THIRD ROVER 【サードローバー】オッサンのVRMMOは異世界にログインする

ケーサク

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目抜き通り攻防戦

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 冒険者の街イザベルの目抜き通りは、馬車が4台並んでも余るほどの道幅で石畳が敷かれた直線が1kmも続き、その両側では石材を組み上げ漆喰で化粧が施された外壁に赤やオレンジなど明るい色の瓦屋根の建物が彩り、その多くは飲食店や宿屋、様々な道具屋に武器屋に防具屋などの店舗になっており多くの人々で賑わいを見せている。アクリスは今、午後3時。酒を飲むには早すぎるのだが私には気がかりなことがひとつある。

「あ、あのーリアスさん」
「なっ……なんじゃ」

 さっき一件のせいで私達の間に気まずい空気が流れているせいなのか、リアスさんは私から顔をそらして手をモジモジさせながら答えた。しかし、この状況を打破するため私は頑張って会話を続ける。

「いやーエヴァさんにお酒をご馳走することになったのですがこの国って飲酒は何歳からいいんでしょうね?」
「しらん…のじゃ」

 そうですよね、あなたこの国の人じゃないですもんね。こういう時に気の利いた会話ができる男ならとうの昔に結婚していただろうに、あいにく私のスキル一覧にはそういったたぐいのものは一切ない、ああああ何かないか、何か。

「フィン!」
「お、どうしたのかなマロフィノ君」

 白々しくマロフィノの鳴き声に反応してみるが一体何見つけたのだろうか。

「フィン!フィンッ!」

 なんだか嬉しそうだ、頭から降りたそうにジタバタし始めたので抱き上げて地面降ろすと尻尾を振り回しながら人混みにダッシュしていく。

「あっおい」
「何をしておるんじゃ!」
「いや、降りたそうだったのでつい」

 やれやれといった様子でため息をついたリアスさんはいつもの表情に戻っていた。

「人通りが多いんじゃからしっかり抱っこしておれ!追いかけるぞ」
「あっはい」

 マロフィノを追いかけて走り出すがなぜだろう、モジモジされるよりこっちの方が楽だと思ってしまうのは。マロフィノ……ナイスです。
 
「フィン!フィンフィン!」

 追いかけ出してすぐにマロフィノの鳴き声が聞こえてくる。思ったより遠くには行っていなくて助かった、さすがに土地勘のない街で迷い犬を探すのは骨が折れますからね、それにしても嬉しそうな声だなアイツ。

「マロちゃん!一人でどうしたニャ?」
「フィンフィン!」

 マロフィノは見知った獣人の女性にまとわりついてた。発色の良いオレンジ色のゆるふわパーマのショートヘアから白と茶色の斑模様の猫耳が飛び出している、丸顔だがアゴはシャープで二重のぱっちりとした猫目のヘーゼル色の大きな瞳が特徴的な20代前半に見える可愛らしい女性。

「そーゆーことかよマロフィノ」
「お客さん!その節はありがとうございましたニャ」

 私よりも頭半分くらい小さい宿屋のお姉さんは程よいサイズの胸を隠すだけのチューブトップにショートのデニムジャケットで見事にくびれたウエストを惜しげもなくあらわにしていて、デニムのホットパンツから伸びる細い足とフワフワの細長い尻尾も彼女の魅力をさらに引き立ている。

「なんのことじゃ?」
「リアスさんにじゃなくて俺にですよ」
「なんのコトじゃ?」

 私を睨みつけながら言い放った2回目のなんのコトじゃには少しばかり殺気が込められているような気がしてリアスさんから一歩離れる。

「いや、あの騎士団のやつらがお姉さんを襲っていてですね」
「そうだニャ!!あの後、決闘にニャったって聞いて急いで見に行ったニャ、でもお客さん……すごく強かったニャァ。カッコよかったニャ!」

 お姉さんは腰をくねらせ、少しだけ頬を染めて上目遣いで私を見つめる。

「はっはい!ありがとうござひまふ」

 生まれて初めてカッコいいと言う言葉を浴びせられた私は顔を真っ赤にして空を見上げて直立しながら噛んだ。そして、棒立ちする私に二つの殺気が向けられているのに気づかずにいた。

「私は猫人ケットシーのミケですニャ、今夜もぜひウチに泊まりに来てくださいニャ。特別サービス・・・・・・するニャ」
「はい!私はタタラと申します!是非今夜もお邪魔したと思います!」
「ニャハハ。知ってるニャよ、タタラさん、楽しみに待ってるニャ、マロちゃんまたニャ」

 お姉さんはそう言うと私にウインクをして小さく手を振ってフワッっと飛び跳ねるように去って行った、私は右手を小さく振りながらお姉さんを見送る。
 はぁ、可憐だ。やっぱり人助けっていいコトだよなぁ、って。
って!!何すんだ」
 マロフィノが私の足に噛みついてきた。
「グルルァグゥ!」
 違うってマロフィノ私はただ……その……えへへ。
「あの決闘は……あの女のためだったてわけなんじゃな?」
「いや別あれはミケさんのためってわけではなくてですね」
「キモイッ!マロフィノどくんじゃ!」

 マロフィノは素早く飛び上がりさっきまで噛みつかれていた場所にピンポイントでリアスさんの痛恨のローキックが叩き込まれた。
「ギャァ!!」
 足を抱えて座り込む私に一べつもくれずに二人はさって行く。そんな怒んなくったっていいじゃないかよ、オッサンだって少しぐらい夢見たっていいじゃないかよぉ。私はイザベルの道路の冷たい敷石を涙でぬらした。
 

 
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