婚約破棄されて異世界トリップしたけど猫に囲まれてスローライフ満喫しています

葉柚

文字の大きさ
221 / 584
二章

2ー102

しおりを挟む
 

ええと・・・。

猫から人間に戻すにはお湯をかければいいんだよね。

そうと決まればお湯を沸かさなければ・・・。

 

「この茶トラの猫、もしかしたらあの化粧水を飲んだのかも知れないの。マーニャたちが猫じゃないって言っているし。」

 

「あらぁ~。と、いうことはぁ~この黄緑色のぉ~卵はぁ~女王様からのぉ~褒美ってことにぃ~なるのでしょうかぁ~。」

 

「うむ。ますます興味深い。」

 

「私、お湯を沸かしてきますね。」

 

部屋の中には小さいながらもキッチンがあり、鍋も用意されていた。

鍋にお水をいれ、コンロにかける。

コンロの火の調節はマリアにスパルタ教育してもらったから、ほとんど意識しなくてもできるようになった。

しばらくして、お鍋の中のお湯がぐつぐつと湧き出したので、加熱をやめた。

 

「お湯沸かしてきましたよー。」

 

ぐつぐつと沸いているお湯が入った鍋を両手で持って茶トラの猫の元に向かう。

茶トラの猫は鍋を見てから慌ててマーニャの後ろに隠れてしまった。

あれ?おかしいな。

人間に戻りたいだろうに。お湯をかけられたくはないのだろうか。

 

「逃げないででておいで?人間に戻りたいんでしょう?」

 

そう優しく問いかけるが、茶トラの猫はマーニャの陰から出てこない。

マーニャもなぜか、守るように茶トラの猫を後ろに庇っている。

 

「マユさぁ~ん。熱湯を~かけなくてもぉ~いいんですよぉ~?女王様がぁ~言っていたじゃないですかぁ~。人肌くらいでぇ~大丈夫だってぇ~。と、いうかぁ~、熱湯かけたらぁ~火傷しちゃうのでぇ~やめてください~。」

 

あ、そうだった。

熱湯でなくてもよかったんだ。

と、ベアトリクスさんに突っ込まれてから気づいた。

危うく茶トラの猫を火傷させてしまうところだった。

あぶない。あぶない。

急いで、鍋のお湯を半分ティーポットに入れ紅茶を用意する。

そして残りのお湯に水を入れてぬるま湯にする。

それを持って、茶トラの猫を再び呼んだ。

 

「ごめんね。ぬるま湯を用意してきたから、人間に戻ってくれるかな?話しがしたいし。」

 

すると、マーニャの後ろに隠れていた茶トラの猫が恐る恐るといったように姿を現した。

さすがに部屋の真ん中でお湯をかけるわけにもいかないので、お風呂に案内する。

茶トラの猫は大人しくついてきている。

そうして、お風呂場の真ん中に座り込んでこちらを見上げてくる。

 

「今からかけるね。」

 

私は、優しくお湯をかけていく。

ぬるま湯なので全然熱くないはずだ。

お湯をかけるとモクモクと湯気が立ち上りだす。

 

「あれ?」

 

小さな鍋のぬるま湯でこんなに湯気って出たっけ?

モクモクと湯気は茶トラの猫を中心にたちのぼり、やがて茶トラの猫が見えなくなるくらいに湯気が立ち上がった。

それからしばらくして、湯気がじょじょに消えていく。

消えていくと同時に湯気の中心に人型の影が見えるようになった。

どうやら、やはりあの猫化する化粧水の被害にあった人のようであった。

って!

 

「裸じゃんっ!!」

 

茶トラの猫は服を着ていなかった。

よって、人の姿に戻っても服を着てはいなかった。

流石プーちゃんの作った化粧水である。

服までは一緒に伸び縮みしなかったようである。

私は慌ててお風呂場を飛び出した。

だって、シルエットからして男の人だったのだ。

あの中に平然と突っ立っていたら私、痴女だ。

 

「マユさぁ~ん。どうしたんですかぁ~。」

 

「服!ザックさん服かして!早くっ!!」

 

「あ、ああ。」

 

私はザックさんに駆け寄り、服を貸してくれないかとうったえる。

ザックさんもどうして服が必要なのかを悟り、すぐに部屋を出て着替えを探しに行ってくれた。

 

「マユさぁ~ん。見ちゃったんですねぇ~。きゃっ。」

 

「好きで見たわけじゃないです。」

 

ベアトリクスさんが絡んでくるけれども、気にしないふり。

でも、ベアトリクスさんはニヤニヤと笑っている。

 

『マユってば破廉恥なのー。』

 

『むっつりなのー。』

 

『すけべなのー。』

 

マーニャたちが何やら騒いでいる。

 

「あなたたち、どこでそんな言葉覚えてきたのよ・・・。」

 

マーニャたちが話す内容に力なくがっくりと項垂れる。

もっと純粋に成長して欲しかったのになぁ。

 

「ぐすっ。えぐっ。ひぐっ・・・。」

 

すると、お風呂場の方から男の人の鳴き声が聞こえてきた。

 

ベアトリクスさんと私は顔を見合わせる。

そうして、お風呂場のドア越しに中に向かって声をかける。

 

「どうしたんですかぁ~?」

 

「大丈夫?」

 

ベアトリクスさんと私が優しく問いかけるが中からは返事がなく、まだ泣き声が聞こえてくる。

どうしたものだろうか。

しばらく、そのままドア越しにお風呂場の様子を伺っていると、

 

「裸見られちゃった・・・。僕・・・もう、お婿にいけない・・・。」

 

なんとも情けない呟きが聞こえてきた。

裸見られたらお婿にいけないだなんて、この国にはそんな法律があるのだろうか。

思わず、ベアトリクスさんを見ると、

 

「………ここはぁ~。マユさんがぁ~責任を~持ってぇ~お婿にぃ~迎えてあげてください~。」

 

なんて、言い出す始末だ。

当分は結婚とか恋愛とか考えたくもないんだけどなぁ。

 

「無理です。それより、そんな法律でもあるんですか?」

 

「ありませんよぉ~。なのでぇ~婚前交渉している人たちもぉ~いっぱいいますしぃ~、遊びまくっている人もぉ~いますよぉ~。」

 

「ベアトリクスさんも?」

 

「それは~秘密ですぅ~。」

 

ベアトリクスさんはそう言って口の前に人差し指を当ててにっこりと微笑んだ。

というかそもそもベアトリクスさんって結婚できるような年齢なのだろうか。

 

「待たせたっ!」

 

そうこうしているうちにザックさんが着替えを持ってきてくれたようだ。

私たちはお風呂場に篭城している男性に辟易していたのでザックさんが天使に思えた。

 

「ザックさん。この中にいますのでよろしくお願いします。」

 

「ああ。」

 

ベアトリクスさんと私はお風呂場のドアからサッと離れて、ザックさんが中に入れるようにした。

着替えを持って中に入っていくザックさん。

しばらく泣き声が聞こえていたが、ザックさんが何かを言ったのか泣き声が不意に止んだ。

そうして、着替えが終わったのかお風呂場のドアががちゃりと開いた。

 

「あ、貴方女性かと思ってたんですが、男性だったんですね。よかったです。危うく僕、お婿に行けなくなってしまうところでした。貴方が女性じゃなくて本当によかった。僕、こうスタイルの良い女性が好きなんです。だから貴方の胸があまりにも貧相でこの人と結婚しなくちゃならないのかって、ちょっと絶望してしまいました。でも、あなたが男性で安心しました。」

 

「・・・をい。」

 

金髪碧眼の優男さんはお風呂場から出てくるなり一気にそう言った。

誰がまな板だって?

誰が?

って、そんな理由でずっと泣いていたとかあり得ない。

それに、もっとあり得ないのは・・・。

金髪碧眼の男性の後ろから出てきたザックさんをギロリッと睨む。

 

「だ・れ・が、男だって?」

 

「お前、女だったのか?」

 

ザックさんは私の胸元を見ながら呟いた。

 

「はあ!?」

 

ザックさんのあまりに失礼な物言いに眉を釣りあがらせる。

ザックさんはこの後、部屋から追い出されたのは言うまでもない。

そうして、ザックさんがマリアのことを好きだったみたいなのでちょっとくらいは協力してあげようかなって思っていた気持ちはどこかに吹き飛んでいった。

 

 

 

しおりを挟む
感想 829

あなたにおすすめの小説

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

召喚されたら聖女が二人!? 私はお呼びじゃないようなので好きに生きます

かずきりり
ファンタジー
旧題:召喚された二人の聖女~私はお呼びじゃないようなので好きに生きます~ 【第14回ファンタジー小説大賞エントリー】 奨励賞受賞 ●聖女編● いきなり召喚された上に、ババァ発言。 挙句、偽聖女だと。 確かに女子高生の方が聖女らしいでしょう、そうでしょう。 だったら好きに生きさせてもらいます。 脱社畜! ハッピースローライフ! ご都合主義万歳! ノリで生きて何が悪い! ●勇者編● え?勇者? うん?勇者? そもそも召喚って何か知ってますか? またやらかしたのかバカ王子ー! ●魔界編● いきおくれって分かってるわー! それよりも、クロを探しに魔界へ! 魔界という場所は……とてつもなかった そしてクロはクロだった。 魔界でも見事になしてみせようスローライフ! 邪魔するなら排除します! -------------- 恋愛はスローペース 物事を組み立てる、という訓練のため三部作長編を予定しております。

うちの孫知りませんか?! 召喚された孫を追いかけ異世界転移。ばぁばとじぃじと探偵さんのスローライフ。

かの
ファンタジー
 孫の雷人(14歳)からテレパシーを受け取った光江(ばぁば64歳)。誘拐されたと思っていた雷人は異世界に召喚されていた。康夫(じぃじ66歳)と柏木(探偵534歳)⁈ をお供に従え、異世界へ転移。料理自慢のばぁばのスキルは胃袋を掴む事だけ。そしてじぃじのスキルは有り余る財力だけ。そんなばぁばとじぃじが、異世界で繰り広げるほのぼのスローライフ。  ばぁばとじぃじは無事異世界で孫の雷人に会えるのか⁈

もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜

双葉 鳴
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」 授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。 途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。 ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。 駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。 しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。 毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。 翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。 使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった! 一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。 その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。 この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。 次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。 悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。 ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった! <第一部:疫病編> 一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24 二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29 三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31 四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4 五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8 六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11 七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18

聖女なんかじゃありません!~異世界で介護始めたらなぜか伯爵様に愛でられてます~

トモモト ヨシユキ
ファンタジー
川で溺れていた猫を助けようとして飛び込屋敷に連れていかれる。それから私は、魔物と戦い手足を失った寝たきりの伯爵様の世話人になることに。気難しい伯爵様に手を焼きつつもQOLを上げるために努力する私。 そんな私に伯爵様の主治医がプロポーズしてきたりと、突然のモテ期が到来? エブリスタ、小説家になろうにも掲載しています。

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

異世界の片隅で引き篭りたい少女。

月芝
ファンタジー
玄関開けたら一分で異世界!  見知らぬオッサンに雑に扱われただけでも腹立たしいのに 初っ端から詰んでいる状況下に放り出されて、 さすがにこれは無理じゃないかな? という出オチ感漂う能力で過ごす新生活。 生態系の最下層から成り上がらずに、こっそりと世界の片隅で心穏やかに過ごしたい。 世界が私を見捨てるのならば、私も世界を見捨ててやろうと森の奥に引き篭った少女。 なのに世界が私を放っておいてくれない。 自分にかまうな、近寄るな、勝手に幻想を押しつけるな。 それから私を聖女と呼ぶんじゃねぇ! 己の平穏のために、ふざけた能力でわりと真面目に頑張る少女の物語。 ※本作主人公は極端に他者との関わりを避けます。あとトキメキLOVEもハーレムもありません。 ですので濃厚なヒューマンドラマとか、心の葛藤とか、胸の成長なんかは期待しないで下さい。  

悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。

向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。 それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない! しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。 ……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。 魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。 木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ! ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

処理中です...