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第五章 目覚めた戦士達の逆転劇 編
ジャッジメントは茶会の後で
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あのあと例の愚か者たちは、怒気のオーラ増し増し増しの黒影メイドと参謀官によって拷問…おっと失礼、適切に取り調べに回された。
エールテールの各ギルドや貴族の動き、学園に関する供述やその他諸々を洗いざらい吐かされた後に、ありとあらゆる怖~~いことをされ、ちょっとしたアクセサリーを土産に受け取っていただいて丁重に返り討ちとした。
現在、午後の殲滅作業が中止となり、帰って行った鳥系従魔とその仲間達からの逆襲に備えて全員が待機中だ。
まあ、待機と言っても結構な自由時間な訳だが…
「ん~… ん~…」
「どうしたんですか?さっきからずっとそんなですけど」
「なんだろーな、煮えきらねーやり返しっつーの?
なんかこう…スカッとしねぇやり方だったな~ってよ」
「仕方ないですよ。 向こうも精いっぱい見栄を張るために必死なんです。
いくらある程度の権限を持つ騎士が3人もいるとはいえ、ギルマスからの命令書を無視して、その場で死罪にするわけにもいかないでしょ」
「けどよ~、ケンカ売られて買わねーのは負けを認めたようなもんだろ」
「大丈夫です。 コレ見てください」
「ん?」
パソコンを前後逆にして、見るように促す。
そこには人の大まかな3Dモデルが映されていて、背中には刺青のように描かれた魔法陣、両手首には特別なブレスレットがついている。
「なぁ、これってこないだのどれーにするための首輪を外れなくする部品だよな、アレそのまま付けたのか?」
「さすがテーリオさん、よく分かりますね」
あれだけのことをされてお土産をタダで渡すはずがない。
今、泡を拭きながら気球に乗っている彼らがつけているブレスレットには、第二騎士団長が犯行に使っていた首輪の留め具を硬くロックする部品を付与だけして流用し、おしゃれと引き換えに絶対に一生外れないブレスレットとなっている。
背中に刻まれている魔法陣にはなかなか趣味の悪い術式が使われており、相当魔法陣に精通していてもほぼ認識すらされないだろうし、アクリルキーホルダーで言うところの絵柄をレジンで固められた状態にあり、通常の手段での解除は実質不可能だ。
ブレスレットにしたのは、首輪だと奴隷取扱法のガイドライン的に後々よろしくないからとアドバイスをもらったためだ
「この間の首輪は中の紐が急激に縮んで首が絞まってしにいたる物でしたが、こちらとしては死人が出るのはマズイので、地獄に堕ちたまま生きてもらう仕掛けをいくつか仕込んでおきました。
取り除こうったってそうはいきません」
「仕掛けってなんだよ」
「装着者が喋ろうとした場合と、周りの人がシルヴィアや俺たちに直接つながる言葉を感知すると、広範囲の人や動物の全身が焼けるように痛く感じるんです。
外そうとした場合や自ら命を絶とうとした場合もそうですね
あの4人はもう一生喋ることを許されず、装着者とその周りには不幸が起きるように仕立てて欲しいと発注されまして」
「仕打ちがスゲェな…ほとんど呪いの魔法道具じゃねぇかよ」
「こうでもしないと牽制になりませんからね…」
「けんせぇってなんだ?」
「え~っと…”もう来るなよ“、”関わるなよ“っていう隠れたメッセージを4人に取り付けて送ったんです。」
「…へぇ…」
「まだ分かってませんよねその返事…」
目が点になるというか粒になった時は理解できていない時の顔だ。 こうなったこの人に何を教えても頭には入らない。
「あ、そうだ。 テーリオさんこれ」
「ん?」
そう言って俺はあるものを手渡す。
ゴツゴツした木目、子供が持つにはなかなか太く感じる持ち手、分岐して伸びるツノとそこから伸びる細い両腕、両腕が持って支える革素材は垂れ下がりながらもいつでも石コロを弾丸へ変貌させる力を秘めている
「…じいちゃんの形見…! すげぇ…ぜってー元通りには直んねーと思ってたのに…」
「遅くなっちゃってごめんなさい。 完全再現するの、結構手こずっちゃって」
「…」
言葉にもならないと言うのはこういう時にも使えるのか、目に涙を溢れさせ、気持ちのいい男泣きが始まった
「ここら辺じゃいない種の蛇が素材だったのと、合間合間で記憶映像から全部再現するのが時間かかって…」
「いいんだ…ぞんだど(そんなの)ずぇんずぇん(全然)…あうぅ…じいぢゃん…」
「無事に直ってなによりです。」
「ああ…ありがどよぉっ! おめぇサイッコーだぜっ! 恩人だぜっ! 神様だぜっ!」
「大袈裟ですって…」
「うるぜぇ! この恩はゼッテー返ずがんなっ!」
ははは…
「物はいつか形を失いますが、今のあなたならそんな必要はない。 なぜなら」
「ああ。 オレぁサイキョーの狩人でありながらじいちゃんの孫で、オメェの弟子だからなっ」
ブフーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!
咄嗟に横を向いて、飲んでた水を派手に吹き出してしまった。
確かにこの拠点内では団長さんと並ぶくらい、いや、それ以上の時間を一緒に過ごしているが弟子なるほどのことを教えた覚えはない
「ゲホゲホッゲホッゲホゲホッ」
「ん? なんかヘンなところに入ったか?」
「いえ…なんでもないです…ゲホっゲホゲホ…
一応聞きますけど、テーリオさんのお仕事は?」
「狩人と、職人の孫」
「騎士でしょ 第三騎士団の!」
「あ~…んなモンついでだ! オレが騎士やってんのは屋根の上とダンチョの近くにいる時だけって決めてんだよっ」
「それ以外は開き直ってサボる気ですね」
「当ったりめーよ。 お貴族様の風習とか秩序ってやつに付き合ってられるほどアタマは良くねーしな」
「否定も肯定もしにくいのでノーコメントにしますね。」
「なんかスッゲー失礼なこと考えてるだろ」
ジィィーーーーーー
「ま、今回は許してやんよ。 あ、そろそろ終わったかな」
すくっと立ち上がり、ドアノブにかけた手を引くと、大勢による黄色い声がなだれ込んできた。
『9回裏、2アウト1、2塁。1打逆転サヨナラのチャンスでございマス。
ここで赤チームの打席に入るは満を持して登場、騎士界のエースピッチャー!アーンド!大スラッガー! 魔球の支配者ルチオ~!』
「「「「ヒュ~~~~~~!!!!」」」」
『バッター代わりマシテ、4番 バッター ルチオ』
「よーし 行ってきまーす」
『「「「かっとばせ~♪ ル・チ・オ」」」』
団長が黒影メイドからの報告に頭を痛めている一方で、昼休憩からぶっ通しで拠点の庭では息抜きのレクリエーションとして草野球が行われていた。
午前のことを思うと危機感がないと言えばたしかに無いが、そこはみんな状況を分かっているからベンチにバットと同じ扱いで武器と訓練用のセットが置いてある。
こういうのに対していつもは口うるさいゾース副団長も今となっては口を出さない。なぜだと思う?
答えは簡単、一緒になって楽しんでるから。
ずっとプレッシャーに晒される騎士というお仕事にひと時の娯楽の1つ2つないととてもやってられないのだろう。
『バッタールチオに対スルのは、白チームより毒蛇の独裁者スコット・スペンサー!
縦横無尽にうねり標的を穿つ蛇の牙は果たシて、魔球の支配者を前にドノような勝負を見せてくれるノカ!?』
「やってやれスペンサー!」
「相手はルチオだ! ヘビか怖くないわけがないぞ!」
「気にせず打っちまえスーパースター!」
「結界の外までホームランしてしまえ!」
「なかなか終わらねーな」
「おうテーリオ、ナイスタイミングだ。
ルチオがホームランじゃなければ次はお前の打席だぞ」
「ならオレの打席は来ねーよ」
『ピッチャー振りかぶッテ…』
「駆逐せよ…【九頭蛇滅球】!」
『投げタ!!』
「甘いっ【スポコン奥義 ちゃぶ台返し】!!」
ドンガラカッキィィーーーーーン
『打っタぁァァァァァァ! 九つに分かレタ軌道から本物の1匹を選ぶ間もなく9匹まとメテ打ち返シタぁぁぁぁああ!
コレは大きい!入ルか!?入ルか!? 入っターー!
やはり魔球の支配者ルチオ!どんな攻撃にモお構いなく支配シテしまっタァァァァァァ!
ランナー3人が塁を回って返って来ル!2点目!そしてヒーローが返って来レバ3点入って大逆テーン! サヨナラホームランが決まりマシタ~!』
『「「ウォォォォォォォォォオオオオオオオオ!!!!」」』
「な? 来なかったろ?」
「いやぁ~面白かったぁ~」
「やっぱ遠征に息抜きは必要だわ」
「わかるわかる、オレもう元の本部に戻りたくないぜ」
「ここが本部でいいよな」
「ちげぇねぇ」
ワッハッハッハッハッハッハッハッハッハ!
「お疲れさまです。 体力ポーションはいかがですか?」
「おう、一杯もらうぜ」
「どうぞ」
「オレもっ」
「私もっ 私も貰っていいか?」
「はいっ」
ゴクッゴクッ グビグッビっ
「カァ~っ! そうそうこれこれっ やっぱ運動した後にはポーションが必須だよな」
「あ~ウメェ~ これがポーションとかいまだに信じられないぜ」
「もうそこらのポーションには戻れませんね」
「ちげぇねぇ」
「さっきこのくだりやっただろ」
「ちげぇねぇな」
ワッハッハッハッハッハッハッハッハッハ
「うふふっ」
「あははっ」
自然に笑みが溢れる。
とっくにシルヴィアの壮絶な過去のことや、バケモノじみた職人ののスローライフ願望、ケリーの炎狐の人格のことなどは同じ敷地内にいる人みーんな知っている。
知らない人がいるとすればヴィンセント家の話くらいだが、どうせエミリさんがいろいろ企んでいるようだし、今は別に知ってもらわなくてもいいという結論だ。
「どうだクマさん、少しは寝れてるか?
裏方の仕事って普通は不眠不休っていうし、いつも大量のポーション作ってくれてるだろ」
「わたくしの錬金術の特性はポーションの大量生産に特化していまして、準備と後片付けに時間がかかるだけで、毎回100本分でしたら10秒と少しあれば錬成できますわ。
おかげさまで毎晩グッスリでしてよ」
「10秒!?そいつはスゲェ」
「実際に見てみたいぜ」
「観覧チケットは値が張りましてよ」
「そいつは懐が寂しいから勘弁だぜ」
「いずれお見せできるようになりますわ。 きっと」
「そか、ならその時までおあずけだな。 オオカミさんは?」
「僕は回復魔法の出番が最近あまりないので、農場と事務のお手伝いばっかりして時間潰してるくらいで」
「こっちもグッスリか。 なによりだぜ」
「アイツの魔法付与の影響でオレらも魔力量とか体力とか全体的に上がってるしな」
「通常の5倍動きまくって、7倍回復と治療してるからな…オレ、最近メガネいらねーもん」
「オレもここしばらく咳とクシャミした覚えないかも」
「そういやオレもここ来て夜中に起きたことないな」
「私も幼少期からの関節痛がなくなったな」
「あれ?ここ病院じゃないよな?」
「2週間で変わりすぎだろお前ら…私もその1人なんだが…」
見ない間に、もはやお面自体なくてもいいんじゃないかというくらい、冗談や自然な気遣いが行き交うほどにシルヴィアは今ここにいる第三騎士団のほとんどの人と打ち解けていたのだ。
シルヴィアを中心に沢山の人の輪が形成されていく
「…ん?」
「どうした」
「気のせいだったらいいのだが、揺れてないか…?」
「おまえ何を言って…いや揺れてる」
「畑の音だろ? 薬草に手足生やして空間倉庫に集まれ~っていつものアレ」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…
「いえ、今は収穫する時間ではありませんわ。間違いありません、これは地震ですわね」
グラグラグラグラグラグラグラ…!
「結構デカいぞ! どうする!」
「バカ野郎! 机の下に潜るんだよ! って机がねぇ!」
ビィーーッ! ビィーーッ! ビィーーッ! ビィーーッ!
『地震が発生しマシタ。 落ち着イテ避難口を解放し、身の安全を確保して下サイ
地震が発生しマシタ。 落ち着イテ避難口を解放し、身の安全を確保して下サイ』
「身の安全ってどうするんだよ!」
「落ち着け! こういう場合の対処マニュアルもあるはずだ。 そうだよな」
「まあ、一応。 訓練とかはしてないのでぶっつけ本番にはなりますけど」
「あ…あぁ…助かった…」
「それは気が早すぎ」
「こう言った場合は第一にパニックに陥らないようにすることが先決でしてよ。」
「この建物は核爆弾が落ちても傷程度で済むように出来ていますから次の指示を待ちましょう。」
「そりゃそうだ、アイツが時間かけて作った要塞だもんな」
「はい。幸いにもここは1階の踊り場です。
靴をしまっているロッカーに近づかなければ、倒れてくるものはありません」
「おお、そうか。」
「慌てふためいて死人が出るくらいなら、揺れがおさまるか、次の指示が出るまで優雅にポーションでお茶会でもして待機していましょう。
ささ、カップをお出しになってくださいまし。」
チョロチョロチョロ…ピタッ
「あ、どうも」
チョロチョロチョロ…ピタッ
「あざす」
チョロチョロチョロ…ピタッ
「ありがとう」
地震の中で優雅にお茶会というぶっ飛んだ思いつきはかえってその場の騎士達の心に余裕を生み、
「フゥ~長い揺れですわね~」
「ラスボスが起きちゃったんじゃないか~」
「多分そうですね~」
揺れの空気をほんわかした雰囲気で満たしていた。
ピーンポーンパーンポーン
「次の放送っ」
「シィーっ! 聞こえなかったらどうするんだ」
「…悪い」
「【地震は止まっていませんが、これより転移魔法による避難を行います。
お手洗いや大浴場をご使用の方、自室で休まれている方は至急廊下に出ていただき、各主要施設、廊下ごとになるべく1箇所に集まって、転移陣が発動するまで待機してください。
繰り返します。地震は止まっていませんが、これより転移魔法による避難を行います。
お手洗いや大浴場をご使用の方、自室で休まれている方は至急廊下に出ていただき、各主要施設、廊下ごとになるべく1箇所に集まって、魔法陣が発動するまで待機してください。】」
「これは…このまま待ってればいいのだな?」
「それが正しいですわね。」
「そういえばジオラマモードにするのかな…?」
「ジオラマモード?」
「あ、これ言っていいんだっけ…」
「いいと思いますわ。 どうせ使うことになるのですし」
この拠点には第三騎士団とそれを支える者達を守るための顔が2つある。
1つが通常運営モード。 内側は俺の生産チートによる特製要塞とAIによる最強ネットワーク、外部を陸の結界とカメちゃんズ警備隊で固めることで、常に安心して過ごせる快適ないつもの拠点が持続できる。
もう1つがジオラマモード。
この拠点を地面ごとボコっと切り取り、地下に仕込んだ大魔法陣の力で敷地内にある建物ごとギュッと小さくして、陸の魔法空間の中にしまい込むモードだ。 ジオラマモードにしている間は機能できないし、人が中に入ることはできない。
ラスボスの大きなクラッシュタートルが暴れ出したり、シルヴィアの魔法を撃つ時、本当に手がつけられないなどのうちのどれかが起きる前提で、遠征が始まってからも頑張って用意していたのだ。
サイズで言うと敷地全体が1m四方くらいまでに縮小されるため、質量も同じ割合になり、大人2人もいれば運べない重さではなくなる。
別に陸の魔法空間に限りはないのだが、流石に建物を入れるには入り口が狭い。 だから小さくして中に入れ、もう一度大きくする必要があるのだ。
ちなみに馬達や一部を除く世話係はもう結界の中で、これまた優雅に人参やトウモロコシを食べている
「と言うわけでして、わたくしが怒りに任せて天変地異を起こしてもなんとかなるようにしてありますの。」
「想定に対して対応できすぎだろ…」
「ってかこんなにデッカい建物がそんなに小さくなるのかよ」
「槍や棒が長さ調整できるなら縦×横×高さの次元で同じことができる…そうです。」
そうこうしている間にスマホからいくつもの魔法陣が送られてきて、結果10人おきほどに先程まで草野球をしていた場所まで移される。
「【い~くよ~】」
外では次から次へと人が集められ、突然の地震の動揺が膨らんでいた
ザワザワ…ザワザワザワザワ…
ダァンッ!
『「!!」』
喧騒を打ち破る銃声が空高く鳴り響き、膨らんだ動揺が破裂したかのように1箇所に収束される
そこには白衣ではなく、見慣れた黒い上着の冒険者と制服姿の団長が並んで立っており、その表情が予定外に切迫した状態であるということを物語っていた。
「速やかに小隊、班ごとに集まって点呼を取ってくれ 全員いるか確認が出来ない」
「確認が終わった小隊長と班長は端末から報告してください」
指示のもと大勢が一斉に動き出す。
「わたくし達も」
「医療班は…いた!あっちだよ」
3分ほどできちっと整列され、人数の確認も速やかに終わる。
「皆、急な出来事に動揺しているかもしれない。
正直なところを言えば私も動揺しているところだが、今日この瞬間…我々第三騎士団と獣面騎士軍の共通の最終目標である、山亀相当のクラッシュタートルが目を覚まし…口を開き始めた」
『『「「!!!!」」』』
ラスボスが口を開けたというひと言で全てを理解した。
衝撃波の前兆、破滅へのカウントダウンが始まってしまった。と
「知っての通り、当初の予定はヌシを取り囲むように群れの縄張りを確実に殲滅し、減らすもの。
あらゆる武具や魔法道具、時に彼らの力も借り、邪悪な品種改良を企てた首謀者を追い詰める。 その作戦は想定よりはるかに短期間で進んでいた。
しかし、それがかえって身の危険を感じさせて叩き起こしてしまった可能性がある。」
また違った種のどよめきが広がる。戦闘に親しみがない裏方班の頭の中にも「そりゃそうなるわ」という納得の中に少しばかり呆れが混じった感情だ。
「本来なら1週間後くらいにこうなると想定していたが、早まってしまった以上一刻の猶予もない。
予定より早く、かなり強引な作戦になるが、これより!ワンス池に巣食う災害級のクラッシュタートル及び、品種改良を企てた首謀者を討伐に向かう!!」
またまたどよめきが広がる。
判明した情報は団長を通し、ほぼ全てを共有していたため、予想できなくはない。
だが、当初の予定の半分の期間で事が進み、順調すぎるどころか国の不祥事の尻拭いをほぼ完璧に済まし、果てには地震が発生したから災害級モンスターと今すぐ対峙するぞとなると、流石に気持ちが追いついてこない。
なんならさっきまで草野球してたわけだし。
「心の準備ができていないのも分かる。お前達の反応はいたって当然の事だ。
冷静を振る舞っているが、私や彼も相当焦っていて、参謀官達に状況整理を急いでもらっているところだ」
ここでさりげなーく医療班の方へ捌けてた俺に全員の目が集まり、かなり焦る
確かに俺も想定外のことでどういう行動が望ましいとか思考が止まりかけているが、俺より焦っているのはウチの頭脳と参謀間様の方だ。
『クソがぁ! マスターが作った武具や質の高いポーションを贅沢に使用してイル事で素のステータスが上昇するコトヲ忘れていマシタ! 未来を変えるトハ言っても限度があるデショウがクソマスター!!』
「唸れ獣面…吠えろ英雄…立ち上がる時は今来たる。
望まぬ再会に心、蝕まれるなかれ。 心の闇が真の敵とならん…頼れるのは己の正義と共の支えのみ…」
イヤホンを通して聞こえる声に苦笑いさせられながら、もう一度団長の隣を目指して歩みを進める。
「現状、地震による二次災害防止のため、この敷地内は土地を植物の苗のような形で切り取り、魔法の力で地面から浮いてる状態にあるため地震の揺れは特に起きていませんが、外に出れば話は別です。
今まで地面にめり込んでいた巨大な亀が地上に出ようと動いてるので、地面がひっくり返るくらいの事が起きていると考えた方が自然です。 当然陸路から馬に乗って行くことは不可能、走って行くなんてもってのほかでしょう。
総力戦にはなりますし、臨機応変な対応が常に求められると思います。移動にはフライボードを必ず使い、小隊ごとでの動きを徹底し、一撃離脱を心掛けてください。
皆さんはこの遠征で驚くほど強くなった、ここで今からやってきたこと、今からやろうとしている事を冷静に考慮しても、貴方達は英雄の集まりだと言ってもいい。
今夜はその力の限りを尽くして、全員で笑顔で帰ってきましょう!」
『「了解っ!」』
「最後に一点。皆さんはもうほとんどの方はご存知でしょう、俺たちがここにいる目的は裏方の依頼とは別で3つあります。
1つがクマさん…シルヴィアのこと、これらは皆さんの支えのおかげで、もう少しで達成できそうといったところでしょう。あとは戦場に出てからです。
2つ目がキツネこと、ケリーの戦い方を見出すことですが、これは皆さんの武器と同じです。
コタロー、皆さんにご挨拶を」
あ、そうそう、あの後いろいろ話し合って、刀の銘とは別で炎狐にも名前がついた。『狐太郎』←こう書いてコタローだ。
『各々方、お初にお目にかかり申すでござる
拙者、炎狐より生まれし存在、妖魔のコタローと申すでござる。
先日は拙者の未熟さが故に多大なる心配とご迷惑をおかけした事、心よりお詫び申しござる。
今はお師匠様の拵えにより存在が安定した故、少しでもお力添えできるよう本日は粉骨砕身するでこざる。なお、各々方のお足を引っ張らぬよう端っこの方で戦う所存につき、宜しくお頼み申すでござる』
シーーーン…
ポカ~~ン…
謎の沈黙が辺りを包む。 武器が獣の形になって人間と同じような思考を持っているのが信じ難いのかも。 匠や陸がいるのにまだ慣れないかね?
「とまぁこんな感じで、害はないですし、力になってくれるのでそのまま実戦投入します。
最後の1つが非常に重要でして、この事件の犯人と思われる男…オズワード・ヴィンセントを探し出し、やってきた事への法の裁きを下すことにあります。」
事情を深く知らない人達からパラパラと苦言が聞こえる。 何でそんなことがしたいんだとか、なんでコイツらが?とか疑念じみたものだが、無理だとか不可能だとか否定的な声は上がらない。
「もちろん、150人を超える大人数で行動する訳ですし、先に見つけたとか、手柄がどうとか気にされると思います。 それについては先に断らせて下さい、俺たちは金稼ぎで来ている訳ではありませんので、事態が事態なら多少の結果違いは仕方ないと思っています。
第三騎士団の皆さんは大勢の国民を守るため、俺たちは過去に決着をつけるための同盟につき、まず優先すべきは災害級の魔獣を無力化すること。 オズワード・ヴィンセントを含む賊の捕縛または死亡確認はその後でも構いません。
その代わり、報告・連絡・相談、略して報連相を常に行うようにして下さい」
目線で団長さんに引き継ぐと、返事の代わりに前に出てくれる
「これより相対する標的は、通常ならば全滅は免れない大敵である!
しかし、ここに集った心強い仲間が私達の背後をお守り下さる!
傷付き消耗したらば何度でもポーションを、腹が減ったら軽食を、物資が足りないとしてもリースから救援が届く!
地震さえなくなれば馬達や世話に従事している準騎士の力も借りられる!
隣には心強い冒険者達がいる!実力はみんな知っての通りだ!
他の騎士団がどうかなどここでは一切忘れろ!
ヌシ周りを無力化さえ出来れば他の有象無象の討伐や捕縛にどれだけの時間がかかっても構わん!
私や彼からの命令は共通してただ一つ、全員何がなんでも生き残れ!」
『「はっ!!」』
「20分くらいで出発します。
この拠点を一度小さくして、魔法空間の中に搬入してもう一回大きくしなければならないので、火の元は全て元栓から外し、冷蔵庫以外の装置はコンセントプラグを抜いて下さい。 バッテリータイプはそのままで結構です
列はこの状態でお願いします。騎士の皆さんはそれぞれの武器を持って集合して下さい。
それでは、準備を開始して下さい!」
『「了解!」』
全員が各方面に走っていく。
その背中は昔見たハイパーレスキューの出動シーンのようで、ここにきて2週間ちょっとの地震直後とは思えない手際で準備が整っていく。
20分後、全員が準備からトイレまで余裕を持って済まして出てくれたので、結界を全て解除、昼の事件現場でもある結界から堀までの間のドーナツ状の土地に全員出てもらう。
「じゃあ先生、皆さん、あとはお願いします。」
「ああ。 治療は任せておきなさい」
「帰ったら美味いモノ好きなだけ食わせてやるから間違ってコロっとくたばるんじゃないよ」
「何か困った事があったら私達にお申し付けくださいですぅ」
「行ってきます」
『「行ってらっしゃい!」』
仲間に見送られ、俺たちと第三騎士団は戦場へと飛び立った
飛び立つこと数十分、通常なら平地である場所がまぁまぁの山岳地帯に変貌している場所が見えてきた
『目標地点マデ残り』「流石に見えてるよ」
『言ってミタだけデス。』
『【皆サン、4体のラスボスについてご説明しマス。
山亀の変異種であるクラッシュタートルのまた最上位種、仮名称:破滅亀としマス。
4体の破滅亀はご存じノ通り、巨大で魔法にモ物理にモ強く並の装備では太刀打ち出来マセンが、急いで無力化しなければ近隣のエールテール、ベスガ、リース、クスピス、果てには王都が甚大な被害が出マス。
なお、破滅亀デスが…二足歩行で魔法攻撃する個体が確認されてイマス】』
「まじかよ…!」
「近頃のタートル様は立てるのかっ!?」
「こんなのに気づかなかったのかよ調査の奴ら…」
「文句言ってやらねーと」
「そのために倒すんだ、行くぞ!!」
剣や槍、杖や銃を構え、何個かの小隊ごとに散っていく。
「バオルド! ディートレイヒ! 」
「【獄氷監獄】!」
「【爆ぜろ、エクスプロージョン】!」
次から次へ軽々と上級魔法を打ち込み、1体を大勢で集中砲撃していく
「【燃やし尽くせ インフェルノ】!」
「【闇よ荒ぶれ ダークブレイカー・改】!」
上級魔法が使えない人達のアサルトライフルが狙う位置も悪くない。上下左右から目や首を的確に狙って打ち込んで、硬く厚いはずの装甲から血液の噴水が噴き上がる。
流石の災害級魔獣も痛みに悶えざるを得ない。
「よしっ、嫌がってる! このまま押し切れば」
「バカ! おととい死亡フラグの診断受けたの忘れたか!」
「あっヤベ! 無し無し! 今の無し!」
医療班、特にシータさんには『死亡フラグ』に厳重に警戒するように伝えておいてよかった。
死亡フラグは異世界モノでお馴染みの「この戦いが終わったら結婚するんだ」とか、「いや、ちょっと休めば大丈夫だ」とか数えればキリがないアレのこと。
理論的に解説するなれば、ファンタジー世界やゾンビ映画の世界でこれらの発した言葉は急激に運気を下落させ、なんやかんやで死に至る。ほぼ死病だ。万能薬エリクサーでも治療は不可能だと思う。
150人全員が生き残るには漫画やアニメでのお約束を徹底的に潰すしかない。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…
「間に合わないか…! 」
ピッ
「【こちら第4小隊、南はもうダメだ! どうしたらいい!?】」
「【充分です。 今すぐ退避せよ どうぞ】」
「【だが!ここで引いたら!】」
「【真上を見て同じ事が言えますか どうぞ】」
「【上…? なるほど了解した! 撤退する!】」
「総員退避ぃぃぃぃ!!」
「ヤベぇ急げぇ!!」
「こんのぉぉ!」
「早く早く早く!」
脱兎の如く散っていく騎士達、彼らが恐れているのは衝撃波では無い。
天気の急変だ
空高くから見下ろす少女は口角をあげ、今からパーティでも行われるかのような笑顔で拳から真っ黒い雲を放ち、夕焼けに照らされた月面を覆い潰していた
「ごきげんよう大きな亀様。
わたくし厄災の名を望まぬ形で与えられし弱者にございましてよ。 貴方様も平和に生きるべき人生を汚い手で穢され、踏み躙られて、さぞ屈辱ではなくて?
世界や運命への八つ当たりをご所望でしたら、その鬱憤のデカさでわたくしが正々堂々タイマンを貼らせていただきますわ!
あははははっ!今宵始まるはそんな災害級のバーゲンセールと厄災の血祭りパーリナイですの!
さぁ! ご遠慮なく盛り上がって下さいまし!!」
「【退避完了! いつでもいいぞ】」
「【了解しましてよ】」
少女に浮かぶ笑みは頭のネジが外れた父親の顔とよく似ていた。
見上げた騎士には計り知れないだろう、たった一つの望まぬ二つ名が少女の中にどれだけの爆弾低気圧を溜め込ませていたか
「【天空に集いし神々よ 我が怒りに応え、この拳と共に厄災の鉄槌を下す力を宿せ】」
空を覆い尽くす黒雲が1人の少女の拳に遠くの雲、またさらに遠い雲を巻き込み、魔法陣を通して巨大な拳を形成する。
「その哀れな運命に【厄災拳骨!!】」
力と思いのままに振り下ろした巨大な拳は、とてつもない轟音を立てながら大きな第一歩を踏み出すように山一つを完全に踏み潰した。
『Oh…ワンパンGirl…』
「愚かな者に汚されし魂よ…せめて来世は良き命運のもとに生きれることをお祈りいたしますわ」
「副団長、報告を」
「ああ…そ、そうだった」
ピッ
「【こちら副団長ゾース、南の山は討伐完了した。ただ…】」
『【その山はハズレでスネ。 中から生命反応と運気が検出できマセン。
細かい調査は後回しにしマショウ】』
「【りょ、了解】」
「次の山の応援に回るぞ! 1体倒したからとて油断はするな! この山が最弱だと思え!!」
『「おう!」』
一方その頃、領主邸では
「キャーー!! シルヴィアお嬢様ーー!! 素敵ですよーー!!」
「おお…! あの神々しきお姿! 天使様のようでございますぞー!!」
「私の愛娘 シルヴィアーーー! 貴方は私達の誇りよーー!! こっち向いてーー!」
相変わらず中継映像で盛り上がっていた。
「どうやったらあんなデカブツ、一撃で倒せんだよ…」
「それはお二人に似たからでしょう。 旦那様の怪力と奥様の細やかさがうまく遺伝して…」
「いや、そんな次元の問題じゃねぇ」
「と、言いますと?」
「あの魔法の拳の形が綺麗すぎるんだよ。 普通なら拳どころか、まん丸すら維持できねぇ。
儂の流星拳だって形まではこだわってねぇ。 こだわる余裕がねぇからな」
「それはつまり…」
「間違いねぇ。 今から国ひとつ相手取ってケンカふっかけても、アイツらに敵うやつはそうそういねーだろうな。
これから忙しくなるぞ、スチュアート」
「望むところに御座います」
戻って一方、東の山では
「【グリッタージャベリン】」
「【超グレネードボール】【奥義・千本ノック】」
「【九頭蛇の滅矢】」
ハァ ハァ ハァ ハァ
「急げ!これでまだ3割しか削れてない!」
「違いますよドルガンさん、ボクらだけで3割も削れたんです!」
「通常ならまだ1割も削れていないのです。3倍になっただけ上等でしょう」
「そうだな。 まだ行けるな!」
「諦めたらそこでコールド負けです」
「牙はまだ飢えてます」
「「「くらえ!!」」」
ボガァァァーーーーーン!!
「効いてくれてるといいが…」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…
「やっぱりダメでしたか…」
『撤退して下サイ』
「…了解。 みんな退避だ!」
『人妖一体、狐火抜刀術9尾10刀流のケリーとコタローいざ参る!』
「うっす! おれっち達の心に火が灯った時はもう恐れる敵はそこまでいない…はずっす多分!!」
白く小さな狐がケリーの後ろに周り、三回りほど大きくなって九尾の蒼い炎狐になってケリーの体へ入り込む。
「『【炎狐変化合装】』」
身体が青く光り、その上から武士の着物を模した炎がケリーの身体を包み、足の形が獣のソレとなる。
手元は青く光ったまま軽く籠手のようなものが着く。
そして前回完全に炎狐のものになってしまっていた顔は片方に寄っておらず、鼻から上を覆う白い狐の面を付けたまさに古い話に出てくる九尾の狐の2速歩行ver.だった。
『ヨッ お見事ッ!!』
『【創火抜刀でござる】』
上下左右あらゆる角度に向いた刀が現れて、それら全てがコタローの手中に収まる
『「いざ尋常に勝…」』
「勝負すんのはええけど、そのままやっても1発で仕留めるのは無理やで」
「タクミっち!」
「いくら火が強うても、加熱する面積が狭かったら通る熱も通らへんやろ
下処理はしといたるさかい、ちょい待っとり」
「陸! いっちょやったれ!」
「【お口をア~ンしてね~】」
カメ~~ カメカメ! か~め~
グググググググググ…!
広がった口に結界が入り込み、丸型結界は遠慮なくその体積を広げていく。 その体積は膨張をとどまることは無く、盛大にバキバキ…ついに耐えきれず顎があげれる最後の悲鳴が鳴り響いた。
ビューーーーーーーーーーン!!
「陸! もうちょい抑えとくんやで」
「は~い」
銀色の翼は結界と人間でいうところの口角の間へ入り込む
「お~臭っ 何年歯磨きしとらんかったらこんな不衛生になるんや
こんな役目押し付けたあのアホ、帰ったらしばき回したろ ほいっ」
ドサッドサドサドサドサドサ
アイテムボックスを開いて、あるものをばら撒き、それら全てを風魔法でまんべんなく口やら喉から粘膜に付着させていく
「出血大サービスや!【風刃・みじん切りスペシャル】!!」
スパスパスパスパスパスパスパ…!バシャァ! ドロッ…バシャァ! ドロッ…バシャァ! ドロッ…バシャァ! ドロッ…バシャァ! ドロッ…バシャァ! ドロッ…バシャァ! ドロッ…バシャァ! ドロッ…バシャァ! ドロッ…バシャァ! ドロッ…バシャァ! ドロッ…バシャァ! ドロッ…バシャァ! ドロッ…バシャァ! ドロッ…バシャァ! ドロッ…バシャァ! ドロッ…バシャァ! ドロッ…
「こんなもんやな あらよっと」
ビューーーーーーン
もう一度外に出て、またも同じものをばら撒く
「もういっちょ!【みじん切りスペシャル】!」
「何やってるんすか」
『さぁ…拙者にはさっぱりでござる』
ビューーーーーーーーーン キキキキッ!
「ほいお待たせ、ド派手にやったり!」
「え…いや、おれっち達は…」
『弱点だけを斬り落とす気でござって…』
「それでええんや。」
『「どういうことっすか」でござる?』
「お前らの鼻に聞いてみ」
「鼻?」
クンクンっ
「マジっすか」『正気でござるか』
「一応聞くっすけど…平気っすよね」
『例え大丈夫でござっても、自ら飛び込みとうはないでござるな』
「そうっすよね」
「『ハァ…』」
こればっかりは避けられないと分かり、2人の覚悟を半ば強制的に決める。
「スパッと決めてスパッと避難っす」
『合点承知でござる!』
フライボードを飛び跳ね、山亀の眉間の上を直接狙って急降下する。
『「とりゃぁぁぁぁあああああああああ!!」』
「『 【狐火流奥義 友情激アツ斬り】! 』」
青い炎を纏った10本の斬撃は厚い装甲を貫き、頭の内外に撒かれた物にその手を広げていった
「知っとるか? ファンタジーな世界ではマヨネーズってアホみたいに燃えよるねん。
料理酒とサラダ油を一緒に燃やしたったら尚更なぁ」
『タクミサンの料理スキルは神々が後天的に与えたチートの一つデス。 味の向上だけでなく攻撃力にも転用可能デス』
「すご~いね~」
「良い子は食べ物や調味料を粗末にしたらアカンで。 火遊びはもっとアカンで」
『ギャァァァ!燃えてるでござるぅぅぅ!!』
「その燃えてるのはコタローの火っすから」
『おう、そうでござった。 心頭滅却すれば涼し、火は火をもって制すでござる』
「急いで防御形態っす!」
シュボ…ボォォォォォ ボガァァァーーーーン!!
青い炎と赤い炎は引火爆発を引き起こし、脳を貫かれてほぼ即死の大亀にわずかに残った復活の可能性をも逃さず奪っていく。
「デストロイタートルの頭の素揚げ完成っていうてな」
『「死ぬかと思ったっす」でござる…』
「まるこげ~ おいしくなさそ~だよ~~ぅ」
「【こちら第5小隊、東の山討伐完了。 こっちもはずれです】」
西の山では、他の山より5割り増しのデカさに難航していた
「オイオイ…この山どうなってるんだ、オークロードまみれじゃないか!」
「こっちはゴブリンキング、ゴブリンクイーンにゴブリンナイトがいるだけでなく、伝説にしかいないとされていたゴブリンサタンとゴブリンセージ、ゴブリンヒーロー、ゴブリンプリースト…魔王に賢者に勇者、神官までがゴロゴロと…!」
ズダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ…!
ジャラジャラッ ジャラジャラジャラッ
ブゥォンッ! ブゥォンッ! ブゥォンッ!
ジャギンッ ジャギンッ ジャギンッ ジャギンッ
「オラオラオラァァ!ヒャッハハハァァーーー!
血祭りサイコーだぜぇぇぇえええええええ!!」
「ギルの動きが気分次第過ぎて狙いがつけにくいっ
やっぱこいつ連れてこなかった方が良かったんじゃ…」
「そんなことオレにはできん。 明日以降の命が持たんからな」
「それに、奴らの魔法攻撃が無視できない。 闇属性の上級魔法や神聖魔法を使ってる」
ズダァンッ! ズダァンッ! ズダァンッ!
「簡単だ。 わざわざ前に出る必要はない、ギルを全力で援護してればいいだけだろ。」
「お前は遠くからでも魔法が届くからできるんだよ!」
「そうでもないぞ。 少し頭を使えばいい」
チャキッ…
「【氷河侵蝕弾】」
ズダァンッ!
ガキガキガキガキーーーーーン!
銃声と共に放たれた氷の球は左の眼球を打ち抜き血飛沫を上げる。 その血飛沫は秒読みもしないうちに結晶と化し、そこを起点として爆発的なスピードで氷地帯に。
「すげぇ…一撃で…あの面積を凍らせた…」
「モタモタしてる暇はないぞ」
「そうだっ 状態はどうなってる!?」
「温度が上昇している。 他の亀に置き換えると衝撃波の3分前だ、氷も長く持たないぞ」
「そうだった! お前ら今のうちだ、ぶち込めえぇぇぇぇ!」
3分と告げられた短い時間の中で、撃てるだけ撃ち、斬れるだけ斬る。 魔力が尽きるまで削りに削るが
「どういうことだ!」
「ものすごいスピードで再生してやがる!」
「マズイ…これ以上は間に合わないぞ」
「ガハァアッ!?」
「ギル!」
「硬すぎる…なによりデカイ…まだか団長!!」
地面にザシュッ
「太陽の光を聖なる焔に変換する剣…まさか本当に使うとは思わなかったな…」
「我が名はカトレア王国 第三騎士団 団長、フォンドバーグ・デミトラス。太陽より授かりし神々の力の片鱗よ、この剣に救済のチャンスを与え給え。
そして、願わくば王の矛となり民の盾となる正しき者達を災いより御守りくだされ
【神聖なる太陽】」
魔法剣に魔力と願いを込めるとそれに呼応した剣が反応し、白く眩い灼炎を流し込み、突き刺した先に太陽を創りだし、夕日から力を受けた『神聖なる太陽』が肥大化をするごとに亀から生命力を取り上げていく。
「よし…このまま行けば…」
2分かけて倍から倍に大きくなっていく太陽の成長が次第に止まってしまい、剣本体の輝きが少しずつ衰えてしまう
「夕日が沈み始めてる…!? 待て待て!まだ沈んではならない! 頼むっもう少し頑張ってくれぇ!」
フォンドバーグの願いも虚しく、空は陽の光を維持する力を失い、聖なる太陽も直径約1mも保てなくなる
「そんな…これ以外に手は無いというのに…」
「それは昼間用で今は夕暮れ時だぜ? 持ってく剣まちがえてんぞ ダンチョ」
「え…? て、テーリオ!?」
「よっ」
ザシュッ
「それは…月光剣 どうしてお前が持ってるんだ!」
「いろいろ知ってんのがダンチョだけだと思うなよ?
お届けもんだ。サインはオレのボーナスに一口頼むぜ」
「ハァ…それは額の交渉は可能か?」
「さ~て、どうしよっかな~ サインがもらえねーなら、元んところに戻しちまおうかな~」
フッ…
「分かった。 約束しておこう。」
「聞いたかんな! 言質!言質取ったぞ」
『録音完了。 言い逃れはできマセンよ』
「2人がかりでちゃっかりと…まぁいい、私は裏切ることをしたくない。ただ、受け取りたくば」
「いいぜ、手ェ貸してやるよ。」
スポッ チャキッ
言うや否や太陽を模した剣の方に手を置き、引き抜いてマジマジと剣を眺める
「何やってるんだテーリオ! 今そっちの剣は」
「ダンチョは知ってるか? 月が光ってる理由」
「?」
「太陽ってのは光を出してるが、月ってのは石の塊で光っちゃいねーんだ。
太陽が出してる光を弾き返して光ってるようにオレらには見えてるって、昔じいちゃんが教えてくれたんだ」
「それが…なんだっていうんだ?」
「分かんねーか? 月が光ってるなら、太陽も光ってねーとな」
「…そう言うことか!」
「だから、頭カタくしてねーで…フンっ!!」
ボォォッ!
月闇に光るはずのないという太陽の剣は、そんなの構いなしに眩い炎を放ち、それに共鳴した月光の剣も落ち着いた夜の輝きを放つ
「2本揃えば使えるということか」
「アイツがそんな使い勝手の悪いもんを作っても、使えねーまま渡すことはねーからな」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…!
『残り時間30秒を切りマシタ』
「いくぞ」「はいよ」
「【神聖なる月】」
ザシュッ!
「えーっとえーっとえーーとなんだっけ…まぁいいや、オリャーーーーッ」
『詠唱めちゃくちゃデスね…』
恒星と衛星を模した2本の魔剣と、通常の運命なら出会うはずの無い2人の騎士が並び、強い力でたくさんの未来を紡いでいく
「「うぉおりゃぁぁぁぁぁぁああああああああああ!」」
「はぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああ!」
太陽と月の光から膨大な魔力に変換することができるチートじみた剣にも副作用がある。 変換に装備者や外部出力から魔力を要することだ。 勇者が持つソレと比べても破格の低燃費とはいえど、チートをその身に宿している訳でもない彼らには少々重すぎる魔力消費なのだった
「限界なんて気合いで超えてやる! オレぁ騎士になった職人の孫で狩人だ! アイツとじいちゃんから教わったモンを全部活かしていろんな奴らと一緒に笑える明日を」
「私は国民の盾となり、明日も来年もそこから先も騎士として多くの国民の明日を!」
「「創るんだ!!」んだよ!」
『生命活動の停止を確認しマシタ』
ハァ…ッ ハァ…ッ ハァ…ッ ハァ…ッ ハァ…ッ
「ま、間に合ったのか…?」
『ハイ。 討伐完了を確認しマシタ。 残すは総本山の1体デス』
「そうか…よ」
ヘニャヘニャ…
「この剣、とんだ馬車馬じゃねーか。
ヤッベ…力もってかれすぎて、もう体力も魔力も残ってねぇ…紐も引けねーわ。 ダンチョ、頼んだ」
「全く、手がかかる部下を持つと肝が冷える。 いくぞっ」
グイッ!
ホワンホワンホワンホワンホワンホワンホワンホワン…
グイッ!
ホワンホワンホワンホワンホワンホワンホワンホワン…
「ハヒョーーッ やっぱポーション風船を考案したオレって天才だな!」
フッ…
「バカとハサミは使いようという言葉はお前のためにあったんだな」
「あ“あ”ん!?」
ははははっ
「でも、よく来てくれた。本当に助かった、ありがとうテーリオ」
「べ、別にっ オレぁアイツに出会う機会をくれた借りを返しただけで、ダンチョを助けに来たわけじゃねーしっ! 変なこと言ってんじゃねぇ!」
「そうか、なら」
2人の視線に映るのは、普段仲がよくないとはいえどギルドと騎士団が総力戦でかかる魔王ゴブリンや魔王オークとその配下、その数は何千。 それらは外敵2人を確認するやいなや致死率の高い魔法を容赦なく放つ。
「数はざっと50が2個。 見事なまでに囲まれてるぜ」
「もう一つ変なことを頼ませてくれ」
「しゃーねーなぁ。 死ぬなよ!」
「ここまで手厚くされて死んだ時は、我が家の末代までの恥だ!」
『他の3体は討伐完了、残るはマスター達の担当デス』
「分かってた。 だって…こんなの出てきたんだから」
俺たちの目線の先にはなんと怪獣映画のレジェンド的存在であるガメラ様。
これまで出会った衝撃波ワニガメに始まり、集団戦闘に特化しているオークやゴブリンの中でトップレベルの個体を掛け合わせて生まれた最強の個体。
その威力は凄まじく、フライボードで空中戦を挑んでいる小さな生物に対して手かからとてつもないエネルギーを放ちながら暴れ回る影響で、板から振り落とされていく騎士たちが見える。
落ちてる彼らは肩の紐とトランスリスポーナーが機能をフル発揮するから、地面に叩きつけられて死ぬ前には回復と強制転移が済んでいる。
おかげで一瞬のうちに俺とフィエリアとティー兄以外、この辺がもぬけのからになってしまったが…“その方が都合がいい”
「やっぱりこの山が当たりみたい」
「大丈夫。 準備も覚悟も、できてるから」
「いくよ」
「うん」
アイテムボックスから模型サイズの船を取り出し、船尾にあるスイッチを押し込み真上に掲げる。 船は浮かびながら、ズンッ! ズンッ! ズンッ!…と複数回に分けて巨大化していく
巨大化が完了すると、光が放出されて身体が船内に吸い込まれていく
「うっひょーーーー!! なんすかあれ!!めちゃくちゃイカす船きたっす!」
『黒船でござる… 』
「デケェ…! アイツ仕事の片手間にあんなの造ってたのか!」
「あれ王都で騒いでる飛行船どころの話じゃないぞ」
「ああ。 飛行船の話を聞いてもあまり興味なさそうな顔をしてたわけだ。」
『飛行戦艦 NOVA 発進しマス』
大きな轟音を奏でながら天空遊泳を始める。
『からノ、【天空変形】』
巨大な戦艦が起き上がり、至る所が分割、変形、分割、変形そして合体、合体、合体!
『完成! 魔導騎士 X-NIGHT-NOVA !』
「んお? うわ、なんじゃありゃーーー!?」
ググググ…ピュンッ ズバッ
「すげーぞダンチョ! デッケー騎士だぜ、あれ見てみろって!」
「【月光幻想斬】!
あぁ…テーリオ、気持ちは分からんでもないが今は勘弁してくれっ 今の私たちは窮地も窮地だ!」
「なんでぇ ノリ悪いダンチョ コンチクショッ!! 邪魔だゴラっ!」
ズバッ バシュッ ズババッ
『キタキタキターーーッ! 巨大怪獣に対するモノと言ったら巨大ロボ!
子供の…否、夢を持つ全ての人達の願いを今ここ現実ニッ!!
パーツの細部までこだわった外装…一切無駄のないプログラム…そしてそのロボの操縦するのは日夜共に支え合イ、苦楽を共にした仲間達…!
マ、マァ…ヒーロースーツが未作成なのが不満に残るところではありマスが、問題無しッ!
ナゼならヒーローが初変身する第一話には必ずシモ巨大ロボへ合体・変形するべき特殊ビークルや機械獣達は、物語の都合上、先に造られているのダカラ!』
「今そういうメタ情報いらないよね!?」
『オッと失礼。 デハ、バトルを開始しマス』
左手に構えた盾から剣を抜き、暴れ回るガメラ君と真っ向からぶつかり合う。
「ブレストキャノン…発射」
「【ギア・ブースト】」
『【ブースト魔法を機体ヘ直結】魔力の回転率300%を確認。 異常ナシ』
「いけぇぇぇぇえええええええええ!!!」
「容赦ないなフィエリアとティー兄。 俺も急がないと」
あ、戦艦に乗り込んでると思った? 残念、違うんだな。
そして、お前何やってるのって思ったそこのあなた、今すぐ俺の武勇伝を見返してきなさい。
俺は今、ゴツゴツとした開発一つされていない荒地に真横を向いて生えた木から木を飛び移りながらあるところを目指して移動中。 現在地は大きな魔導騎士様が相対しているボスの背中にして総本山。
つまり二足歩行しているガメラ君の甲羅にあたる土地だ。
なぜこうしているかというと、当然といえば当然なのだが、破滅の始まりを回避すると同時に、敵の退路を絶っておかなければいけないからだ。
このガメラ君の基本構造を大まかにいえば戦隊ロボットのコックピット、この現場でいうNOVAの操縦席と同じで、ガメラ君の動き全部を操っているコックピット兼アジトがある。
また、だいたいこういう敵のアジトには自爆装置がつきものであるというお約束のもと、お馴染みの職人の目になって探ってみるとアジトには自爆装置こそついていないものの、ガメラ君を制御する装置が故障していることが判明。
制御している装置はガメラ君の脳に直接電極を繋いで、単純な電気信号を送ってコントロールをするもので、当然刺すところを間違えれば大変なことになるし、制御するには相当複雑な工程が必要になるが…どうやら、ガメラ君の苦痛まで考えるほどまでに、こんな兵器を作った主は思い至らなかったのだろう。
ま、要するに、ガメラ君は手がつけられなくなっている状態ということで、緊急でガメラ君の甲羅と脳に埋め込まれたアジトと制御装置の剥離&切除手術をしなければならなくなったってわけ。
「【探査】【物体認識】【鑑定】」
ありゃぁ…この亀さんエゲツないほど品種改良されてますやん…
人間とサルが99%、人間と猫が90%、人間とバナナの60%の遺伝子は同じと何かの記事で見たことがあるが、この亀はその理論をまま詰め込まれた個体だとわかる。
人間、オーク、ゴブリン、その他諸々の遺伝子を人工的に交配させてばら撒いたのだろう。
シルヴィアが倒したのがおそらく最初の成功例で、クラッシュタートルの始祖様といったところ。
ケリーが倒したのはそこに繁殖力を高めたビッグダディもしくはビッグマミィ。
団長さんたちがいる個体は、甲羅からとんでもないネームドがバーゲンセールのように生まれるようになり、手に負えなくなってしまったか、ガメラ君と同じように軍団として操れる術があって放置しているのか、詳細は犯人のみぞ知るってところ。
そして俺がいるガメラ君こそ本命というわけだ。そしてなんやかんやで今に至る。
「ヤバいな…これをただうまく切除に成功にしてしまうと、ガメラ君が軽快身軽になる。そうすると押してた巨大戦が互角に近づくな…下手するとそのままグシャリだぞ」
『バグが見つカッたゲームの修正ヲする容量デ、変異シタ遺伝子を書き換えてみるノハどうでショウ』
「変異種から元の種に戻すってことか…!」
『ゴムの木をそこらの木から創り出したマスターなら可能なはずデス。 アジトは甲羅の中、ポータルをハッキングしテ、リクサンにえぐり取って貰いマショウ』
通常の森亀、島亀は温厚な性格。 確かにこの状態より話せる可能性はある
「よし…それでいこう。 遺伝子学やバグに関する知識を検索して」
『了解。 …完了 【マスターにインストールしマス】』
魔獣の進化と変異進化は人間で言うところのプロの武道家とマフィアのボスくらいちがう。
初めはまっさらな赤ん坊でも、親、友人の人間関係が複雑だったりすると人間はその影響を受けた種の力を求めるようになる。
人に優しくするよう丁寧に教えられた子供は誰かのために知恵や力をつけることが出来る。力を使う場所と使わない場所を見極めて判断を下すことが出来る様になる
それに対し、育つまでの段階で不具合が生じると、私利私欲のために凶器を求め、自己肯定感のためには躊躇なく人を傷つけ、その凶器を手放せなくなる。
俺はその正しい治療法なんぞ知ったものではないが、心に癒着する凶器を手放させ、心に寄り添う力を持っている。
変異進化という病気を治療するには…
「【神々より授かりし創造の力よ、人々を癒し守る回復魔法よ…今こそ手を取り合え クリエイトヒール】…」
一つの生命というシステムに入り込んだバグを修正するように、遺伝子に加えられた異分子と変異した遺伝子を片っ端から削除、影響の出ていない元のプログラムを培養して復元・上書きしていく。
あ、当分景色が変わることがないので、ここでアジトの中の様子をお見せしよう
ガチャガチャガコガコっ
「クソッ クソッ クソォ! 動け! 殺せ潰せぶっ壊せ!!
忌々しい騎士団め…!! なぜ私の崇高なる計画を拒絶する!
私はこんな鬱陶しい国を浄化して一から再構築する王に…いや神になるべき男だぞ!」
『神様なら物語の進行で困らないワンパンで倒されないラスボスを寄越して下サイな。』
ビクゥッ!
「誰だ!」
男が振り返ると、数人の人影があった。
その中の2人にはどこかで見た面影があった。
「姉さん…! ら、ランノール…!?
どうして…貴様はもうすでに死んだはず!」
「確かにパパとママは…あなたの身勝手な理由で命を落としましたよ。 けど、僕の心にちゃんと生きてる、あの日の最後の言葉と一緒に。」
「まさか…貴様」
「ランノール・ヴィンセントの娘、フィエリアの遺体が見つかっていないことを忘れちゃったんですね」
「ごきげんようゴミおじ様、エミリ。・ダルセンの娘のシルヴィアにございますわ」
「お…おぉ! 愛する我が姪達よ! こんなところまでこの私に会いに来てくれ…」
ダァン! ダァン!
狭い空間にけたたましく鳴り響く銃声
「き…貴様ら…この私に何をする!?」
「黙れ、お前にしゃべる権利はない」
「わたくしの叔父は10年以上前に2名とも亡くなりましてよ。」
「何を言って」
ダァン! ダァン!
2人の親戚は男を人間として見る目をしていない。その視線の矛先が本当に人間ではなくなっていたから。
「どうやら気付いてないようですね。 自分が人として死んでいることに」
「きっと鏡をご覧になったこともないのですね。」
「お前達何を言っているんだぁ? そうか!役に立つ神である私を見て、人間を超越したオーラがお前達の思考に追いついていないということか!」
『診断成功しマシタ。 個体名:オズワード・ヴィンセントはゴブリン、オーク、クラッシュタートルの遺伝子の侵食を受け、アンデッド・ヒューマン・キメラへと変異進化してイマス。』
「アンデッド…キメラ…? 愚かな人間どもは、神を神として認識できないようだなぁ!
姪達よ無知なる愚民どものいうことを信じてはならんぞ、信じるならこのわた」
ダァン!
「ガハァアッ!?」
ハァッ ハァッ ハァッ ハァッ ハァッ
「貴様らぁ…神である私にこれほどの所業が許されると思っているのか!」
「でしたらお望み通り鏡をご覧になって下さいまし」
『【ミラージュ・ミラー】』
そこに映っていた男の姿は、肉はほぼ全て朽ち、人間とは到底思えない醜い姿をした人体模型と骸骨を足して3でかけたような化け物だった。
ガクッ ガクガクガク…
「これが…これが私の姿だと…? …ーー…るな…ふざけるな…ふざけるなふざけるなふざけるな!!」
「あなたは魔獣になり果てたんだ。
家族の命を奪い、大勢の人のために使われなければならないお金を横領し、奪ってはならない人権を弄び、世界を敵に回した。 だから死んだんだ。
身も心も、存在が全て、獣のそれに堕ちた。」
「黙れ…黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ!!
違う…違う違う違う違う違う違う違う違う!!
私はこの世界の全てを統べる…神ダァアアアアアアアアアアアアア!!」
「うわっっ!!」
「なんですの…っ」
『【リクサン!!】』
外に出ると、大量の骸骨やさっき倒したばかりのガメラ君2、3、4号を中心に屍たちが禍々しくおどろおどろしい地獄絵図が広げていた。
「我がシモベ達よ! 時はキタ!今こそ神を陥れた人間に復讐し、この世界を我が物にスルノダぁぁああ!!」
シュンっ
「ダンチョ…生きてっか」
「ああ…なんとか」
「ギルは」
「これ着てて死ぬと思うか? 刻むぞ」
「返事が怖ぇって」
「団長!テーリオさん!ギルさん!大丈夫ですか!?」
「ああ、すんでのところでなんとか転移してくれてなんとかな。 しかし、何が起きたんだ」
「分かりません…なんか急に人型の何かが出てきたところまでは映像で追えてたんですけど…
その前に皆さんが転移で一気に来ちゃって、流石に対応が…」
「リョー殿達は…? 見当たらないぞ!」
「彼らはまだ外にいる。」
「急いで容器の交換をしてくれ! あんなのが世に放たれたら確実に人類が滅びてしまう!」
「そうでも…無い」
「参謀官殿!こんなアンデッドのスタンピードと言ってもいい状況で、いくら彼らでも」
ニヤァ…
「邪魔者が居なくなって好きなだけ暴れられる。
獣面騎士軍の本領発揮」
『「シータがニヤけた…!?」』
「先輩…ファイト」
「【伸びろ!ニョイ棒銃!】【ギア・ブースト】」
「【黒雲魔装】」
「『【炎狐変化合装】』」
ピッ ピッ
「ティー兄、1人で操縦ありがと。 機体の操縦もらうよ。 地上をお願い」
「ん。」
「さ~て、ショータイムだ」
ガコッ!
操縦席の舵輪の向きを90°押し上げると、下からキーボードと操縦桿、無数のスイッチ類が出てくる。 戦隊お馴染みの舵輪やデッカい水晶ひとつでロボットが操れるご都合仕様はウチのAIが賄っているものだ。
それをマニュアル操作に切り替えて
ガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャ
カタカタカタカタカタカタカタカタカタっ
カタカタカタカタカタカタカタカタカタっ
カタカタカタカタカタカタカタカタカタっ
カタカタカタカタカタカタカタカタカタっ
カタカタカタカタカタカタカタカタカタっ
グイッガコッガコッ
「行くぞ! X-NIGHT-NOVA!」
背面のブースターパックが開き、超高速移動。ガメラ君3号をノーモーションから蹴り上げる。 蹴り飛ばされた3号君は黒焦げの2号君にGOAL!
すぐに高速移動で近づき、首を一振りで落とす。
慣性の法則そのままに、元から満身創痍の4号君を叩っ斬る。
少し離れてかっこよく決めポーズ。 からの…
ドカーーーン!!
『地上に中継を繋いでみまショウ』
「【ギアガトリング】」
ぐルルルルルルルrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrr…!
ズダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ…
「【狐火りゆ…」
『こないででござるぅぅぅぅ!!!』
ずばばばばばばばばばばばばばばばばばばばっ!!
「どっせぇい!」
ドーーーーーーーーーーーン!
周りからも集まり、魔獣の数は千をゆうに越しているのに関わらず、バッタバッタと消し炭になっていく
「…【ハバネロ大進撃】」
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!
ギャァァァァァァァァァァァアアアアアアアアア
『サァ、皆サ~ン 必殺技行きまマスよ!!』
『「了解!」』
『【激獣拳 ゲキ技 咆咆弾】』
「ワキワキのニキニキですわっ」
『【FULL CHARGE】』
『拙者たちの必殺技パート2!でござる』
『【デュアルクラッシャー ミキサーヘッド】
【デュアルクラッシャー ドリルヘッド】』
「…GO」
「【超忍法・影の舞】」
ズバっ バキッ バチコーン!
「せい、バイバイ。
…これで合っているのでしょうか?」
『モチです♪ シュシュっと参上、人も知らず世も知らず、影となりて悪を討つ。そんな戦隊の名台詞デスから♪』
「あとはあなただけです」
「何故ダ…神である私の眷属達が人間如きに負けルコトなどアリエナイ!」
「あなたは神なんかじゃない。 ただの犯罪者です。
身勝手な理由でパパやママ、父さんの仲間達、奴隷狩りで奪った人たちの人生、あなたが作った魔獣に殺された人たちの命…全部償ってもらいます」
「待て! 我が姪達よ、私の元に来い!
お前達も恨んでいるのだろう! 身分や欲にまみれた一部のクズどもが! 弱きは虐げられ淘汰されるこの世界を!
私とそんな世界を破壊し尽くし! 争いの起きない新たな文明を作り直そうではないか!! 神の恵みを与えてやろう!!」
「そんな恵みなどなくても、僕はあなたの理想なんかより温かい光を知っている。 ましてや親の仇の言葉に貸す耳はありません。
人間としても衛兵としても」
「わたくしもパスですわ。 どんな時もわたくしの心を覆う黒雲を晴らしてくれる太陽にようやく出会えたんですわ! もうすぐ虹が見えそうなところなのにこれ以上わたくし達の心を荒らさないでくださいまし!」
「自分もダルセン家に仕える者として、あなたを許しません」
「あ、おれっちは部外者なんで助けを求めないでほしいっす」
『以下同文でござる』
「…同じく」
『フィエリア、あなたの手で仇を取るのデス。
被疑者は王国で指名手配が掛かっていマス。 人間としての理性も失ってイル以上、残念デスが話をして反省する相手ではありマセン。』
「分かってる。 でも、僕は衛兵として法に則った刑罰を下したい」
『了解。 デシタラ、【~】コレで参りショウ』
「アンデッド・ヒューマン・キメラ、オズワード・ヴィンセントさん。
15年前の殺人の教唆及び、魔獣の違法飼育並びに国家転覆を企てた罪で、ジャッジメント!」
「待テ、ヤメロ! 神である私ヲこの世から消し去ってはナラナイ!」
『犯罪者に対してハ、この世界のポリスの要請ヨリ、遥か銀河の彼方にある宇宙裁判所…ではナク、魔法空間の中にあるサーバーから直接判決が下さレル』
画面に映った判決は❌
『デリート許可 』
「(了解…」
『【パトエネルギー全開】』
『「【ストライクアウト】!」』
「私は…わたしは…かみ…だ…」
「ゴッチュー…」
己の欲に支配され、死霊と成り果ててしまったオズワードと彼が築き上げた計画は、正義と獣面とオタ道の圧倒的な力の前に塵となって消えた。
眷属と呼んでいた魔獣達も、体勢を立て直した第三騎士団の夜通しの作業により、確認できる限り全て討伐され、ワンス池は卵一つ残らない空っぽの平原となった。
「リョー君…盗賊の方はどうだった?」
「身元の確認ができる遺体は見つからなかった。
抜け殻みたいに衣服が倒れてたところと、人の影だけが残ってたところから見るに、身体と魂をアンデッドに成り果てたオズワードに喰われたんだと思う。
オズワードの身体1つにまとまった分、一撃で仇を取れたことになるかな」
「そっか…」
「これ」
手のひら大の飾りが1個ついたボロボロのペンダントを差し出す。
さっきオズワードの立っていた場所で拾ったものだ。
「これは…?」
「ここが開くようになってるんだ。 開けてみて」
ペンダントの飾りを開くと、中には小指の先ほどの小さい魔法石が3つ、逆三角形になるように固定されていた。
「上2つの魔法石からそれぞれ別々の魔力がこめられてる。 魔獣や自然のソレなんかじゃない、人間の魔力。 君が生まれるタイミングに合わせて作ったものなんじゃないかな。
下の一つが、フィエリアの魔力、あと2つはご両親。 フィエリアによく似た優しい魔力と勇敢な魔力だ。
どんな困難があっても、3人で力を合わせて乗り越えようっていうおまじないが込められたペンダントなんじゃないかな。」
「パパ、ママ…僕、仇とれたよ。」
「依頼の目的達成ですわね」
「ケリーはコタローという心強い相棒ができて共通の強さを見つけたし、シルヴィアは久しぶりに外の世界と少しだけ触れることができた、フィエリアもご両親の仇をちゃんと討てた。
あとは、」
俺達の目的は果たした。 正直いえばこのままで軽く宴会してバイバイといきたいが、あの拠点には最後の仕事が残っている。
全員でため息をつき、全員が魔力切れでフラフラな足取りで温かい仲間達の待つ要塞につながる空間魔法のゲートをくぐるのだった。
エールテールの各ギルドや貴族の動き、学園に関する供述やその他諸々を洗いざらい吐かされた後に、ありとあらゆる怖~~いことをされ、ちょっとしたアクセサリーを土産に受け取っていただいて丁重に返り討ちとした。
現在、午後の殲滅作業が中止となり、帰って行った鳥系従魔とその仲間達からの逆襲に備えて全員が待機中だ。
まあ、待機と言っても結構な自由時間な訳だが…
「ん~… ん~…」
「どうしたんですか?さっきからずっとそんなですけど」
「なんだろーな、煮えきらねーやり返しっつーの?
なんかこう…スカッとしねぇやり方だったな~ってよ」
「仕方ないですよ。 向こうも精いっぱい見栄を張るために必死なんです。
いくらある程度の権限を持つ騎士が3人もいるとはいえ、ギルマスからの命令書を無視して、その場で死罪にするわけにもいかないでしょ」
「けどよ~、ケンカ売られて買わねーのは負けを認めたようなもんだろ」
「大丈夫です。 コレ見てください」
「ん?」
パソコンを前後逆にして、見るように促す。
そこには人の大まかな3Dモデルが映されていて、背中には刺青のように描かれた魔法陣、両手首には特別なブレスレットがついている。
「なぁ、これってこないだのどれーにするための首輪を外れなくする部品だよな、アレそのまま付けたのか?」
「さすがテーリオさん、よく分かりますね」
あれだけのことをされてお土産をタダで渡すはずがない。
今、泡を拭きながら気球に乗っている彼らがつけているブレスレットには、第二騎士団長が犯行に使っていた首輪の留め具を硬くロックする部品を付与だけして流用し、おしゃれと引き換えに絶対に一生外れないブレスレットとなっている。
背中に刻まれている魔法陣にはなかなか趣味の悪い術式が使われており、相当魔法陣に精通していてもほぼ認識すらされないだろうし、アクリルキーホルダーで言うところの絵柄をレジンで固められた状態にあり、通常の手段での解除は実質不可能だ。
ブレスレットにしたのは、首輪だと奴隷取扱法のガイドライン的に後々よろしくないからとアドバイスをもらったためだ
「この間の首輪は中の紐が急激に縮んで首が絞まってしにいたる物でしたが、こちらとしては死人が出るのはマズイので、地獄に堕ちたまま生きてもらう仕掛けをいくつか仕込んでおきました。
取り除こうったってそうはいきません」
「仕掛けってなんだよ」
「装着者が喋ろうとした場合と、周りの人がシルヴィアや俺たちに直接つながる言葉を感知すると、広範囲の人や動物の全身が焼けるように痛く感じるんです。
外そうとした場合や自ら命を絶とうとした場合もそうですね
あの4人はもう一生喋ることを許されず、装着者とその周りには不幸が起きるように仕立てて欲しいと発注されまして」
「仕打ちがスゲェな…ほとんど呪いの魔法道具じゃねぇかよ」
「こうでもしないと牽制になりませんからね…」
「けんせぇってなんだ?」
「え~っと…”もう来るなよ“、”関わるなよ“っていう隠れたメッセージを4人に取り付けて送ったんです。」
「…へぇ…」
「まだ分かってませんよねその返事…」
目が点になるというか粒になった時は理解できていない時の顔だ。 こうなったこの人に何を教えても頭には入らない。
「あ、そうだ。 テーリオさんこれ」
「ん?」
そう言って俺はあるものを手渡す。
ゴツゴツした木目、子供が持つにはなかなか太く感じる持ち手、分岐して伸びるツノとそこから伸びる細い両腕、両腕が持って支える革素材は垂れ下がりながらもいつでも石コロを弾丸へ変貌させる力を秘めている
「…じいちゃんの形見…! すげぇ…ぜってー元通りには直んねーと思ってたのに…」
「遅くなっちゃってごめんなさい。 完全再現するの、結構手こずっちゃって」
「…」
言葉にもならないと言うのはこういう時にも使えるのか、目に涙を溢れさせ、気持ちのいい男泣きが始まった
「ここら辺じゃいない種の蛇が素材だったのと、合間合間で記憶映像から全部再現するのが時間かかって…」
「いいんだ…ぞんだど(そんなの)ずぇんずぇん(全然)…あうぅ…じいぢゃん…」
「無事に直ってなによりです。」
「ああ…ありがどよぉっ! おめぇサイッコーだぜっ! 恩人だぜっ! 神様だぜっ!」
「大袈裟ですって…」
「うるぜぇ! この恩はゼッテー返ずがんなっ!」
ははは…
「物はいつか形を失いますが、今のあなたならそんな必要はない。 なぜなら」
「ああ。 オレぁサイキョーの狩人でありながらじいちゃんの孫で、オメェの弟子だからなっ」
ブフーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!
咄嗟に横を向いて、飲んでた水を派手に吹き出してしまった。
確かにこの拠点内では団長さんと並ぶくらい、いや、それ以上の時間を一緒に過ごしているが弟子なるほどのことを教えた覚えはない
「ゲホゲホッゲホッゲホゲホッ」
「ん? なんかヘンなところに入ったか?」
「いえ…なんでもないです…ゲホっゲホゲホ…
一応聞きますけど、テーリオさんのお仕事は?」
「狩人と、職人の孫」
「騎士でしょ 第三騎士団の!」
「あ~…んなモンついでだ! オレが騎士やってんのは屋根の上とダンチョの近くにいる時だけって決めてんだよっ」
「それ以外は開き直ってサボる気ですね」
「当ったりめーよ。 お貴族様の風習とか秩序ってやつに付き合ってられるほどアタマは良くねーしな」
「否定も肯定もしにくいのでノーコメントにしますね。」
「なんかスッゲー失礼なこと考えてるだろ」
ジィィーーーーーー
「ま、今回は許してやんよ。 あ、そろそろ終わったかな」
すくっと立ち上がり、ドアノブにかけた手を引くと、大勢による黄色い声がなだれ込んできた。
『9回裏、2アウト1、2塁。1打逆転サヨナラのチャンスでございマス。
ここで赤チームの打席に入るは満を持して登場、騎士界のエースピッチャー!アーンド!大スラッガー! 魔球の支配者ルチオ~!』
「「「「ヒュ~~~~~~!!!!」」」」
『バッター代わりマシテ、4番 バッター ルチオ』
「よーし 行ってきまーす」
『「「「かっとばせ~♪ ル・チ・オ」」」』
団長が黒影メイドからの報告に頭を痛めている一方で、昼休憩からぶっ通しで拠点の庭では息抜きのレクリエーションとして草野球が行われていた。
午前のことを思うと危機感がないと言えばたしかに無いが、そこはみんな状況を分かっているからベンチにバットと同じ扱いで武器と訓練用のセットが置いてある。
こういうのに対していつもは口うるさいゾース副団長も今となっては口を出さない。なぜだと思う?
答えは簡単、一緒になって楽しんでるから。
ずっとプレッシャーに晒される騎士というお仕事にひと時の娯楽の1つ2つないととてもやってられないのだろう。
『バッタールチオに対スルのは、白チームより毒蛇の独裁者スコット・スペンサー!
縦横無尽にうねり標的を穿つ蛇の牙は果たシて、魔球の支配者を前にドノような勝負を見せてくれるノカ!?』
「やってやれスペンサー!」
「相手はルチオだ! ヘビか怖くないわけがないぞ!」
「気にせず打っちまえスーパースター!」
「結界の外までホームランしてしまえ!」
「なかなか終わらねーな」
「おうテーリオ、ナイスタイミングだ。
ルチオがホームランじゃなければ次はお前の打席だぞ」
「ならオレの打席は来ねーよ」
『ピッチャー振りかぶッテ…』
「駆逐せよ…【九頭蛇滅球】!」
『投げタ!!』
「甘いっ【スポコン奥義 ちゃぶ台返し】!!」
ドンガラカッキィィーーーーーン
『打っタぁァァァァァァ! 九つに分かレタ軌道から本物の1匹を選ぶ間もなく9匹まとメテ打ち返シタぁぁぁぁああ!
コレは大きい!入ルか!?入ルか!? 入っターー!
やはり魔球の支配者ルチオ!どんな攻撃にモお構いなく支配シテしまっタァァァァァァ!
ランナー3人が塁を回って返って来ル!2点目!そしてヒーローが返って来レバ3点入って大逆テーン! サヨナラホームランが決まりマシタ~!』
『「「ウォォォォォォォォォオオオオオオオオ!!!!」」』
「な? 来なかったろ?」
「いやぁ~面白かったぁ~」
「やっぱ遠征に息抜きは必要だわ」
「わかるわかる、オレもう元の本部に戻りたくないぜ」
「ここが本部でいいよな」
「ちげぇねぇ」
ワッハッハッハッハッハッハッハッハッハ!
「お疲れさまです。 体力ポーションはいかがですか?」
「おう、一杯もらうぜ」
「どうぞ」
「オレもっ」
「私もっ 私も貰っていいか?」
「はいっ」
ゴクッゴクッ グビグッビっ
「カァ~っ! そうそうこれこれっ やっぱ運動した後にはポーションが必須だよな」
「あ~ウメェ~ これがポーションとかいまだに信じられないぜ」
「もうそこらのポーションには戻れませんね」
「ちげぇねぇ」
「さっきこのくだりやっただろ」
「ちげぇねぇな」
ワッハッハッハッハッハッハッハッハッハ
「うふふっ」
「あははっ」
自然に笑みが溢れる。
とっくにシルヴィアの壮絶な過去のことや、バケモノじみた職人ののスローライフ願望、ケリーの炎狐の人格のことなどは同じ敷地内にいる人みーんな知っている。
知らない人がいるとすればヴィンセント家の話くらいだが、どうせエミリさんがいろいろ企んでいるようだし、今は別に知ってもらわなくてもいいという結論だ。
「どうだクマさん、少しは寝れてるか?
裏方の仕事って普通は不眠不休っていうし、いつも大量のポーション作ってくれてるだろ」
「わたくしの錬金術の特性はポーションの大量生産に特化していまして、準備と後片付けに時間がかかるだけで、毎回100本分でしたら10秒と少しあれば錬成できますわ。
おかげさまで毎晩グッスリでしてよ」
「10秒!?そいつはスゲェ」
「実際に見てみたいぜ」
「観覧チケットは値が張りましてよ」
「そいつは懐が寂しいから勘弁だぜ」
「いずれお見せできるようになりますわ。 きっと」
「そか、ならその時までおあずけだな。 オオカミさんは?」
「僕は回復魔法の出番が最近あまりないので、農場と事務のお手伝いばっかりして時間潰してるくらいで」
「こっちもグッスリか。 なによりだぜ」
「アイツの魔法付与の影響でオレらも魔力量とか体力とか全体的に上がってるしな」
「通常の5倍動きまくって、7倍回復と治療してるからな…オレ、最近メガネいらねーもん」
「オレもここしばらく咳とクシャミした覚えないかも」
「そういやオレもここ来て夜中に起きたことないな」
「私も幼少期からの関節痛がなくなったな」
「あれ?ここ病院じゃないよな?」
「2週間で変わりすぎだろお前ら…私もその1人なんだが…」
見ない間に、もはやお面自体なくてもいいんじゃないかというくらい、冗談や自然な気遣いが行き交うほどにシルヴィアは今ここにいる第三騎士団のほとんどの人と打ち解けていたのだ。
シルヴィアを中心に沢山の人の輪が形成されていく
「…ん?」
「どうした」
「気のせいだったらいいのだが、揺れてないか…?」
「おまえ何を言って…いや揺れてる」
「畑の音だろ? 薬草に手足生やして空間倉庫に集まれ~っていつものアレ」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…
「いえ、今は収穫する時間ではありませんわ。間違いありません、これは地震ですわね」
グラグラグラグラグラグラグラ…!
「結構デカいぞ! どうする!」
「バカ野郎! 机の下に潜るんだよ! って机がねぇ!」
ビィーーッ! ビィーーッ! ビィーーッ! ビィーーッ!
『地震が発生しマシタ。 落ち着イテ避難口を解放し、身の安全を確保して下サイ
地震が発生しマシタ。 落ち着イテ避難口を解放し、身の安全を確保して下サイ』
「身の安全ってどうするんだよ!」
「落ち着け! こういう場合の対処マニュアルもあるはずだ。 そうだよな」
「まあ、一応。 訓練とかはしてないのでぶっつけ本番にはなりますけど」
「あ…あぁ…助かった…」
「それは気が早すぎ」
「こう言った場合は第一にパニックに陥らないようにすることが先決でしてよ。」
「この建物は核爆弾が落ちても傷程度で済むように出来ていますから次の指示を待ちましょう。」
「そりゃそうだ、アイツが時間かけて作った要塞だもんな」
「はい。幸いにもここは1階の踊り場です。
靴をしまっているロッカーに近づかなければ、倒れてくるものはありません」
「おお、そうか。」
「慌てふためいて死人が出るくらいなら、揺れがおさまるか、次の指示が出るまで優雅にポーションでお茶会でもして待機していましょう。
ささ、カップをお出しになってくださいまし。」
チョロチョロチョロ…ピタッ
「あ、どうも」
チョロチョロチョロ…ピタッ
「あざす」
チョロチョロチョロ…ピタッ
「ありがとう」
地震の中で優雅にお茶会というぶっ飛んだ思いつきはかえってその場の騎士達の心に余裕を生み、
「フゥ~長い揺れですわね~」
「ラスボスが起きちゃったんじゃないか~」
「多分そうですね~」
揺れの空気をほんわかした雰囲気で満たしていた。
ピーンポーンパーンポーン
「次の放送っ」
「シィーっ! 聞こえなかったらどうするんだ」
「…悪い」
「【地震は止まっていませんが、これより転移魔法による避難を行います。
お手洗いや大浴場をご使用の方、自室で休まれている方は至急廊下に出ていただき、各主要施設、廊下ごとになるべく1箇所に集まって、転移陣が発動するまで待機してください。
繰り返します。地震は止まっていませんが、これより転移魔法による避難を行います。
お手洗いや大浴場をご使用の方、自室で休まれている方は至急廊下に出ていただき、各主要施設、廊下ごとになるべく1箇所に集まって、魔法陣が発動するまで待機してください。】」
「これは…このまま待ってればいいのだな?」
「それが正しいですわね。」
「そういえばジオラマモードにするのかな…?」
「ジオラマモード?」
「あ、これ言っていいんだっけ…」
「いいと思いますわ。 どうせ使うことになるのですし」
この拠点には第三騎士団とそれを支える者達を守るための顔が2つある。
1つが通常運営モード。 内側は俺の生産チートによる特製要塞とAIによる最強ネットワーク、外部を陸の結界とカメちゃんズ警備隊で固めることで、常に安心して過ごせる快適ないつもの拠点が持続できる。
もう1つがジオラマモード。
この拠点を地面ごとボコっと切り取り、地下に仕込んだ大魔法陣の力で敷地内にある建物ごとギュッと小さくして、陸の魔法空間の中にしまい込むモードだ。 ジオラマモードにしている間は機能できないし、人が中に入ることはできない。
ラスボスの大きなクラッシュタートルが暴れ出したり、シルヴィアの魔法を撃つ時、本当に手がつけられないなどのうちのどれかが起きる前提で、遠征が始まってからも頑張って用意していたのだ。
サイズで言うと敷地全体が1m四方くらいまでに縮小されるため、質量も同じ割合になり、大人2人もいれば運べない重さではなくなる。
別に陸の魔法空間に限りはないのだが、流石に建物を入れるには入り口が狭い。 だから小さくして中に入れ、もう一度大きくする必要があるのだ。
ちなみに馬達や一部を除く世話係はもう結界の中で、これまた優雅に人参やトウモロコシを食べている
「と言うわけでして、わたくしが怒りに任せて天変地異を起こしてもなんとかなるようにしてありますの。」
「想定に対して対応できすぎだろ…」
「ってかこんなにデッカい建物がそんなに小さくなるのかよ」
「槍や棒が長さ調整できるなら縦×横×高さの次元で同じことができる…そうです。」
そうこうしている間にスマホからいくつもの魔法陣が送られてきて、結果10人おきほどに先程まで草野球をしていた場所まで移される。
「【い~くよ~】」
外では次から次へと人が集められ、突然の地震の動揺が膨らんでいた
ザワザワ…ザワザワザワザワ…
ダァンッ!
『「!!」』
喧騒を打ち破る銃声が空高く鳴り響き、膨らんだ動揺が破裂したかのように1箇所に収束される
そこには白衣ではなく、見慣れた黒い上着の冒険者と制服姿の団長が並んで立っており、その表情が予定外に切迫した状態であるということを物語っていた。
「速やかに小隊、班ごとに集まって点呼を取ってくれ 全員いるか確認が出来ない」
「確認が終わった小隊長と班長は端末から報告してください」
指示のもと大勢が一斉に動き出す。
「わたくし達も」
「医療班は…いた!あっちだよ」
3分ほどできちっと整列され、人数の確認も速やかに終わる。
「皆、急な出来事に動揺しているかもしれない。
正直なところを言えば私も動揺しているところだが、今日この瞬間…我々第三騎士団と獣面騎士軍の共通の最終目標である、山亀相当のクラッシュタートルが目を覚まし…口を開き始めた」
『『「「!!!!」」』』
ラスボスが口を開けたというひと言で全てを理解した。
衝撃波の前兆、破滅へのカウントダウンが始まってしまった。と
「知っての通り、当初の予定はヌシを取り囲むように群れの縄張りを確実に殲滅し、減らすもの。
あらゆる武具や魔法道具、時に彼らの力も借り、邪悪な品種改良を企てた首謀者を追い詰める。 その作戦は想定よりはるかに短期間で進んでいた。
しかし、それがかえって身の危険を感じさせて叩き起こしてしまった可能性がある。」
また違った種のどよめきが広がる。戦闘に親しみがない裏方班の頭の中にも「そりゃそうなるわ」という納得の中に少しばかり呆れが混じった感情だ。
「本来なら1週間後くらいにこうなると想定していたが、早まってしまった以上一刻の猶予もない。
予定より早く、かなり強引な作戦になるが、これより!ワンス池に巣食う災害級のクラッシュタートル及び、品種改良を企てた首謀者を討伐に向かう!!」
またまたどよめきが広がる。
判明した情報は団長を通し、ほぼ全てを共有していたため、予想できなくはない。
だが、当初の予定の半分の期間で事が進み、順調すぎるどころか国の不祥事の尻拭いをほぼ完璧に済まし、果てには地震が発生したから災害級モンスターと今すぐ対峙するぞとなると、流石に気持ちが追いついてこない。
なんならさっきまで草野球してたわけだし。
「心の準備ができていないのも分かる。お前達の反応はいたって当然の事だ。
冷静を振る舞っているが、私や彼も相当焦っていて、参謀官達に状況整理を急いでもらっているところだ」
ここでさりげなーく医療班の方へ捌けてた俺に全員の目が集まり、かなり焦る
確かに俺も想定外のことでどういう行動が望ましいとか思考が止まりかけているが、俺より焦っているのはウチの頭脳と参謀間様の方だ。
『クソがぁ! マスターが作った武具や質の高いポーションを贅沢に使用してイル事で素のステータスが上昇するコトヲ忘れていマシタ! 未来を変えるトハ言っても限度があるデショウがクソマスター!!』
「唸れ獣面…吠えろ英雄…立ち上がる時は今来たる。
望まぬ再会に心、蝕まれるなかれ。 心の闇が真の敵とならん…頼れるのは己の正義と共の支えのみ…」
イヤホンを通して聞こえる声に苦笑いさせられながら、もう一度団長の隣を目指して歩みを進める。
「現状、地震による二次災害防止のため、この敷地内は土地を植物の苗のような形で切り取り、魔法の力で地面から浮いてる状態にあるため地震の揺れは特に起きていませんが、外に出れば話は別です。
今まで地面にめり込んでいた巨大な亀が地上に出ようと動いてるので、地面がひっくり返るくらいの事が起きていると考えた方が自然です。 当然陸路から馬に乗って行くことは不可能、走って行くなんてもってのほかでしょう。
総力戦にはなりますし、臨機応変な対応が常に求められると思います。移動にはフライボードを必ず使い、小隊ごとでの動きを徹底し、一撃離脱を心掛けてください。
皆さんはこの遠征で驚くほど強くなった、ここで今からやってきたこと、今からやろうとしている事を冷静に考慮しても、貴方達は英雄の集まりだと言ってもいい。
今夜はその力の限りを尽くして、全員で笑顔で帰ってきましょう!」
『「了解っ!」』
「最後に一点。皆さんはもうほとんどの方はご存知でしょう、俺たちがここにいる目的は裏方の依頼とは別で3つあります。
1つがクマさん…シルヴィアのこと、これらは皆さんの支えのおかげで、もう少しで達成できそうといったところでしょう。あとは戦場に出てからです。
2つ目がキツネこと、ケリーの戦い方を見出すことですが、これは皆さんの武器と同じです。
コタロー、皆さんにご挨拶を」
あ、そうそう、あの後いろいろ話し合って、刀の銘とは別で炎狐にも名前がついた。『狐太郎』←こう書いてコタローだ。
『各々方、お初にお目にかかり申すでござる
拙者、炎狐より生まれし存在、妖魔のコタローと申すでござる。
先日は拙者の未熟さが故に多大なる心配とご迷惑をおかけした事、心よりお詫び申しござる。
今はお師匠様の拵えにより存在が安定した故、少しでもお力添えできるよう本日は粉骨砕身するでこざる。なお、各々方のお足を引っ張らぬよう端っこの方で戦う所存につき、宜しくお頼み申すでござる』
シーーーン…
ポカ~~ン…
謎の沈黙が辺りを包む。 武器が獣の形になって人間と同じような思考を持っているのが信じ難いのかも。 匠や陸がいるのにまだ慣れないかね?
「とまぁこんな感じで、害はないですし、力になってくれるのでそのまま実戦投入します。
最後の1つが非常に重要でして、この事件の犯人と思われる男…オズワード・ヴィンセントを探し出し、やってきた事への法の裁きを下すことにあります。」
事情を深く知らない人達からパラパラと苦言が聞こえる。 何でそんなことがしたいんだとか、なんでコイツらが?とか疑念じみたものだが、無理だとか不可能だとか否定的な声は上がらない。
「もちろん、150人を超える大人数で行動する訳ですし、先に見つけたとか、手柄がどうとか気にされると思います。 それについては先に断らせて下さい、俺たちは金稼ぎで来ている訳ではありませんので、事態が事態なら多少の結果違いは仕方ないと思っています。
第三騎士団の皆さんは大勢の国民を守るため、俺たちは過去に決着をつけるための同盟につき、まず優先すべきは災害級の魔獣を無力化すること。 オズワード・ヴィンセントを含む賊の捕縛または死亡確認はその後でも構いません。
その代わり、報告・連絡・相談、略して報連相を常に行うようにして下さい」
目線で団長さんに引き継ぐと、返事の代わりに前に出てくれる
「これより相対する標的は、通常ならば全滅は免れない大敵である!
しかし、ここに集った心強い仲間が私達の背後をお守り下さる!
傷付き消耗したらば何度でもポーションを、腹が減ったら軽食を、物資が足りないとしてもリースから救援が届く!
地震さえなくなれば馬達や世話に従事している準騎士の力も借りられる!
隣には心強い冒険者達がいる!実力はみんな知っての通りだ!
他の騎士団がどうかなどここでは一切忘れろ!
ヌシ周りを無力化さえ出来れば他の有象無象の討伐や捕縛にどれだけの時間がかかっても構わん!
私や彼からの命令は共通してただ一つ、全員何がなんでも生き残れ!」
『「はっ!!」』
「20分くらいで出発します。
この拠点を一度小さくして、魔法空間の中に搬入してもう一回大きくしなければならないので、火の元は全て元栓から外し、冷蔵庫以外の装置はコンセントプラグを抜いて下さい。 バッテリータイプはそのままで結構です
列はこの状態でお願いします。騎士の皆さんはそれぞれの武器を持って集合して下さい。
それでは、準備を開始して下さい!」
『「了解!」』
全員が各方面に走っていく。
その背中は昔見たハイパーレスキューの出動シーンのようで、ここにきて2週間ちょっとの地震直後とは思えない手際で準備が整っていく。
20分後、全員が準備からトイレまで余裕を持って済まして出てくれたので、結界を全て解除、昼の事件現場でもある結界から堀までの間のドーナツ状の土地に全員出てもらう。
「じゃあ先生、皆さん、あとはお願いします。」
「ああ。 治療は任せておきなさい」
「帰ったら美味いモノ好きなだけ食わせてやるから間違ってコロっとくたばるんじゃないよ」
「何か困った事があったら私達にお申し付けくださいですぅ」
「行ってきます」
『「行ってらっしゃい!」』
仲間に見送られ、俺たちと第三騎士団は戦場へと飛び立った
飛び立つこと数十分、通常なら平地である場所がまぁまぁの山岳地帯に変貌している場所が見えてきた
『目標地点マデ残り』「流石に見えてるよ」
『言ってミタだけデス。』
『【皆サン、4体のラスボスについてご説明しマス。
山亀の変異種であるクラッシュタートルのまた最上位種、仮名称:破滅亀としマス。
4体の破滅亀はご存じノ通り、巨大で魔法にモ物理にモ強く並の装備では太刀打ち出来マセンが、急いで無力化しなければ近隣のエールテール、ベスガ、リース、クスピス、果てには王都が甚大な被害が出マス。
なお、破滅亀デスが…二足歩行で魔法攻撃する個体が確認されてイマス】』
「まじかよ…!」
「近頃のタートル様は立てるのかっ!?」
「こんなのに気づかなかったのかよ調査の奴ら…」
「文句言ってやらねーと」
「そのために倒すんだ、行くぞ!!」
剣や槍、杖や銃を構え、何個かの小隊ごとに散っていく。
「バオルド! ディートレイヒ! 」
「【獄氷監獄】!」
「【爆ぜろ、エクスプロージョン】!」
次から次へ軽々と上級魔法を打ち込み、1体を大勢で集中砲撃していく
「【燃やし尽くせ インフェルノ】!」
「【闇よ荒ぶれ ダークブレイカー・改】!」
上級魔法が使えない人達のアサルトライフルが狙う位置も悪くない。上下左右から目や首を的確に狙って打ち込んで、硬く厚いはずの装甲から血液の噴水が噴き上がる。
流石の災害級魔獣も痛みに悶えざるを得ない。
「よしっ、嫌がってる! このまま押し切れば」
「バカ! おととい死亡フラグの診断受けたの忘れたか!」
「あっヤベ! 無し無し! 今の無し!」
医療班、特にシータさんには『死亡フラグ』に厳重に警戒するように伝えておいてよかった。
死亡フラグは異世界モノでお馴染みの「この戦いが終わったら結婚するんだ」とか、「いや、ちょっと休めば大丈夫だ」とか数えればキリがないアレのこと。
理論的に解説するなれば、ファンタジー世界やゾンビ映画の世界でこれらの発した言葉は急激に運気を下落させ、なんやかんやで死に至る。ほぼ死病だ。万能薬エリクサーでも治療は不可能だと思う。
150人全員が生き残るには漫画やアニメでのお約束を徹底的に潰すしかない。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…
「間に合わないか…! 」
ピッ
「【こちら第4小隊、南はもうダメだ! どうしたらいい!?】」
「【充分です。 今すぐ退避せよ どうぞ】」
「【だが!ここで引いたら!】」
「【真上を見て同じ事が言えますか どうぞ】」
「【上…? なるほど了解した! 撤退する!】」
「総員退避ぃぃぃぃ!!」
「ヤベぇ急げぇ!!」
「こんのぉぉ!」
「早く早く早く!」
脱兎の如く散っていく騎士達、彼らが恐れているのは衝撃波では無い。
天気の急変だ
空高くから見下ろす少女は口角をあげ、今からパーティでも行われるかのような笑顔で拳から真っ黒い雲を放ち、夕焼けに照らされた月面を覆い潰していた
「ごきげんよう大きな亀様。
わたくし厄災の名を望まぬ形で与えられし弱者にございましてよ。 貴方様も平和に生きるべき人生を汚い手で穢され、踏み躙られて、さぞ屈辱ではなくて?
世界や運命への八つ当たりをご所望でしたら、その鬱憤のデカさでわたくしが正々堂々タイマンを貼らせていただきますわ!
あははははっ!今宵始まるはそんな災害級のバーゲンセールと厄災の血祭りパーリナイですの!
さぁ! ご遠慮なく盛り上がって下さいまし!!」
「【退避完了! いつでもいいぞ】」
「【了解しましてよ】」
少女に浮かぶ笑みは頭のネジが外れた父親の顔とよく似ていた。
見上げた騎士には計り知れないだろう、たった一つの望まぬ二つ名が少女の中にどれだけの爆弾低気圧を溜め込ませていたか
「【天空に集いし神々よ 我が怒りに応え、この拳と共に厄災の鉄槌を下す力を宿せ】」
空を覆い尽くす黒雲が1人の少女の拳に遠くの雲、またさらに遠い雲を巻き込み、魔法陣を通して巨大な拳を形成する。
「その哀れな運命に【厄災拳骨!!】」
力と思いのままに振り下ろした巨大な拳は、とてつもない轟音を立てながら大きな第一歩を踏み出すように山一つを完全に踏み潰した。
『Oh…ワンパンGirl…』
「愚かな者に汚されし魂よ…せめて来世は良き命運のもとに生きれることをお祈りいたしますわ」
「副団長、報告を」
「ああ…そ、そうだった」
ピッ
「【こちら副団長ゾース、南の山は討伐完了した。ただ…】」
『【その山はハズレでスネ。 中から生命反応と運気が検出できマセン。
細かい調査は後回しにしマショウ】』
「【りょ、了解】」
「次の山の応援に回るぞ! 1体倒したからとて油断はするな! この山が最弱だと思え!!」
『「おう!」』
一方その頃、領主邸では
「キャーー!! シルヴィアお嬢様ーー!! 素敵ですよーー!!」
「おお…! あの神々しきお姿! 天使様のようでございますぞー!!」
「私の愛娘 シルヴィアーーー! 貴方は私達の誇りよーー!! こっち向いてーー!」
相変わらず中継映像で盛り上がっていた。
「どうやったらあんなデカブツ、一撃で倒せんだよ…」
「それはお二人に似たからでしょう。 旦那様の怪力と奥様の細やかさがうまく遺伝して…」
「いや、そんな次元の問題じゃねぇ」
「と、言いますと?」
「あの魔法の拳の形が綺麗すぎるんだよ。 普通なら拳どころか、まん丸すら維持できねぇ。
儂の流星拳だって形まではこだわってねぇ。 こだわる余裕がねぇからな」
「それはつまり…」
「間違いねぇ。 今から国ひとつ相手取ってケンカふっかけても、アイツらに敵うやつはそうそういねーだろうな。
これから忙しくなるぞ、スチュアート」
「望むところに御座います」
戻って一方、東の山では
「【グリッタージャベリン】」
「【超グレネードボール】【奥義・千本ノック】」
「【九頭蛇の滅矢】」
ハァ ハァ ハァ ハァ
「急げ!これでまだ3割しか削れてない!」
「違いますよドルガンさん、ボクらだけで3割も削れたんです!」
「通常ならまだ1割も削れていないのです。3倍になっただけ上等でしょう」
「そうだな。 まだ行けるな!」
「諦めたらそこでコールド負けです」
「牙はまだ飢えてます」
「「「くらえ!!」」」
ボガァァァーーーーーン!!
「効いてくれてるといいが…」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…
「やっぱりダメでしたか…」
『撤退して下サイ』
「…了解。 みんな退避だ!」
『人妖一体、狐火抜刀術9尾10刀流のケリーとコタローいざ参る!』
「うっす! おれっち達の心に火が灯った時はもう恐れる敵はそこまでいない…はずっす多分!!」
白く小さな狐がケリーの後ろに周り、三回りほど大きくなって九尾の蒼い炎狐になってケリーの体へ入り込む。
「『【炎狐変化合装】』」
身体が青く光り、その上から武士の着物を模した炎がケリーの身体を包み、足の形が獣のソレとなる。
手元は青く光ったまま軽く籠手のようなものが着く。
そして前回完全に炎狐のものになってしまっていた顔は片方に寄っておらず、鼻から上を覆う白い狐の面を付けたまさに古い話に出てくる九尾の狐の2速歩行ver.だった。
『ヨッ お見事ッ!!』
『【創火抜刀でござる】』
上下左右あらゆる角度に向いた刀が現れて、それら全てがコタローの手中に収まる
『「いざ尋常に勝…」』
「勝負すんのはええけど、そのままやっても1発で仕留めるのは無理やで」
「タクミっち!」
「いくら火が強うても、加熱する面積が狭かったら通る熱も通らへんやろ
下処理はしといたるさかい、ちょい待っとり」
「陸! いっちょやったれ!」
「【お口をア~ンしてね~】」
カメ~~ カメカメ! か~め~
グググググググググ…!
広がった口に結界が入り込み、丸型結界は遠慮なくその体積を広げていく。 その体積は膨張をとどまることは無く、盛大にバキバキ…ついに耐えきれず顎があげれる最後の悲鳴が鳴り響いた。
ビューーーーーーーーーーン!!
「陸! もうちょい抑えとくんやで」
「は~い」
銀色の翼は結界と人間でいうところの口角の間へ入り込む
「お~臭っ 何年歯磨きしとらんかったらこんな不衛生になるんや
こんな役目押し付けたあのアホ、帰ったらしばき回したろ ほいっ」
ドサッドサドサドサドサドサ
アイテムボックスを開いて、あるものをばら撒き、それら全てを風魔法でまんべんなく口やら喉から粘膜に付着させていく
「出血大サービスや!【風刃・みじん切りスペシャル】!!」
スパスパスパスパスパスパスパ…!バシャァ! ドロッ…バシャァ! ドロッ…バシャァ! ドロッ…バシャァ! ドロッ…バシャァ! ドロッ…バシャァ! ドロッ…バシャァ! ドロッ…バシャァ! ドロッ…バシャァ! ドロッ…バシャァ! ドロッ…バシャァ! ドロッ…バシャァ! ドロッ…バシャァ! ドロッ…バシャァ! ドロッ…バシャァ! ドロッ…バシャァ! ドロッ…バシャァ! ドロッ…
「こんなもんやな あらよっと」
ビューーーーーーン
もう一度外に出て、またも同じものをばら撒く
「もういっちょ!【みじん切りスペシャル】!」
「何やってるんすか」
『さぁ…拙者にはさっぱりでござる』
ビューーーーーーーーーン キキキキッ!
「ほいお待たせ、ド派手にやったり!」
「え…いや、おれっち達は…」
『弱点だけを斬り落とす気でござって…』
「それでええんや。」
『「どういうことっすか」でござる?』
「お前らの鼻に聞いてみ」
「鼻?」
クンクンっ
「マジっすか」『正気でござるか』
「一応聞くっすけど…平気っすよね」
『例え大丈夫でござっても、自ら飛び込みとうはないでござるな』
「そうっすよね」
「『ハァ…』」
こればっかりは避けられないと分かり、2人の覚悟を半ば強制的に決める。
「スパッと決めてスパッと避難っす」
『合点承知でござる!』
フライボードを飛び跳ね、山亀の眉間の上を直接狙って急降下する。
『「とりゃぁぁぁぁあああああああああ!!」』
「『 【狐火流奥義 友情激アツ斬り】! 』」
青い炎を纏った10本の斬撃は厚い装甲を貫き、頭の内外に撒かれた物にその手を広げていった
「知っとるか? ファンタジーな世界ではマヨネーズってアホみたいに燃えよるねん。
料理酒とサラダ油を一緒に燃やしたったら尚更なぁ」
『タクミサンの料理スキルは神々が後天的に与えたチートの一つデス。 味の向上だけでなく攻撃力にも転用可能デス』
「すご~いね~」
「良い子は食べ物や調味料を粗末にしたらアカンで。 火遊びはもっとアカンで」
『ギャァァァ!燃えてるでござるぅぅぅ!!』
「その燃えてるのはコタローの火っすから」
『おう、そうでござった。 心頭滅却すれば涼し、火は火をもって制すでござる』
「急いで防御形態っす!」
シュボ…ボォォォォォ ボガァァァーーーーン!!
青い炎と赤い炎は引火爆発を引き起こし、脳を貫かれてほぼ即死の大亀にわずかに残った復活の可能性をも逃さず奪っていく。
「デストロイタートルの頭の素揚げ完成っていうてな」
『「死ぬかと思ったっす」でござる…』
「まるこげ~ おいしくなさそ~だよ~~ぅ」
「【こちら第5小隊、東の山討伐完了。 こっちもはずれです】」
西の山では、他の山より5割り増しのデカさに難航していた
「オイオイ…この山どうなってるんだ、オークロードまみれじゃないか!」
「こっちはゴブリンキング、ゴブリンクイーンにゴブリンナイトがいるだけでなく、伝説にしかいないとされていたゴブリンサタンとゴブリンセージ、ゴブリンヒーロー、ゴブリンプリースト…魔王に賢者に勇者、神官までがゴロゴロと…!」
ズダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ…!
ジャラジャラッ ジャラジャラジャラッ
ブゥォンッ! ブゥォンッ! ブゥォンッ!
ジャギンッ ジャギンッ ジャギンッ ジャギンッ
「オラオラオラァァ!ヒャッハハハァァーーー!
血祭りサイコーだぜぇぇぇえええええええ!!」
「ギルの動きが気分次第過ぎて狙いがつけにくいっ
やっぱこいつ連れてこなかった方が良かったんじゃ…」
「そんなことオレにはできん。 明日以降の命が持たんからな」
「それに、奴らの魔法攻撃が無視できない。 闇属性の上級魔法や神聖魔法を使ってる」
ズダァンッ! ズダァンッ! ズダァンッ!
「簡単だ。 わざわざ前に出る必要はない、ギルを全力で援護してればいいだけだろ。」
「お前は遠くからでも魔法が届くからできるんだよ!」
「そうでもないぞ。 少し頭を使えばいい」
チャキッ…
「【氷河侵蝕弾】」
ズダァンッ!
ガキガキガキガキーーーーーン!
銃声と共に放たれた氷の球は左の眼球を打ち抜き血飛沫を上げる。 その血飛沫は秒読みもしないうちに結晶と化し、そこを起点として爆発的なスピードで氷地帯に。
「すげぇ…一撃で…あの面積を凍らせた…」
「モタモタしてる暇はないぞ」
「そうだっ 状態はどうなってる!?」
「温度が上昇している。 他の亀に置き換えると衝撃波の3分前だ、氷も長く持たないぞ」
「そうだった! お前ら今のうちだ、ぶち込めえぇぇぇぇ!」
3分と告げられた短い時間の中で、撃てるだけ撃ち、斬れるだけ斬る。 魔力が尽きるまで削りに削るが
「どういうことだ!」
「ものすごいスピードで再生してやがる!」
「マズイ…これ以上は間に合わないぞ」
「ガハァアッ!?」
「ギル!」
「硬すぎる…なによりデカイ…まだか団長!!」
地面にザシュッ
「太陽の光を聖なる焔に変換する剣…まさか本当に使うとは思わなかったな…」
「我が名はカトレア王国 第三騎士団 団長、フォンドバーグ・デミトラス。太陽より授かりし神々の力の片鱗よ、この剣に救済のチャンスを与え給え。
そして、願わくば王の矛となり民の盾となる正しき者達を災いより御守りくだされ
【神聖なる太陽】」
魔法剣に魔力と願いを込めるとそれに呼応した剣が反応し、白く眩い灼炎を流し込み、突き刺した先に太陽を創りだし、夕日から力を受けた『神聖なる太陽』が肥大化をするごとに亀から生命力を取り上げていく。
「よし…このまま行けば…」
2分かけて倍から倍に大きくなっていく太陽の成長が次第に止まってしまい、剣本体の輝きが少しずつ衰えてしまう
「夕日が沈み始めてる…!? 待て待て!まだ沈んではならない! 頼むっもう少し頑張ってくれぇ!」
フォンドバーグの願いも虚しく、空は陽の光を維持する力を失い、聖なる太陽も直径約1mも保てなくなる
「そんな…これ以外に手は無いというのに…」
「それは昼間用で今は夕暮れ時だぜ? 持ってく剣まちがえてんぞ ダンチョ」
「え…? て、テーリオ!?」
「よっ」
ザシュッ
「それは…月光剣 どうしてお前が持ってるんだ!」
「いろいろ知ってんのがダンチョだけだと思うなよ?
お届けもんだ。サインはオレのボーナスに一口頼むぜ」
「ハァ…それは額の交渉は可能か?」
「さ~て、どうしよっかな~ サインがもらえねーなら、元んところに戻しちまおうかな~」
フッ…
「分かった。 約束しておこう。」
「聞いたかんな! 言質!言質取ったぞ」
『録音完了。 言い逃れはできマセンよ』
「2人がかりでちゃっかりと…まぁいい、私は裏切ることをしたくない。ただ、受け取りたくば」
「いいぜ、手ェ貸してやるよ。」
スポッ チャキッ
言うや否や太陽を模した剣の方に手を置き、引き抜いてマジマジと剣を眺める
「何やってるんだテーリオ! 今そっちの剣は」
「ダンチョは知ってるか? 月が光ってる理由」
「?」
「太陽ってのは光を出してるが、月ってのは石の塊で光っちゃいねーんだ。
太陽が出してる光を弾き返して光ってるようにオレらには見えてるって、昔じいちゃんが教えてくれたんだ」
「それが…なんだっていうんだ?」
「分かんねーか? 月が光ってるなら、太陽も光ってねーとな」
「…そう言うことか!」
「だから、頭カタくしてねーで…フンっ!!」
ボォォッ!
月闇に光るはずのないという太陽の剣は、そんなの構いなしに眩い炎を放ち、それに共鳴した月光の剣も落ち着いた夜の輝きを放つ
「2本揃えば使えるということか」
「アイツがそんな使い勝手の悪いもんを作っても、使えねーまま渡すことはねーからな」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…!
『残り時間30秒を切りマシタ』
「いくぞ」「はいよ」
「【神聖なる月】」
ザシュッ!
「えーっとえーっとえーーとなんだっけ…まぁいいや、オリャーーーーッ」
『詠唱めちゃくちゃデスね…』
恒星と衛星を模した2本の魔剣と、通常の運命なら出会うはずの無い2人の騎士が並び、強い力でたくさんの未来を紡いでいく
「「うぉおりゃぁぁぁぁぁぁああああああああああ!」」
「はぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああ!」
太陽と月の光から膨大な魔力に変換することができるチートじみた剣にも副作用がある。 変換に装備者や外部出力から魔力を要することだ。 勇者が持つソレと比べても破格の低燃費とはいえど、チートをその身に宿している訳でもない彼らには少々重すぎる魔力消費なのだった
「限界なんて気合いで超えてやる! オレぁ騎士になった職人の孫で狩人だ! アイツとじいちゃんから教わったモンを全部活かしていろんな奴らと一緒に笑える明日を」
「私は国民の盾となり、明日も来年もそこから先も騎士として多くの国民の明日を!」
「「創るんだ!!」んだよ!」
『生命活動の停止を確認しマシタ』
ハァ…ッ ハァ…ッ ハァ…ッ ハァ…ッ ハァ…ッ
「ま、間に合ったのか…?」
『ハイ。 討伐完了を確認しマシタ。 残すは総本山の1体デス』
「そうか…よ」
ヘニャヘニャ…
「この剣、とんだ馬車馬じゃねーか。
ヤッベ…力もってかれすぎて、もう体力も魔力も残ってねぇ…紐も引けねーわ。 ダンチョ、頼んだ」
「全く、手がかかる部下を持つと肝が冷える。 いくぞっ」
グイッ!
ホワンホワンホワンホワンホワンホワンホワンホワン…
グイッ!
ホワンホワンホワンホワンホワンホワンホワンホワン…
「ハヒョーーッ やっぱポーション風船を考案したオレって天才だな!」
フッ…
「バカとハサミは使いようという言葉はお前のためにあったんだな」
「あ“あ”ん!?」
ははははっ
「でも、よく来てくれた。本当に助かった、ありがとうテーリオ」
「べ、別にっ オレぁアイツに出会う機会をくれた借りを返しただけで、ダンチョを助けに来たわけじゃねーしっ! 変なこと言ってんじゃねぇ!」
「そうか、なら」
2人の視線に映るのは、普段仲がよくないとはいえどギルドと騎士団が総力戦でかかる魔王ゴブリンや魔王オークとその配下、その数は何千。 それらは外敵2人を確認するやいなや致死率の高い魔法を容赦なく放つ。
「数はざっと50が2個。 見事なまでに囲まれてるぜ」
「もう一つ変なことを頼ませてくれ」
「しゃーねーなぁ。 死ぬなよ!」
「ここまで手厚くされて死んだ時は、我が家の末代までの恥だ!」
『他の3体は討伐完了、残るはマスター達の担当デス』
「分かってた。 だって…こんなの出てきたんだから」
俺たちの目線の先にはなんと怪獣映画のレジェンド的存在であるガメラ様。
これまで出会った衝撃波ワニガメに始まり、集団戦闘に特化しているオークやゴブリンの中でトップレベルの個体を掛け合わせて生まれた最強の個体。
その威力は凄まじく、フライボードで空中戦を挑んでいる小さな生物に対して手かからとてつもないエネルギーを放ちながら暴れ回る影響で、板から振り落とされていく騎士たちが見える。
落ちてる彼らは肩の紐とトランスリスポーナーが機能をフル発揮するから、地面に叩きつけられて死ぬ前には回復と強制転移が済んでいる。
おかげで一瞬のうちに俺とフィエリアとティー兄以外、この辺がもぬけのからになってしまったが…“その方が都合がいい”
「やっぱりこの山が当たりみたい」
「大丈夫。 準備も覚悟も、できてるから」
「いくよ」
「うん」
アイテムボックスから模型サイズの船を取り出し、船尾にあるスイッチを押し込み真上に掲げる。 船は浮かびながら、ズンッ! ズンッ! ズンッ!…と複数回に分けて巨大化していく
巨大化が完了すると、光が放出されて身体が船内に吸い込まれていく
「うっひょーーーー!! なんすかあれ!!めちゃくちゃイカす船きたっす!」
『黒船でござる… 』
「デケェ…! アイツ仕事の片手間にあんなの造ってたのか!」
「あれ王都で騒いでる飛行船どころの話じゃないぞ」
「ああ。 飛行船の話を聞いてもあまり興味なさそうな顔をしてたわけだ。」
『飛行戦艦 NOVA 発進しマス』
大きな轟音を奏でながら天空遊泳を始める。
『からノ、【天空変形】』
巨大な戦艦が起き上がり、至る所が分割、変形、分割、変形そして合体、合体、合体!
『完成! 魔導騎士 X-NIGHT-NOVA !』
「んお? うわ、なんじゃありゃーーー!?」
ググググ…ピュンッ ズバッ
「すげーぞダンチョ! デッケー騎士だぜ、あれ見てみろって!」
「【月光幻想斬】!
あぁ…テーリオ、気持ちは分からんでもないが今は勘弁してくれっ 今の私たちは窮地も窮地だ!」
「なんでぇ ノリ悪いダンチョ コンチクショッ!! 邪魔だゴラっ!」
ズバッ バシュッ ズババッ
『キタキタキターーーッ! 巨大怪獣に対するモノと言ったら巨大ロボ!
子供の…否、夢を持つ全ての人達の願いを今ここ現実ニッ!!
パーツの細部までこだわった外装…一切無駄のないプログラム…そしてそのロボの操縦するのは日夜共に支え合イ、苦楽を共にした仲間達…!
マ、マァ…ヒーロースーツが未作成なのが不満に残るところではありマスが、問題無しッ!
ナゼならヒーローが初変身する第一話には必ずシモ巨大ロボへ合体・変形するべき特殊ビークルや機械獣達は、物語の都合上、先に造られているのダカラ!』
「今そういうメタ情報いらないよね!?」
『オッと失礼。 デハ、バトルを開始しマス』
左手に構えた盾から剣を抜き、暴れ回るガメラ君と真っ向からぶつかり合う。
「ブレストキャノン…発射」
「【ギア・ブースト】」
『【ブースト魔法を機体ヘ直結】魔力の回転率300%を確認。 異常ナシ』
「いけぇぇぇぇえええええええええ!!!」
「容赦ないなフィエリアとティー兄。 俺も急がないと」
あ、戦艦に乗り込んでると思った? 残念、違うんだな。
そして、お前何やってるのって思ったそこのあなた、今すぐ俺の武勇伝を見返してきなさい。
俺は今、ゴツゴツとした開発一つされていない荒地に真横を向いて生えた木から木を飛び移りながらあるところを目指して移動中。 現在地は大きな魔導騎士様が相対しているボスの背中にして総本山。
つまり二足歩行しているガメラ君の甲羅にあたる土地だ。
なぜこうしているかというと、当然といえば当然なのだが、破滅の始まりを回避すると同時に、敵の退路を絶っておかなければいけないからだ。
このガメラ君の基本構造を大まかにいえば戦隊ロボットのコックピット、この現場でいうNOVAの操縦席と同じで、ガメラ君の動き全部を操っているコックピット兼アジトがある。
また、だいたいこういう敵のアジトには自爆装置がつきものであるというお約束のもと、お馴染みの職人の目になって探ってみるとアジトには自爆装置こそついていないものの、ガメラ君を制御する装置が故障していることが判明。
制御している装置はガメラ君の脳に直接電極を繋いで、単純な電気信号を送ってコントロールをするもので、当然刺すところを間違えれば大変なことになるし、制御するには相当複雑な工程が必要になるが…どうやら、ガメラ君の苦痛まで考えるほどまでに、こんな兵器を作った主は思い至らなかったのだろう。
ま、要するに、ガメラ君は手がつけられなくなっている状態ということで、緊急でガメラ君の甲羅と脳に埋め込まれたアジトと制御装置の剥離&切除手術をしなければならなくなったってわけ。
「【探査】【物体認識】【鑑定】」
ありゃぁ…この亀さんエゲツないほど品種改良されてますやん…
人間とサルが99%、人間と猫が90%、人間とバナナの60%の遺伝子は同じと何かの記事で見たことがあるが、この亀はその理論をまま詰め込まれた個体だとわかる。
人間、オーク、ゴブリン、その他諸々の遺伝子を人工的に交配させてばら撒いたのだろう。
シルヴィアが倒したのがおそらく最初の成功例で、クラッシュタートルの始祖様といったところ。
ケリーが倒したのはそこに繁殖力を高めたビッグダディもしくはビッグマミィ。
団長さんたちがいる個体は、甲羅からとんでもないネームドがバーゲンセールのように生まれるようになり、手に負えなくなってしまったか、ガメラ君と同じように軍団として操れる術があって放置しているのか、詳細は犯人のみぞ知るってところ。
そして俺がいるガメラ君こそ本命というわけだ。そしてなんやかんやで今に至る。
「ヤバいな…これをただうまく切除に成功にしてしまうと、ガメラ君が軽快身軽になる。そうすると押してた巨大戦が互角に近づくな…下手するとそのままグシャリだぞ」
『バグが見つカッたゲームの修正ヲする容量デ、変異シタ遺伝子を書き換えてみるノハどうでショウ』
「変異種から元の種に戻すってことか…!」
『ゴムの木をそこらの木から創り出したマスターなら可能なはずデス。 アジトは甲羅の中、ポータルをハッキングしテ、リクサンにえぐり取って貰いマショウ』
通常の森亀、島亀は温厚な性格。 確かにこの状態より話せる可能性はある
「よし…それでいこう。 遺伝子学やバグに関する知識を検索して」
『了解。 …完了 【マスターにインストールしマス】』
魔獣の進化と変異進化は人間で言うところのプロの武道家とマフィアのボスくらいちがう。
初めはまっさらな赤ん坊でも、親、友人の人間関係が複雑だったりすると人間はその影響を受けた種の力を求めるようになる。
人に優しくするよう丁寧に教えられた子供は誰かのために知恵や力をつけることが出来る。力を使う場所と使わない場所を見極めて判断を下すことが出来る様になる
それに対し、育つまでの段階で不具合が生じると、私利私欲のために凶器を求め、自己肯定感のためには躊躇なく人を傷つけ、その凶器を手放せなくなる。
俺はその正しい治療法なんぞ知ったものではないが、心に癒着する凶器を手放させ、心に寄り添う力を持っている。
変異進化という病気を治療するには…
「【神々より授かりし創造の力よ、人々を癒し守る回復魔法よ…今こそ手を取り合え クリエイトヒール】…」
一つの生命というシステムに入り込んだバグを修正するように、遺伝子に加えられた異分子と変異した遺伝子を片っ端から削除、影響の出ていない元のプログラムを培養して復元・上書きしていく。
あ、当分景色が変わることがないので、ここでアジトの中の様子をお見せしよう
ガチャガチャガコガコっ
「クソッ クソッ クソォ! 動け! 殺せ潰せぶっ壊せ!!
忌々しい騎士団め…!! なぜ私の崇高なる計画を拒絶する!
私はこんな鬱陶しい国を浄化して一から再構築する王に…いや神になるべき男だぞ!」
『神様なら物語の進行で困らないワンパンで倒されないラスボスを寄越して下サイな。』
ビクゥッ!
「誰だ!」
男が振り返ると、数人の人影があった。
その中の2人にはどこかで見た面影があった。
「姉さん…! ら、ランノール…!?
どうして…貴様はもうすでに死んだはず!」
「確かにパパとママは…あなたの身勝手な理由で命を落としましたよ。 けど、僕の心にちゃんと生きてる、あの日の最後の言葉と一緒に。」
「まさか…貴様」
「ランノール・ヴィンセントの娘、フィエリアの遺体が見つかっていないことを忘れちゃったんですね」
「ごきげんようゴミおじ様、エミリ。・ダルセンの娘のシルヴィアにございますわ」
「お…おぉ! 愛する我が姪達よ! こんなところまでこの私に会いに来てくれ…」
ダァン! ダァン!
狭い空間にけたたましく鳴り響く銃声
「き…貴様ら…この私に何をする!?」
「黙れ、お前にしゃべる権利はない」
「わたくしの叔父は10年以上前に2名とも亡くなりましてよ。」
「何を言って」
ダァン! ダァン!
2人の親戚は男を人間として見る目をしていない。その視線の矛先が本当に人間ではなくなっていたから。
「どうやら気付いてないようですね。 自分が人として死んでいることに」
「きっと鏡をご覧になったこともないのですね。」
「お前達何を言っているんだぁ? そうか!役に立つ神である私を見て、人間を超越したオーラがお前達の思考に追いついていないということか!」
『診断成功しマシタ。 個体名:オズワード・ヴィンセントはゴブリン、オーク、クラッシュタートルの遺伝子の侵食を受け、アンデッド・ヒューマン・キメラへと変異進化してイマス。』
「アンデッド…キメラ…? 愚かな人間どもは、神を神として認識できないようだなぁ!
姪達よ無知なる愚民どものいうことを信じてはならんぞ、信じるならこのわた」
ダァン!
「ガハァアッ!?」
ハァッ ハァッ ハァッ ハァッ ハァッ
「貴様らぁ…神である私にこれほどの所業が許されると思っているのか!」
「でしたらお望み通り鏡をご覧になって下さいまし」
『【ミラージュ・ミラー】』
そこに映っていた男の姿は、肉はほぼ全て朽ち、人間とは到底思えない醜い姿をした人体模型と骸骨を足して3でかけたような化け物だった。
ガクッ ガクガクガク…
「これが…これが私の姿だと…? …ーー…るな…ふざけるな…ふざけるなふざけるなふざけるな!!」
「あなたは魔獣になり果てたんだ。
家族の命を奪い、大勢の人のために使われなければならないお金を横領し、奪ってはならない人権を弄び、世界を敵に回した。 だから死んだんだ。
身も心も、存在が全て、獣のそれに堕ちた。」
「黙れ…黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ!!
違う…違う違う違う違う違う違う違う違う!!
私はこの世界の全てを統べる…神ダァアアアアアアアアアアアアア!!」
「うわっっ!!」
「なんですの…っ」
『【リクサン!!】』
外に出ると、大量の骸骨やさっき倒したばかりのガメラ君2、3、4号を中心に屍たちが禍々しくおどろおどろしい地獄絵図が広げていた。
「我がシモベ達よ! 時はキタ!今こそ神を陥れた人間に復讐し、この世界を我が物にスルノダぁぁああ!!」
シュンっ
「ダンチョ…生きてっか」
「ああ…なんとか」
「ギルは」
「これ着てて死ぬと思うか? 刻むぞ」
「返事が怖ぇって」
「団長!テーリオさん!ギルさん!大丈夫ですか!?」
「ああ、すんでのところでなんとか転移してくれてなんとかな。 しかし、何が起きたんだ」
「分かりません…なんか急に人型の何かが出てきたところまでは映像で追えてたんですけど…
その前に皆さんが転移で一気に来ちゃって、流石に対応が…」
「リョー殿達は…? 見当たらないぞ!」
「彼らはまだ外にいる。」
「急いで容器の交換をしてくれ! あんなのが世に放たれたら確実に人類が滅びてしまう!」
「そうでも…無い」
「参謀官殿!こんなアンデッドのスタンピードと言ってもいい状況で、いくら彼らでも」
ニヤァ…
「邪魔者が居なくなって好きなだけ暴れられる。
獣面騎士軍の本領発揮」
『「シータがニヤけた…!?」』
「先輩…ファイト」
「【伸びろ!ニョイ棒銃!】【ギア・ブースト】」
「【黒雲魔装】」
「『【炎狐変化合装】』」
ピッ ピッ
「ティー兄、1人で操縦ありがと。 機体の操縦もらうよ。 地上をお願い」
「ん。」
「さ~て、ショータイムだ」
ガコッ!
操縦席の舵輪の向きを90°押し上げると、下からキーボードと操縦桿、無数のスイッチ類が出てくる。 戦隊お馴染みの舵輪やデッカい水晶ひとつでロボットが操れるご都合仕様はウチのAIが賄っているものだ。
それをマニュアル操作に切り替えて
ガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャ
カタカタカタカタカタカタカタカタカタっ
カタカタカタカタカタカタカタカタカタっ
カタカタカタカタカタカタカタカタカタっ
カタカタカタカタカタカタカタカタカタっ
カタカタカタカタカタカタカタカタカタっ
グイッガコッガコッ
「行くぞ! X-NIGHT-NOVA!」
背面のブースターパックが開き、超高速移動。ガメラ君3号をノーモーションから蹴り上げる。 蹴り飛ばされた3号君は黒焦げの2号君にGOAL!
すぐに高速移動で近づき、首を一振りで落とす。
慣性の法則そのままに、元から満身創痍の4号君を叩っ斬る。
少し離れてかっこよく決めポーズ。 からの…
ドカーーーン!!
『地上に中継を繋いでみまショウ』
「【ギアガトリング】」
ぐルルルルルルルrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrr…!
ズダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ…
「【狐火りゆ…」
『こないででござるぅぅぅぅ!!!』
ずばばばばばばばばばばばばばばばばばばばっ!!
「どっせぇい!」
ドーーーーーーーーーーーン!
周りからも集まり、魔獣の数は千をゆうに越しているのに関わらず、バッタバッタと消し炭になっていく
「…【ハバネロ大進撃】」
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!
ギャァァァァァァァァァァァアアアアアアアアア
『サァ、皆サ~ン 必殺技行きまマスよ!!』
『「了解!」』
『【激獣拳 ゲキ技 咆咆弾】』
「ワキワキのニキニキですわっ」
『【FULL CHARGE】』
『拙者たちの必殺技パート2!でござる』
『【デュアルクラッシャー ミキサーヘッド】
【デュアルクラッシャー ドリルヘッド】』
「…GO」
「【超忍法・影の舞】」
ズバっ バキッ バチコーン!
「せい、バイバイ。
…これで合っているのでしょうか?」
『モチです♪ シュシュっと参上、人も知らず世も知らず、影となりて悪を討つ。そんな戦隊の名台詞デスから♪』
「あとはあなただけです」
「何故ダ…神である私の眷属達が人間如きに負けルコトなどアリエナイ!」
「あなたは神なんかじゃない。 ただの犯罪者です。
身勝手な理由でパパやママ、父さんの仲間達、奴隷狩りで奪った人たちの人生、あなたが作った魔獣に殺された人たちの命…全部償ってもらいます」
「待て! 我が姪達よ、私の元に来い!
お前達も恨んでいるのだろう! 身分や欲にまみれた一部のクズどもが! 弱きは虐げられ淘汰されるこの世界を!
私とそんな世界を破壊し尽くし! 争いの起きない新たな文明を作り直そうではないか!! 神の恵みを与えてやろう!!」
「そんな恵みなどなくても、僕はあなたの理想なんかより温かい光を知っている。 ましてや親の仇の言葉に貸す耳はありません。
人間としても衛兵としても」
「わたくしもパスですわ。 どんな時もわたくしの心を覆う黒雲を晴らしてくれる太陽にようやく出会えたんですわ! もうすぐ虹が見えそうなところなのにこれ以上わたくし達の心を荒らさないでくださいまし!」
「自分もダルセン家に仕える者として、あなたを許しません」
「あ、おれっちは部外者なんで助けを求めないでほしいっす」
『以下同文でござる』
「…同じく」
『フィエリア、あなたの手で仇を取るのデス。
被疑者は王国で指名手配が掛かっていマス。 人間としての理性も失ってイル以上、残念デスが話をして反省する相手ではありマセン。』
「分かってる。 でも、僕は衛兵として法に則った刑罰を下したい」
『了解。 デシタラ、【~】コレで参りショウ』
「アンデッド・ヒューマン・キメラ、オズワード・ヴィンセントさん。
15年前の殺人の教唆及び、魔獣の違法飼育並びに国家転覆を企てた罪で、ジャッジメント!」
「待テ、ヤメロ! 神である私ヲこの世から消し去ってはナラナイ!」
『犯罪者に対してハ、この世界のポリスの要請ヨリ、遥か銀河の彼方にある宇宙裁判所…ではナク、魔法空間の中にあるサーバーから直接判決が下さレル』
画面に映った判決は❌
『デリート許可 』
「(了解…」
『【パトエネルギー全開】』
『「【ストライクアウト】!」』
「私は…わたしは…かみ…だ…」
「ゴッチュー…」
己の欲に支配され、死霊と成り果ててしまったオズワードと彼が築き上げた計画は、正義と獣面とオタ道の圧倒的な力の前に塵となって消えた。
眷属と呼んでいた魔獣達も、体勢を立て直した第三騎士団の夜通しの作業により、確認できる限り全て討伐され、ワンス池は卵一つ残らない空っぽの平原となった。
「リョー君…盗賊の方はどうだった?」
「身元の確認ができる遺体は見つからなかった。
抜け殻みたいに衣服が倒れてたところと、人の影だけが残ってたところから見るに、身体と魂をアンデッドに成り果てたオズワードに喰われたんだと思う。
オズワードの身体1つにまとまった分、一撃で仇を取れたことになるかな」
「そっか…」
「これ」
手のひら大の飾りが1個ついたボロボロのペンダントを差し出す。
さっきオズワードの立っていた場所で拾ったものだ。
「これは…?」
「ここが開くようになってるんだ。 開けてみて」
ペンダントの飾りを開くと、中には小指の先ほどの小さい魔法石が3つ、逆三角形になるように固定されていた。
「上2つの魔法石からそれぞれ別々の魔力がこめられてる。 魔獣や自然のソレなんかじゃない、人間の魔力。 君が生まれるタイミングに合わせて作ったものなんじゃないかな。
下の一つが、フィエリアの魔力、あと2つはご両親。 フィエリアによく似た優しい魔力と勇敢な魔力だ。
どんな困難があっても、3人で力を合わせて乗り越えようっていうおまじないが込められたペンダントなんじゃないかな。」
「パパ、ママ…僕、仇とれたよ。」
「依頼の目的達成ですわね」
「ケリーはコタローという心強い相棒ができて共通の強さを見つけたし、シルヴィアは久しぶりに外の世界と少しだけ触れることができた、フィエリアもご両親の仇をちゃんと討てた。
あとは、」
俺達の目的は果たした。 正直いえばこのままで軽く宴会してバイバイといきたいが、あの拠点には最後の仕事が残っている。
全員でため息をつき、全員が魔力切れでフラフラな足取りで温かい仲間達の待つ要塞につながる空間魔法のゲートをくぐるのだった。
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