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しおりを挟む先程よりも身体がポカポカと暖かくなり、頭に霧が立ち込めたかのように、思考がはっきりとしない。
「ハーブティーは美味しいですか?・・・レイチェル様?」
マコト様の声が、頭の中に反響する。
「とってもおいしいわ。」
マコト様の質問に答えているのは誰・・・?私・・・?
頭の中で自分のものかどうかもわからない声が反響する。
私は口を動かしたかしら?
コクリッと甘いハーブティーが喉元を過ぎていく。
今、私はハーブティーを飲んだかしら?
なんだか、自分の身体が自分のものではないような感じがする。
ボーッとする頭でマコト様の顔を見ると、マコト様は優しく微笑んでいた。
あれ?
そう言えば、マコト様は今、私のことをレイチェルと呼んだ?
私はそれに対してなんの疑問ももたずに答えたような気がする。
「ここにいらしたんですね。レイチェル様。エドワード様がお待ちです。早く元の身体に戻りましょう。」
「いやよ。ぜったいにイヤよ!」
「そうはおっしゃらずに。」
マコト様が優しく問いかけるが、私は頭を大きく振って拒絶する。
まるで、子供が駄々をこねているような態度だ。これは、私なのだろうか?
「だって!エドワード様はマコト様のことがお好きなんでしょ!!」
啖呵をきるように大きな声を張り上げる。
それとともに、大粒の涙が頬を伝ってハーブティーの入ったカップにポトリと落ちた。
「な、なにをおっしゃっているのですかっ!!」
マコト様が驚いたように声をあらげて否定をしている。珍しい。マコト様がこんなに取り乱すだなんて。
今までマコト様の焦ったような表情は見たことがない。いつもにこにこ微笑んでいる姿しか覚えていない。
それほど、衝撃的な発言だったのだろうか。
「マコト様とエドワード様の間には子供までいるのでしょう!それなのに、どうして私をエドワード様の元に戻そうとするの。放っておいてよ。」
「そ、それは誤解です!誤解なんです!!あの子はレイチェル様とエドワード様とのお子なのです。部外者がいらしたので、皇太子であるエドワード様の子とは言えずに私の子と偽ったのです。」
そういえば、キャティーニャ村で会った赤ちゃんのことをマコト様の子だと言っていたわね。
でも、どうして、マコト様の子にしたのかしら。別にユキ様の子と偽ってもよかったでしょうに。
「私がエドワード様から婚約破棄されたのも、エドワード様が私よりマコト様のことをお好きになったからなんでしょう!・・・私なんていらないのよ。」
そう言って私は、その場にしゃがみこみワンワンと泣き出してしまった。
まるで、子供が癇癪を起こして泣いているかのようだ。
「違いますっ!誤解ですっ!誤解なんです!エドワード様は決して男色家ではありませんっ!」
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