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五章
5ー68
しおりを挟む私は自分の身体が余すことなく汚れていることにガックリと項垂れた。
「この巨大なトマトの木を降りてきたのですから、当たり前でしょうね。」
「は、はははっ……。」
マコトさんの指摘に私は乾いた笑いを浮かべた。
そうだった。すっかり忘れていたけれども、トマトの木に触ると色がついてしまうんだった。しかも、服についた場合は洗濯しても落ちなかったような……。
この服は捨てるしか、ないかな。
私は自分の服を見て「はぁ……。」と大きなため息をついた。
まあ、帰ってこれただけよかったんだけどね。
って、あれ?なんだか大事なことを忘れているような気が……。
頭の中で何かが引っ掛かった。
だけれども、自分の身体がトマト臭くなっていることと、早く服を着替えたいという思いがいっぱいで何が引っ掛かっているのかすぐには思い出せない。
……思い出せないってことは大したことじゃないよね。うん。
「マコトさん。お風呂と着替えを貸してくれますか?」
「はい。どうぞ。着替えは脱衣所に用意しておきますから、ゆっくり身体を清めてくださいね。ああ、そうだ。ついでに、マーニャたちも綺麗に洗ってあげてください。マユさんほどではないですが、マーニャたちもトマトの汁が身体についてしまって汚れてしまっていますので。お風呂には猫用のシャンプーも用意していますから、それを使ってくださいね。」
マコトさんは、快く着替えとお風呂を貸してくれた。まあ、マーニャたちを洗えと言われてしまったけれども。
改めてマーニャたちを見ると、私ほどではないが足やお腹がトマトの汁で黄緑色に汚れてしまっている。
私ほどひどくないのは、降りるのが上手だったからだろう。
私はしっかりトマトの木にへばりつきながら降りて来たから。
「マーニャ、クーニャ、ボーニャ。汚れたままだと嫌でしょ?洗ってあげるから一緒にお風呂行こう?」
私は、マーニャたちを綺麗にするべくお風呂に誘う。
「……。」
「……。」
「……。」
「……ん?」
マーニャたちに声をかけたのだが、3匹からの返答がなかった。いつもならすぐに返事するのに。
どうしたんだろうか、と首を傾げる。
もしかして聞こえていなかったのだろうか。
「マーニャ?クーニャ?ボーニャ?お風呂、行こう?」
もう一度マーニャ達に声をかける。今度は、マーニャたちの目をそれぞれしっかり見つめながら声をかけた。これで気が付かないだなんてことはないだろう。
「……。」
「……。」
「……。」
「……え?あれぇ?」
だが、マーニャたちからの返答はなかった。
返事がないばかりか、マーニャたちの身体がその場に縫い付けられたように固まっている。まったく身動きしないのだ。
いったい、どうしたんだろうかと心配になる。
先ほどまで元気いっぱいだったのに。
お腹でも空いたのかな?
10
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