物の怪職業斡旋稼業、継ぎました。

上城 樹

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第一章 遺産相続しました。

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 そんなこんなで、電車を乗り継ぎ、わたし以外誰も乗っていないバスにゆられて一時間三十分。
 一週間旅行用のキャリーバック片手にやってきましたよ、新しい我が家に。

「今日からここに住む、の……か?」

 相続した家を目の前に口元が引きつる。
 見た瞬間思ったことは、広い、デカイ、掃除大変そう。だ。

 杉浦と達筆な字が書かれた木製の表札がかけられている立派な門を茫然と眺める。

 敷地面積どれだけあるの、と尋ねたくなるほど長い塀。
 わたしの身長の二倍はあろうかという門から見えるのは美しい日本庭園。
 整えられた松に巨大な庭石、維持費にいくらかかるのだろう……。
 見渡す限り視界に映るのは草、木、岩、山の広大な自然。
 ご近所さんは一番近くて徒歩1時間の距離に住んでいる齋藤さん一家。
 最寄のスーパーは車で片道二時間かかる村にある。

 何このお屋敷。
 半分以下のサイズでいいから、こんな巨大な家求めてないよ。
 そして、ある程度予測していたけどそれを上回る交通の不便さに泣きそうだ。

 あぁ、胃が痛くなってきた。

 キリキリと痛むお腹を服の上からさすりながら溜め息を一つ。
 
 インスタント食品大量に箱詰めして今日の夕方に届くよう宅配指定しといてよかった。
 
「何もない所だとは聞いていたけど、ここまでとは…………。早急に、車買わないと」

 食糧買い込んでバス停からここまで歩く体力は私にはない。途中で力尽きて倒れる自信がある。





 立派な門を潜り、美しい日本庭園を眺めながら玄関を目指す。

 うわ、池まであるよ。
 あ、錦鯉が跳ねた……なにこの家わたしが住むの絶対場違いだよ。

 意識が遠のきそうになるのを必死で繋ぎ留め歩き続ける。
 門から玄関まで移動時間五分以上かかる家など初めてだ。

 重たいキャリーバックを置き。肩掛けバックからこの家の鍵を取り出し開錠。

「……この鍵、簡単に鍵開けできそうで怖いな」

 鈍い鉄色の古い型の鍵を再びバックの中にしまいながら、防犯面を考えると付け替え工事をした方がいいかもしれない。と考える。

 まぁ、細かいことは後に考えるとして……今は全ての窓を開けて空気の入れ替えをしてから最低限生活できるよう台所と寝室を掃除だね。
 宅配が届くころには終わらせ……られたらいいな。

 両頬を軽く叩き気合を入れ、玄関引戸を開けると――

「お帰りなさいませ。主様あるじさま

 長い黒髪を一つに纏め後ろに流した漆黒の着物に白い羽織を身に着けた綺麗系のお兄さんが三つ指をつき微笑みを浮かべ佇んでいた。
 ――頭にふわふわ毛並みの獣耳を付けた状態で。

 ……どちらのコスプレイヤー様で?
 完成度の高い獣耳ですね。




おばあちゃんへ


 今日、手紙に書いてあった家へ行きました。

 するとどうでしょう。玄関開けたらふわふわでぴこぴこ動く可愛らしい獣耳を持ち、整ったお顔の綺麗系着物男子にお出迎えされたのです。

 この着物男子はおばあちゃんのお知り合いですか、隠し子ですか、通りすがりの不法侵入コスプレイヤーさんですか。

 あなたの孫は、今とても混乱しています。

 無茶な話だとは思いますが、できれば手紙に〝見知らぬ美形獣着物男子にお出迎えされた時の正しい対応のしかた〟を書いておいてほしかったです。

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みんなの感想(1件)

えりんこ
2016.09.08 えりんこ

はじめまして^ ^
続きが気になって毎日チェックしておりました!
更新されていてとても嬉しいです^ ^

解除

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