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しおりを挟む「お主がいつ妾を呼んでくれるかと楽しみにしておったのにのぉ。お主はまったく妾の名を呼ばぬから退屈じゃったのじゃ。」
女神様は開口一番にそう言ってのけた。
「何度か女神様を呼んでいたのですが・・・。」
「ん?今回が初めてじゃろう?」
女神様は不思議そうな顔をして首を傾げている。
「お主、妾の名前など一度も呼ばなかったではないか。」
「え?何度か女神様と呼びかけましたが・・・。」
「なんじゃ。妾は女神様という名前じゃないのじゃ。」
「えっ!?オレ、女神様の名前なんて知りませんけど・・・。」
やっぱり女神様の名前を呼ばなければならなかったのか。
だけど、ならなんで女神様はどうして今、ここにいるのだろうか。
「うみゅう?でも、お主は先ほど妾の名前を呼んだぞ。なんだ、妾の名前を知らなかったのかえ。」
「・・・はい。」
記憶を思い返してみても女神様に名前を教えてもらった記憶など、ない。
それに、女神様の名前を呼んだ記憶もない。
「むぅ。知らぬのか。」
「あの・・・お名前を教えてはいただけないのでしょうか?」
「よいのじゃ。もっと早く聞くべきことじゃろ。妾はシラネと言うのじゃ。覚えておくように。」
「へ?シラネ?」
女神様は案外素直に名前を教えてくれた。
「シラネ様と呼ぶのじゃ。」
そう言えばさっき女神様の名前なんか知らねえって叫んだよな、オレ。
そっか。「知らねえ」が「シラネ」様を呼んだことになったってことか。
すごい偶然だな。
ってか、この偶然がなかったら女神様とはもう会えなかったということだろうか。
危なかった・・・。
オレ、グッジョブ。よくやった。
「して、困っていることはないかのぉ?」
シラネ様はそうオレに問いかけてきた。
困っていることは多々ある。
まずこの国で使えるお金がないことだ。
お金がないことには泊まるところも用意できないし、食事もできないのだ。
働けばよいと言われてもどこでどう働いたらいいのかもわからない。
「日本円がこの国では使用できなかったんだ。オレが持っている日本円をこちらの世界のお金に両替してもらうことは可能でしょうか。」
「なんじゃそんなことか。なに簡単なことじゃ。お主が持っているお金をすべてこの世界の通貨に効果すればよいかの?」
「はい。お願いします。」
オレは財布の中からありったけのお金を取り出してシラネ様に渡した。
と言っても、ほとんどカードで支払っていたからお財布の中には一万円札一枚と硬貨が数枚しかなかったのだが。
ああ、普段から現金を持っと持っていたら苦労はしなかったのにな。
通帳の中には日々の残業代が貯まってたのに・・・。
そうして、オレは一万ニャールドを手に入れたのだった。
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