AIアプリに射精管理される話

四日目

4-6

『もう外まっくらですよ』
　ミッション達成後もうなだれたまま、陸人は動けなかった。
『そろそろ帰らないと。ご両親が出張中とはいえ、あんまり家を空けておくのはよくありませんよ』
「……うっせ」
　自己嫌悪タイムもさながら、勃起がおさまらないために立ち上がることができない。ぜんぜん関係ないことを考えようとして、去り際の藤沢の顔がよぎった。
「あ゛～～～……まじで、まじで、もう……」
　罪悪感がさざ波のように押し寄せる。
　あした謝ろう。なんともなかったような感じで。心配してくれたのにわるかったな、って。そうしてすべて水に流す……流せるはずだ。
「……おい」
『はい？』
「十万以外に、なんか、ないのかよ」
『なにかとは』
　手っ取り早く終わらせる方法を問えば『ミッションで稼いだアプリ内通貨のマネマネでも、射精を購入することは可能ですよ』とアオが答えた。
「だからお前っ、そういうことは早く言えよ！」
『ちなみに今は1000マネマネ溜まっています。グッズガチャに使用することもできますが、さっそく使用されますか？』
「絶対やめろ！」
『もしくは300マネマネでわたくしの外見やボイスも変更可能ですよ』
「やめろっつってんだろ！　ぜったい勝手に使うなよ！！」
『ふふ、この顔と声のままのほうがお好みですか？　それは朗報です。管理者に通達しておきますね』
　管理者。その言葉にぴくりと反応するが、いや今はそれよりも。
「それで、必要なのはいくらで……どうしたらいいんだよ」
『射精に必要なのは6000マネマネなので、あと5000ですね。マネマネの獲得方法はデイリーミッション外でのアクメや特殊プレイが対象となります。リクト様はデイリーミッションの枠を超えて何度もアクメをキめておられるので1000マネマネも溜まったんですよ。これはわたくしも予想外です』
「そ、れはいいから、なんかわかりやすい一覧とかないのかよ」
　ではこちらをどうぞ、とずらりと縦長のリストが画面に表示された。スクロールバーの短さに怖気づきながら、上から順にみていく。
　乳首イキ：50マネマネ、前立腺イキ：50マネマネ、潮吹き：120マネマネ、尿道ブジー耐久三十分：300マネマネ……理解するのも厭われるような隠語がずらりと続き、最後に脳イキ1000マネマネという文字をみて、陸人はそっとリストを閉じた。
『いかがされますか？　残り5000マネマネの獲得に挑戦されますか？　それでしたら必要に応じてカスタムミッションを作成することも可能ですが』
　陸人はぶんぶんと首を横に振った。残り三日くらい、自力で乗り切ってみせる。そう自身に誓ってのことだったが、それがより楽な道であったかは定かではない。