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第七章 彼の嫉妬

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それは絶対に避けなければならないことだと、自分に言い聞かせ、美希に背を向けて眠りについた。

いや、一睡も出来ずに朝を迎えた。

朝、彼はこんな提案をした。

「しばらく、買い物は休みの日に一緒に行こう、また待ち伏せされたらと思うと、心配で仕事が手につかないからな」

「わかりました」

二人で買い物なんて初めてだから、すごく嬉しかった。

そして休みの日、彼と一緒に買い物に出かけた。

いつも行く商店街へ彼を連れて行った、彼は初めて訪れる商店街に驚きを隠せない。

「美希、いつも買い物は商店街か」

「そうです、安いし、鮮度もいいし、商店街の皆さん優しいんです」

そこへ商店街の八百屋のご主人が声をかけて来た。

「美希ちゃん、今日はご主人と一緒かい、羨ましいねえ」

「はい」

彼が八百屋のご主人に挨拶をしてくれた。

「いつも美希がお世話になっております、鏑木と申します」

「えっ鏑木建設の御子息かい」

「あっ はい、でも今は社長を任されています」

「そうかい」



「親父さんは元気かね、よくこの商店街に足を運んでくれたんだが、最近ご無沙汰だから心配してたんだよ」

「入院したんで、自分が社長を就任しました」

「そうだったのか、実はビル建築でこの商店街は立ち退きを迫られている、直接社長さんに会えたのも何かの縁かもしれない、この商店街が立ち退きしないで済むようにならないかね」

「約束は出来ませんが、皆さんのご意向に沿うように検討させていただきます」

彼はそう言って商店街をあとにした。


マンションに戻ると、早速東條さんに電話で指示を出していた。
食事が終わると、彼はしばらく自分の部屋から出てこなかった。
深夜零時を回っていた、私は彼の部屋に様子を見に行った。

「蓮さん、まだお仕事終わりませんか」

「あ?っ、先に寝てくれ」

「わかりました」

彼は朝になってもベッドにはこなかった、部屋に入ると、彼はイスで眠っていた。

彼の寝顔をしばらく見ていた。

彼が目を覚まし、私に気づくと、目を逸らした。



やっぱり私は嫌われたと確信した。
しかし、彼がわざとベッドには行かず、イスで寝ていた事など知る術はなかった。
彼が私から目を逸らしたのも、私への愛情が溢れて抱きしめたくなったからだった。

私達はこの時お互いにすれ違い、真実を見抜くことが出来なかった。

元彼の事件以来、私は一人で外出を禁じられた。

「美希、買い物は休みに一緒に行くから、それ以外は一歩も外に出るな、いいな」

「わかりました」

そうは言ったものの、ずっと部屋に篭りきりの状態はストレスが溜まって来た。

彼は忙しく、あれ以来ベッドを共にしていない。

もちろん、抱きしめることも、キスすることもなくなった。

ただ変わったことは毎日電話をくれるようになった。

「美希、大丈夫か、変わりないか」

「大丈夫です、蓮さんこそ大丈夫ですか、いつもイスで寝ていますけど、睡眠不足なんじゃないですか」

「俺は大丈夫だ、心配はいらない」

「はい」

そのあと会話が切れて沈黙が続いた、私は思わず心の中の気持ちを口に出してしまった。
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