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8 少年兵と魔法の訓練 2
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「どうした、何があったんだ?」
僕の声に驚いたラングさんとメンデスさんが走ってきた。
「あ、いや、あの、ラングさんに教えてもらった魔力操作をやってみようと思ったら、いきなり火の玉が出てきたので、驚いてしまって……」
「なんと……いきなり無詠唱魔法の発動とは……」
メンデスさんが、何か笑いをこらえるような表情で言った。
「もう一度やって見せてくれるか、あ、いや、その前にさっき君が言ったことだが……」
ラングさんはそう言うと、胸の前で手を動かし始めた。
「……今、何か見えるかね?」
「あ、はい、今度は緑色の煙のようなものが、胸の辺りに漂っています」
僕の答えに、ラングさんは嬉々としてメンデスさんの方を向いた。
「聞いたか? やはり、ユウキに見えているのは、魔法が発動する直前の魔素なんだ。しかも、属性の違いを色で見分けることができるんだよ」
「ううむ、にわかには信じがたい話だが、現実に見せられたら信じざるを得ないな。ユウキ、私の場合はどう見える?」
そう言って、今度はメンデスさんが胸の前で手をゆっくり動かし始めた。
「あ、出て来ました。青い色の煙です」
「正解だ。私の属性は水なんだ。つまり、ユウキは火属性は赤、風は緑、水は青く見えるわけだな?」
「ああ、そういうことだ。たぶん、土は茶色、光は黄色、闇は黒かな」
二人は興奮したように頷き合った。
「えっと、それじゃあ、ラングさんたちには、あの煙は見えないってことですか?」
「「(ああ)見えない」」
二人は同時にそう言って首を振った。
僕は戸惑うと同時に、少し不安になった。
「これって、何かまずいことなのでしょうか?」
「いや、まずいどころか、すごい能力だよ。いいか、君にはあそこで練習している魔法使いたちの魔力の色が見えるんだよな?」
「は、はい、見えます」
「うむ、つまり遠くからでも、魔法が発動されようとしているのが分かるということだ。しかも、属性の種類までも……考えてもみろ、敵からしたら、どこから、どんな魔法を撃とうとしているかバレていたら、すぐに対処されてしまう。こんな厄介な相手はいない、ということだ」
なるほど、そういうことか。確かに有益な能力だな。
「よし、ちょっと実戦形式で試してみよう。敵が隠れていても見えるかどうかな」
ラングさんはそう言うと、うきうきしながら練習をしている班員たちのところへ走っていった。
「あはは……ラングのあんな嬉しそうな顔、久しぶりに見るな……」
メンデスさんは笑いながらそう言うと、僕に視線を落とした。
「……次から次に、戸惑うことばかりだろう、疲れてないか?」
「はい、戸惑うことは多いですが、なんか、ここに来てから、自分が認められているような気がして、嬉しいです」
メンデスさんはそれを聞くと、何か喉を詰まらせたように、ごくりと唾液を飲み込んで小さく頷いた。
「そうか……」
「おおい、二人とも、来てくれ」
ラングさんの声に、僕は立ち上がってメンデスさんと一緒にラングさんのもとへ向かった。
♢♢♢
「どうだ、何が見える?」
僕が後ろを向いている間に、班員の魔法使いたちがグラウンドのあちこちの物陰に隠れていた。僕が前に向き直って、グラウンド全体を眺めていると、ラングさんが待ちきれない様子でそう尋ねた。
実は、その時、僕は少々戸惑っていた。
(な、何だ、これは……)
僕の目の前には薄い水色のパネルのようなものがあり、そこに赤い点がいくつかあった。その数は隠れている魔法使いの数と同じ、つまり、赤い点は魔法使いの位置を示しているに違いない。そして、青い点が二つと黄色い点が一つかたまっている、これは僕とラングさん、メンデスさんだ。
つまり、今、僕はグラウンドを上から見た作戦ボードのようなものを見ているのだった。
「ええっと、魔法使いさんたちが隠れている場所は、全部分かります。あ、それと、これはたぶん、その人のステータスですね……」
「な、何だって? ステータスまで見えるのか?」
「あ、はい…魔法使いさんが隠れている所は赤い点になっていて、その一つの点に注目すると、点の上に数字が並んでいるのが見えるんです」
僕の言葉に、ラングさんもメンデスさんも驚愕のあまり言葉が出ない様子だったが、ラングさんはいったん離れて、グラウンドの方へ向かった。
「総員、集合っ」
ラングさんの声に、あちこちに身を潜めていた魔法使いさんたちが出てきた。
「しばらく小休止をとる。各自、声が届く範囲で休憩をとること。解散っ」
ラングさんは班員たちにそう命じると、僕のもとへ戻ってきた。
「さっきのことを詳しく話してくれ。メンデス、すまないが、緘口令だ。隊長からの指令でな、ここから先は聞かせられない」
メンデスさんは当然納得がいかない表情だったが、隊長命令では仕方がなかった。
「分かった。じゃあ、後で……」
メンデスさんの背中を見送った後、ラングさんは僕を連れて倉庫のそばにあるベンチへ向かった。そこに僕を座らせると、少し考えてからこう言った。
「よし、一つ一つ聞いていこう。まず、さっき見えたものをもう一度詳しく教えてくれ」
「はい……」
僕は頷いて、グラウンド全体を見回した時に見えた水色のパネルと各色の点、それが示すもの、一つの点に注目すると見えた数字の列について話した。
「……つまり、空から俯瞰した状態で見えたわけだな?」
「はい、そうです」
「それが見える前に、何か命令を出したか?」
「いいえ、特には……ただ、魔法使いさんたちはどこにいるかなと思っただけです」
僕は首を振りながら答えた。
「ふむ……では、ちょっと俺を見ながら、俺のステータスを見たいと意識してみろ」
「え、い、いいんですか?」
「ああ、構わん」
僕は何か、人の秘密を盗み見るような気がして気が引けたが、言われた通りにやってみた。
「あ……」
「どうだ、見えたか?」
「はい、さっきと同じように、水色のパネルが出てきて、ラングさんのステータスが数字や言葉で書かれています」
「よし、もういいぞ……」
ラングさんの声に、僕が意識を切り替えるとパネルは消えた。
「やはり、それがルシアが言っていた《真眼》というスキルに間違いないな……」
ラングさんはそう言うと、表情を和らげて続けた。
「よし、では、次の訓練は実際に魔法を使う練習だ。皆のところに戻るぞ」
「はい」
僕は立ち上がって、ラングさんと一緒に歩き出した。
僕の声に驚いたラングさんとメンデスさんが走ってきた。
「あ、いや、あの、ラングさんに教えてもらった魔力操作をやってみようと思ったら、いきなり火の玉が出てきたので、驚いてしまって……」
「なんと……いきなり無詠唱魔法の発動とは……」
メンデスさんが、何か笑いをこらえるような表情で言った。
「もう一度やって見せてくれるか、あ、いや、その前にさっき君が言ったことだが……」
ラングさんはそう言うと、胸の前で手を動かし始めた。
「……今、何か見えるかね?」
「あ、はい、今度は緑色の煙のようなものが、胸の辺りに漂っています」
僕の答えに、ラングさんは嬉々としてメンデスさんの方を向いた。
「聞いたか? やはり、ユウキに見えているのは、魔法が発動する直前の魔素なんだ。しかも、属性の違いを色で見分けることができるんだよ」
「ううむ、にわかには信じがたい話だが、現実に見せられたら信じざるを得ないな。ユウキ、私の場合はどう見える?」
そう言って、今度はメンデスさんが胸の前で手をゆっくり動かし始めた。
「あ、出て来ました。青い色の煙です」
「正解だ。私の属性は水なんだ。つまり、ユウキは火属性は赤、風は緑、水は青く見えるわけだな?」
「ああ、そういうことだ。たぶん、土は茶色、光は黄色、闇は黒かな」
二人は興奮したように頷き合った。
「えっと、それじゃあ、ラングさんたちには、あの煙は見えないってことですか?」
「「(ああ)見えない」」
二人は同時にそう言って首を振った。
僕は戸惑うと同時に、少し不安になった。
「これって、何かまずいことなのでしょうか?」
「いや、まずいどころか、すごい能力だよ。いいか、君にはあそこで練習している魔法使いたちの魔力の色が見えるんだよな?」
「は、はい、見えます」
「うむ、つまり遠くからでも、魔法が発動されようとしているのが分かるということだ。しかも、属性の種類までも……考えてもみろ、敵からしたら、どこから、どんな魔法を撃とうとしているかバレていたら、すぐに対処されてしまう。こんな厄介な相手はいない、ということだ」
なるほど、そういうことか。確かに有益な能力だな。
「よし、ちょっと実戦形式で試してみよう。敵が隠れていても見えるかどうかな」
ラングさんはそう言うと、うきうきしながら練習をしている班員たちのところへ走っていった。
「あはは……ラングのあんな嬉しそうな顔、久しぶりに見るな……」
メンデスさんは笑いながらそう言うと、僕に視線を落とした。
「……次から次に、戸惑うことばかりだろう、疲れてないか?」
「はい、戸惑うことは多いですが、なんか、ここに来てから、自分が認められているような気がして、嬉しいです」
メンデスさんはそれを聞くと、何か喉を詰まらせたように、ごくりと唾液を飲み込んで小さく頷いた。
「そうか……」
「おおい、二人とも、来てくれ」
ラングさんの声に、僕は立ち上がってメンデスさんと一緒にラングさんのもとへ向かった。
♢♢♢
「どうだ、何が見える?」
僕が後ろを向いている間に、班員の魔法使いたちがグラウンドのあちこちの物陰に隠れていた。僕が前に向き直って、グラウンド全体を眺めていると、ラングさんが待ちきれない様子でそう尋ねた。
実は、その時、僕は少々戸惑っていた。
(な、何だ、これは……)
僕の目の前には薄い水色のパネルのようなものがあり、そこに赤い点がいくつかあった。その数は隠れている魔法使いの数と同じ、つまり、赤い点は魔法使いの位置を示しているに違いない。そして、青い点が二つと黄色い点が一つかたまっている、これは僕とラングさん、メンデスさんだ。
つまり、今、僕はグラウンドを上から見た作戦ボードのようなものを見ているのだった。
「ええっと、魔法使いさんたちが隠れている場所は、全部分かります。あ、それと、これはたぶん、その人のステータスですね……」
「な、何だって? ステータスまで見えるのか?」
「あ、はい…魔法使いさんが隠れている所は赤い点になっていて、その一つの点に注目すると、点の上に数字が並んでいるのが見えるんです」
僕の言葉に、ラングさんもメンデスさんも驚愕のあまり言葉が出ない様子だったが、ラングさんはいったん離れて、グラウンドの方へ向かった。
「総員、集合っ」
ラングさんの声に、あちこちに身を潜めていた魔法使いさんたちが出てきた。
「しばらく小休止をとる。各自、声が届く範囲で休憩をとること。解散っ」
ラングさんは班員たちにそう命じると、僕のもとへ戻ってきた。
「さっきのことを詳しく話してくれ。メンデス、すまないが、緘口令だ。隊長からの指令でな、ここから先は聞かせられない」
メンデスさんは当然納得がいかない表情だったが、隊長命令では仕方がなかった。
「分かった。じゃあ、後で……」
メンデスさんの背中を見送った後、ラングさんは僕を連れて倉庫のそばにあるベンチへ向かった。そこに僕を座らせると、少し考えてからこう言った。
「よし、一つ一つ聞いていこう。まず、さっき見えたものをもう一度詳しく教えてくれ」
「はい……」
僕は頷いて、グラウンド全体を見回した時に見えた水色のパネルと各色の点、それが示すもの、一つの点に注目すると見えた数字の列について話した。
「……つまり、空から俯瞰した状態で見えたわけだな?」
「はい、そうです」
「それが見える前に、何か命令を出したか?」
「いいえ、特には……ただ、魔法使いさんたちはどこにいるかなと思っただけです」
僕は首を振りながら答えた。
「ふむ……では、ちょっと俺を見ながら、俺のステータスを見たいと意識してみろ」
「え、い、いいんですか?」
「ああ、構わん」
僕は何か、人の秘密を盗み見るような気がして気が引けたが、言われた通りにやってみた。
「あ……」
「どうだ、見えたか?」
「はい、さっきと同じように、水色のパネルが出てきて、ラングさんのステータスが数字や言葉で書かれています」
「よし、もういいぞ……」
ラングさんの声に、僕が意識を切り替えるとパネルは消えた。
「やはり、それがルシアが言っていた《真眼》というスキルに間違いないな……」
ラングさんはそう言うと、表情を和らげて続けた。
「よし、では、次の訓練は実際に魔法を使う練習だ。皆のところに戻るぞ」
「はい」
僕は立ち上がって、ラングさんと一緒に歩き出した。
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