少し冷めた村人少年の冒険記 2

mizuno sei

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45 村の大掃除をいたしましょう 3

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「ふん、そんな薄汚いガキに用はない、とっととそこらへんに捨ててこい。それより、問題はバンズだ……」
 俺たちの前で、豪華、というか、けばけばしい金ぴかの椅子にふんぞり返った四十前くらいの男が、ガマガエルのような口を開いて言った。
「……あれは頭が切れる男だ。相手が危険な奴らなら、そんなに深追いするはずはない。準備を整えてから出かけるはずだ。それなのに、相手とともに姿を消しただと?そんなことは考えられん……ううむ」

 そう言って考え込んだ男に、俺は言ってやった。
「そいつがどこにいるか、知ってるぜ」

 俺の言葉に、ラビンと周囲の警護の男たちも驚いた。ざわざわと騒ぎだした男たちを手で制して、ラビンが立ち上がりながら言った。
「おいっ、ガキ、いい加減なことを言うと、ただではすまんぞ」

 俺はにやりと笑いながら、ストレージから四人の男たちを次々に取り出して、床の上に積み上げてやった。
 その時のラビンと周囲の男たちの顔は、後で思い出しても噴き出してしまうほどだった。

 心の醜さがそのまま顔に現れたような太った男は、大きな口をあんぐりと開けて、わなわなと体を震わせ始めた。
「なな、何だ、今のは……どこから取り出したんだ?おいっ、こいつを捕まえろ!」

 ラビンの声に、同じように口を開けて驚いていた警護の男たちは、ハッと我に返って俺たちの方へ向かって来ようとした。

「おっと、動くな。こいつらの背中にメイスを突きさすぞ」
 俺はメイスを取り出して、眠っている男たちの上に構えながら言った。

「か、構わんっ、その小僧は危険だ、捕まえて縛り上げろっ!」

「へえ、自分を守るためには、部下の命なんか見捨てる、ということか?なあ、あんたたち、こんな奴のために命を捨てるのか?仲間の命も見捨てるのか?」
 
 俺の言葉に、男たちの足が止まり、お互いの顔を見合わせた。

「ぬうう、ガキの言葉に惑わされるなっ!おい、ラミア、エステア、何をしている、早くそいつらを捕まえるんだ」
 ラビンがイライラしながら叫んだが、ラミアとエステアは目を合わせてから、今ぞとばかりにそれぞれがナイフを抜いてラビンに刃先を向けた。

「長い間、この時を待っていた……己の私欲のために、多くの罪なき人たちを殺し、この村を食い物にしてきた、卑劣な男、ラビンっ!」
「今こそ、無念の思いで亡くなっていったエルフの方々の恨みを晴らさせてもらう、覚悟せよっ!」

「な、ぬあにいいいっ!」
 ラビンの顔がいよいよ醜く歪み、怒りのために真っ赤に紅潮した。
「もう許さん、皆殺しにしてやる」

(お、いよいよ出るか?鎧騎士)
 俺はワクワクしながら、ラビンが首飾りを外に出すのを見ていた。

「しばし、お待ちを、ラビン様」
 そう言って、外から音もなくその場へ現れたのは、痩せて目つきの悪い男だった。

「カイトか、邪魔するな」

「いや、ラビン様のお手を煩わせるまでもありません。この者たちは、私たちが始末いたします」

(はあぁ……どうして、この手の奴らみんな、謎に自信たっぷりなのかね?ほんと、井の中の蛙、大海を知らずってやつだな)
 俺は心の中でため息を吐いた後、ポピィに言った。
「ポピィ、ラミアとエステアを守るんだ」

「了解なのです」
 ポピィもだいぶ修羅場に慣れてきたようで、落ち着いた声で返事した。

「さあて、エルド村の大掃除を始めますかね」
 俺はそう言うと、〈加速〉と〈身体強化〉を同時に発動して、警護の男たちに向かっていった。

「なっ、は?」
 今までいきがっていたカイトは、俺とポピィがあっという間に、四人の男たちを気絶させてしまうのを呆然と見ているだけだった。

「なあ、もっとまじめに鍛錬しないと何の役にも立たないんじゃない?」
 俺は、そう言いながらカイトに近づいていった。
 
 もはや、カイトは俺たちに抵抗する気が消えうせたのか、震えて口をわなわなさせながら、その場にへなへなと座り込んだ。

「ええい、どけっ、こんな奴らなど、すぐに床に這いつくばらせてやる。泣きながら命乞いする姿が目に浮かぶぞ。ぐふふふ……」
 ラビンはいやらしい笑い声を漏らしながら、いよいよ例の魔道具を服の下から取り出した。
 それは、金の鎖を付けられ首飾りにされていたが、もともとは、おそらく魔導士が使うスタッフの一部だったに違いない。魔石をはめ込まれた杖の先端部分が切り取られた形状をしていた。

「さあ、いでよ、不滅の騎士、この蛆虫どもを捻りつぶしてしまえ、ぐはははは……」
 まさに三文役者の芝居そのままのセリフのラビンが、おおげさに両手を広げると、魔石が一瞬光を放ち、その直後魔石からシュルシュルと銀色の物体が出てきた。

(おお、その出方はやっぱりルーシーと同じなんだ。ということは、ルーシーが使っている魔法と同じ魔法が掛けられているのかな)

 俺がそんなことを考えている間に、銀色の流動体は、身長二メートルを超えるフルアーマーの騎士の姿になった。

「おお、いいねえ。そっちがガーディアンを使うなら、こっちも助っ人を呼ぼう。ラミアさんたち、こっちは任せて、その男たちを縛り上げてくれ」

「は、はい、分かりました」
 ラミアたちは鎧騎士の登場に、絶望の表情をしていたが、ポピィがニコニコしながら彼女たちを促し、警護の第三部隊の男たちを次々に麻縄で拘束していった。

(ルーシー、出番だぞ)

『おお、了解じゃ!』
 待ってましたとばかりの元気なルーシーの返事だ。少々頭がくらくらした。

「さあ、不滅の鎧騎士よ、あの者どもを始末してしまえっ!」
 ラビンがそう言って、手を振り上げた直後だった。

「ジャ~~ン!ルーシーちゃんの登場じゃあああっ!」
 そこにいた全員が思わずびっくりするほどの大声が、大きな広間中に響き渡った。


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