冷酷王子が記憶喪失になったら溺愛してきたので記憶を戻すことにしました。

八坂

文字の大きさ
16 / 33

きっとあるさ

しおりを挟む
 「ってことがあったじゃない!」

 私はリゼにあの日のことを話した。話せば当然思い出してくれると思ったが一切分からないという顔をしていた。一瞬あの事は夢なのかと錯覚してしまう。
 ウェン様が本当に居たのかを確認するために王宮にある全国民の名前が記された書物を王子の婚約者の肩書きだけで手に入れる事ができた。こういう時だけこの肩書きの有り難さを感じる。特に理由もなく持ち出すのを禁止されている書物を理由の一つも聞かずに持ち出すことが出来るのは助かる。私はウェン様の名前を探し始めた。人口も多い国が故に探すのには一苦労した。何度かガロン様が尋ねてきたけれど体調が悪い事にして誤魔化した。探し始めて3日経った頃だった。

 「あっ、た。」

 ようやくウェン様の名前を見つけた。この国の書物は名前順でも何でもなく乱雑に名前が並んでるせいで大変だった。しかしこれで彼が存在するのが確認できたのだ。

 (早くガロン様を元に戻したいし、私が探すしかない。)

 あの書物には名前しか書いていない。とりあえず私はあの小屋に行くことにした。リゼに思い出巡りだといい、小屋までついてきてもらった。幸いにもあそこは王宮から近くガロン様に気付かれずに小屋に行くことが出来た。
 あの小屋は当時よりもだいぶ古びていて壁やドアが腐ってきた。恐る恐るドアを開けるとあのパステルカラーのファンシーな雰囲気はなくちょっとした作業台と書物棚しか無かった。蜘蛛の巣が張っていて気味が悪かったがガロン様と比べたら100億倍マシだ。私はリゼに外で待っててもらい、何かウェン様の情報が無いかを探した。書物には作法から薬の作り方、友達の作り方という胡散臭いものまであった。しかしウェン様の情報になりそうなものはひとつも無い。最後に魔法に関する書物を確認して諦めようと思いパラパラと捲ると1枚の封筒が落ちた。拾ってみると宛先に私の名前が書いてあった。

 (私宛だし見てもいいよね。)

 開けてみると2枚の便箋が入っていた。1枚には住所が書いてあり、2枚目には何やら文章が書いてあった。

 『やあエリーゼさん。

 君が来ると思ってこの手紙を書いてるよ。

 きっと僕の居場所が分からないのだろう?

 その住所の場所に言ってごらん?

 君の探してる答えがきっとあるさ。』

 やはりウェン様は気持ち悪い。きっとこの手紙を警備部隊の人に報告するべきなのだろうが、変に刺激したくない。それに万が一ガロン様が知ってしまったらウェン様は明日には灰になっているだろう。久しぶりの再会が遺灰なのは流石に嫌すぎる。
 この住所に行くとなるとリゼに止められる可能性がある。私は1度王宮に帰り皆が寝静まった夜に抜け出しここに行くことを決意した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

記憶喪失の私はギルマス(強面)に拾われました【バレンタインSS投下】

かのこkanoko
恋愛
記憶喪失の私が強面のギルドマスターに拾われました。 名前も年齢も住んでた町も覚えてません。 ただ、ギルマスは何だか私のストライクゾーンな気がするんですが。 プロット無しで始める異世界ゆるゆるラブコメになる予定の話です。 小説家になろう様にも公開してます。

転生したので推し活をしていたら、推しに溺愛されました。

ラム猫
恋愛
 異世界に転生した|天音《あまね》ことアメリーは、ある日、この世界が前世で熱狂的に遊んでいた乙女ゲームの世界であることに気が付く。  『煌めく騎士と甘い夜』の攻略対象の一人、騎士団長シオン・アルカス。アメリーは、彼の大ファンだった。彼女は喜びで飛び上がり、推し活と称してこっそりと彼に贈り物をするようになる。  しかしその行為は推しの目につき、彼に興味と執着を抱かれるようになったのだった。正体がばれてからは、あろうことか美しい彼の側でお世話係のような役割を担うことになる。  彼女は推しのためならばと奮闘するが、なぜか彼は彼女に甘い言葉を囁いてくるようになり……。 ※この作品は、『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。

当て馬令嬢は自由を謳歌したい〜冷酷王子への愛をゴミ箱に捨てて隣国へ脱走したら、なぜか奈落の底まで追いかけられそうです〜

平山和人
恋愛
公爵令嬢エルナは、熱烈に追いかけていた第一王子シオンに冷たくあしらわれ、挙句の果てに「婚約者候補の中で、お前が一番あり得ない」と吐き捨てられた衝撃で前世の記憶を取り戻す。 そこは乙女ゲームの世界で、エルナは婚約者選別会でヒロインに嫌がらせをした末に処刑される悪役令嬢だった。 「死ぬのも王子も、もう真っ平ご免です!」 エルナは即座に婚約者候補を辞退。目立たぬよう、地味な領地でひっそり暮らす準備を始める。しかし、今までエルナを蔑んでいたはずのシオンが、なぜか彼女を執拗に追い回し始め……? 「逃げられると思うなよ。お前を俺の隣以外に置くつもりはない」 「いや、記憶にあるキャラ変が激しすぎませんか!?」

婚約破棄された際もらった慰謝料で田舎の土地を買い農家になった元貴族令嬢、野菜を買いにきたベジタリアン第三王子に求婚される

さら
恋愛
婚約破棄された元伯爵令嬢クラリス。 慰謝料代わりに受け取った金で田舎の小さな土地を買い、農業を始めることに。泥にまみれて種を撒き、水をやり、必死に生きる日々。貴族の煌びやかな日々は失ったけれど、土と共に過ごす穏やかな時間が、彼女に新しい幸せをくれる――はずだった。 だがある日、畑に現れたのは野菜好きで有名な第三王子レオニール。 「この野菜は……他とは違う。僕は、あなたが欲しい」 そう言って真剣な瞳で求婚してきて!? 王妃も兄王子たちも立ちはだかる。 「身分違いの恋」なんて笑われても、二人の気持ちは揺るがない。荒れ地を畑に変えるように、愛もまた努力で実を結ぶのか――。

辺境に追放されたガリガリ令嬢ですが、助けた男が第三王子だったので人生逆転しました。~実家は危機ですが、助ける義理もありません~

香木陽灯
恋愛
 「そんなに気に食わないなら、お前がこの家を出ていけ!」  実の父と義妹に虐げられ、着の身着のままで辺境のボロ家に追放された伯爵令嬢カタリーナ。食べるものもなく、泥水のようなスープですすり、ガリガリに痩せ細った彼女が庭で拾ったのは、金色の瞳を持つ美しい男・ギルだった。  「……見知らぬ人間を招き入れるなんて、馬鹿なのか?」  「一人で食べるのは味気ないわ。手当てのお礼に一緒に食べてくれると嬉しいんだけど」  二人の奇妙な共同生活が始まる。ギルが獲ってくる肉を食べ、共に笑い、カタリーナは本来の瑞々しい美しさを取り戻していく。しかしカタリーナは知らなかった。彼が王位継承争いから身を隠していた最強の第三王子であることを――。 ※ふんわり設定です。 ※他サイトにも掲載中です。

追放された悪役令嬢はシングルマザー

ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。 断罪回避に奮闘するも失敗。 国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。 この子は私の子よ!守ってみせるわ。 1人、子を育てる決心をする。 そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。 さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥ ーーーー 完結確約 9話完結です。 短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

「陛下、子種を要求します!」~陛下に離縁され追放される七日の間にかなえたい、わたしのたったひとつの願い事。その五年後……~

ぽんた
恋愛
「七日の後に離縁の上、実質上追放を言い渡す。そのあとは、おまえは王都から連れだされることになる。人質であるおまえを断罪したがる連中がいるのでな。信用のおける者に生活できるだけの金貨を渡し、託している。七日間だ。おまえの国を攻略し、おまえを人質に差し出した父王と母后を処分したわが軍が戻ってくる。そのあと、おまえは命以外のすべてを失うことになる」 その日、わたしは内密に告げられた。小国から人質として嫁いだ親子ほど年齢の離れた国王である夫に。 わたしは決意した。ぜったいに願いをかなえよう。たったひとつの望みを陛下にかなえてもらおう。 そう。わたしには陛下から授かりたいものがある。 陛下から与えてほしいたったひとつのものがある。 この物語は、その五年後のこと。 ※ハッピーエンド確約。ご都合主義のゆるゆる設定はご容赦願います。

処理中です...