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27. 魔獣の森合宿④
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ミリカが懸念していた『アレックスグループに入れない問題』は、翌日あっさりと解決した。
ユリアンナが機転を効かせてミリカのグループの令嬢たちに指示し、アレックスたちに会話が聞こえるように新たな嫌がらせ計画について会話させたのだ。
◇
「せっかく置き去りにしたのに、帰ってきてしまいましたわね」
「もう少し困ってもらわないと嫌がらせのしがいがないわ」
「そういえばわたくし、父と付き合いのある商人からの紹介で面白いものを外国から取り寄せましたのよ」
「あら、何かしら?」
「これ、『魔獣避けの香』が詰まったサシェですの。合宿のときに万が一のことがないよう持ってきたのですが………これ、火気厳禁なんです。どうしてか分かります?」
「いいえ。どうしてですの?」
「これは燃やすと、逆に魔獣を引き寄せる匂いを発してしまうのですって。しかも魔獣を酔わせるような匂いらしく、普段は大人しいものでも凶暴化してしまうのだとか」
「まあっ。それは危険ですわね?……ふふっ。今日のサバイバル演習で彼女に焚き火番を任せた時、間違えてそれを火にくべてしまったらどうなるのかしら?」
「あらぁ。それは面白そうね」
ウフフと笑い合う令嬢たちから隠れた場所でこの会話を聞いていたアレックスたち。
ジャックなどは顳顬に青筋を立てて今にも令嬢たちに殴りかかりそうな勢いであったが、何とかアレックスが押し留めた。
「落ち着け、ジャック」
「これが落ち着いていられるか!明らかにミリカを害する計画じゃないか!」
「だから落ち着けよ。彼女たちの会話は確かに不穏なものだが、『計画』というほど綿密ではなく単なる思いつきを喋っていたような雰囲気だったろ?それに、会話に出てきた『彼女』がミリカ嬢のことかどうかが分からないじゃないか」
会話の内容は明らかにミリカを指したものであったが、あの令嬢たちは会話の中で『ミリカ』とは一言も言っていない。
この状況で令嬢たちを糾弾しても、「何の話でしょう?」ととぼけられるのがオチだ。
「悔しいがこの段階で彼女たちを責めることはできないだろ?」
ジャックのことを冷静に諭すサイラスだが、その目は座っている。
もし本当にミリカが酷い目に遭ったのを目の当たりにしたら、令嬢たちのみならず一族郎党消し炭にしてしまいそうな勢いだ。
アレックスは2人の様子を見て頭を抱えた。
昨日困っていたミリカを自身のグループに加えなかったのは、単にミリカが他のメンバーから逸れてしまった可能性があったことと、ミリカだけを特別扱いしてしまうことに抵抗があったからだ。
アレックスは婚約者がいる身だし、特別扱いしてミリカがさらに虐めの対象になることを避けたかったのだ。
しかし、サイラスとジャックの様子を見るにこのままミリカを今のグループにいさせるのは危険なようだ。
計画が本当であった場合ミリカが危険な目に遭うし、計画が実行されなかったとしてもサイラスとジャックは常にあの令嬢たちを監視し、何かあれば即刻排除するだろう。
せっかくの合宿をそのような修羅場にするのも忍びない。
アレックスは熟考の末、ミリカを自身のグループに加えることに決めた。
これ以上揉め事を起こすのは得策ではないとの判断からである。
結果的に、アレックスの性格から思考回路を分析したユリアンナの作戦が功を奏した形となった。
◇
晴れてアレックスグループに合流したミリカは、意気揚々と3泊4日のサバイバル演習に参加した。
このサバイバル演習では、ミリカが待ち侘びていたラッキースケベ的なラブイベントがてんこ盛りなのだ。
夜に森の中の泉で水浴びをしていたミリカがいると知らずに入ってきた裸のジャックと鉢合わせてしまったり、暗闇で足を取られて転びそうになったミリカを支えようとしたサイラスまで転び、押し倒されるような格好になってしまったり。
極め付けはアレックスと共に食料調達に出たミリカが足を滑らせ崖下に滑り落ちてしまい、慌ててアレックスが探し出した時には日が暮れてしまい、しかもミリカが足を怪我して移動が困難だったために近くの洞穴で野宿することになった、いわゆる『洞穴イベント』だ。
運悪く降り出した雨に打たれ、焚き火で着ていた服を乾かす2人。
夜が深まり気温が下がるにつれ、ミリカはガタガタと身体を震わせる。
それを見たアレックスはミリカと身を寄せ合い、お互いの体温で温め合う。
そして気分が高揚した2人はそのまま見つめ合い、唇を────
合わせなかった。
本来ならばここでアレックスと初めてキスするはずだったのだが、なぜかアレックスはキスして来なかった。
(どうして!?このイベント自体がある程度好感ポイントが貯まっていないと起きないイベントなのに!)
ミリカと身体を寄せ合ったアレックスは頬を染め、優しい視線をミリカに向けている。
アレックスの心は確実にミリカに傾いているはずなのに、強力な自制心の賜物なのか一線を超えてくれない。
かと言ってミリカから迫るわけにもいかず、悶々とした一夜を送る羽目になったのであった。
ユリアンナが機転を効かせてミリカのグループの令嬢たちに指示し、アレックスたちに会話が聞こえるように新たな嫌がらせ計画について会話させたのだ。
◇
「せっかく置き去りにしたのに、帰ってきてしまいましたわね」
「もう少し困ってもらわないと嫌がらせのしがいがないわ」
「そういえばわたくし、父と付き合いのある商人からの紹介で面白いものを外国から取り寄せましたのよ」
「あら、何かしら?」
「これ、『魔獣避けの香』が詰まったサシェですの。合宿のときに万が一のことがないよう持ってきたのですが………これ、火気厳禁なんです。どうしてか分かります?」
「いいえ。どうしてですの?」
「これは燃やすと、逆に魔獣を引き寄せる匂いを発してしまうのですって。しかも魔獣を酔わせるような匂いらしく、普段は大人しいものでも凶暴化してしまうのだとか」
「まあっ。それは危険ですわね?……ふふっ。今日のサバイバル演習で彼女に焚き火番を任せた時、間違えてそれを火にくべてしまったらどうなるのかしら?」
「あらぁ。それは面白そうね」
ウフフと笑い合う令嬢たちから隠れた場所でこの会話を聞いていたアレックスたち。
ジャックなどは顳顬に青筋を立てて今にも令嬢たちに殴りかかりそうな勢いであったが、何とかアレックスが押し留めた。
「落ち着け、ジャック」
「これが落ち着いていられるか!明らかにミリカを害する計画じゃないか!」
「だから落ち着けよ。彼女たちの会話は確かに不穏なものだが、『計画』というほど綿密ではなく単なる思いつきを喋っていたような雰囲気だったろ?それに、会話に出てきた『彼女』がミリカ嬢のことかどうかが分からないじゃないか」
会話の内容は明らかにミリカを指したものであったが、あの令嬢たちは会話の中で『ミリカ』とは一言も言っていない。
この状況で令嬢たちを糾弾しても、「何の話でしょう?」ととぼけられるのがオチだ。
「悔しいがこの段階で彼女たちを責めることはできないだろ?」
ジャックのことを冷静に諭すサイラスだが、その目は座っている。
もし本当にミリカが酷い目に遭ったのを目の当たりにしたら、令嬢たちのみならず一族郎党消し炭にしてしまいそうな勢いだ。
アレックスは2人の様子を見て頭を抱えた。
昨日困っていたミリカを自身のグループに加えなかったのは、単にミリカが他のメンバーから逸れてしまった可能性があったことと、ミリカだけを特別扱いしてしまうことに抵抗があったからだ。
アレックスは婚約者がいる身だし、特別扱いしてミリカがさらに虐めの対象になることを避けたかったのだ。
しかし、サイラスとジャックの様子を見るにこのままミリカを今のグループにいさせるのは危険なようだ。
計画が本当であった場合ミリカが危険な目に遭うし、計画が実行されなかったとしてもサイラスとジャックは常にあの令嬢たちを監視し、何かあれば即刻排除するだろう。
せっかくの合宿をそのような修羅場にするのも忍びない。
アレックスは熟考の末、ミリカを自身のグループに加えることに決めた。
これ以上揉め事を起こすのは得策ではないとの判断からである。
結果的に、アレックスの性格から思考回路を分析したユリアンナの作戦が功を奏した形となった。
◇
晴れてアレックスグループに合流したミリカは、意気揚々と3泊4日のサバイバル演習に参加した。
このサバイバル演習では、ミリカが待ち侘びていたラッキースケベ的なラブイベントがてんこ盛りなのだ。
夜に森の中の泉で水浴びをしていたミリカがいると知らずに入ってきた裸のジャックと鉢合わせてしまったり、暗闇で足を取られて転びそうになったミリカを支えようとしたサイラスまで転び、押し倒されるような格好になってしまったり。
極め付けはアレックスと共に食料調達に出たミリカが足を滑らせ崖下に滑り落ちてしまい、慌ててアレックスが探し出した時には日が暮れてしまい、しかもミリカが足を怪我して移動が困難だったために近くの洞穴で野宿することになった、いわゆる『洞穴イベント』だ。
運悪く降り出した雨に打たれ、焚き火で着ていた服を乾かす2人。
夜が深まり気温が下がるにつれ、ミリカはガタガタと身体を震わせる。
それを見たアレックスはミリカと身を寄せ合い、お互いの体温で温め合う。
そして気分が高揚した2人はそのまま見つめ合い、唇を────
合わせなかった。
本来ならばここでアレックスと初めてキスするはずだったのだが、なぜかアレックスはキスして来なかった。
(どうして!?このイベント自体がある程度好感ポイントが貯まっていないと起きないイベントなのに!)
ミリカと身体を寄せ合ったアレックスは頬を染め、優しい視線をミリカに向けている。
アレックスの心は確実にミリカに傾いているはずなのに、強力な自制心の賜物なのか一線を超えてくれない。
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