悪役令嬢に転生したので落ちこぼれ攻略キャラを育てるつもりが逆に攻略されているのかもしれない

亜瑠真白

文字の大きさ
3 / 48
1

初めての表情

しおりを挟む
 リアナと別れ、私は家に帰ってきた。自室へ入り、ベッドに大の字になる。この二日で色々あったな。まずは目が覚めたら乙女ゲームの悪役令嬢・エマに転生してて、それから最愛の推しであるルイスに会って、そしてジキウスと許嫁関係を解消して、最後はリアナと少し仲良くなれた。
 生のルイス、尊かったなぁ……ルイスと同じ世界線で生きることを許されたんだから、私はルイスとリアナをくっつける方法という使命を果たさないと。リアナはまだ好きな人はいないみたいだけど、私との許嫁関係を解消したジキウスはこれからもっと積極的になるだろうし、他の攻略キャラ達だっている。ルイスが遅れをとる訳にはいかない。
 そう言えばルイスとリアナはもう出会ってるのかな? 確か、ゲームのシナリオでの最初の出会いは……主人公が転校したばかりで校内を一人で散策してる時に、第二図書室を見つけて、気になって入ってみると中にルイスが……って出会いのイベント、私が奪っちゃってるじゃん!?
 そうだよ、昨日会った時のルイスの言葉、「見ない顔ですね。僕の名前はルイス・コーネル」ってそのままシナリオと同じセリフだった! いやいやいや、でもイベントの途中で勝手に部屋飛び出してるし、さすがに私が攻略されちゃったりとかはない、よね?
 とにかく! 明日はリアナを第二図書室に連れて行ってみよう。本来の主人公に会えば、正しくシナリオが展開するはず。

 放課後、リアナを探していると校舎裏で言い争う声が聞こえた。恐る恐る覗き込んでみる。
「あんた、転校生の癖に調子乗ってるんじゃないわよ!」
「ジキウス様にちょっと気に入られたくらいで!」
「そうよ! 許嫁を解消されたエマが可哀想だと思わないの!?」
 女子生徒数人に囲まれているのはリアナだった。
「調子に乗ってないし、気に入られてもいない」
 リアナは無表情で応えた。いや、気に入られてるのは事実なんだけどな。
 私は女子生徒とリアナの間に入った。
「恥ずかしい真似はやめなよ」
 するとリーダーらしき生徒が叫んだ。
「なんでエマがこいつを庇うのよ! 今までは散々嫌がらせしてたじゃない!」
 確かに今まではそうだった。でも、
「私はリアナと友達になったの」
「はぁ? そんなのジキウス様を奪われて……」
「私達の関係を他人にとやかく言われる筋合いはないわ」
 私の言葉に対して、不満そうに口を開こうとする。まだ文句があるか。
 私は相手の左耳の横まで足をふりあげた。風が空を切る。
「ひぃ……っ!」
「友達にまた酷いことをするようなら、私が相手になるわ」
 まあ、ここまでしておけばもう手を出してこないだろう。中学・高校と続けた空手がこんなところで役に立った。
 呆気に取られている女子生徒達に私は微笑んだ。
「それではみなさん、ごきげんよう」
 そしてリアナの背中をポンと押し、先を歩かせる。
 私にはもう一つ言わないといけないことがあった。女子生徒の一人に近づき、耳元に口を寄せる。
エマは可哀想なんかじゃない」
 それだけ言って私はリアナの後を追った。彼女たちはそれ以上何も言ってこなかった。
 
 少し歩いたところでリアナは立ち止まった。そして私の方を振り向く。
「ありがとう、助けてくれて。全然話が通じなくて、うんざりしてるところだった」
 あんな風に大勢に囲まれてたのにまるでダメージを受けてないみたい。それは何よりなんだけどさ。
「さっきのエマ、かっこよかったよ。あれ、もしかして足震えてる?」
 リアナは私のガクガク震え出した膝を見て言った。
「いや、これは筋肉がちょっとびっくりしてて……」
 急に動かしたからか筋肉が悲鳴を上げている。初日に走った時もすぐに息が切れてたし、このエマの体ってもしかして全然筋力ない?
「そういうことにしておくよ」
 誤解のままだけど、まあいいか。
「それにしても、偶然見つけられてよかったよ。脅しておいたし、もう来ないと思う……けど、もしまたなにかされたら私に言って」
 もとはと言えばエマが撒いた種だ。私がリアナに嫌がらせをする姿を見て、あの女子生徒達もそれをしていいと思ってしまったのかもしれない。それにリアナは大切なルイスにとって将来の恋人で、でもそれだけじゃなくてリアナ自身にも情が湧いてしまっている。これだけあればリアナを守る理由は十分すぎるほどだ。
「うん、分かった。それと、私はエマの友達って本当?」
「え、あの、だめだった……?」
「ううん……嬉しい」
 そう言ってリアナは微笑んだ。初めて見る、リアナの感情だった。
 そんな表情もできるの……! 天使か……!
「エマ?」
「あ、ごめん! 何でもない」
「そう言えば、どうして校舎裏なんかにいたの?」
 そうだ、この一件ですっかり忘れていた。
「リアナのことを探してたんだ」
「私を?」
「そう。会ってほしい人がいるんだ」
 リアナは面倒くさそうに目を細めた。そんなこともあろうかと用意は万端だ。
「お願い聞いてくれたら、このチョコ味のバターたっぷりマドレーヌを……」
「すぐ行く」
 簡単に釣れた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】ヒロインに転生しましたが、モブのイケオジが好きなので、悪役令嬢の婚約破棄を回避させたつもりが、やっぱり婚約破棄されている。

樹結理(きゆり)
恋愛
「アイリーン、貴女との婚約は破棄させてもらう」 大勢が集まるパーティの場で、この国の第一王子セルディ殿下がそう宣言した。 はぁぁあ!? なんでどうしてそうなった!! 私の必死の努力を返してー!! 乙女ゲーム『ラベルシアの乙女』の世界に転生してしまった日本人のアラサー女子。 気付けば物語が始まる学園への入学式の日。 私ってヒロインなの!?攻略対象のイケメンたちに囲まれる日々。でも!私が好きなのは攻略対象たちじゃないのよー!! 私が好きなのは攻略対象でもなんでもない、物語にたった二回しか出てこないイケオジ! 所謂モブと言っても過言ではないほど、関わることが少ないイケオジ。 でもでも!せっかくこの世界に転生出来たのなら何度も見たイケメンたちよりも、レアなイケオジを!! 攻略対象たちや悪役令嬢と友好的な関係を築きつつ、悪役令嬢の婚約破棄を回避しつつ、イケオジを狙う十六歳、侯爵令嬢! 必死に悪役令嬢の婚約破棄イベントを回避してきたつもりが、なんでどうしてそうなった!! やっぱり婚約破棄されてるじゃないのー!! 必死に努力したのは無駄足だったのか!?ヒロインは一体誰と結ばれるのか……。 ※この物語は作者の世界観から成り立っております。正式な貴族社会をお望みの方はご遠慮ください。 ※この作品は小説家になろう、カクヨムで完結済み。

痩せすぎ貧乳令嬢の侍女になりましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます

ちゃんゆ
恋愛
男爵家の三女に産まれた私。衝撃的な出来事などもなく、頭を打ったわけでもなく、池で溺れて死にかけたわけでもない。ごくごく自然に前世の記憶があった。 そして前世の私は… ゴットハンドと呼ばれるほどのエステティシャンだった。 とあるお屋敷へ呼ばれて行くと、そこには細い細い風に飛ばされそうなお嬢様がいた。 お嬢様の悩みは…。。。 さぁ、お嬢様。 私のゴッドハンドで世界を変えますよ? ********************** 転生侍女シリーズ第三弾。 『おデブな悪役令嬢の侍女に転生しましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます』 『醜いと蔑まれている令嬢の侍女になりましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます』 の続編です。 続編ですが、これだけでも楽しんでいただけます。 前作も読んでいただけるともっと嬉しいです!

シナリオ通り追放されて早死にしましたが幸せでした

黒姫
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生しました。神様によると、婚約者の王太子に断罪されて極北の修道院に幽閉され、30歳を前にして死んでしまう設定は変えられないそうです。さて、それでも幸せになるにはどうしたら良いでしょうか?(2/16 完結。カテゴリーを恋愛に変更しました。)

醜いと蔑まれている令嬢の侍女になりましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます

ちゃんゆ
恋愛
男爵家の三女に産まれた私。衝撃的な出来事などもなく、頭を打ったわけでもなく、池で溺れて死にかけたわけでもない。ごくごく自然に前世の記憶があった。 そして前世の私は… ゴットハンドと呼ばれるほどのエステティシャンだった。 とある侯爵家で出会った令嬢は、まるで前世のとあるホラー映画に出てくる貞◯のような風貌だった。 髪で顔を全て隠し、ゆらりと立つ姿は… 悲鳴を上げないと、逆に失礼では?というほどのホラーっぷり。 そしてこの髪の奥のお顔は…。。。 さぁ、お嬢様。 私のゴットハンドで世界を変えますよ? ********************** 『おデブな悪役令嬢の侍女に転生しましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます』の続編です。 続編ですが、これだけでも楽しんでいただけます。 前作も読んでいただけるともっと嬉しいです! 転生侍女シリーズ第二弾です。 短編全4話で、投稿予約済みです。 よろしくお願いします。

モブなのに、転生した乙女ゲームの攻略対象に追いかけられてしまったので全力で拒否します

みゅー
恋愛
乙女ゲームに、転生してしまった瑛子は自分の前世を思い出し、前世で培った処世術をフル活用しながら過ごしているうちに何故か、全く興味のない攻略対象に好かれてしまい、全力で逃げようとするが…… 余談ですが、小説家になろうの方で題名が既に国語力無さすぎて読むきにもなれない、教師相手だと淫行と言う意見あり。 皆さんも、作者の国語力のなさや教師と生徒カップル無理な人はプラウザバック宜しくです。 作者に国語力ないのは周知の事実ですので、指摘なくても大丈夫です✨ あと『追われてしまった』と言う言葉がおかしいとの指摘も既にいただいております。 やらかしちゃったと言うニュアンスで使用していますので、ご了承下さいませ。 この説明書いていて、海外の商品は訴えられるから、説明書が長くなるって話を思いだしました。

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。 退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた! 私を陥れようとする兄から逃れ、 不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。 逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋? 異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。 この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

前世ブラックOLの私が転生したら悪役令嬢でした

タマ マコト
ファンタジー
過労で倒れたブラック企業勤めのOLは、目を覚ますと公爵令嬢アーデルハイトとして転生していた。しかも立場は“断罪予定の悪役令嬢”。だが彼女は恋愛や王子の愛を選ばず、社交界を「市場」と見抜く。王家の財政が危ういことを察知し、家の莫大な資産と金融知識を武器に“期限付き融資”という刃を突きつける。理想主義の王太子と衝突しながらも、彼女は決意する――破滅を回避するためではない。国家の金脈を握り、国そのものを立て直すために。悪役令嬢の経済戦争が、静かに幕を開ける。

我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。

たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。 しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。 そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。 ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。 というか、甘やかされてません? これって、どういうことでしょう? ※後日談は激甘です。  激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。 ※小説家になろう様にも公開させて頂いております。  ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。  タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~

処理中です...