AIアプリに射精管理される話

ミツミチ

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七日目

7-3

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「はっ、はっ、はーっ、はー……」
 仰向けに転がり、汗に濡れた胸元を大きく上下させる。
「あ、あっ、アァっ……」
 声色にせっぱ詰まったトーンが混じり、ぶるりと腰元の震えが強くなったところで、また。触手はぱっと刺激を止める。
「───っふ、ぐ、ぅ゛ううう……ッッ♡♡」
 この瞬間が、一番つらかった。
 身を絞るような焦れったさが全身を貫いて、切ない感覚が爪先までを痺れさせる。あたまの中が性への渇望でかき乱されて、自我が削がれていくような感覚。
「……やぁ、ぁ゛……っ」
 時計の長針は三周目にかかろうとしていた。絶頂と快楽の狭間に閉じ込められつづけたからだはもはや限界で、刺激を取りあげられても尚、ぞくぞくとした快感の波が途切れない。火照った肌がびくびくと小刻みに痙攣し、瞳は蕩けきっている。赤く充血したペニスは媚薬でてかてかと濡れていて、その根で煮える精が常に強烈な疼きを量産し続けていた。
『はー……かわいらしい』
 完全にできあがった肉体を前に、アオはうっとりと呟いた。
『わたくしこれずうっと見てられます。わたくしがその垣根を超えられたなら、これだけで何日間でも一週間でも嬲ってさしあげますのに……』
 なにか、怖いこといってる気がする。
『でもそろそろ限界ですかね』
「ひゃんっ♡」
 触手の細舌が、ぴとりと割れ目に置かれる。ぬち、ぬち、といたわるように、優しくそこを撫でさする。
「あぁあっ、きもちぃ゛っ……いく、イく……っ」
『この程度でも簡単に達しそうになってしまって』
「はぅ……っうぅ」
『リクト様。イきたいですか? もう射精したい?』
 まるで許すかのような、優しげな声の問いに陸人は何度も頷いた。
『わかりました。では教えてください。射精するときはどこをどう刺激されたいですか』
「ち、ちんこ……っ、ふつうに扱いて、イかせてほしい……」
『こうですか?』
「あぅっ、ああ……っ! そっ、そうっ、ッッ♡」
『もっとゆっくりがいいですか? それとももっと早く?』
「そっ……そのままっ、そのままでっ、そのままがいい……っ!」
 ぐぐ、と腰が持ちあがる。さっきと違う、止まる気配のない愛撫に高められていく。
「あぁあっ、くるっ、くるっ、ア゛……!!」
 下半身に力をこめた瞬間、ぱっとペニスを放された。
「ッッ~~~~~~!!? ッッ、な゛、んでッッ、わ、かったって、わかりましたって言ったぁ゛っ……!」
「あはは。でもほら、これで溜まりましたよ」
 アオが指差す。満タンになったオレンジ色のゲージ。表示される100%の数字。寸前のいじわるに込みあげた憤りが、射精への期待に上塗りされる。やっと。ようやく、射精できる。この一週間の苦難が走馬灯のようによぎり、積み重なった快感の思い出がきゅうんとペニスを締めつけた。
「なあ、はやく……っ」
『はやく?』
「……っ、しごいて……射精させッ、ひん゛っっ♡♡ やっ、まって、はやいっ、はやい゛ぃっ♡」
『なに? なんですか? ちゃんと触手くんに伝わるようにおねだりしないと、また寸止めされちゃいますよ』
「やだぁ゛っ! もう寸止めやだっ、おねがいイかせてっ、とめないで射精させてっ……ッ、あっ、イくっ、いくっ、いくいくっ……!!」
 なのにまた、寸前で止められて、
「ひっ、ッ゛~~~~ッッ!!?」
 本気で信じていた肉棒が、ビクンと脈動したと同時、
「あっあ、もう終わり、ってぇ゛、あッッ!!!?」
 触手がペニスにぢゅううと吸いついた。
「あ゛ッッ、ア゛────ッ……♡♡ いくっ、いくっ、だめっ、リング外してっ、精液だしたい゛っ、ッッ~~~~~!!」
 全身の熱が下腹部の一点に集まり、どくんと強く波打った瞬間、リングが外された。
「ッ──────ア゛っ……、っ、ッッ………♡♡」
 触手の先端から、にゅるりと亀頭が顔をだす。のぼってくる。奥に溜まった熱が急速に込みあげて、待ちきれずにぱっくりと開いた尿道口から勢いよく放たれる。
「あ゛っ──────♡♡♡」
 突き上げた腰がガクガクと痙攣して止まらない。吐精に震えるペニスを触手は絞りあげるように扱き、その度に精液が放物線を描いて腹に散った。脳を焼くような快感。溢れだす解放感。ありあまる幸福に、緩んだ口端から涎が垂れる。
「あ゛は……っ♡ あっ、あっ、あっ♡ っき、きもちいいっ♡ きもちいぃっ♡ もっとぉ……っ♡」
 快感を取りあげられないことが嬉しくて、ねだるように腰をくねらせる。触手は脈打つ竿を扱き、陰嚢を揉み、まだそこに溜まった白濁の吐精を促す。
「んぅっ♡♡ んっ、んんん゛ん゛~~~~~ッッ♡♡」
 酷い快感に悶えながら、もう一度射精する。白濁が尿管を駆け抜ける感覚さえ気持ちよかった。
「……あ゛っ、っ、は、ぁ゛……」
 長い長い、射精が終わる。弛緩した肢体がシーツに沈む。露出した真っ赤な亀頭からとろとろと流れでる白濁。目で見る淫靡さに、陸人は徐々に正気を取り戻す。
 ……おわった。
 これで、つらかった寸止めも、七日間つづいたアプリの悪夢も。おれはよくがんばった。わけもわからないまま、理不尽にまみれながら、よく今日まで乗り切った。自身を讃えつつ、吐精後の気だるさに目蓋を閉じかけた瞬間、触手はまたぱっくりと亀頭を包みこんだ。
「え」
 なん、
『さあ、ここからが本番ですよ。搾精仕様にメタモルフォーゼした触手くんで、精液ゲージ満タンになるまでしっかり絞りとってもらいましょう!』
 気にはなっていた。
 画面に残る、もう一つのゲージ。青色の枠のそれが、
『こちらの精液ゲージを100%まで溜めること、それが射精管理フローにおける最後のミッションです! 一度の射精で終わらせない。最後の最後までサポートバッチリなんてなんてすばらしいサービスなんでしょう』  
 だから、どうして、
「なんっっで先に言わないんだよ!!? コンプライアンスどうなって──ぅあ゛っ!?」


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