44 / 88
44 村の大掃除をいたしましょう 2
しおりを挟む
《トーマ視点》
「……という話になりました。今からラビンの屋敷に向かいます。よろしいですか?」
ラミアとエステアの報告を聞いて、俺とポピィはしっかりと頷いた。
「ああ、行こう。もう、その場でそのチャビンとかいうアホをぶっ倒していいよな?」
「トーマ様、チャビンじゃなくて、ラビンですよ」
『ポピィちゃん、わざとなんですよ』
ポピィとナビの両方から突っ込みを受けて、俺は小さく咳き込んだ。
「え、ええ、構いませんが……その、本当に、あの鎧騎士を倒せますか?」
ラミアとエステアは、どうしてもまだ信じられない様子で尋ねた。
「ああ、前にも言ったように、実際やってみないと分からない。ただ、魔道具は術者の命令で動いているから、いざとなったら、チャビンの方を倒せば、鎧騎士は動かなくなるはずだ」
俺の言葉に、ラミアとエステアはまだ不安そうだったが、しっかりと頷いた。
「あ、そうだ、ちょっと準備をするから、少し待っていてくれ」
俺はそう言って、一人で昨夜泊めてもらった部屋へ向かった。
♢♢♢
部屋に入った俺は、左の手首につけた腕輪に右手を載せて目をつぶった。
(ルーシー、聞こえるか?)
『おお、主殿か、よく聞こえるのじゃ』
すぐに元気な返事が返って来た。
(よかった。ちょっと、出てきてくれないか?)
『了解じゃ!』
ルーシーの返事が終わるか終わらないうちに、腕輪から強大な魔力が溢れ出てきた。そして、小さな魔石から、何か混ざり合ったジェルのようなものがシュルシュルと出てきたかと思うと、空中で形を変え、赤と黒の派手なボディスーツを着た少女になって降りてきた。
「久しぶりじゃのう、主殿」
ルーシーはそう言って、意味不明なポーズをとりながら俺に微笑んだ。
「ああ、久しぶり。どうだ、ダンジョンの経営は順調か?」
俺の問いに、ルーシーは踊るように一回転した後、顔と胸を反らせてにやりと笑った。
「ふふん、もちろんじゃ。主殿にも見せてやりたいぞ。ダンジョンの入り口の横には、街の者たちが我の彫像を建ててくれてのう、たくさんの供え物を捧げてくれておる。ダンジョンに挑戦する者たちも、日に日に増えておるのじゃ。もちろん、我も、ダンジョンが楽しくなるように毎日改良を続けておるぞ。昨日は……」
ルーシーは、こうしてひとしきり自慢話を語った。
俺も、黙ってその話を聞いてやった。そして、ようやく話が一段落したところで、彼女にこう言った。
「そうか。楽しくやっているようで、何よりだ。さて、今日来てもらったのは、お前にちょっと手伝ってもらいたいことがあるからだ。その前に、聞きたいことがあるのだが、〝魔道具〟について、何か知っているか?」
「魔道具?……ふむ、ああ、記憶にあったぞ……」
ルーシーは少し考えてから頷いた。おそらく、彼女の記憶は、魔素に含まれた過去の様々な人々の断片的な記憶なのだろう。
「……かつて、バルセン王国には、国の創立者であるリンド・バルセンとその妻である黒龍の化身アレッサと彼らの子どもたちが住んでおった。国民である獣人たちは、魔法を使えなかったが、バルセンとアレッサ、子どもたちは強大な魔法使いだったのじゃ。魔道具を初めて作ったのは、子どもたちの中の長女セリーナじゃ。彼女は優しく賢い子でのう、獣人たちの生活が便利になるようにと、いくつかの魔道具を作って獣人たちに渡したのじゃ。だが、それが悲劇の始まりであった……」
ルーシーが語った話を要約すると、次の通りだ。
魔道具を与えられた獣人たちは、大いに喜び感謝したが、やがて、その所有と使用について争いが始まった。まあ、数が限られているので当然そうなるだろう。それを憂いた王のバルセンは、所有と使用についての決まりを定めたが、それでも争いは絶えなかった。
そこで、バルセンは、自分たちの存在が争いを引き起こす元凶であると悟り、家族を引き連れて遠い辺境の島へ去ったという。
「ふむ、なるほどな……実はな……」
俺は彼女の話を聞き終えると、今、この島で起こっていることを簡単に話した。
「……というわけだ。もしかすると、その魔道具は、セリーナが残したものかもしれないな」
「いや、多分違うぞ、主殿。セリーナが作ったのは、生活のための魔道具じゃ。そんな、物騒なものを作るはずはない。だが、考えられることは、バルセンの子孫たちが作った可能性じゃな」
ルーシーの言葉に、俺は納得して頷いた。そして、ある考えがひらめいた。
「ああ、そうか。ちなみに、その子どもたちは、どんな見た目をしていたのだ?」
「見た目か?」
ルーシーは不思議そうに問い返した後、何かを思い出すように下を向いた。
「そうじゃのう、ああ、全員髪が白かったらしいのう。そして、セリーナと末の女の子は目の色が青かったが、真ん中の男の子は赤い目をしていたそうじゃ」
俺は、その言葉で確信した。おそらく、バルセンの子孫が、《魔族》と呼ばれる者たちだ。そして、ラビンに魔道具を渡したのも魔族の者に違いない。
「なあ、ルーシー、その魔道具の騎士と戦ってみたいか?」
俺の問いに、ルーシーは大きな目を見開いて、嬉し気ににやりと笑った。
「戦わせてくれるのか、主殿?」
「ああ、いいぞ。ただし、最初から大魔法をぶっ放したりするなよ。その鎧騎士が、どの程度の強さでどんな攻撃をするのか、見てみたいからな」
「了解じゃ。適当に遊んでやるのじゃ」
「よし、じゃあ、その時になったら、また呼び出すから、いったん帰っていてくれ」
俺の言葉に、ルーシーは不満げだったが、仕方なく、またシュルシュルと流体化して腕輪の魔石の中へ吸い込まれていった。
俺は、拳を握りしめて気合を入れ直すと、部屋から出ていった。
♢♢♢
「……という話になりました。今からラビンの屋敷に向かいます。よろしいですか?」
ラミアとエステアの報告を聞いて、俺とポピィはしっかりと頷いた。
「ああ、行こう。もう、その場でそのチャビンとかいうアホをぶっ倒していいよな?」
「トーマ様、チャビンじゃなくて、ラビンですよ」
『ポピィちゃん、わざとなんですよ』
ポピィとナビの両方から突っ込みを受けて、俺は小さく咳き込んだ。
「え、ええ、構いませんが……その、本当に、あの鎧騎士を倒せますか?」
ラミアとエステアは、どうしてもまだ信じられない様子で尋ねた。
「ああ、前にも言ったように、実際やってみないと分からない。ただ、魔道具は術者の命令で動いているから、いざとなったら、チャビンの方を倒せば、鎧騎士は動かなくなるはずだ」
俺の言葉に、ラミアとエステアはまだ不安そうだったが、しっかりと頷いた。
「あ、そうだ、ちょっと準備をするから、少し待っていてくれ」
俺はそう言って、一人で昨夜泊めてもらった部屋へ向かった。
♢♢♢
部屋に入った俺は、左の手首につけた腕輪に右手を載せて目をつぶった。
(ルーシー、聞こえるか?)
『おお、主殿か、よく聞こえるのじゃ』
すぐに元気な返事が返って来た。
(よかった。ちょっと、出てきてくれないか?)
『了解じゃ!』
ルーシーの返事が終わるか終わらないうちに、腕輪から強大な魔力が溢れ出てきた。そして、小さな魔石から、何か混ざり合ったジェルのようなものがシュルシュルと出てきたかと思うと、空中で形を変え、赤と黒の派手なボディスーツを着た少女になって降りてきた。
「久しぶりじゃのう、主殿」
ルーシーはそう言って、意味不明なポーズをとりながら俺に微笑んだ。
「ああ、久しぶり。どうだ、ダンジョンの経営は順調か?」
俺の問いに、ルーシーは踊るように一回転した後、顔と胸を反らせてにやりと笑った。
「ふふん、もちろんじゃ。主殿にも見せてやりたいぞ。ダンジョンの入り口の横には、街の者たちが我の彫像を建ててくれてのう、たくさんの供え物を捧げてくれておる。ダンジョンに挑戦する者たちも、日に日に増えておるのじゃ。もちろん、我も、ダンジョンが楽しくなるように毎日改良を続けておるぞ。昨日は……」
ルーシーは、こうしてひとしきり自慢話を語った。
俺も、黙ってその話を聞いてやった。そして、ようやく話が一段落したところで、彼女にこう言った。
「そうか。楽しくやっているようで、何よりだ。さて、今日来てもらったのは、お前にちょっと手伝ってもらいたいことがあるからだ。その前に、聞きたいことがあるのだが、〝魔道具〟について、何か知っているか?」
「魔道具?……ふむ、ああ、記憶にあったぞ……」
ルーシーは少し考えてから頷いた。おそらく、彼女の記憶は、魔素に含まれた過去の様々な人々の断片的な記憶なのだろう。
「……かつて、バルセン王国には、国の創立者であるリンド・バルセンとその妻である黒龍の化身アレッサと彼らの子どもたちが住んでおった。国民である獣人たちは、魔法を使えなかったが、バルセンとアレッサ、子どもたちは強大な魔法使いだったのじゃ。魔道具を初めて作ったのは、子どもたちの中の長女セリーナじゃ。彼女は優しく賢い子でのう、獣人たちの生活が便利になるようにと、いくつかの魔道具を作って獣人たちに渡したのじゃ。だが、それが悲劇の始まりであった……」
ルーシーが語った話を要約すると、次の通りだ。
魔道具を与えられた獣人たちは、大いに喜び感謝したが、やがて、その所有と使用について争いが始まった。まあ、数が限られているので当然そうなるだろう。それを憂いた王のバルセンは、所有と使用についての決まりを定めたが、それでも争いは絶えなかった。
そこで、バルセンは、自分たちの存在が争いを引き起こす元凶であると悟り、家族を引き連れて遠い辺境の島へ去ったという。
「ふむ、なるほどな……実はな……」
俺は彼女の話を聞き終えると、今、この島で起こっていることを簡単に話した。
「……というわけだ。もしかすると、その魔道具は、セリーナが残したものかもしれないな」
「いや、多分違うぞ、主殿。セリーナが作ったのは、生活のための魔道具じゃ。そんな、物騒なものを作るはずはない。だが、考えられることは、バルセンの子孫たちが作った可能性じゃな」
ルーシーの言葉に、俺は納得して頷いた。そして、ある考えがひらめいた。
「ああ、そうか。ちなみに、その子どもたちは、どんな見た目をしていたのだ?」
「見た目か?」
ルーシーは不思議そうに問い返した後、何かを思い出すように下を向いた。
「そうじゃのう、ああ、全員髪が白かったらしいのう。そして、セリーナと末の女の子は目の色が青かったが、真ん中の男の子は赤い目をしていたそうじゃ」
俺は、その言葉で確信した。おそらく、バルセンの子孫が、《魔族》と呼ばれる者たちだ。そして、ラビンに魔道具を渡したのも魔族の者に違いない。
「なあ、ルーシー、その魔道具の騎士と戦ってみたいか?」
俺の問いに、ルーシーは大きな目を見開いて、嬉し気ににやりと笑った。
「戦わせてくれるのか、主殿?」
「ああ、いいぞ。ただし、最初から大魔法をぶっ放したりするなよ。その鎧騎士が、どの程度の強さでどんな攻撃をするのか、見てみたいからな」
「了解じゃ。適当に遊んでやるのじゃ」
「よし、じゃあ、その時になったら、また呼び出すから、いったん帰っていてくれ」
俺の言葉に、ルーシーは不満げだったが、仕方なく、またシュルシュルと流体化して腕輪の魔石の中へ吸い込まれていった。
俺は、拳を握りしめて気合を入れ直すと、部屋から出ていった。
♢♢♢
58
あなたにおすすめの小説
【完結】魔法大戦 〜失われた古代魔法で無双する!〜
加瀬 一葉
ファンタジー
王立魔法学校。高等部に編入してきた冴えない生徒ラフィト。エリートが集うこの学校で、辺境出身のラフィトは落ちこぼれの劣等生なのだが……。
実は彼は、失われたはずの古代魔法を操る一族の末裔。魔族の脅威が増す時代に、ラフィトは人類を救うことができるのか?
過去と現在が交錯する、魔法ファンタジー。
魔力ゼロの英雄の娘と魔族の秘密
藤原遊
ファンタジー
魔法が支配する世界で、魔力を持たない少女アリア・マーウェラ。彼女は、かつて街を守るために命を落とした英雄的冒険者の両親を持ちながら、その体質ゆえに魔法を使えず、魔道具すら扱えない。しかし、彼女は圧倒的な身体能力と戦闘センスを武器に、ギルドでソロ冒険者として活動していた。街の人々やギルド仲間からは「英雄の娘」として大切にされつつも、「魔力を捨てて進化した次世代型脳筋剣士」と妙な評価を受けている。
そんなある日、アリアは山中で倒れていた謎の魔法使いイアンを助ける。彼は並外れた魔法の才能を持ちながら、孤独な影を背負っていた。やがて二人は冒険の中で信頼を深め、街を脅かす魔王復活を阻止するため、「カギ」を探す旅に出る。
しかしイアンには秘密があった。彼は魔族と人間の混血であり、魔王軍四天王の血を引いていたのだ。その事実が明らかになったとき、アリアは「どんな過去があっても、イアンはイアンだよ」と笑顔で受け入れる。
過去に囚われたイアンと、前を向いて進むアリア。二人の絆が、世界を揺るがす冒険の行方を決める――。シリアスとギャグが織り交ざる、剣と魔法の冒険譚!
落ちこぼれの【無属性】魔術師、実は属性そのものを定義する「概念魔法」の創始者だった
風船色
ファンタジー
「魔法とは才能(血筋)ではなく、記述されるべき論理(ロジック)である」
王立魔導学院で「万年最下位」の烙印を押された少年、アリスティア・レイロード。属性至上主義のこの世界で、火すら出せない彼は「無属性のゴミ」と蔑まれ、ついに卒業試験で不合格となり国外追放を言い渡される。
しかし、彼を嘲笑う者たちは知らなかった。アリスティアが、既存の属性魔法など比較にならないほど高次の真理――世界の現象を数式として捉え、前提条件から書き換える『概念魔法(コンセプト・マジック)』の使い手であることを。
追放の道中、彼は石ころに「硬度:無限」の概念を付与し、デコピン一つで武装集団を粉砕。呪われた最果ての森を「快適な居住空間」へと再定義し、封印されていた銀嶺竜の少女・ルナを助手にして、悠々自適な研究生活をスタートさせる。
一方、彼を捨てた王国は、属性魔法が通用しない未知の兵器を操る帝国の侵攻に直面していた。「助けてくれ」と膝をつくかつての同級生や国王たちに対し、アリスティアは冷淡に告げる。
「君たちの誇りは、僕の昼寝より価値があるのか?」
これは、感情に流されない徹底した合理主義者が、己の知的好奇心のために世界の理を再構築していく、痛快な魔導ファンタジー。
魔道具頼みの異世界でモブ転生したのだがチート魔法がハンパない!~できればスローライフを楽しみたいんだけど周りがほっといてくれません!~
トモモト ヨシユキ
ファンタジー
10才の誕生日に女神に与えられた本。
それは、最強の魔道具だった。
魔道具頼みの異世界で『魔法』を武器に成り上がっていく!
すべては、憧れのスローライフのために!
エブリスタにも掲載しています。
死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜
のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、
偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。
水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは――
古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。
村を立て直し、仲間と絆を築きながら、
やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。
辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、
静かに進む策略と復讐の物語。
ひっそり静かに生きていきたい 神様に同情されて異世界へ。頼みの綱はアイテムボックス
於田縫紀
ファンタジー
雨宿りで立ち寄った神社の神様に境遇を同情され、私は異世界へと転移。
場所は山の中で周囲に村等の気配はない。あるのは木と草と崖、土と空気だけ。でもこれでいい。私は他人が怖いから。
田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛
タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】
田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる