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王女は勇者を理解する

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 「いっった...」

 「大丈夫ですか?」

 「うん...俺魔法の才能ないのかな」

 吹き飛ばされて気を失っていたミルが起きた時には既に魔物を始末した後だった。

 「ミルは魔法を使った経験があまりないのですか?」

 「いや、幼少期から魔法には強い憧れがあって練習していたんだけど──」

 「小さい火の玉くらいの威力しか出せない?」

 ミルはうっと喉を詰まらせながらも言い返すことができないのか、口を噤んだ。

 少し意地悪をし過ぎた気がする。

 それよりも、ミルがこんなに弱くては話にならない。

 「ちょっと腕触らせてもらってもいいですか?」

 「へっ?!」

 許可は出なかったが悪いことはしないし、いいだろう。

 私はミルの腕を鷲掴みにする。

 『サシェル』

 私が詠唱すると、ミルの身体は温かな光に包まれる。

 この魔法は暗い土地や洞窟に行った際に使用すると、その地形の特徴を知ることが出来る。

 しかし私の魔力量だと、人体の能力をもくみ取れるようになった。

 何かと便利なもので、初めて見る魔物と遭遇したときにこれを使えば相手の弱点をすぐに知ることが出来てしまうのだ。

 これを使ってミルの能力値を測ることにしたのだが。

 「貴方...魔法が全く向いていないらしいですよ。」

 「え?!?!」

 過去に聞いたこともないくらい大きい声が森に響き渡る。

 「残念ですけど、貴方は魔法よりも体術の方が向いているようです。」

 「やっぱり俺は魔法が使えないんだ...」

 ミルは地面に膝をつき、相当落ち込んでしまった。

 本当の事を言っただけなのだが、ここまで悲しい気持ちにさせるとは思わず申し訳なくなる。

 私はミルと同じく地面に膝をついて、彼の肩に手を添える。

 「あまり落ち込まないで。」

 「そう言われても、俺は...俺は...」

 瞳に涙を浮かべて今にも泣きだしてしまいそうな雰囲気だ。

 もう少し大人な考え方をしていると思っていたが、強い憧れのせいなのか幼子のようだ。

 「確かにミルには魔法の才能はありません。小さな火の玉が出せるのが奇跡なくらい。」

 「そんなに...」

 「けれど体術はピカイチ。王都騎士団に所属している騎士たち、いやそれ以上の力を手に入れることも可能です。」

 そう、ミルは身体面が非常に優れていた。

 動体視力、反射神経、筋肉量、そして物理攻撃への適性が一般男性の何倍もあった。

 これを生かさない手はないだろう。

 「貴方のその体術があれば、仇討ちも難しくない。」

 「ほ、本当か?」

 彼の目には涙のほかに一寸の輝きを放っていた。

 よし、ここまできたらあと一息。

 「だから、今からこの木の枝で敵を500体は討伐しましょう。」
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