月詠嗣苑

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俺の彼女の友里ちゃん

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    ついに、ついに、ついに!!

    愛しの友里ちゃんと、お泊まりデートにたどり着けた俺。

「いやぁ、しゃぁーわせぇ」
「…。」

    ボカッ…と友人の竹内に教科書で頭を叩かれようが、グフッと同じく友人の陣内に小突かれようが俺はそんなの気にしない。

「気持ちわりーな。相変わらず」
「…。」
「ただでさえ、目が垂れてんのに。余計垂れて目がねー…ダンッ」

    竹内が足を持って踞ろうが、きにしねー。

『いや、気にしろ』と竹内が言ったかどうか、は知らんが…

「でも、まさかな…」
「ほんとに、友里ちゃんはお前でいいと思ってるんだろうか?」

    俺が、国広友里ちゃんに告白したのは、ミス上甲コンテスト2017で友里ちゃんが優勝して1週間たってからだった。

    勿論、「絶対に無理だ!」「お前には高嶺の華!」とかなり周りから言われたし、密かに友里ちゃんを狙っていた奴等からは、かなりの嫌がらせをされたが、そんなの気にはしなかった。

「私で…いいの…かなっ?」少し困った表情で友里ちゃんが言った。

「はいっ。友里ちゃんの優しいとこに惚れました。だから、付き合ってくださいっ!」と土下座したんだ。

「じゃ…よ、宜しくお願い…します」小さな声で言ってくれた。


    ボカッ…

「鼻血…ほら」と陣内にポケットティッシュを貰い、トイレに駆け込む。
「スケベ…エロいなー。お前は」

    男子トイレの中でも、こいつらにはからかわれるが、それはこいつらの愛情表現だと思ってる。

「で、どうなんだよ。アッチの方は…」トイレに俺ら以外いなくても、つい声が小さくなるのはアノ話だからだろう。

「いや、特に…」もう鼻血止まったか?

「「はぁぁぁぁぁぁっ?!」」トイレに大音量な声が響く…

「ちょっ、声でけーって!!」

二人に注意するが、

「だって、お前ら付き合ってどれくらい?」
「1ヶ月だけど?」
「した?」
「…。」

『な、なにを…そんな!!』

「ほー、してないのか」
「俺、お前のそんな顔、初めてみたわ。真っ赤になっちゃって」
「…。」

    付き合って1ヶ月じゃ、何も出来ないだろ。まだ、手すら繋いだことねーのに。

「キス位はした?」
「…。」

いや、恐ろしくて出来ねーし。

「意外だな。」
「そっか、まだ童貞なのか」
「…。」

『なぜだ?なぜ、こいつら…』

「まさか、お前ら…」
「ふふん…」
「まぁな!」

『この俺が、先を…越された?!』

「う、裏切り者…」

    
「あ…」
「ひっ!!」

    ウォッホンッ!!

「…」この咳払いは…

    おそるおそる後ろを振り返ると…

「げっ…」

    谷口教授…俺らが、教わっている教育Aの先生。

「きみ達は、真面目に私の講義を…」

「「「すいませんっ!!」」」

    ダッシュで、目の前の1246号へ入っていった。


    谷口教授に目をつけられると後が危ない…。ひと度、目をつけられると(これは、他の生徒のことなんだけど、こんなことがあった)

    ある生徒が、講義が始まって数分後にコッソリ入ってきたんだ。

「どうしたのかね?きみ…」
「すいません。遅刻しました」

    ここだけだったら、普通に謝り、席について終わるのだが、相手は谷口教授。

『噂を知らない生徒は、いないと思うが…』

    教授は、深い溜め息をついて、遅刻してきた生徒を見つめ、こう言ったんだ。

「きみは、もういい。もう帰りなさい」
「…。」
「どうしたのかね?たかが、一度の遅刻で…と?」

    講義室の空気が、凍る。

「あ…いや…あの…」
「さっ…帰りなさい。きみはもう、私の生徒じゃないんだ。どうしたのかね?」

「酷い…」と小さな呟きが近くから聞こえた。

    教授、ニコニコ笑顔で生徒を見ているが…

「…はい」とその生徒は、一言だけ言って項垂れ廊下に出た。

    それがあったのが、去年の今頃。あれからも、谷口教授を怒らせた生徒は、この講義を去っている。大学にはいるらしいが、どの講義を受けても、あまりいい評価を貰えていない…


    だから、その噂を知ってる生徒は、糞真面目に受けてるし、成績もいい。無論、俺らも…。

「あっぶね」
「うん」
「ギリギリセーフだった」

    時々、谷口教授と視線が合いながらも、なんとか授業が終わった。


「「じゃーな!」」
「…。」

    陣内も竹内も、揃って彼女を連れて大学を出ていった。

「いいじゃねーか。別にしてなくても…」と思う反面、「やっぱ、エッチなことしてーな」と思うのが、男心ってやつで…

「あ、遅れる!」腕時計で時間を見ると、11時30分。

「急がないと!」慌てて鞄を持ち直して、大学を後にした。

    友里ちゃん、時間には超うるさいんだよね。あんな可愛い顔してんのに!まるで、谷口教授みたいだ。



    カランッカランッ…と少し高めの音を立て、外の蒸し暑い世界から涼しい世界へと変わる。

「いらっしゃいませー」店員の元気な声が、俺を明るく出迎えてくれ、俺はカフェの中を見回しながら、彼女が座ってる席へと急ぐ。

「待った?」声を掛け座る。小さな文庫本を読んでいた彼女は、顔をあげ、少し笑いながら俺を見る。

「あ、ごめんなさい。夢中になってて…」目の前の珈琲カップの底は、リングが乾いていた。

「で、なぁに?お話って…」

    付き合って1ヶ月がたったんだ。そろそろいいいだろうか。

「実は…」と少しずつ彼女の顔色を伺いながら話していった。

「…。」
「ダメ…かな?」
「…です。」彼女は、小さな声で何かを言ったが、聞き取れず、
「ダメ?」もう一度…
「行って…みたいです。宜しくお願いします」テーブルに顔がくっつくんじゃないか!?って位に頭を下げた。

    暫く彼女とその旅行のプランを練って、彼女の家の近くまで送っていって、アパートへと帰った。



「たっだいまぁ!」

    いつもと同じように声を掛け、自室へと入る。

「よ、良かったーーーーっ!!嫌われてなかった。」

    初めて…初めて、彼氏さんという存在の人が出来た。その彼から、「旅行に行かないか?近場なんだけど」と旅行に誘われた。

「海水浴だぁ。初めて…」

    小さな頃に両親を亡くし、叔父夫婦に引き取られた私は、生まれてこの方、海水浴に行った事がない。

「いいよね?いっても…」

    鏡に向かって、自分に語りかける。

「わかんないよ。きっと…」

    メイクを丁寧に落としていくと、一重であまりパッとしない女の子が、現れる。

「でも、叔母さま達になんて言おうかな?」

    ストレートに言っても、許可してくれないと思う。特に、叔父さまは、かなり頭が固い。私を預かってる責任もあるだろうけど…

「咲ちゃん、頼まれてくれるかなー?」ベッドに置いてある大きうさぎのぬいぐるみを抱きながら、考えていた。

「国広友里。一斉一代の大勝負だ!いぇーーいっ!!」


「ちょっと、友里ちゃーん。はしたないわよ」ちょうど、洗濯物を届けに来てくれた叔母さまから注意された…

「ごめんなさい。」

『海水浴、楽しみーーーーっ!!』

    いつもは、頭を悩ます課題も、珍しく早くに終わった。
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