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28 山越えは、楽しい? 2
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どうぞ、応援よろしくお願いします。
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「う~ん、うまい。魚と野菜のうま味が溶け込んで、ちょうどいい塩加減だ。ハーブの香りも効いているな」
俺の賛辞に、ポピィは嬉しそうにはにかんで赤くなった。
「嬉しいです。木漏れ日亭で習った料理は、まだまだありますから、楽しみにしておいてほしいのです」
「ああ、楽しみにしておくよ」
「ところで、あれは何だったのです、トーマ様?」
ポピィは、まだ冷気を立ち上らせている魔石を指さして尋ねた。
「ああ、あれね……ええっと、ポピィはランプやコンロの仕組みは知っているだろう?」
「あ、はい。あれは魔石が光や炎を出しているんですよね?」
「そうだ。で、それと同じ理屈で、あれは魔石が冷たい空気を出しているんだ」
ポピィは口の中の食べ物をごくりと飲み込んでから、感嘆の声を上げた。
「す、すごいのです……でも、何に使うのか、分からないのです」
「そうか…よし、街に着いたら、これを使ってポピィに何かいい物を作ってやろう。楽しみに待ってろな」
俺の言葉に、ポピィは感動したように、両手を胸の前で組んで頷くのだった。
♢♢♢
ついにダラスト山の峠にたどり着いた。
「わあ、海が見えますよ、トーマ様」
「ああ、いい眺めだな。まだまだ世界は広いなぁ。あの海の向こうにも、いつか行ってみような、ポピィ」
「はい、ですっ!」
俺たちはしばらくの間、道の傍らに座って、眼前の広大な景色を見つめていた。
「さあ、行くか」
俺の言葉に、ポピィは頷いて元気よく立ち上がった。もう、目指す鉱山の街ドーラは、眼下に見えていた。
フード付きのコートを着て、大きなリュックを背負った二人の小さな子どもたちが、風のように山道を駆け下りていくのを、山狼(ハイランドウルフ)や一角山羊(モノホーンゴート)などの魔物たちも、襲い掛かる暇もなく、呆気にとられたように見送るばかりだった。
♢♢♢
「ちっ、なにが騎士団だよ……てんで役立たずじゃねえか」
「お、おい、ミルズ、やめろ。誰に聞かれてるか、分からないぞ」
ドーラの街の酒場には、今日も仕事のない鉱夫や鉱山関係の労働者たちが、昼間から酒を飲んで憂さ晴らしをしていた。
鉱山が閉鎖されてすでに三か月、仕事が実質なくなってから二か月余りが過ぎようとしていた。国からわずかな生活援助金はもらっているが、このまま閉鎖が続けば、やがてそれも打ち切られ、もはや街を出て、他の場所で働き口を見つけなければならなくなるだろう。
王都から派遣されてきた騎士団や兵士たちは、ミルズ達、街の住民からは、ただ毎日飲み食いして、偉そうに街の中を歩いているようにしか見えなかった。
♢♢♢
「ん?何だ、お前たちは?」
ドーラの街の南門の門番は、山の方から歩いてきた二人連れの子供に不審な目を向けて尋ねた。
「あ、はい。僕たちの父が、以前この街の鉱山で働いていたのですが、事故でケガをして村に帰って来ました。それで、父からこの街にいる友人に手紙を届けてほしいと言われ、父の代わりに来ました」
俺は、オルグ村長と相談して決めた作り話をして、偽の手紙をコートの内ポケットから取り出して門番に見せた。
「ああ、あの時の……そうか、父親の名前は何というのだ?」
「はい、ラモンです」
「やはりそうか。たしか、山向こうのラタント村だったな?」
俺が頷くと、門番は脇に移動して道を開けた。
「よし、通っていいぞ」
「はい、ありがとうございます」
俺とポピィは、まだドキドキしながら門の内側に入っていった。
活気のない街の通りを歩きながら、俺はようやく息を大きく吐いた。
「何とかうまくいったな」
「そうですね……」
ポピィは同意して頷きながらも、何か元気がなかった。
(ああ、そうか。ウソをついたのが嫌だったんだな……)
俺は、ポピィの純粋で真っすぐな心を尊いと思った。そして、そのまま大事にしてもらいたかった。
そして、俺自身は、いつも自分に言い聞かせている言い訳を、今回も唱えるだけだった。
(誰かを陥れたり、不幸にしたりするためのウソじゃない。ウソをついた先で誰かが幸せになったとしたら、それは良いウソなんだ……)
いや、どんなに言い繕っても、やはりウソをつくのは悪いことだ。ここは、素直に謝ろう。
「ああ、ええっと、なあ、ポピィ……ごめん、嫌だったよな、俺のウソに巻き込んでしまって……悪かった」
「え、い、いいえ、あの、わたし……」
ポピィが、必死に何か俺をかばうための言葉を探そうとするのを、俺は首を振って言わせなかった。
「いや、いいんだ。ポピィは、その真っすぐな心のまま生きていってほしい。ただ、俺は、これからも、必要ならばウソをつく。だから、これから何度も嫌な思いをさせると思う。もし、このまま一緒に旅をするのが嫌だと思うなら、今、正直に言ってくれ。すぐに、スノウを呼んで……」
そこまで話した俺は、いつしかポピィが涙を流しながら、小さく何度も首を振っていることに気づいた。
「……いやです…どうかこのまま一緒に、いさせてください」
「いいのか?嫌な思いをすることになるぞ?」
俺の問いに、ポピィはまた強く首を振って答えた。
「ごめんなさい、許してくださいです。トーマ様がウソをつくのは、誰かを困らせるためじゃない、分かっているのに……わたし、バカだから……エプラの街でも同じことしたのに……トーマ様、これからもどんどんウソをついてくださいですっ!わたしも頑張るです!」
「い、いや、どんどんって、それは違うぞ、ポピィ……でも、ま、いいか…あはは……」
俺がそう言って笑い始めると、きょとんとしていたポピィも、涙をぬぐって笑い始めるのだった。
まあ、俺とポピィは、例えるなら、どこまで行っても交わらない平行線だ。だから、これからも俺の旅に付き合うなら、ポピィは我慢をし続けることになるだろう。それが溜まりに溜まって、いつか、もうこれ以上一緒には居られない、という事態になるかもしれない。
それはそれで仕方がないことだ。俺は自分の生き方を変えるつもりはないし、ポピィには今の純粋な心を失ってほしくはない。これからも、できるだけ彼女が世間の泥に汚れないように守っていこうとは思う。
どうぞ、応援よろしくお願いします。
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「う~ん、うまい。魚と野菜のうま味が溶け込んで、ちょうどいい塩加減だ。ハーブの香りも効いているな」
俺の賛辞に、ポピィは嬉しそうにはにかんで赤くなった。
「嬉しいです。木漏れ日亭で習った料理は、まだまだありますから、楽しみにしておいてほしいのです」
「ああ、楽しみにしておくよ」
「ところで、あれは何だったのです、トーマ様?」
ポピィは、まだ冷気を立ち上らせている魔石を指さして尋ねた。
「ああ、あれね……ええっと、ポピィはランプやコンロの仕組みは知っているだろう?」
「あ、はい。あれは魔石が光や炎を出しているんですよね?」
「そうだ。で、それと同じ理屈で、あれは魔石が冷たい空気を出しているんだ」
ポピィは口の中の食べ物をごくりと飲み込んでから、感嘆の声を上げた。
「す、すごいのです……でも、何に使うのか、分からないのです」
「そうか…よし、街に着いたら、これを使ってポピィに何かいい物を作ってやろう。楽しみに待ってろな」
俺の言葉に、ポピィは感動したように、両手を胸の前で組んで頷くのだった。
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ついにダラスト山の峠にたどり着いた。
「わあ、海が見えますよ、トーマ様」
「ああ、いい眺めだな。まだまだ世界は広いなぁ。あの海の向こうにも、いつか行ってみような、ポピィ」
「はい、ですっ!」
俺たちはしばらくの間、道の傍らに座って、眼前の広大な景色を見つめていた。
「さあ、行くか」
俺の言葉に、ポピィは頷いて元気よく立ち上がった。もう、目指す鉱山の街ドーラは、眼下に見えていた。
フード付きのコートを着て、大きなリュックを背負った二人の小さな子どもたちが、風のように山道を駆け下りていくのを、山狼(ハイランドウルフ)や一角山羊(モノホーンゴート)などの魔物たちも、襲い掛かる暇もなく、呆気にとられたように見送るばかりだった。
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「ちっ、なにが騎士団だよ……てんで役立たずじゃねえか」
「お、おい、ミルズ、やめろ。誰に聞かれてるか、分からないぞ」
ドーラの街の酒場には、今日も仕事のない鉱夫や鉱山関係の労働者たちが、昼間から酒を飲んで憂さ晴らしをしていた。
鉱山が閉鎖されてすでに三か月、仕事が実質なくなってから二か月余りが過ぎようとしていた。国からわずかな生活援助金はもらっているが、このまま閉鎖が続けば、やがてそれも打ち切られ、もはや街を出て、他の場所で働き口を見つけなければならなくなるだろう。
王都から派遣されてきた騎士団や兵士たちは、ミルズ達、街の住民からは、ただ毎日飲み食いして、偉そうに街の中を歩いているようにしか見えなかった。
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「ん?何だ、お前たちは?」
ドーラの街の南門の門番は、山の方から歩いてきた二人連れの子供に不審な目を向けて尋ねた。
「あ、はい。僕たちの父が、以前この街の鉱山で働いていたのですが、事故でケガをして村に帰って来ました。それで、父からこの街にいる友人に手紙を届けてほしいと言われ、父の代わりに来ました」
俺は、オルグ村長と相談して決めた作り話をして、偽の手紙をコートの内ポケットから取り出して門番に見せた。
「ああ、あの時の……そうか、父親の名前は何というのだ?」
「はい、ラモンです」
「やはりそうか。たしか、山向こうのラタント村だったな?」
俺が頷くと、門番は脇に移動して道を開けた。
「よし、通っていいぞ」
「はい、ありがとうございます」
俺とポピィは、まだドキドキしながら門の内側に入っていった。
活気のない街の通りを歩きながら、俺はようやく息を大きく吐いた。
「何とかうまくいったな」
「そうですね……」
ポピィは同意して頷きながらも、何か元気がなかった。
(ああ、そうか。ウソをついたのが嫌だったんだな……)
俺は、ポピィの純粋で真っすぐな心を尊いと思った。そして、そのまま大事にしてもらいたかった。
そして、俺自身は、いつも自分に言い聞かせている言い訳を、今回も唱えるだけだった。
(誰かを陥れたり、不幸にしたりするためのウソじゃない。ウソをついた先で誰かが幸せになったとしたら、それは良いウソなんだ……)
いや、どんなに言い繕っても、やはりウソをつくのは悪いことだ。ここは、素直に謝ろう。
「ああ、ええっと、なあ、ポピィ……ごめん、嫌だったよな、俺のウソに巻き込んでしまって……悪かった」
「え、い、いいえ、あの、わたし……」
ポピィが、必死に何か俺をかばうための言葉を探そうとするのを、俺は首を振って言わせなかった。
「いや、いいんだ。ポピィは、その真っすぐな心のまま生きていってほしい。ただ、俺は、これからも、必要ならばウソをつく。だから、これから何度も嫌な思いをさせると思う。もし、このまま一緒に旅をするのが嫌だと思うなら、今、正直に言ってくれ。すぐに、スノウを呼んで……」
そこまで話した俺は、いつしかポピィが涙を流しながら、小さく何度も首を振っていることに気づいた。
「……いやです…どうかこのまま一緒に、いさせてください」
「いいのか?嫌な思いをすることになるぞ?」
俺の問いに、ポピィはまた強く首を振って答えた。
「ごめんなさい、許してくださいです。トーマ様がウソをつくのは、誰かを困らせるためじゃない、分かっているのに……わたし、バカだから……エプラの街でも同じことしたのに……トーマ様、これからもどんどんウソをついてくださいですっ!わたしも頑張るです!」
「い、いや、どんどんって、それは違うぞ、ポピィ……でも、ま、いいか…あはは……」
俺がそう言って笑い始めると、きょとんとしていたポピィも、涙をぬぐって笑い始めるのだった。
まあ、俺とポピィは、例えるなら、どこまで行っても交わらない平行線だ。だから、これからも俺の旅に付き合うなら、ポピィは我慢をし続けることになるだろう。それが溜まりに溜まって、いつか、もうこれ以上一緒には居られない、という事態になるかもしれない。
それはそれで仕方がないことだ。俺は自分の生き方を変えるつもりはないし、ポピィには今の純粋な心を失ってほしくはない。これからも、できるだけ彼女が世間の泥に汚れないように守っていこうとは思う。
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