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11 再び新大陸へ 2
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「仲間の獣人の人たちの中で、一番年配のゼムさんは、移住の時乗ってきた帆船を使って漁師をしていて、あとの若い人たちは冒険者をやって生活しています。彼らは、生きている間に、故郷であるこの大陸に帰ってみたいと願っています。でも、ただ帰るのではなく、向こうの大陸での経験を生かして、仕事をしたいと考えているのです……」
オルグ村長は、そこまでの話を黙って頷きながら聞いていた。
「ふむ、つまり、君が言いたいのは、彼らにこの村で働かせてやってくれ、ということかね?」
「いいえ、そうではありません」
俺が笑みを浮かべながら首を振ると、村長は困惑の度を深めたようだった。
「何を言いたいのか、よく分からぬが……」
「さっきお話しした〝ある計画〟が、その答えです。彼らは、船を使って、こちらの国と向こうの国との間の交易をしようと考えています」
俺の話を聞いて、オルグ村長は唖然とした。
「い、いや、それは無理じゃよ。さっきも言った通り、人族の国とは国交が途絶えておる。見つかれば、ただでは済まない」
「それは、ローダス王国だけとの関係ですよね。アウグスト王国とはどうですか?」
「いや、少なくとも、わしが知る限りでは、かの国とはこれまで交流したことはないはずじゃ」
「では、交易できる可能性はありますね」
オルグ村長は、むう、と唸り声をあげてテーブルに目を落とした。
ちょうどそれにタイミングを合わせたかのように、メイドさんがお茶とお菓子を運んできた。
「ありがとう、ベル……さあ、お茶でも飲んで少し落ち着こう」
村長は、そういうとお茶を一口すすってから、深いため息を吐いて続けた。
「はあ……いやはや…船が難破して助けを求めに来た少年と思いきや、こんな話をすることになるとはな。君はいったい何者なんだ?とても、ただの漁師の息子とは思えんが……」
俺もお茶を少し飲んでから答えた。
「僕は一年前から冒険者もやっていまして、向こうの大陸をあちこち回っていろいろな仕事をしてきました。その中でたくさんの人たちと出会い、まあ、良いことも悪いこともいろいろと見てきました……」
「ふむ、さっきから出てくる〝冒険者〟というのは、こっちの国でいう〝人足屋〟のようなものかな?」
(へえ、ここでは〝人足屋〟っていうんだ。なんか、江戸時代の日本のようだな)
俺は、そんなことを思って笑い出しそうになりながら答えた。
「ええっと、国中に冒険者ギルドという組織があって、そこに登録して、いろいろな依頼を受けながらお金を稼ぐ仕事です」
「うむ、やはり人足屋と同じだな。では、いろいろと危ないこともやってきたのか?」
オルグ村長は、少し興味が湧いてきたような表情で尋ねた。
「はい。魔物退治や商人の馬車の護衛などは危険が伴います」
村長は小さく何度か頷いて、お茶を一口飲むと、しばらく下を向いて考えてからこう言った。
「ふむ…船での交易となるといろいろな危険もある。しかも、国をまたぐとなれば、面倒なことも増える。現に、この村は交易船の停泊地でな、船乗りたちや商人たちから、いろいろな話も聞いておるのじゃ。しかし、そのゼムとかいう獣人たちが、どうしてもやりたいと言うのなら、できる範囲で協力はしよう」
俺は思わず立ち上がって、深く頭を下げた。
「ありがとうございます。獣人の皆さんたちも喜びます」
「まあ、まあ、座ってくれ。協力するといっても、この村に拠点を置くのを許可するのと、出入りの商人や船乗りを紹介するくらいしかできぬがな」
「はい、それで十分です。では、向こうに帰ったら、さっそく皆と話し合って、準備ができたらこの村に船を持ってくることにします」
俺はそう言うと、立ち上がってもう一度頭を下げ、立ち去ろうとした。
「ああ、待ちなさい……ほれ、この菓子を持っていきなさい。わしはあまり甘いものは食わんのでな。それと、宿はもしかすると満杯かもしれぬ。その時は、ここに戻ってきなさい。隣の息子の家に泊めてやるのでな」
やはり、獣人たちは優しい。決して立場を利用した高圧的な態度は見せないし、誰もが困っている者を助けようとしてくれる。
(そう考えると、人間が下等種族に思えてくるな)
『人間界は生存競争が厳しいですからね。甘い顔を見せられないというのもあるのでは?』
(うん、確かにそれもあるかもしれない……)
村長の家を出て、宿屋へ向かいながら、俺たちはそんな話をした。
♢♢♢
幸い、宿屋は一人部屋だけが一つ空いていたので、俺はそれを借りた後、リュックを部屋に置いて、村の中を詳しく見るために外へ出て行った。
まず、商店や屋台を見ていくと、やはりガーリフの街と同じで、食料品は肉と果物が中心で、パンとか甘味の店は小さな店が一軒ずつしかなかった。生活用品では、服と革製品の店があったが、陶器や金物の道具は、専門店ではなく雑貨屋の中に置かれていた。
(ふむ、なるほど……道具はあまり使われてないんだな。これは狙い目かもしれない。さて、問題の鍛冶屋だ……ええっと、ああ、あれだな)
俺は、路地の少し奥に、煙突から煙が出ている家を見つけて、そちらへ向かった。
(あれ、これはどういうことだ?……それに、こいつはいったい……)
店先に並んだ商品を眺めながら、俺は首をひねった。中に入り、高価な武器類や防具類を見ていく。
「いらっしゃいませぇ。何かお探しでしょうか?」
帳場にいた、まだ若い女性が愛想のいい笑顔を浮かべながら近づいてきた。
「あ、ええっと、ミスリルのナイフとかは置いてありませんか?」
「ミスリル?それは材質の名前ですか?」
赤い髪の狼の獣人らしき女性は、眉をひそめて問い返した。
「はい、そうです」
「さあ、聞いたことがないです。ちょっと、お待ちを……ねえ、お父さーん、ちょっと、来てくれない?」
女性は、奥の仕事場に向かって叫んだ。
返事はなかったが、やがて、奥からのっそりと、大きな体で顔が赤い髭に覆われた男が現れた。
オルグ村長は、そこまでの話を黙って頷きながら聞いていた。
「ふむ、つまり、君が言いたいのは、彼らにこの村で働かせてやってくれ、ということかね?」
「いいえ、そうではありません」
俺が笑みを浮かべながら首を振ると、村長は困惑の度を深めたようだった。
「何を言いたいのか、よく分からぬが……」
「さっきお話しした〝ある計画〟が、その答えです。彼らは、船を使って、こちらの国と向こうの国との間の交易をしようと考えています」
俺の話を聞いて、オルグ村長は唖然とした。
「い、いや、それは無理じゃよ。さっきも言った通り、人族の国とは国交が途絶えておる。見つかれば、ただでは済まない」
「それは、ローダス王国だけとの関係ですよね。アウグスト王国とはどうですか?」
「いや、少なくとも、わしが知る限りでは、かの国とはこれまで交流したことはないはずじゃ」
「では、交易できる可能性はありますね」
オルグ村長は、むう、と唸り声をあげてテーブルに目を落とした。
ちょうどそれにタイミングを合わせたかのように、メイドさんがお茶とお菓子を運んできた。
「ありがとう、ベル……さあ、お茶でも飲んで少し落ち着こう」
村長は、そういうとお茶を一口すすってから、深いため息を吐いて続けた。
「はあ……いやはや…船が難破して助けを求めに来た少年と思いきや、こんな話をすることになるとはな。君はいったい何者なんだ?とても、ただの漁師の息子とは思えんが……」
俺もお茶を少し飲んでから答えた。
「僕は一年前から冒険者もやっていまして、向こうの大陸をあちこち回っていろいろな仕事をしてきました。その中でたくさんの人たちと出会い、まあ、良いことも悪いこともいろいろと見てきました……」
「ふむ、さっきから出てくる〝冒険者〟というのは、こっちの国でいう〝人足屋〟のようなものかな?」
(へえ、ここでは〝人足屋〟っていうんだ。なんか、江戸時代の日本のようだな)
俺は、そんなことを思って笑い出しそうになりながら答えた。
「ええっと、国中に冒険者ギルドという組織があって、そこに登録して、いろいろな依頼を受けながらお金を稼ぐ仕事です」
「うむ、やはり人足屋と同じだな。では、いろいろと危ないこともやってきたのか?」
オルグ村長は、少し興味が湧いてきたような表情で尋ねた。
「はい。魔物退治や商人の馬車の護衛などは危険が伴います」
村長は小さく何度か頷いて、お茶を一口飲むと、しばらく下を向いて考えてからこう言った。
「ふむ…船での交易となるといろいろな危険もある。しかも、国をまたぐとなれば、面倒なことも増える。現に、この村は交易船の停泊地でな、船乗りたちや商人たちから、いろいろな話も聞いておるのじゃ。しかし、そのゼムとかいう獣人たちが、どうしてもやりたいと言うのなら、できる範囲で協力はしよう」
俺は思わず立ち上がって、深く頭を下げた。
「ありがとうございます。獣人の皆さんたちも喜びます」
「まあ、まあ、座ってくれ。協力するといっても、この村に拠点を置くのを許可するのと、出入りの商人や船乗りを紹介するくらいしかできぬがな」
「はい、それで十分です。では、向こうに帰ったら、さっそく皆と話し合って、準備ができたらこの村に船を持ってくることにします」
俺はそう言うと、立ち上がってもう一度頭を下げ、立ち去ろうとした。
「ああ、待ちなさい……ほれ、この菓子を持っていきなさい。わしはあまり甘いものは食わんのでな。それと、宿はもしかすると満杯かもしれぬ。その時は、ここに戻ってきなさい。隣の息子の家に泊めてやるのでな」
やはり、獣人たちは優しい。決して立場を利用した高圧的な態度は見せないし、誰もが困っている者を助けようとしてくれる。
(そう考えると、人間が下等種族に思えてくるな)
『人間界は生存競争が厳しいですからね。甘い顔を見せられないというのもあるのでは?』
(うん、確かにそれもあるかもしれない……)
村長の家を出て、宿屋へ向かいながら、俺たちはそんな話をした。
♢♢♢
幸い、宿屋は一人部屋だけが一つ空いていたので、俺はそれを借りた後、リュックを部屋に置いて、村の中を詳しく見るために外へ出て行った。
まず、商店や屋台を見ていくと、やはりガーリフの街と同じで、食料品は肉と果物が中心で、パンとか甘味の店は小さな店が一軒ずつしかなかった。生活用品では、服と革製品の店があったが、陶器や金物の道具は、専門店ではなく雑貨屋の中に置かれていた。
(ふむ、なるほど……道具はあまり使われてないんだな。これは狙い目かもしれない。さて、問題の鍛冶屋だ……ええっと、ああ、あれだな)
俺は、路地の少し奥に、煙突から煙が出ている家を見つけて、そちらへ向かった。
(あれ、これはどういうことだ?……それに、こいつはいったい……)
店先に並んだ商品を眺めながら、俺は首をひねった。中に入り、高価な武器類や防具類を見ていく。
「いらっしゃいませぇ。何かお探しでしょうか?」
帳場にいた、まだ若い女性が愛想のいい笑顔を浮かべながら近づいてきた。
「あ、ええっと、ミスリルのナイフとかは置いてありませんか?」
「ミスリル?それは材質の名前ですか?」
赤い髪の狼の獣人らしき女性は、眉をひそめて問い返した。
「はい、そうです」
「さあ、聞いたことがないです。ちょっと、お待ちを……ねえ、お父さーん、ちょっと、来てくれない?」
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