物の怪職業斡旋稼業、継ぎました。

上城 樹

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第一章 遺産相続しました。

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 祖母から手紙が届いて一週間過ぎたころ。
 わたしは焦っていた。
 両親が勝手にお見合いをセッティングしはじめたのだ。
 就職できる兆しもなく、恋人もいない娘の将来を案じての一計だったが、本人の意志を無視して話を進めるのはどうかとおもう。
 見合い相手の写真も見たが、正直タイプじゃなかった。
 そもそも、離婚してまだ一年過ぎていない娘にお見合いって変でしょう。

 このままだと、強制的に結婚させられそうだ。
 危機感をもったわたしは、祖母から受け継いだ遺産を紙にざっくり書き出し計算。
 ざっと十数年ぐらいなら働かなくても生活できることが判明し心を決めた。

 よし、実家を出ておばあちゃんから受け継いだ家に住もう逃げよう

 そうと決まれば行動は早い方がいい。
 段ボールに荷物を纏め、母の車を借り必要になりそうなものを買いにショッピングモールへ。
 荷物を車のトランクに入れ、カートを返しに行く途中に宝くじ販売店があった。
 
〝騙されたと思って宝くじを買ってごらんなさい。きっといいことがあるわよ〟

 ふと、祖母の手紙に書かれていたことが脳裏によぎり、普段なら一枚しか購入しない宝くじを奮発して三枚買ってみた。

 そしてドキドキの当選番号発表日。

 おばあちゃんパワーで一千万とか当たったら嬉しいな、なんてのんびり考えながら、いつもと同じようにパソコンの画面に表示された当選番号と宝くじの番号を見比べ――

 わたしは石像のように固まった。

 人間予想外の事態に遭遇するとフリーズするらしい。

 息を大きく吸い込み心を落ち着かせて、もう一度当選番号と宝くじの番号を見比べる。

「……まさか」

 いや、まだだ。まだ、見間違えの可能性がある。
 はやる気持ちを抑え、もう一度確認を――

「…………うん」

 いやいやいや、目がぼやけている可能性もある。
 目薬をさしてからもう一度確認だ。

「…………おぉ」

 自分の頬を力を込めて抓る。

「いひゃい」

 自分でやったことだが、頬がとてつもなく痛い。
 だが、これで確信が持てた。

 ぎゅっと宝くじを握りしめ、天を仰ぐ。

「……奇跡だ。奇跡がおきたぞ」

 緊張で喉がカラカラに乾き掠れた声が出た。

 昔、親戚の叔父さんが言っていた「いいか、宝くじは夢だ。夢を買うんだ。当たるなんて思っちゃいけない。それは隕石が直撃するぐらいありえないことだ」と。

 その隕石が直撃するぐらいありえないことが、いま、現実に、目の前で、おこっている。
 そう、宝くじが当たったのだ。
 しかも一等が……。
 これだけでもすごいことなのに、奇跡はさらに続いた。

「こ、これも、当たってる」

 信じがたいことに購入した三枚すべて当たっていた。
 連番で購入したのだから当たり前かもしれないが、一等前後賞全部当選……。

「……総額おいくら」

 えぇっと、一等が五億で前後賞が一億だから……合計七億……七億ですと!

 見たこともない大金に眩暈が……。
 とりあえず、当たりくじ三枚は紛失しないように財布の中にしまっておこう。

 無言でパソコンを立ち上げ、高額当選した時どうしたらいいのかを検索。
 以前何かで宝くじ当選すると、強盗されたり、言ってないのに隣人が当たったことをしっていたり、寄付の電話が鳴りまくったりするって読んだ気がする。
 できる対策は打っておかないと。

 あ、家族から情報が漏れることもあるって書いてある。

 ……誰にも宝くじ当選したこと言わないでおこう。

 お金を取りに行く場所が近所の銀行だと知り合いに見られて発覚することがある? 

 ……県跨いだ遠くの銀行で手続するか。

 当選者の浮かれた態度でばれる。

 ……平常心で行動できるように頑張ろう。

 この日、おばあちゃんの仏壇の前に座り感謝の祈りを二時間ほど捧げた。 
 家族に白い眼で見られたが気にしない。

 ありがとう! おばあちゃん!! これで安心して生きていけるよ!

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