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しおりを挟む「んにゅ・・・。ふみゅ・・・。」
なんだろう。
耳元で可愛らしい声がする。
ゆっくりと浮上していく意識の端で可愛らしい声が聞こえてきた。
「ふみゅ・・・。んにゅ・・・。」
誰かいるのだろうか?
オレの頬をざらざらとしたものが行き来している。
「んにゅ・・・。んにゅ・・・。」
肩の辺りを柔らかい何かが捏ねるように軽く押してくる。
「ん~。」
オレはその柔らかい感触が気になって眠い目をゆっくりと開けた。
目の前にはオレの顔を覗き込んでいる可愛い可愛いノエルがいた。
そうだ。
オレはさっき女神であるシラネ様に会ったんだった。
そうして、可愛い可愛いノエルがオレの元に来たんだった。
眠っていて忘れてしまった。
「可愛い可愛いノエル。オレを起こしてくれたのかい?」
「んにゅっ!お腹すいたのー。」
可愛い可愛いノエルは無邪気にそう言った。
そう言えば、もうすっかりと胸焼けはよくなっていた。
シラネ様に交換してもらったお金もあるし、可愛い可愛いノエルのために何か食事をわけてくれないかな。
そう思ってオレはアーモッドさんに直通で繋がるという糸電話を手に取った。
「ああ。やっとよくなりましたか?すぐに行きますね。」
「あ、すみません。アーモッドさん。もし猫用の食事があったら一匹分いただきたいんですが・・・。もちろんただでとは言いませんから。お代は払いますから。」
「ん?猫・・・ですか?わかりました。すぐに行きますね。」
アーモッドさんは少しだけ考えた素振りをしたが、すぐに了承してくれた。
あーでも、可愛い可愛いノエルの食事を頼んだけど、さっきまでお金を持っていなかったのに急にお金があるって代金を支払ったらおかしいよな。
ここはノエルの食事代分も雑務をするとするか。
「お待たせしました。」
「待ってたの-。良い匂いなのー。」
アーモッドさんが部屋に入ってくると同時に可愛いノエルがピョンッとソファーの上から飛び降り元気よくアーモッドさんの元に駆け寄っていく。
「おっと。可愛らしいにゃんこですね。先ほど言っていた食事はこの子のためのものですか?」
「はい。お腹が空いたと言っていたので。」
「ノエルはねー!お腹が空いたのー。」
ノエルは無邪気にアーモッドさんに向かって笑いかけている。
猫って警戒心が強いと言うけれども、ノエルには当てはまらないらしい。
「はははっ。可愛い子ですね。さあ、どうぞ。」
アーモッドさんはそう言ってにこやかに笑いながら、ノエルの前に食事を差し出した。
「あの・・・アーモッドさん。雑用って何をやったらいいですか?ノエルの食事代の分まで働かせてください。」
そうアーモッドに告げた途端アーモッドさんはにっこりと意味あり気な笑みを浮かべたのだった。
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