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授業を終えると真っ先に後ろのドアから講義室を出た。
階段に向かおうとすると、通せんぼするように両手を広げた巧が立っていた。
「なんで無視?」
右手に握っているスマホを指さす。
「……電源切ってた」
「やっぱな。心配するだろうが。いますぐ電源入れなさい」
ズボンのポケットからスマホを取り出す。
「樹奈はもう帰ったから学食寄ってこ。俺、腹空いててさ」
彼と並んで歩きながら電源を入れる。巧からのメッセージ。茉美からは留守電が入っていた。
『ご報告ありがと。でも樹奈から聞いて知ってた。どんまいだ!』
茉美からの言葉はそれだけだった。ちょっと声が笑っていたので、救われた。
やっぱり樹奈、話してたのか。そりゃそうだよな。
巧からのメッセージにはこうあった。
(やっぱ告白したんだ。勘違いってなに?)
「樹奈と話した?」
僕のいない場所でどんな会話がなされたんだろう。
「ちょっとね。私が悪いとか言ってたな」
「そういうわけじゃないんだけどね」
「ま、気にしてない感じだったから、普通にしてたらいいんじゃん」
「……うん」
学食で巧はからあげ丼を頼み、僕はコーヒーを買った。
目の前でボリュームのあるからあげ丼をかきこむ巧を見ながら、僕は真っ黒なコーヒーをすする。砂糖とミルクもらってくればよかった。
「このあとバイト?」
「そ。今日も稼がせていただきますわ」
巧は配達員のバイトをしている。体力を使うせいかたくさん食べても太らない。
「うちのファミレス、半年後に潰れるらしい」
僕がぽつりとそう言うと、巧は顔を上げた。
「まじで。なんで?」
「売り上げがよくないらしい」
「ふん。じゃ、良も配達の仕事しようよ」
「同じ系列のカレー屋にうつると思う。近所だし」
「カレーかぁ。まかない出るのかな」
「どうだろ」
半分ほど食べてから、巧は一息ついた。
「茉美から連絡きてた?」
「うん。樹奈から聞いてたって」
「まあ、そうだろうなぁ。いつも一緒にいるし、あの二人」
「だね」
巧はからあげを箸でつかむと、僕に差し出した。僕は首を横に振る。巧は見せつけるようにからあげを自分の口に入れると、僕の顔を見つめたまま咀嚼した。
「勘違いってさ、どういう勘違いしたの?」
僕は樹奈に何度も誘われて二人でコーヒースタンドに行った話をした。
初耳だったらしく、巧は驚いた顔をしている。
「それで樹奈が自分に気があるって思ったのか。俺もそんなことされたらコクってたわ。こわー」
巧の言葉にほっとした。やっぱ、そうだよね。
「俺に一言相談してくれればなー。樹奈に探り入れてやったのに」
巧に話さなかったのは、抜け駆けしたかったからだ。普段から僕に「樹奈ってほんとに可愛いよな」ってよく話してくる。実際彼女をデートに何度も誘っているけれど、うまくあしらわれている状態だ。
樹奈といい感じだと話したら邪魔されるかも、と思ってしまった。
「樹奈って好きな人いるのかな。まさか付き合ってる男とかいないよな?」
ご飯粒を口のまわりにつけながら、巧が顔をしかめる。
「知らない」
樹奈は自分の恋愛話をほとんどしない。高校時代に少し付き合っていたけど、すぐに別れたとは言っていた。それぐらいだ。
「茉美には話してそうだよなー」
「巧はどうなの。好きな子とか」
「俺? 俺は全然。彼女欲しいけど、うまくいかないわ」
「樹奈は?」
巧はおかしそうに笑って、残りのからあげ丼をかきこんだ。
「無理でしょ。俺なんかに興味ないよ」
「そうか……」
「いい子だから、変なのにはひっかかって欲しくないよなぁ」
それはそうだけど、樹奈にしてみれば余計なお世話だろう。
巧がバイトで先に帰ったあと、茉美にメッセージを送った。
(ならよかった(笑顔の絵文字)また大学でね)
送信したら、すぐに既読の表示がついた。
でも返信はない。
階段に向かおうとすると、通せんぼするように両手を広げた巧が立っていた。
「なんで無視?」
右手に握っているスマホを指さす。
「……電源切ってた」
「やっぱな。心配するだろうが。いますぐ電源入れなさい」
ズボンのポケットからスマホを取り出す。
「樹奈はもう帰ったから学食寄ってこ。俺、腹空いててさ」
彼と並んで歩きながら電源を入れる。巧からのメッセージ。茉美からは留守電が入っていた。
『ご報告ありがと。でも樹奈から聞いて知ってた。どんまいだ!』
茉美からの言葉はそれだけだった。ちょっと声が笑っていたので、救われた。
やっぱり樹奈、話してたのか。そりゃそうだよな。
巧からのメッセージにはこうあった。
(やっぱ告白したんだ。勘違いってなに?)
「樹奈と話した?」
僕のいない場所でどんな会話がなされたんだろう。
「ちょっとね。私が悪いとか言ってたな」
「そういうわけじゃないんだけどね」
「ま、気にしてない感じだったから、普通にしてたらいいんじゃん」
「……うん」
学食で巧はからあげ丼を頼み、僕はコーヒーを買った。
目の前でボリュームのあるからあげ丼をかきこむ巧を見ながら、僕は真っ黒なコーヒーをすする。砂糖とミルクもらってくればよかった。
「このあとバイト?」
「そ。今日も稼がせていただきますわ」
巧は配達員のバイトをしている。体力を使うせいかたくさん食べても太らない。
「うちのファミレス、半年後に潰れるらしい」
僕がぽつりとそう言うと、巧は顔を上げた。
「まじで。なんで?」
「売り上げがよくないらしい」
「ふん。じゃ、良も配達の仕事しようよ」
「同じ系列のカレー屋にうつると思う。近所だし」
「カレーかぁ。まかない出るのかな」
「どうだろ」
半分ほど食べてから、巧は一息ついた。
「茉美から連絡きてた?」
「うん。樹奈から聞いてたって」
「まあ、そうだろうなぁ。いつも一緒にいるし、あの二人」
「だね」
巧はからあげを箸でつかむと、僕に差し出した。僕は首を横に振る。巧は見せつけるようにからあげを自分の口に入れると、僕の顔を見つめたまま咀嚼した。
「勘違いってさ、どういう勘違いしたの?」
僕は樹奈に何度も誘われて二人でコーヒースタンドに行った話をした。
初耳だったらしく、巧は驚いた顔をしている。
「それで樹奈が自分に気があるって思ったのか。俺もそんなことされたらコクってたわ。こわー」
巧の言葉にほっとした。やっぱ、そうだよね。
「俺に一言相談してくれればなー。樹奈に探り入れてやったのに」
巧に話さなかったのは、抜け駆けしたかったからだ。普段から僕に「樹奈ってほんとに可愛いよな」ってよく話してくる。実際彼女をデートに何度も誘っているけれど、うまくあしらわれている状態だ。
樹奈といい感じだと話したら邪魔されるかも、と思ってしまった。
「樹奈って好きな人いるのかな。まさか付き合ってる男とかいないよな?」
ご飯粒を口のまわりにつけながら、巧が顔をしかめる。
「知らない」
樹奈は自分の恋愛話をほとんどしない。高校時代に少し付き合っていたけど、すぐに別れたとは言っていた。それぐらいだ。
「茉美には話してそうだよなー」
「巧はどうなの。好きな子とか」
「俺? 俺は全然。彼女欲しいけど、うまくいかないわ」
「樹奈は?」
巧はおかしそうに笑って、残りのからあげ丼をかきこんだ。
「無理でしょ。俺なんかに興味ないよ」
「そうか……」
「いい子だから、変なのにはひっかかって欲しくないよなぁ」
それはそうだけど、樹奈にしてみれば余計なお世話だろう。
巧がバイトで先に帰ったあと、茉美にメッセージを送った。
(ならよかった(笑顔の絵文字)また大学でね)
送信したら、すぐに既読の表示がついた。
でも返信はない。
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