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同じベッドで眠ると言うこと【新塩】
同じベッドで寝ると言うのは案外不都合がある。この日の新川修治は思い知らされた。手を伸ばせば届くところでは年下の恋人たる塩原渚がすやすやと寝息を立てて寝ている。
人間は文明の生き物なので、品のない言葉を避けるのであれば、新川は塩原に「触りたい」と思った。ベッドに入って、不意にそんな欲望が首をもたげてしまってから眠れずにいる。
手を繋ぐ、から始まって、結婚以外で恋人同士がすると言われていることは全部している。
今、「それ」をしたい。
幾度となくしたこのベッドで。
塩原の上に新川が覆い被さって、と言う所から始まることが多い。塩原が「ぺちゃんこにして」と言うものだから。照れ隠しで言っていたのに対して、こちらも悪ふざけで応じて、それ以来、その文句で始まることが多くなった。体格の良い新川の重さに、塩原がうっとりとした声を漏らす。その甘い息の出所を求めて口付けるのだ。
思い出したら余計に欲求が膨らんできた。落ち着かなくて新川がもぞもぞと動く度に衣擦れの音がして、それはやっぱり、その最中に聞こえる音と同じで。
今すぐ彼を抱き寄せたい。呑気に寝息を立てて半開きになっている唇を奪いたい。きっとちょっとだけ腹が見えているスウェットの隙間に手を入れて……朝まで寝かせない。そんな暴力的な欲望が膨れ上がる。しかし、そんなことを可愛くて大好きな恋人にできるはずもない。大体、野生の動物だってアピールしてOKもらってから交尾するんだから。寝ている間にだなんて、そんなことは人間のやることではない。プライドを持て。
ごろり、と塩原がこちらに寝返りを打った。もう、キスだけでもしちゃおうかなぁ……。それからトイレに行こう。そんな情けないことを考えながらその顔を覗き込むと。
塩原の目は開いていて、なんだか面白そうに笑っていた。
「……ずっと溜息吐いてたから」
「……もう!」
新川は塩原を抱き寄せると、にやにやしているその口に、自分の唇を押しつけて八つ当たりみたいに吸った。
「ぺちゃんこにして良い?」
「うん。ぺちゃんこにして」
相手を下にして、その上に覆い被さるように転がる。
「はぁ……」
塩原の口から甘い声が溢れた。
塩原は不意に目を覚ました。なんかいつもより部屋の雑音が多いな、と思ったら、後ろから重たくも甘ったるい溜息が聞こえる。背中を向けている恋人の息だ。なんかもぞもぞしてるし。
(ははあ)
修治さん、ムラムラしてんだな……と言う事に彼はすぐ気付いた。何故なら、塩原の方にも同じような経験が幾度となくあるからだ。
(寝顔がセクシーなのが良くない)
整えている髪もぺしゃってなってるし。事後に見ることもある顔だ。大体満足してすぐに寝こけてしまうが、先に目が覚めたりすると、隣で寝ている新川の顔をしばらく眺めてたりもするし。
そう言う訳で、新川が先に寝ている日に後からベッドに入ったりすると、その寝顔だとか首筋だとかを見てちょっとムラ……と来てしまうことがある。このまま襲っちゃおうかなぁ……と思うこともしばしば。塩原の方からのしかかって事に及んだら、絶対びっくりするだろうな。いつも僕の方が「ぺちゃんこにして」とか言ってるし。
そう言うサプライズな誘いかけもしてみたいものだが、タイミングがない。本当に嫌がられたら悪いしちょっと悲しいしな……とも思う。
なんてことを考えていたら、塩原の方も段々悶々としてきた。もし、新川がこちらに手を伸ばしてきたら……そうしたら応じてしまおう。
自分よりも大きな手が、まずは腰に手を回して抱き寄せてくれる。塩原を抱きしめて、それからこっちを下にして、押しつぶすみたいに覆い被さってくれることだろう。あの重さがたまらない。お前を離さない、と言われているみたいで。だからそれだけで恍惚としてしまう。
いよいよ新川の吐く息が甘く、より重くなって来た。塩原の方も本格的にその気になって、ごろりと寝返りを打つ。新川がこちらを見た。目が合うと、こちらが笑っているのを見て、驚いた顔になる。
「……ずっと溜息吐いてたから」
「……もう!」
抱き寄せてくれる。八つ当たりみたいな、荒っぽいキス。唇がいつもより熱い気がする。
「ぺちゃんこにして良い?」
「うん。ぺちゃんこにして」
どこにも行かせないとばかりにのしかかる、その重さに塩原は恍惚の吐息を漏らした。
脱ぎ捨てたスウェットを探すと、ベッドの下に落ちていた。眠たい。拾いに行くのが面倒で、新川にひっついて暖を取る。どう受け取ったものか、相手は塩原の顎をとらえて口付けた。
好きな人が自分を好きで、その人と安心して身体を重ねることができる。人間の幸せの全部だとは言わないけれど、たくさんある内の一つだと思う。
「寒くない?」
気遣わしげに尋ねてくる彼に微笑む。
「ちょっとだけ。でも大丈夫」
あなたが抱きしめていてくれるなら。
人間は文明の生き物なので、品のない言葉を避けるのであれば、新川は塩原に「触りたい」と思った。ベッドに入って、不意にそんな欲望が首をもたげてしまってから眠れずにいる。
手を繋ぐ、から始まって、結婚以外で恋人同士がすると言われていることは全部している。
今、「それ」をしたい。
幾度となくしたこのベッドで。
塩原の上に新川が覆い被さって、と言う所から始まることが多い。塩原が「ぺちゃんこにして」と言うものだから。照れ隠しで言っていたのに対して、こちらも悪ふざけで応じて、それ以来、その文句で始まることが多くなった。体格の良い新川の重さに、塩原がうっとりとした声を漏らす。その甘い息の出所を求めて口付けるのだ。
思い出したら余計に欲求が膨らんできた。落ち着かなくて新川がもぞもぞと動く度に衣擦れの音がして、それはやっぱり、その最中に聞こえる音と同じで。
今すぐ彼を抱き寄せたい。呑気に寝息を立てて半開きになっている唇を奪いたい。きっとちょっとだけ腹が見えているスウェットの隙間に手を入れて……朝まで寝かせない。そんな暴力的な欲望が膨れ上がる。しかし、そんなことを可愛くて大好きな恋人にできるはずもない。大体、野生の動物だってアピールしてOKもらってから交尾するんだから。寝ている間にだなんて、そんなことは人間のやることではない。プライドを持て。
ごろり、と塩原がこちらに寝返りを打った。もう、キスだけでもしちゃおうかなぁ……。それからトイレに行こう。そんな情けないことを考えながらその顔を覗き込むと。
塩原の目は開いていて、なんだか面白そうに笑っていた。
「……ずっと溜息吐いてたから」
「……もう!」
新川は塩原を抱き寄せると、にやにやしているその口に、自分の唇を押しつけて八つ当たりみたいに吸った。
「ぺちゃんこにして良い?」
「うん。ぺちゃんこにして」
相手を下にして、その上に覆い被さるように転がる。
「はぁ……」
塩原の口から甘い声が溢れた。
塩原は不意に目を覚ました。なんかいつもより部屋の雑音が多いな、と思ったら、後ろから重たくも甘ったるい溜息が聞こえる。背中を向けている恋人の息だ。なんかもぞもぞしてるし。
(ははあ)
修治さん、ムラムラしてんだな……と言う事に彼はすぐ気付いた。何故なら、塩原の方にも同じような経験が幾度となくあるからだ。
(寝顔がセクシーなのが良くない)
整えている髪もぺしゃってなってるし。事後に見ることもある顔だ。大体満足してすぐに寝こけてしまうが、先に目が覚めたりすると、隣で寝ている新川の顔をしばらく眺めてたりもするし。
そう言う訳で、新川が先に寝ている日に後からベッドに入ったりすると、その寝顔だとか首筋だとかを見てちょっとムラ……と来てしまうことがある。このまま襲っちゃおうかなぁ……と思うこともしばしば。塩原の方からのしかかって事に及んだら、絶対びっくりするだろうな。いつも僕の方が「ぺちゃんこにして」とか言ってるし。
そう言うサプライズな誘いかけもしてみたいものだが、タイミングがない。本当に嫌がられたら悪いしちょっと悲しいしな……とも思う。
なんてことを考えていたら、塩原の方も段々悶々としてきた。もし、新川がこちらに手を伸ばしてきたら……そうしたら応じてしまおう。
自分よりも大きな手が、まずは腰に手を回して抱き寄せてくれる。塩原を抱きしめて、それからこっちを下にして、押しつぶすみたいに覆い被さってくれることだろう。あの重さがたまらない。お前を離さない、と言われているみたいで。だからそれだけで恍惚としてしまう。
いよいよ新川の吐く息が甘く、より重くなって来た。塩原の方も本格的にその気になって、ごろりと寝返りを打つ。新川がこちらを見た。目が合うと、こちらが笑っているのを見て、驚いた顔になる。
「……ずっと溜息吐いてたから」
「……もう!」
抱き寄せてくれる。八つ当たりみたいな、荒っぽいキス。唇がいつもより熱い気がする。
「ぺちゃんこにして良い?」
「うん。ぺちゃんこにして」
どこにも行かせないとばかりにのしかかる、その重さに塩原は恍惚の吐息を漏らした。
脱ぎ捨てたスウェットを探すと、ベッドの下に落ちていた。眠たい。拾いに行くのが面倒で、新川にひっついて暖を取る。どう受け取ったものか、相手は塩原の顎をとらえて口付けた。
好きな人が自分を好きで、その人と安心して身体を重ねることができる。人間の幸せの全部だとは言わないけれど、たくさんある内の一つだと思う。
「寒くない?」
気遣わしげに尋ねてくる彼に微笑む。
「ちょっとだけ。でも大丈夫」
あなたが抱きしめていてくれるなら。
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