3 / 3
第一章 遺産相続しました。
3
しおりを挟む
そんなこんなで、電車を乗り継ぎ、わたし以外誰も乗っていないバスにゆられて一時間三十分。
一週間旅行用のキャリーバック片手にやってきましたよ、新しい我が家に。
「今日からここに住む、の……か?」
相続した家を目の前に口元が引きつる。
見た瞬間思ったことは、広い、デカイ、掃除大変そう。だ。
杉浦と達筆な字が書かれた木製の表札がかけられている立派な門を茫然と眺める。
敷地面積どれだけあるの、と尋ねたくなるほど長い塀。
わたしの身長の二倍はあろうかという門から見えるのは美しい日本庭園。
整えられた松に巨大な庭石、維持費にいくらかかるのだろう……。
見渡す限り視界に映るのは草、木、岩、山の広大な自然。
ご近所さんは一番近くて徒歩1時間の距離に住んでいる齋藤さん一家。
最寄のスーパーは車で片道二時間かかる村にある。
何このお屋敷。
半分以下のサイズでいいから、こんな巨大な家求めてないよ。
そして、ある程度予測していたけどそれを上回る交通の不便さに泣きそうだ。
あぁ、胃が痛くなってきた。
キリキリと痛むお腹を服の上からさすりながら溜め息を一つ。
インスタント食品大量に箱詰めして今日の夕方に届くよう宅配指定しといてよかった。
「何もない所だとは聞いていたけど、ここまでとは…………。早急に、車買わないと」
食糧買い込んでバス停からここまで歩く体力は私にはない。途中で力尽きて倒れる自信がある。
立派な門を潜り、美しい日本庭園を眺めながら玄関を目指す。
うわ、池まであるよ。
あ、錦鯉が跳ねた……なにこの家わたしが住むの絶対場違いだよ。
意識が遠のきそうになるのを必死で繋ぎ留め歩き続ける。
門から玄関まで移動時間五分以上かかる家など初めてだ。
重たいキャリーバックを置き。肩掛けバックからこの家の鍵を取り出し開錠。
「……この鍵、簡単に鍵開けできそうで怖いな」
鈍い鉄色の古い型の鍵を再びバックの中にしまいながら、防犯面を考えると付け替え工事をした方がいいかもしれない。と考える。
まぁ、細かいことは後に考えるとして……今は全ての窓を開けて空気の入れ替えをしてから最低限生活できるよう台所と寝室を掃除だね。
宅配が届くころには終わらせ……られたらいいな。
両頬を軽く叩き気合を入れ、玄関引戸を開けると――
「お帰りなさいませ。主様」
長い黒髪を一つに纏め後ろに流した漆黒の着物に白い羽織を身に着けた綺麗系のお兄さんが三つ指をつき微笑みを浮かべ佇んでいた。
――頭にふわふわ毛並みの獣耳を付けた状態で。
……どちらのコスプレイヤー様で?
完成度の高い獣耳ですね。
おばあちゃんへ
今日、手紙に書いてあった家へ行きました。
するとどうでしょう。玄関開けたらふわふわでぴこぴこ動く可愛らしい獣耳を持ち、整ったお顔の綺麗系着物男子にお出迎えされたのです。
この着物男子はおばあちゃんのお知り合いですか、隠し子ですか、通りすがりの不法侵入コスプレイヤーさんですか。
あなたの孫は、今とても混乱しています。
無茶な話だとは思いますが、できれば手紙に〝見知らぬ美形獣着物男子にお出迎えされた時の正しい対応のしかた〟を書いておいてほしかったです。
一週間旅行用のキャリーバック片手にやってきましたよ、新しい我が家に。
「今日からここに住む、の……か?」
相続した家を目の前に口元が引きつる。
見た瞬間思ったことは、広い、デカイ、掃除大変そう。だ。
杉浦と達筆な字が書かれた木製の表札がかけられている立派な門を茫然と眺める。
敷地面積どれだけあるの、と尋ねたくなるほど長い塀。
わたしの身長の二倍はあろうかという門から見えるのは美しい日本庭園。
整えられた松に巨大な庭石、維持費にいくらかかるのだろう……。
見渡す限り視界に映るのは草、木、岩、山の広大な自然。
ご近所さんは一番近くて徒歩1時間の距離に住んでいる齋藤さん一家。
最寄のスーパーは車で片道二時間かかる村にある。
何このお屋敷。
半分以下のサイズでいいから、こんな巨大な家求めてないよ。
そして、ある程度予測していたけどそれを上回る交通の不便さに泣きそうだ。
あぁ、胃が痛くなってきた。
キリキリと痛むお腹を服の上からさすりながら溜め息を一つ。
インスタント食品大量に箱詰めして今日の夕方に届くよう宅配指定しといてよかった。
「何もない所だとは聞いていたけど、ここまでとは…………。早急に、車買わないと」
食糧買い込んでバス停からここまで歩く体力は私にはない。途中で力尽きて倒れる自信がある。
立派な門を潜り、美しい日本庭園を眺めながら玄関を目指す。
うわ、池まであるよ。
あ、錦鯉が跳ねた……なにこの家わたしが住むの絶対場違いだよ。
意識が遠のきそうになるのを必死で繋ぎ留め歩き続ける。
門から玄関まで移動時間五分以上かかる家など初めてだ。
重たいキャリーバックを置き。肩掛けバックからこの家の鍵を取り出し開錠。
「……この鍵、簡単に鍵開けできそうで怖いな」
鈍い鉄色の古い型の鍵を再びバックの中にしまいながら、防犯面を考えると付け替え工事をした方がいいかもしれない。と考える。
まぁ、細かいことは後に考えるとして……今は全ての窓を開けて空気の入れ替えをしてから最低限生活できるよう台所と寝室を掃除だね。
宅配が届くころには終わらせ……られたらいいな。
両頬を軽く叩き気合を入れ、玄関引戸を開けると――
「お帰りなさいませ。主様」
長い黒髪を一つに纏め後ろに流した漆黒の着物に白い羽織を身に着けた綺麗系のお兄さんが三つ指をつき微笑みを浮かべ佇んでいた。
――頭にふわふわ毛並みの獣耳を付けた状態で。
……どちらのコスプレイヤー様で?
完成度の高い獣耳ですね。
おばあちゃんへ
今日、手紙に書いてあった家へ行きました。
するとどうでしょう。玄関開けたらふわふわでぴこぴこ動く可愛らしい獣耳を持ち、整ったお顔の綺麗系着物男子にお出迎えされたのです。
この着物男子はおばあちゃんのお知り合いですか、隠し子ですか、通りすがりの不法侵入コスプレイヤーさんですか。
あなたの孫は、今とても混乱しています。
無茶な話だとは思いますが、できれば手紙に〝見知らぬ美形獣着物男子にお出迎えされた時の正しい対応のしかた〟を書いておいてほしかったです。
0
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(1件)
あなたにおすすめの小説
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
私も処刑されたことですし、どうか皆さま地獄へ落ちてくださいね。
火野村志紀
恋愛
あなた方が訪れるその時をお待ちしております。
王宮医官長のエステルは、流行り病の特効薬を第四王子に服用させた。すると王子は高熱で苦しみ出し、エステルを含めた王宮医官たちは罪人として投獄されてしまう。
そしてエステルの婚約者であり大臣の息子のブノワは、エステルを口汚く罵り婚約破棄をすると、王女ナデージュとの婚約を果たす。ブノワにとって、優秀すぎるエステルは以前から邪魔な存在だったのだ。
エステルは貴族や平民からも悪女、魔女と罵られながら処刑された。
それがこの国の終わりの始まりだった。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
(完結)私より妹を優先する夫
青空一夏
恋愛
私はキャロル・トゥー。トゥー伯爵との間に3歳の娘がいる。私達は愛し合っていたし、子煩悩の夫とはずっと幸せが続く、そう思っていた。
ところが、夫の妹が離婚して同じく3歳の息子を連れて出戻ってきてから夫は変わってしまった。
ショートショートですが、途中タグの追加や変更がある場合があります。
隣人の幼馴染にご飯を作るのは今日で終わり
鳥花風星
恋愛
高校二年生のひよりは、隣の家に住む幼馴染の高校三年生の蒼に片思いをしていた。蒼の両親が海外出張でいないため、ひよりは蒼のために毎日ご飯を作りに来ている。
でも、蒼とひよりにはもう一人、みさ姉という大学生の幼馴染がいた。蒼が好きなのはみさ姉だと思い、身を引くためにひよりはもうご飯を作りにこないと伝えるが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
はじめまして^ ^
続きが気になって毎日チェックしておりました!
更新されていてとても嬉しいです^ ^