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魂の削り刀
さァサ、寄ってらっしゃい見てらっしゃい。
こちらは魂の削り刀。魂を切り刻む霊験あらたかな小刀だよゥ……。
なんだいお前さん。こいつに興味があるのかい。
切れ味? まあ、普通の小刀って感じだねぇ。でも、こいつの真髄はそこじゃァないんだよねェ。
魂そのものを切り刻む……そう言う触れ込みさ。
ッてぇのもね、元々のこいつはただの小刀だったのさ。削っていたのは氷さね。
随分前にいた年寄りの術師がね、人様の魂封じ込めた氷を、こいつでもって削ってたって話さ。
何でそんなことしてたって? アタシも詳しいことは知らないけど、何でもその削り氷を食わせると、封じられた魂の持つ”業”が食った奴に宿るって話でね。術師やら職人なんかは、自分の弟子にそれを食わせて手っ取り早く教えてたみたいだねェ。寿命は減るらしいけど。
その爺の本領はどちらかと言うと氷に魂を封じることだったみたいなんだけど、その氷をずぅっと削ってたもんだから、いつの間にかこいつもそうなっちまったってことみたいだよ。
「魂の削り刀」ってね。
……いやに真剣な顔してるじゃないか。もしかして知り合いかい?
そんな怖い顔しないでおくれよ。欲しいってならやるさ。値段は……これくらいで?
おや、良いのかい。まあこっちもまあまあお安くしてるからね。
なんかね、人間って奴は、あんなに魂魂って言う割りに、実際には魂に触りたがらないんだよね。
怖いんだろうね、自分にも入ってるモンがどんなおぞましいモンか知るってのが。
ヒヒヒ。
何はともあれ、お買い上げありがとう。達者でな。
「もうこいつはバケモンだ」
祖父の、苦悩に満ちた声を、幼い耳は聞いていた。
魂の削り氷。氷に封じた魂を小刀で削り、他者に飲ませることで魂が持つ技術を継承させる呪法。
その氷をずっと削り続けていた小刀は、いつしか魂の削り方を心得てしまったらしい。恐らくは、持ち主たる祖父に応える為に。
「廃業だ」
祖父は小さく呟いた。それから少しして、構えていた工房はのれんを掛けることがなくなった。あの小刀は、いつの間にかなくなっていたし、祖父はその話を二度としなかった。元々、他の呪法にも通じてはいたため、他の店に短時間だけ雇われるようになっていた。
化けた削り刀から解放された祖父は、安心したような顔をして、その後天寿を全うした。
その小刀に、孫の自分が出会ってしまうとは……。
鞘から抜いてみる。刃に、自分の顔が映った。
やあ、久しいね。
そんな筈もないのだが、そう囁かれたような気がした。
さて、衝動的に買い取ってしまったが、これからこいつをどうしよう。祖父ですら持て余した呪いの小刀だ。
少し考えてから、鞘に納めて、懐にしまい込む。
これから考えることにしよう。
彼は暮れなずむ大通りをのんびりと歩きながら、家路を辿ったのだった。
こちらは魂の削り刀。魂を切り刻む霊験あらたかな小刀だよゥ……。
なんだいお前さん。こいつに興味があるのかい。
切れ味? まあ、普通の小刀って感じだねぇ。でも、こいつの真髄はそこじゃァないんだよねェ。
魂そのものを切り刻む……そう言う触れ込みさ。
ッてぇのもね、元々のこいつはただの小刀だったのさ。削っていたのは氷さね。
随分前にいた年寄りの術師がね、人様の魂封じ込めた氷を、こいつでもって削ってたって話さ。
何でそんなことしてたって? アタシも詳しいことは知らないけど、何でもその削り氷を食わせると、封じられた魂の持つ”業”が食った奴に宿るって話でね。術師やら職人なんかは、自分の弟子にそれを食わせて手っ取り早く教えてたみたいだねェ。寿命は減るらしいけど。
その爺の本領はどちらかと言うと氷に魂を封じることだったみたいなんだけど、その氷をずぅっと削ってたもんだから、いつの間にかこいつもそうなっちまったってことみたいだよ。
「魂の削り刀」ってね。
……いやに真剣な顔してるじゃないか。もしかして知り合いかい?
そんな怖い顔しないでおくれよ。欲しいってならやるさ。値段は……これくらいで?
おや、良いのかい。まあこっちもまあまあお安くしてるからね。
なんかね、人間って奴は、あんなに魂魂って言う割りに、実際には魂に触りたがらないんだよね。
怖いんだろうね、自分にも入ってるモンがどんなおぞましいモンか知るってのが。
ヒヒヒ。
何はともあれ、お買い上げありがとう。達者でな。
「もうこいつはバケモンだ」
祖父の、苦悩に満ちた声を、幼い耳は聞いていた。
魂の削り氷。氷に封じた魂を小刀で削り、他者に飲ませることで魂が持つ技術を継承させる呪法。
その氷をずっと削り続けていた小刀は、いつしか魂の削り方を心得てしまったらしい。恐らくは、持ち主たる祖父に応える為に。
「廃業だ」
祖父は小さく呟いた。それから少しして、構えていた工房はのれんを掛けることがなくなった。あの小刀は、いつの間にかなくなっていたし、祖父はその話を二度としなかった。元々、他の呪法にも通じてはいたため、他の店に短時間だけ雇われるようになっていた。
化けた削り刀から解放された祖父は、安心したような顔をして、その後天寿を全うした。
その小刀に、孫の自分が出会ってしまうとは……。
鞘から抜いてみる。刃に、自分の顔が映った。
やあ、久しいね。
そんな筈もないのだが、そう囁かれたような気がした。
さて、衝動的に買い取ってしまったが、これからこいつをどうしよう。祖父ですら持て余した呪いの小刀だ。
少し考えてから、鞘に納めて、懐にしまい込む。
これから考えることにしよう。
彼は暮れなずむ大通りをのんびりと歩きながら、家路を辿ったのだった。
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