リサシテイション

根田カンダ

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第35話 激突

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ーーー上空からクリーチャー!警戒を!ーーー


 《シマー》サーバービルに突入しようとしていた嶋達に、『アリサ』から警告が入った。


 嶋は視力の望遠モードを最大にして空を見上げた。


「にゃんにゃん(レオ・テスカポリ)にヤラれたヤツ!
 ここは俺1人で!みんなはビル制圧を!」


「智彦さん!」


 美保子も残ろうとしたが、レオンに手を引かれ


「社長なら大丈夫です!それに、サーバー破壊には貴方が必要だ!
 一刻も早くサーバーを破壊する事が、社長の助けにもなります!」


 ボディーガード達は最初の作戦を捨て、北からの一点突破に打って出る事にした。


「北から一点突破!フロア制圧後、2名を残し侵攻!
 地下4階まで一気に行くぞ!」


 ボディーガード達は、美保子とエンジニア達を囲む様に突入して行った。
 彼等を見送り再び空を見上げた時、ドム・ボロスの姿は肉眼で確認出来る程近付いていた。


 嶋は背中の2本の日本刀を抜き


「かかって、来いやぁぁぁっ!」


 腰を落とし太腿とふくらはぎに限界まで力を溜め、ドム・ボロスに向けて大ジャンプを敢行した。
 ジャンプして真っ直ぐ向かってくる嶋に、ドム・ボロスは胸から長い首を真っ赤に焼き、高温の火球を一気に吐き出した。
 嶋は刀をクロスし受けたが、火球の威力に押され、地面に叩きつけられた。


「ぐっ…ぐ、ぐっ…!クソったれが…。」


 火球は嶋をそのまま押し潰し、地面を深く抉って爆発した。


 爆煙と粉塵が立ち上るが、ドム・ボロスは尚も降下しながら、次弾の火球の溜めに入った。


「トカゲ如きが、人間様舐めるなぁぁぁっ!人間じゃないけどな!」

 
 厳密に言えば嶋は『人間』ではない。
 嶋は爆煙の中から大音量の叫び声と共に、煙の尾を引きながら再び飛び上がった。
 嶋はドム・ボロスに突進しながら、眼前にクロスに構えた刀を背中まで振りかぶり


「お前は、バッテンじゃぁぁぁっ!」


 嶋はクロスに振りかぶった刀を、左右に腕を開く様に渾身の力で振り下ろし、ドム・ボロスは臨界まで溜めた火球を吐き出した。
 クロスの斬撃と火球がぶつかった瞬間、低い衝撃音が響いた。
 斬撃は火球を斬り裂き進み、火球は斬り裂かれながらも、嶋を目指して進んだ。
 嶋は再度火球の直撃を受け、弾き飛ばされ、またも地面に叩きつけられた。
 斬撃はドム・ボロスの頭部のツノに弾かれ上空に消えたが、ドム・ボロスも弾かれ地面に落下した。
 地面に叩きつけられた嶋は、両脚と右腕を失っていたが、ナノマシンによってすぐに再生した。
 ドム・ボロスもすぐに体制を立て直し、ゆっくりと嶋を品定めする様に右にまわり、巨大な咆哮をあげた。
 衝撃波を生んだドム・ボロスの咆哮は、嶋を後ろのビルの壁に吹き飛ばした。
 十字型のビルの東棟が大きな音で崩れさり、崩れた瓦礫はそのまま嶋を押し潰した。


 嶋がドム・ボロスと会敵したと同時に、レオンと本田の2人がビルに突入した。
 レオンと本田は、嶋とドム・ボロスが戦闘突入し、警備の意識が南に向く瞬間を狙ったのだ。
 北の壁を爆破し、突入と同時に中央監視ブースの2名を無力化、続いて正面南棟端の警備員2名を無力化。
 北階段前の警備員は、壁の爆破により既に無力化されていた。
 2名のボディーガードを残し、レオンはそのまま北棟階下への階段を駆け下り、地下1階階段前の2名を無力化した。
 同時に中央ブースからの射撃を受けたが、気にせずそのまま中央ブースに向け乱射しながら突進した。
 ナノマシンの身体に、実弾は効かない。
 中央ブースに達したレオンは、正面南の階段口にランチャーを発射、南階段を通行不能にし、次に東、西と破壊し通行不能にした。
 その間に本田は地下2階へと突入していた。
 レオンと同じ様に警備員を無力化し、階段と4基のエレベーターを破壊した。
 美保子とエンジニア達が地下2階に到着と同時に、東棟が轟音と共に崩れ去った。
 嶋がドム・ボロスに弾き飛ばされた時だった。
 地下には余波の振動が響き渡り、状況確認に本田は通信を開いた。


『何があった!』


『こちらB1、わからない!グランドフロアー無事か?』


『グランドフロア!東棟倒壊!社長の戦闘と思われる!』


『了解!そのまま警戒頼む!』


『了解!』


 各フロアとの通信を終わらせた後、本田は『アリサ』に通信を入れた。


[『アリサ』、敵ナノマシン部隊はどこだ!?]


ーーー地下4階に現在20名。地上に400名出現!残りは私がデバイスで破壊しております。ーーー


『グランドフロア!地上で400実体化!社長の援護頼む!
 B1!ビルに雪崩れ込んだ奴は、階段口で撃破頼む!』


『『了解!』』


 レオンは地下1階階段出口に、電磁ネットを張った。
 レオンと共に地下1階に残った横井は、壁を背に両脚を踏ん張りサブマシンガンを構えた。
 MP40サブマシンガン。9ミリ弾を毎分500発の速度で打ち出す。


「骨董品じゃねぇか(笑)」


 レオンは横井のサブマシンガンを見て笑った。


 MP40は、第二次世界大戦時にドイツが使用したサブマシンガン。


「乱射なら、これだろ(笑)生身で乱射はハードでも、この身体なら1時間でも乱射に耐えれる(笑)」


「違ぇねぇ(笑)」


 レオンもアサルトライフルをフルオートで構えた。
 どちらも弾丸は、命中時に電磁パルスを発生させ、ナノマシンを完全破壊する。


『こちら地上!社長がいねぇ!ヤラれたか知んねぇ!
 敵400も、クリーチャーに吸収されちまった!
 デッカくなっちまった!破壊を急いでくれ!どんだけモツか、わかんねぇ!』


『B1、了解!』


 レオンが返事をした時、横井が叫んだ。


「レオン!ここはいい!下へ行け!
 俺らがヤラれる前に、サーバー破壊しろ!」


 レオンは頷いて地下へ向かった。




 地上では2人のボディーガード、松本と黒瀬が、ドム・ボロスへ向け銃を乱射していた。


「野郎!パルス弾が効かねぇ!『アリサ』!どうなってる!社長は無事なのか!」


ーーーマスターは間もなく再生します。
 クリーチャーにパルスは効いてますが、その巨体により効果が視認しづらいだけです。パルス弾は確実にナノマシンを破壊しています。ーーー


「社長無事ならいいや!松本!ランチャーぶっこめ!」


 黒瀬はドム・ボロスの顔面を集中攻撃し、意識を自身に向けさせた。
 だかランチャーの時間稼ぎをする間もなく、咆哮で吹き飛ばされた。


「黒瀬!野郎!」


 ランチャーを構えた瞬間、松本は尾の強烈な一撃で吹き飛ばされた。
 黒瀬は上半身が消失し、松本は胴を破られた。
 だが松本はそれでもランチャーを構え直し、ドム・ボロスに向け発射した。
 ドム・ボロスの太い首の一部を吹き飛ばしたが、すぐに他のナノマシンがカバーし首は繋がった。
 同時に黒瀬と松本も再生した!


「「野郎!ぶっ殺してやる!」」


 2人が同時に叫んだ時、上空から悪魔の様な笑い声が響いて来た。
 

「わははははっ!痛ぇんだよ、バカ野郎!わははははっ!痛くねぇけど!」


 2人だけでなく、ドム・ボロスも上空を見上げた。
 見上げた先には嶋が高速で落下して来ていた。
 


「黒瀬さん、松本さん!地下へ!
 こいつは私の獲物です!わははははっ!」


「「社長!了解しました!」」


 黒瀬と松本は、ビル地下へと向かった。
 瓦礫に破壊された嶋は、遥か上空で再生し、自身を『神の杖』の様に使い、ドム・ボロスへ特攻をしかけたのだ!


「喰らいやがれ!クソトカゲ!」


 高速で落下した嶋は、ドム・ボロスの巨大な胴を貫いた。
 そのまま地面をも深く抉り、ドム・ボロスは巨大な咆哮をあげ、ゆっくりと倒れ込んだ。
 嶋は所々を破損し、再生しながら地中から這い上がり、倒れたドム・ボロスを見て勝ち名乗りをあげたが、ドム・ボロスもすぐに再生し、空へと飛び上がった。


「生きてんじゃねぇか!死んだふりしてんじゃねぇ!」


 ドムを追い空を見上げた時、嶋の身体をガトリングが貫いた。
 身体を引き裂かれた嶋が倒れる時、視界の端に米空軍機のF44が2機、大きく旋回する姿が見えた。


「米軍来た!急いで下さい!」


 倒れながら再生した嶋が続いて見たものは、ドム・ボロスにF44が噛み砕かれる瞬間だった。


「トカゲーッ!何でも有りか!」


 ドム・ボロスはもう1機のF44をも噛み砕き、無差別に地上の建物を攻撃し始めた。
 2000年代初頭から廃れ始めたシリコンバレーとは言え、やはりまだ数万の労働者が存在していた。


「ふざけやがって!」


 嶋が腰を落とし、『トカゲ』に向かってジャンプしようとした時、またも砲弾が身体を貫いた。
 今度は戦闘機からではなく、地上部隊の戦車の砲弾だった。
 嶋達を殲滅する為に、カリフォルニアフォート・アーウィンの第11機甲騎兵連隊が動員されたのだった。
 

「敵はすぐに再生する!砲撃を止めるな!撃って撃って、撃ちまくれ!」


 指揮官と思われる男が、通信機のマイクに怒鳴り散らしていた。
 瞬時に嶋は再生したが、戦車砲やガトリングの集中砲火を浴び、まともに再生が出来ないでいた。


[こいつら、アメリカ国民が殺されてるのに!]


 アメリカ軍は、シリコンバレーを無差別に攻撃するドム・ボロスを放置し、嶋への攻撃に集中していた。
 だが一瞬の攻撃の隙を突いて嶋は再生し、1両の戦車の砲台に飛び移った。


「攻撃やめい!味方に当たる!」


 味方と戦車を守っても、合衆国国民を守る気は無いようだった。


「民間人を避難させろ!」


 嶋はそう叫んで、ドム・ボロスに向けてジャンプをした。
 その嶋を、ミサイルが直撃。


[クソったれ!]


 携帯型地対空ミサイルを構える米兵を視界の端に捉え、嶋は燃え盛りながら落下した。



 その頃ビルの地下2階では、横井に合流した松本と黒瀬が、新たに現れた米軍兵と戦闘になっていた。
 だがビルに雪崩れ込んだ兵士達の装備では、ナノマシンの横井達にダメージを与える事が出来ず、階段影に足止めさせられていた。


『こちらB2!米軍と戦闘中!外の社長も気になる!急いでくれ!』


 地下4階では、本田達が《シマー》ナノマシン兵を殲滅し、美保子と飯塚達がサーバールームへの入室セキュリティーを解析中だった。
 だが、


「智彦さんのセキュリティーが入ってる!」


 美保子が絶望した様に叫んだ。
 それでも美保子達は諦めず解析を続けた。
 その時『アリサ』から通信が入った。


ーーーマスターが大破しました。再生に数分を要します。
 美保子様始めエンジニア方々の護衛6名残し、他の方はB2の米兵を撃破し、マスターの援護に向かって下さい!
 尚地上には米軍中隊規模が展開中でF44が新たに4機。敵クリーチャーも健在です。
 CPU制御の兵器は私がハッキングします。皆様は歩兵を制圧願います。ーーー


 本田は6名のボディーガード達を残し、残りのレオン達を連れ階段を駆け上がった。
 B2で横井達と合流、階段を塞ぐ米兵達を殲滅して地上に躍り出た。
 そこで本田達の目に映ったのは、悍ましい光景だった。
 ビル周辺を包囲していたであろう戦車の残骸や、無惨に惨殺された兵士達。
 

「クリーチャーはアメリカ側じゃねぇのか…。」


 ただ生き残った米兵達はまだ戦っていた。
 本田達は米兵とドム・ボロスの間に割って入り


「クリーチャーは任せろ!お前らは民間人を避難させろ!
 アメリカ軍人なら、アメリカ人を守れ、バカ野郎!」


 本田も元自衛隊員として、日本国民を守る事に誇りを持っていた為、米軍の有様に怒りを感じていた。


 本田達はドム・ボロスを取り囲む様に展開し、十字砲火を浴びせた。
 

[すみません、派手にヤラれました…。トカゲの火球と咆哮には気をつけて下さい。]


 嶋からの通信が入った。


[ありがとうございます!社長は再生に専念して下さい!]


 そう通信した瞬間、火球が本田に向かって吐き出された。
 本田は横っ飛びで火球から逃れ、同時にパルスランチャーを撃ち込んだ。
 胸にランチャーの直撃を喰らったドム・ボロスは、胸部に大きな窪みが出来、再生まで火球も咆哮も出せなくなった。


「胸が弱点だ!胸に集中砲火!」


 ドム・ボロスは堪らず空へと逃れた。
 だが高くは飛ばず、低空で旋回を始めた。
 旋回の速度は徐々に早まり、同時に竜巻を呼び起こした。


「退避!ビルの陰に隠れろ!」 


 本田達がビルの陰に駆け込もうとした時、目前に負傷し動けない米兵か数人いた。


「クソったれが!」


 本田達は米兵達を抱え、辛うじてビルの陰に飛び込んだ。


[そのまま陰にいて下さい!]


 嶋から通信が入った。
 再生した嶋は再び空へ飛び上がり、旋回するドム・ボロスに向かい日本刀をクロスに構え、回転しながらドリルの様に突っ込んだ。
 背中から腹に向けて貫通した嶋は、着地すると、その勢いの反動と両脚のバネを使い、再びドム・ボロスに向けジャンプした。
 ドム・ボロスは旋回をやめ、逃げ道を求め上空へと進路を変えた。
 本田は負傷米兵の無線を掴み、マイクへ向かって怒鳴りつけた。


「動ける米兵は、民間人を避難させろ!クリーチャーは俺達がやる!」


「お前らは、敵じゃないのか?」


「知らねぇよ!民間人を巻き込みたくねぇだけだ!
 だが攻撃してくるなら、叩き潰す!」


 この後に及んで敵か味方かなど、本田にはどうでも良かった。
 嶋にとってもどうでも良い筈だ。ただ誰であれ、攻撃してくる者には命の保証はしない。
 それが嶋達だった。
 

「本田!社長がヤラれた!落下してくるぞ!」
 

 レオンの叫びに、本田は上空を見上げた。
 だがドム・ボロスは、煙の尾を引き落下する嶋に背を向けていた。
 

「何があった!?」


「地上からミサイルだ!米軍のスティンガーだ!南から飛んで来た!」


 嶋に背を向け飛行してたドム・ボロスは空中で身を翻し、落下する嶋の後方から迫る中隊規模の軍勢に火球を吐き出した。


「野郎、再生しやがった!」


 火球は本田達の数キロ南の地上に落下し爆発した。
 火球の直撃を喰らったアメリカ陸軍中隊は壊滅した。
 続いてドム・ボロスは、無差別に地上に火球を連続して吐き出した。
 本田は先程の米兵の襟首を掴み


「米軍は国民守る気がねぇのか!クソったれヤンキーッ!」
 

[本田さん、私は大丈夫です!一般人の避難を最優先して下さい!]


 嶋は落下しながらも、本田に通信した。


「散開!一般人の避難優先!」


 本田達10人は散開し、一般人の避難誘導に向かった。
 その場に取り残された米兵達は顔を見合わせ、通信機のマイクを握った。


「こちら第11機甲騎兵連隊第2中隊所属第1小隊ハンクス中尉だ。
 敵は日本人ではない!敵はブラック・ドラゴン!(ドム・ボロス)!
 我々は日本人に助けられ、我々を助けた日本人は、我が合衆国国民の救助に向かった!
 繰り返す!敵は日本人ではない!
 敵はブラック・ドラゴン!
 第2中隊残存兵及び後続部隊に要請する!シリコンバレー周辺一般人の避難及び救助を要請する!」


 その通信の数分後、アメリカ合衆国陸軍元帥ウィリアム・バーナードが、陸軍将官達と共に姿を消した。


 

 

 

 
 

















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