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王女は真実を伝える

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 「あの魔物を一瞬で倒せる君がいたら心強いけど、女の子をこの危険な旅に付き合わせるには…。」

 「お言葉ですけど、ミル1人では大変なのではないかなと。」

 「ぐっ…それは…」

 己の弱さを自覚しているミルは何も言い返せずにたじろぐ。
 
 私は有無を言わさず、彼についていくことにしよう。

 「そうと決まれば、早速─」

 「ちょっと待って。君は家がないと言っていたけど、どんなことがあったのか教えてくれないか?」

 「どうしてですか?」

 「旅をするパートナーになるなら、そこら辺は把握しておきたい。」

 ぐうの音も出ないほどの正論である。

 正直私が王族だとバラすメリットは全くないが、私自身を信用してもらえなければ関係が成立しないことは事実だろう。

 私は腹を括り、これまでの事を話した。

 最初に王女だと告げた時には、口をあんぐりと開けて顎が外れそうになっていた。

 けれど話を進めるごとにその表情は真剣なものに変わり、話終わったころには彼は泣いていた。

 「ど、どうして泣いているんですか?」

 「あまりにも悔しくて…」

 「悔しい?」

 「君は自分の力を伸ばしたかっただけだろう?それに婚約者に対してはしっかりと相手の尊厳が保たれるように対応していたのに、そんな仕打ちあんまりだ…。」

 私のことを誰かに話したことはなんだかんだこれが初めてだった。

 王宮に居た頃はそもそも私と話したがる人は少なかったし、マルコ様には可愛く見られたかったからある程度話は改変したり、盛ったりしていたこともある。

 自分で自分の話を口にすると、なんとなくすっきりした気持ちになった。

 それに目の前で私の代わりに泣いてくれているミルを見て、何とも形容しがたい温かな気持ちになる。

 「えっと、王女様なら、敬語の方がいいですよね?」

 「いえ、タメ口で話してもらった方が嬉しいです。ぜひ今まで通り喋ってください。」

 「そ、そうか…。」

 彼は私から視線を外して、頬をかく。

 その行動が不思議で見ていると、恥ずかしそうにしながらミルは口を開く。

 「さっきは助けてもらったし、目の前で泣いちゃったし、情けないね俺。」

 「そんなことないです。優しい方なんだと思いますよ。」

 私はそう言ってミルに微笑みかける。

 彼は急に顔を赤らめてそっぽを向いてしまった。

 「ミル?」

 「きょ、今日はもう遅いから、寝よう!」

 声を上ずらせながらそう言って、私の背中を押しながら部屋から追いだされる。

 「お、おやすみ」

 「おやすみなさい。」

 さっきから行動が読めないミルが少し面白いなと思いながら私は部屋に戻って、ベッドに横になる。

 「ふふ、明日から楽しくなりそう。」

 王宮ライフにおさらばして、魔法を思う存分使える生活を夢見ながら眠りについたのであった。
 
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