訳あって学年の三大美少女達とメイドカフェで働くことになったら懐かれたようです。クラスメイトに言えない「秘密」も知ってしまいました。

亜瑠真白

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嘘と作戦

答えあわせ

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「はぁぁぁぁ……」
 俺はステージから更衣室に駆け込んで、膝に手をついた。

 この店のことを熟知していて、できれば過去に店で働いていたことを証明できる人物。それで思いついたのが、俺が一度だけ女装して働いた「ウタ」としての姿だった。

 クラスでのじゃんけん大会で偶然にも高岸が勝ち残っていたのも都合がよかった。なぜかウタのことを気に入っていた高岸を上手く煽れれば、ウタというメイドが存在したことを印象付けられると思ったからだ。

 この作戦をやるにあたって、俺が女装したウタとしての姿を姫野と皇に見せる必要があった。どんな反応をされるかと怯えていたけど、姫野は「いいじゃん」と笑い、皇は「もっと表情はこう!」と指導してきた。まあ、引かれなくてよかった。

 ただ、ウタを深恋の代わりにする作戦にはいくつかの課題があった。まず、身長が違う。そのために客席から身長を測りにくくすることを考えた。物理的に客席とウタの距離を離すため、店の奥にステージを設置してそこだけ明かりをつけてウタの姿を確認させる。リーリャが座るであろうステージ前の席を背の高いカウンターにしたのは、身長をごまかすためだ。ステージとカウンターは汐姉のツテで借りた。

 距離を取るために設置したステージだけど、別の目的を持たせなければ疑われてしまうかもしれない。そこで、姫野から聞いた「深恋はダンスが苦手」という話からダンスパフォーマンスをしようということになった。皇に流行りの曲を選んでもらい、運動神経のいい姫野に指導してもらった。ヒール+ロングスカートで踊るのはなかなか大変で、もう全身が筋肉痛だ。

 深恋に似せた走り方の指導は皇が、ウィッグの手配は汐姉がしてくれた。真っ暗な店内から明るいステージの照明をつけたその一瞬、目のくらんだうちに「深恋に似た別人」だと強く印象付けられるか、それが勝負所だった。そこでリーリャに「もしかしたらこの人と勘違いしたのかもしれない」と思わせられれば勝ちだ。

 髪型は深恋に合わせて変えているけど、メイクやメイド服、声はあの時のウタと同じ。リーリャの隣の席にあらかじめ案内しておいた高岸がウタに反応したら、あざといくらいに煽る。ウタが以前からこの店で働いていたと、リーリャ自身が気づかなければ意味がない。

 そして最後に、証拠として太もものホクロを見せようとスカートを持ち上げる。足を見せればその太さから流石に男だとバレるから、リーリャに「見せろ」と言われた時にどうするかが課題の一つだった。そこは思った通り、謎にウブな高岸が止めてくれた。
 すべては計画通り。あとは深恋に解決したことを連絡すれば終わりだ。上手くいってよかった……

「亮太君、いますか?」
 更衣室の扉越しに声が聞こえた。

「深恋!?」
「よかった。開けますね」
「え、いや、ちょっ……!」

 なんで店に深恋が……? というか、今はまだウタの姿だから見られるのは困る……!
 入ってきた深恋は俺を見て微笑んだ。

「亮太君、すっごく可愛かったです」
 この女装した姿を見て驚いた様子もない。つまり、
「あの、いつから見て……」
「真っ暗な店内を走って、ステージに飛び乗るところからです」
「それ最初っからじゃない!?」

 はぁ……深恋には余計な心配かけないように今日の時間は教えてなかった。多分、姫野か皇が連絡したんだろう。

「見てたんなら状況は分かると思うけど、今回の件はこれで終わったからもう大丈夫。もしなんか言われたら教えて」
「はい。亮太君、本当にありがとうございました。そして、迷惑をかけてしまってごめんなさい」
 そう言って深恋は頭を下げた。

「迷惑なんて別に、俺が勝手にやったことだから……」
 俺の言葉に深恋はパッと顔を上げると、なにか決意した表情をしていた。

「私、今日は晶さんに呼ばれてきたんです。面白いものが見れるからって。それで、さっきクラスメイトも見ている中で、初めて本当の姿で話すことが出来ました」

 秘密を見られることをあんなに恐れていたのに。数日前の深恋とは別人みたいな表情をしている。

「こうやって亮太君に頼り切りになるのはこれで最後にします! これからもっと強くなって、亮太君のことを私が支えるくらいになります! ただ、少しは頼っちゃうことがあるかもしれないですが……」

 深恋は決まりが悪そうに笑った。
 この騒動も深恋の一歩踏み出すきっかけになったのなら、少しはよかったのかもしれない。

「もちろん。応援してるよ」
「はい!」
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