訳あって学年の三大美少女達とメイドカフェで働くことになったら懐かれたようです。クラスメイトに言えない「秘密」も知ってしまいました。

亜瑠真白

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文化祭

台詞

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「俺、演技なんてやったことないんだけど……」
「相手役の台詞をちょっと読んでくれるだけでいいんです。ダメですか?」
「それなら、いいけど」
「ありがとうございます。それじゃあ5ページ目からお願いします」

 姫野が書いたシンデレラは、王子と結ばれた後の話がメインになっている。

 王子と国民に愛され、幸せな日々を送るシンデレラ。しかし、彼女にはある問題があった。魔女の魔法が解けずに残ったガラスの靴を履いている時しか他人の前で堂々と振る舞えなかったのだ。
 お風呂の時も寝る時も、どんな時でもガラスの靴を身に付けていると、ついにその靴にヒビが入ってしまう。

「5ページね。えっと、『シンデレラ、何か僕に隠していることがあるんじゃないか。いくら婚姻関係を結んでも、心にまで触れることが出来ないのならそれは他人と同じだ』……」
 って俺が王子役かよ!? 

「申し訳ありません。私はあなたに隠し事をしていました。実はこのガラスの靴を身に付けている時しかあなたの側にふさわしい立ち振る舞いが出来ないのです。しかし、ついに亀裂が入ってしまいました」

 そう言って、悲しそうに目を伏せる。その表情に思わず見とれてしまって、俺は慌てて台本に目を落とした。

「あ、っと……それならば、直せば済むことだ。国で一番のガラス職人を用意しよう」
「いいえ。私は決めたのです」

シンデレラ:『あなたや民たちが私を愛してくれる。その想いに本気で向き合いたいと』

「あなたやみなさんが私を大切にしてくれる。その気持ちに本気で向き合いたいと」

シンデレラ:『私にこの靴はもう必要ありません』

「たとえ魔法の力が無くても胸を張って生きていけるって、これからの人生を懸けて証明したいんです!」

 俺が台本から顔を上げると、深恋は優しく微笑んだ。そして俺の手を取る。

「こんな気持ちに変えてくれたのは、あなたなんですよ」

 その時、最終下校時刻を知らせるチャイムが鳴った。
「まずい! 深恋、帰れるか?」
「はい! 急ぎます!」



 走った甲斐があって、誰にも見つからずに学校を抜け出すことが出来た。
「はぁ……何とかなったな」
「はぁっ、はぁ……はい、よかったです……」

 そこで会話が途切れて、俺は胸を押さえた。
 初めて台本を読んだ時から、この主人公と深恋が重なって見えていた。あれは王子に向けた言葉なんだから変にドキドキするなって!

「息、苦しいですか?」
「え? いや! 大丈夫!」
「なら良かったです。亮太君が練習に付き合ってくれたおかげで、勇気が湧いてきました。ありがとうございます」
「俺は大したことしてないよ」
「ふふっ、そう思っててくれてもいいですよ。あの台本、晶さんが中心になって茉由さんと3人で考えたんです」
「へぇ、そうだったんだ」

 脚本なんて出来るのか?、と姫野に聞いても「大丈夫大丈夫」とはぐらかされていたのは、そういう訳があったのか。

「私が演じやすいように話をアレンジして、台詞も好きに変えていいよって言ってくれて。それで私、クラスのみなさんに本当のことを話す決心が出来ました」
「えっ」

 クラスでの姿は演技だったって打ち明けるのか? 今まではあんなに知られることを恐れていたのに。
 これはいい変化であることに違いない。それはそうなんだけど、「無理してないか?」とか、「本当にいいのか?」とか、そんな言葉ばかりが頭をよぎる。

「亮太君、こういう時は『頑張れ』って言ってください」

 その声と言葉で、不安な気持ちはどこかへ行ってしまった。

「ああ……そうだよな。頑張れ。応援してるよ」
「はい、ありがとうございます!」
 そう言って、嬉しそうに笑った。
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