から離れて、タオルケットで身体を包んでくれた。

最上さんの優しさに触れて、はじめての怖さから解放されて、最上さんの胸に顔を埋めて私は声をあげて泣き出した。

最上さんはギュッと私を抱きしめてくれた。

私は最上さんに抱きしめられた状態で朝を迎えた。

「いい加減起きろ、重い」

「ごめんなさい」

私は泣きながら最上さんの腕の中で眠ってしまったのだ。

上着のボタンが外れて、胸の膨らみが露わになった状態な事に気づかず

「いい眺めだな、いつまでも胸を出してると襲うぞ」

「えっ」

自分の胸の膨らみが露わになっていることに気づき、慌てて背中を向けてボタンをはめた。

最上さんは背中から私をギュッと抱きしめた。
えっ、何?

「梨花、ちゃんとお前のはじめてを好きな男の為に取っておけ」

最上さんは寝室から出て行った。

ぽつんと一人残されて、私の好きなのは最上さんなのにって呟いた。




寝室から出てくると、最上さんは既にシャワーを浴びて、コーヒーを飲んでいた。

「梨花もコーヒー飲むか」

「はい」

「シャワー浴びて来い」

私は追い立てられるようにシャワールームに入った。

鏡に映った私の胸に赤いキスマークが付いていた。

昨夜の最上さんとの抱擁が脳裏を掠めてドキドキして来た自分を抑えることが出来なかった。

私はシャワールームから出て来て、キスマークをどうすればいいか聞いてみた。

「最上さん、キスマークどうすれば消えますか」

「しばらく消えねえな、またつけて欲しいのか」

「違います」

「やっといつもの梨花に戻ったな」

最上さんは口角を上げて微笑んだ。

私は思い切って彼女の事を聞いて見た。
「最上さん、どうして彼女と結婚しなかったんですか」

「また、その話か」

「だって、どうしても気になるんです、もっと最上さんの事を知りたいんです、私はずっと一緒にいたいって思うけど、最上さんはどう思っているのかなって、彼女さんみたいに、





私も婚姻届をやめようと思われちゃうかなって、そうしたら嫌だなって……」

「おい」

「えっ」

「言葉に気をつけろ、お前、今、俺の事を好きだって言ってるのと同じだぞ」

私は頬が真っ赤になるのを感じた。

「男は単純だから、そんな言葉並べると勘違いするぞ」

「だって……」

私は心の中で最上さんが好きって叫んでいた。

最上さんは「そこに座れ」と言って、彼女との事を話し始めた。

「彼女の名前は立花瑞穂、確かに結婚を考えていた、俺が二十五歳の時の事だ」

俺は医学部をトップの成績で卒業して、研修医として働いていた。

そこに患者として現れたのが立花瑞穂だった。

俺は彼女に惹かれて交際を申し込んだ。

ところが研修医は時間に追われる毎日で、約束はほとんど守る事が出来なかった。

彼女は寂しがり屋で、他の男性と浮気した。

そんな事になっているとは想像も出来ず、俺は彼女との結婚を考えていた。

「瑞穂、やっと休みが取れそうなんだ、俺のマンションに泊まりに来いよ」



「ごめん、友達と約束しちゃったから、また今度誘って」

この時、瑞穂の俺に対する愛は全く感じとる事が出来なかった。

仕方無いよな、放って置かれて大丈夫な女なんていない。

とんだピエロだ、俺は。婚姻届にサインして、絶対に喜んでくれると疑わなかった。

それからまもなくの事だった。

病院の外線に瑞穂から連絡が入った。

「どうしたんだ」

「ごめん、別れましょう、もう連絡してこないで、それじゃ」

電話は切れた。

俺は何も言えず受話器を置いた。

その夜、瑞穂のスマホに電話をすると「現在使われておりません」のメッセージが流れた。

俺は一方的に振られた形となった。

それから女は信用出来ない。

俺は恋愛する事を封印した。

「俺が勝手にのぼせ上がって、結婚を一方的に考えて、振られたって結末だ」

梨花は俺の話を聞きながら泣いていた。

「お前、泣いてるのか」

「だって、最上さんが彼女の事を一生懸命考えて、婚姻届を書いたのに、彼女は別の男性との道を選んでいたなんて、悲しすぎます」


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

財閥御曹司は左遷された彼女を秘めた愛で取り戻す

花里 美佐
恋愛
榊原財閥に勤める香月菜々は日傘専務の秘書をしていた。 専務は御曹司の元上司。 その専務が社内政争に巻き込まれ退任。 菜々は同じ秘書の彼氏にもフラれてしまう。 居場所がなくなった彼女は退職を希望したが 支社への転勤(左遷)を命じられてしまう。 ところが、ようやく落ち着いた彼女の元に 海外にいたはずの御曹司が現れて?!

誘惑の延長線上、君を囲う。

桜井 響華
恋愛
私と貴方の間には "恋"も"愛"も存在しない。 高校の同級生が上司となって 私の前に現れただけの話。 .。.:✽・゚+.。.:✽・゚+.。.:✽・゚+.。.:✽・゚ Иatural+ 企画開発部部長 日下部 郁弥(30) × 転職したてのエリアマネージャー 佐藤 琴葉(30) .。.:✽・゚+.。.:✽・゚+.。.:✽・゚+.。.:✽・゚ 偶然にもバーカウンターで泥酔寸前の 貴方を見つけて… 高校時代の面影がない私は… 弱っていそうな貴方を誘惑した。 : : ♡o。+..:* : 「本当は大好きだった……」 ───そんな気持ちを隠したままに 欲に溺れ、お互いの隙間を埋める。 【誘惑の延長線上、君を囲う。】

恋は襟を正してから-鬼上司の不器用な愛-

プリオネ
恋愛
 せっかくホワイト企業に転職したのに、配属先は「漆黒」と噂される第一営業所だった芦尾梨子。待ち受けていたのは、大勢の前で怒鳴りつけてくるような鬼上司、獄谷衿。だが梨子には、前職で培ったパワハラ耐性と、ある"処世術"があった。2つの武器を手に、梨子は彼の厳しい指導にもたくましく食らいついていった。  ある日、梨子は獄谷に叱責された直後に彼自身のミスに気付く。助け舟を出すも、まさかのダブルミスで恥の上塗りをさせてしまう。責任を感じる梨子だったが、獄谷は意外な反応を見せた。そしてそれを境に、彼の態度が柔らかくなり始める。その不器用すぎるアプローチに、梨子も次第に惹かれていくのであった──。  恋心を隠してるけど全部滲み出ちゃってる系鬼上司と、全部気付いてるけど部下として接する新入社員が織りなす、じれじれオフィスラブ。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

貧乏大家族の私が御曹司と偽装結婚⁈

玖羽 望月
恋愛
朝木 与織子(あさぎ よりこ) 22歳 大学を卒業し、やっと憧れの都会での生活が始まった!と思いきや、突然降って湧いたお見合い話。 でも、これはただのお見合いではないらしい。 初出はエブリスタ様にて。 また番外編を追加する予定です。 シリーズ作品「恋をするのに理由はいらない」公開中です。 表紙は、「かんたん表紙メーカー」様https://sscard.monokakitools.net/covermaker.htmlで作成しました。

身代りの花嫁は25歳年上の海軍士官に溺愛される

絵麻
恋愛
 桐島花は父が病没後、継母義妹に虐げられて、使用人同然の生活を送っていた。  父の財産も尽きかけた頃、義妹に縁談が舞い込むが継母は花を嫁がせた。  理由は多額の結納金を手に入れるため。  相手は二十五歳も歳上の、海軍の大佐だという。  放り出すように、嫁がされた花を待っていたものは。  地味で冴えないと卑下された日々、花の真の力が時東邸で活かされる。  

愛想笑いの課長は甘い俺様

吉生伊織
恋愛
社畜と罵られる 坂井 菜緒 × 愛想笑いが得意の俺様課長 堤 将暉 ********** 「社畜の坂井さんはこんな仕事もできないのかなぁ~?」 「へぇ、社畜でも反抗心あるんだ」 あることがきっかけで社畜と罵られる日々。 私以外には愛想笑いをするのに、私には厳しい。 そんな課長を避けたいのに甘やかしてくるのはどうして?

処理中です...