発情デバフをかけられた勇者が仲間と解呪にいそしむ話

ミツミチ

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魔導士ルート

2-5

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 勇者は疎かった。
 性的なことに対して疎く、決してゼロではないものの性なる欲は平均値を遥かに下回っていた。そもそもに世の娯楽ゴトへに対して、楽しむことはあれど、自らの立場をもってして決して溺れるなと無意識の内おのれに課していた彼にとって、これほどまでに強い世俗的な快感は、意識を浚うような肉体の歓びは、無垢な心身に落とされた劇薬のようだった。
「はっ……ぁ゛……っ」
 勇者の声がふっと途切れる。気を失ったのだろうか。魔道士はのけぞった後頭部をぐいと引き戻した。
「ぃ……いさーく……っ」 
 涙に濡れ、汗に濡れ、ぼろぼろに蕩けきった表情を前にぞくりとまた嗜虐が芽吹く。
「っ、も、……や、やだ、いやだ、これ以上は」
 ゆるりとかぶりを振って、
「おかしくなる……」
 か細く吐きだされた呟き。魔道士が勇者の腰に触れると、勇者は、ひ、と怯えた声をあげたが、
「あんたが弱音吐いてるとこ、はじめてみたな」
 しゅるりと魔法が解かれる。強制する魔力を失った下半身から力が抜ける。尻が底を突き、ずぷりとペニスが深くまで埋まりこみ、追い打ちの快楽に勇者の顔が歪んだ。
「ひく……っ、ぅ゛……!」
「おれに何されたって膝突かなかった勇者が、こんな簡単にダメになるなんてなあ」
 頬に散った髪をぐいと撫であげる。 
「先に知ってたらな。勇者がこんなド淫乱のすけべだってこと。そうすりゃあのときも、簡単にあんたのこと取り込めたのかな」
 虚ろがかった瞳に、
「なあ。なんでおれ?」
 魔道士が問いかけた。
「べつにおれでも、剣士でも、どっちでもよかったんだろ?」
「……っ、は」
「なぁって」
「っ……ダラスは、いやでも、断らない」
 想像できるな。魔道士は思った。
「イサークは……無理ならむりだと、言ってくれると、おもったから」
「だから先におれ? なるほどね」
 案外打算的な、この男の勇者らしかぬ性はきらいじゃなかったが、
「おれのとこきてさ、こんなふうに意地悪されるとかって思わなかった? 遊ばれるだけ遊ばれて、最後には裏切られるかも、とか」
 勇者が首を振る。
「憎まれ口は叩いても、約束を、たがえたことはない」
 ちゃんと、最後まで応えてくれると知っている。頬に触れていた手が滑り、首筋を撫でて、肩に落ちる。ぐっとその肩を掴んで、気の緩んだ勇者の身体を下から突き上げた。
「あっ……! んんっ♡」
「最後まで、ね。それでどうしてほしいんだっけ?」
「あっ、あ゛っ♡ あぁ゛っ……♡♡」
「なあって。おれに、どうしてほしい?」
「あっ、こっ、このままっ、んん゛ッッ……!!」
 更に滑り落ちた手が腰を両側からわし掴む。滾るペニスで奥まで貫いた状態で更にぐんと突き上げる。奥の柔らかい部分を穿たれて、目の前に閃光が散るような快楽に襲われた。
「ひぃっ、ぃいい゛っっ……♡♡ そ、そこ、っあ゛、ふかいぃ゛ッッ♡」
「なあ、どうしてほしい。ちゃんとねだれよ」
「せっ、せーえき、精液だしてっ、あぁあ゛っ」
「どこに? どこでもいいなら勇者の顔にかけたいんだけど」
「だ……ッめ、ぇ゛っ♡♡ なかぁ゛っ♡♡ なかで、このままイ゛っ……て、あっ♡ だめっ、イぐぅッッ♡♡♡」
「はは。あんたが先にイッてどうすんだよ」
 俯く勇者の顔を無理矢理に引き上げて、濡れた瞳と視線を合わせる。
「約束だからな。あんたの言う通りにしてやるよ」
 その代わり、と囁く。 
「従順にしておいてやるから、たまにはおれの言うことも聞けよ?」
「だ、れが従順っ、んんん゛っ♡♡」
「この期に及んでぐちぐち言うなよ。ほら、出してやるから残さず飲めよ」
「ひぅっあ、あぁ゛っ♡ あぁ゛……っ♡♡」 
 深くまで突きあげられて、最奥に迸る体液。呪いが勇者の肉体から放たれていく。限界に達した勇者は仲間の腕のなかで意識を手放した。 






 馬車が揺れる。
「楽でいいんだけど、お尻痛くなるんだよね」
 んん、と賢者が背を伸ばす。眠っているのか、隣の男は目を瞑ったまま微動だにしない。はす向かいの魔導士は明後日の方を見ている。賢者は正面の勇者に問いかけた。
「あと、半日? だっけ」
 これから極寒の地に向かう。全員が厚手のローブを羽織るなか、そのなかで更に縮こまる勇者の頬は、不自然に赤かった。
「レメト、きいてる? というか大丈夫?」
 体調わるい?と問いかけられた勇者が顔を上げる。
「あ、ああ。大丈夫。なにも、問題ない」
 そう、と納得したように答えながらも気を遣ったのか。賢者はそれ以上喋らず、剣士にならい目を閉じた。
 ──ローブの中で、這い回る手のひら。
「っ、っ」
 非難の視線を隣に向けるも、目も合わない。頬に触れる空気は冷たいのに、……熱い。
「っ……は、ぁ」
 あと、半日。宿についたら。ぞくりと背を這う予感を散らすように、かたく拳を握りしめる。目で見ずとも肌から伝わる。勇者の緊張と甘美な反応に口元をひそかに緩めながら、魔導士はこれからの長い道中に思いを馳せていた。


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