冷酷王子が記憶喪失になったら溺愛してきたので記憶を戻すことにしました。

八坂

文字の大きさ
6 / 33

記憶でも失ってしまったんですか?

しおりを挟む
 「エリーゼ。」

 そう言ってガロン様は静かに私の頬に手を添えてきた。その手はひんやりと冷たく今にも消えそうなくらい白かった。しかしここにときめくことはなく、むしろ気持ち悪ささえ覚えてしまった。

 「ガロン様!落ち着いて下さい!」

 ガロン様の使用人に混じり病院の専門服を来た1人のお医者さんが強引にガロン様を離してくれた。正直凄く助かった。下手に触って無礼者!なんて言われたらたまったものではない。

 「俺は常に落ち着いている。ただ愛しのエリーゼに会いに来ただけではないか。」
 「それが問題なんです!」
 「婚約者に会いに行くことの何が問題なのだ?」
 「本来は問題ではありませんが、問題なんですよ!」

 ガロン様とその使用人達、そしてお医者さんが『エリーゼに会いに行くこと』について言い争っている。普通に考えたら婚約者に会うことは何も悪いことでは無い。むしろ愛し合っているのだなと心温まるハートフルストーリーである。しかし私とガロン様はハートフルストーリーどころかミステリーやサスペンス等の類に近いだろう。月1の会食のみしか顔を合わせない。しかも話しかけたら怒られる。そんな2人に愛なんてあるはずもない。

 (最初は愛されてたとかならまだいいけどそもそも愛されてた記憶無いし、政略結婚でもないから使用人達も扱いに困るよね。でも会いに行くことが問題はちょっと面白いかも。)

 「エリーゼ様、申し訳ございません。睡眠のお邪魔をしてしまって。」
 「いえ、それは大丈夫です。それよりガロン様はどうなさったのですか?」
 「ああエリーゼ。俺の名前を呼んでくれるなんて…」

 ガロン様は何故か少し泣きそうになりながら微笑んでいる。あ、気持ち悪い。前世では割とさっぱりした恋愛しかしてこなかったせいかラブラブカップルみたいな会話に慣れていないせい。ガロン様が悪い訳では無い。そんなことより本当に急にどうしたんだか。

 「ガロン様は出ていってください!」

 本当に仕えている使用人か?と疑問に思うほど力ずくでガロン様を私の部屋から追いやった。ナイス使用人。

 「エリーゼ様、落ち着いて聞いて下さい。」
 「・・・はい。」

 さっきから落ち着いているし、皆同じ事を言うし少し展開にも飽きてきた。

 (そうだ、ここで少し流れ変えてみようかな。)
 「どうしたのですか?もしかして記憶でも失ったんですか?」
 「はい。」
 「ですよね~…ってえ?」
 「何故だかエリーゼ様との記憶だけ失ってしまわれました。」
 「いやいや私の名前知ってたじゃないですか。」
 「そうなんです。お名前もお顔も性格も覚えてらっしゃるのに何故か会食の事や普段どのように関わっているのかだけ忘れていらっしゃるのです。」
 「・・・。」

 流石に理解するのに時間がかかりそうな事だけは理解することが出来た。私との思い出…思い出ではないがそれを忘れて何故ああなるのだろう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

「君は悪役令嬢だ」と離婚されたけど、追放先で伝説の力をゲット!最強の女王になって国を建てたら、後悔した元夫が求婚してきました

黒崎隼人
ファンタジー
「君は悪役令嬢だ」――冷酷な皇太子だった夫から一方的に離婚を告げられ、すべての地位と財産を奪われたアリシア。悪役の汚名を着せられ、魔物がはびこる辺境の地へ追放された彼女が見つけたのは、古代文明の遺跡と自らが「失われた王家の末裔」であるという衝撃の真実だった。 古代魔法の力に覚醒し、心優しき領民たちと共に荒れ地を切り拓くアリシア。 一方、彼女を陥れた偽りの聖女の陰謀に気づき始めた元夫は、後悔と焦燥に駆られていく。 追放された令嬢が運命に抗い、最強の女王へと成り上がる。 愛と裏切り、そして再生の痛快逆転ファンタジー、ここに開幕!

記憶喪失の私はギルマス(強面)に拾われました【バレンタインSS投下】

かのこkanoko
恋愛
記憶喪失の私が強面のギルドマスターに拾われました。 名前も年齢も住んでた町も覚えてません。 ただ、ギルマスは何だか私のストライクゾーンな気がするんですが。 プロット無しで始める異世界ゆるゆるラブコメになる予定の話です。 小説家になろう様にも公開してます。

転生したので推し活をしていたら、推しに溺愛されました。

ラム猫
恋愛
 異世界に転生した|天音《あまね》ことアメリーは、ある日、この世界が前世で熱狂的に遊んでいた乙女ゲームの世界であることに気が付く。  『煌めく騎士と甘い夜』の攻略対象の一人、騎士団長シオン・アルカス。アメリーは、彼の大ファンだった。彼女は喜びで飛び上がり、推し活と称してこっそりと彼に贈り物をするようになる。  しかしその行為は推しの目につき、彼に興味と執着を抱かれるようになったのだった。正体がばれてからは、あろうことか美しい彼の側でお世話係のような役割を担うことになる。  彼女は推しのためならばと奮闘するが、なぜか彼は彼女に甘い言葉を囁いてくるようになり……。 ※この作品は、『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。

"番様"認定された私の複雑な宮ライフについて。

airria
恋愛
勝手に召喚され 「お前が番候補?」と鼻で笑われ 神獣の前に一応引っ立てられたら 番認定されて 人化した神獣から溺愛されてるけど 全力で逃げ出したい私の話。 コメディ多めのゆるいストーリーです。

完璧すぎる令嬢は婚約破棄されましたが、白い結婚のはずが溺愛対象になっていました

鷹 綾
恋愛
「――完璧すぎて、可愛げがない」 王太子アルベリクからそう言い放たれ、 理不尽な婚約破棄を突きつけられた侯爵令嬢ヴェルティア。 周囲の同情と噂に晒される中、 彼女が選んだのは“嘆くこと”でも“縋ること”でもなかった。 差し出されたのは、 冷徹と名高いグラナート公爵セーブルからの提案―― それは愛のない、白い結婚。 互いに干渉せず、期待せず、 ただ立場を守るためだけの契約関係。 ……のはずだった。 距離を保つことで築かれる信頼。 越えないと決めた一線。 そして、少しずつ明らかになる「選ぶ」という覚悟。 やがてヴェルティアは、 誰かに選ばれる存在ではなく、 自分で未来を選ぶ女性として立ち上がっていく。 一方、彼女を捨てた王太子は、 失って初めてその価値に気づき――。 派手な復讐ではない、 けれど確実に胸に刺さる“ざまぁ”。 白い結婚から始まった関係は、 いつしか「契約」を越え、 互いを尊重し合う唯一無二の絆へ。 これは、 婚約破棄された令嬢が 自分の人生を取り戻し、 選び続ける未来を掴むまでの物語。 静かで、強く、そして確かな 大人の溺愛×婚約破棄ざまぁ恋愛譚。

追放された悪役令嬢はシングルマザー

ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。 断罪回避に奮闘するも失敗。 国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。 この子は私の子よ!守ってみせるわ。 1人、子を育てる決心をする。 そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。 さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥ ーーーー 完結確約 9話完結です。 短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。

冷徹と噂の辺境伯令嬢ですが、幼なじみ騎士の溺愛が重すぎます

藤原遊
恋愛
冷徹と噂される辺境伯令嬢リシェル。 彼女の隣には、幼い頃から護衛として仕えてきた幼なじみの騎士カイがいた。 直系の“身代わり”として鍛えられたはずの彼は、誰よりも彼女を想い、ただ一途に追い続けてきた。 だが政略婚約、旧婚約者の再来、そして魔物の大規模侵攻――。 責務と愛情、嫉妬と罪悪感が交錯する中で、二人の絆は試される。 「縛られるんじゃない。俺が望んでここにいることを選んでいるんだ」 これは、冷徹と呼ばれた令嬢と、影と呼ばれた騎士が、互いを選び抜く物語。

当て馬令嬢は自由を謳歌したい〜冷酷王子への愛をゴミ箱に捨てて隣国へ脱走したら、なぜか奈落の底まで追いかけられそうです〜

平山和人
恋愛
公爵令嬢エルナは、熱烈に追いかけていた第一王子シオンに冷たくあしらわれ、挙句の果てに「婚約者候補の中で、お前が一番あり得ない」と吐き捨てられた衝撃で前世の記憶を取り戻す。 そこは乙女ゲームの世界で、エルナは婚約者選別会でヒロインに嫌がらせをした末に処刑される悪役令嬢だった。 「死ぬのも王子も、もう真っ平ご免です!」 エルナは即座に婚約者候補を辞退。目立たぬよう、地味な領地でひっそり暮らす準備を始める。しかし、今までエルナを蔑んでいたはずのシオンが、なぜか彼女を執拗に追い回し始め……? 「逃げられると思うなよ。お前を俺の隣以外に置くつもりはない」 「いや、記憶にあるキャラ変が激しすぎませんか!?」

処理中です...