冷酷王子が記憶喪失になったら溺愛してきたので記憶を戻すことにしました。

八坂

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売られます

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 「エリーゼさんを困らせてしまったのは申し訳ありません。」
 「え?」
 「だってあんなゴリラに言い寄られてさぞかし不快だったでしょう?」
 「まあ...そう、ですね。」
 「どうにかして婚約破棄させたいのですが、どうしましょう...。」

 確かに不快ではあった。散々私のことを愚弄していたのに急に溺愛するようになって、私がどこで何をしていても興味なかったのにいつの間にかどこで何をするのにもガロン様が近くにいて。けれどその不快感も薄れてきていたりもした。

 「どうしてそこまで婚約破棄させたがっているのですか?」
 「それは契約っていうのもあるけど、僕が君と結婚したいからだよ。」
 「は?」
 「いやだから、君と結婚したいんだ。契約内容に君との結婚の手助けをしてくれるって項目もあるし、何よりガロンとくっついてほしくないしね。」

 突然のこと過ぎて思考が追い付かない。10年以上も会ってないし、5歳の頃に会った時もさほど会話をした印象がない。ガロン様も急にべたべたしてきて気持ち悪かったが、ウェン様はウェン様で気持ちが悪い。前世でもそうだったが私はとことん男運が悪いようだ。

 「急にそんなこと言われても困ります。」
 「そうですよね。だからまず婚約破棄させて、ことが落ち着いてから君に婚約を申し込もうと思ってる。」

 そう真面目な顔で言われても困る。先ほどまではガロン様との縁を切られることをちょっとでも嫌だと思っていたが、今愛?を向けられて我に返った。やはりガロン様に好かれているのは気持ちが悪い。そしてウェン様に好かれているのも気持ち悪い。
 とにかく今のガロン様の様子では婚約破棄どころか正式な結婚を申し込まれてもおかしくはない。今すぐこの状況を打破しなければならない。

 「今記憶を失っている状態のガロン様ではいつ結婚を申し込んでもおかしくはありません。今すぐに記憶を戻すべきです。」
 「やっぱりそう思いますよね。しかしそう簡単に戻せないのですよ。」
 「どうしてですか?ウェン様の魔法でどうにかできないのですか?」
 「あれは魔法薬です。特別な毒草を配合したせいでそのための解毒草が別途必要なんです。」
 「その毒草が入手できたなら解毒草も入手できるのでは?」
 「いや~...。」

 ウェン様は大きく私から視線を外した。斜め右上を見て現実逃避?をしていた。さっきまで悠々としていたからその態度にびっくりしてしまう。

 「実はあれ、闇市場で手に入れました。」
 「つまり?」
 「つまり、解毒草も多分闇市場で売られていると思います。」
 「闇市場って簡単にお金では物が買えないのでは?」
 「そうだね、大体は人間1人差し出せば売ってくれます。毒草を買ったときはツケてもらったんです。もう2度と顔を出す予定ではないのでバレないかなと思ったのですが...。」

 爽やかイケメンが冷や汗を垂らしながら何か言っている。闇市場の存在は風の噂で知ってはいたがまさかそこに関わっているとは思ってもみなかった。その闇市場はお金で売買せず、物で売買される。そのことは知っているがまさか人だとは思ってもみなかった。

 「ガロン様には元に戻って頂きたいです、けれど人を売買したくは...。」
 「それは僕もそうです。本当ならエリーゼさんにも同じ手口で買っていただきたいのですが生憎闇市場は招待された者しか入ることはできません。僕が買うとなるとツケも込みで払うので上等な女性でも差し出さなければいけません。」
 
 薄々嫌な予感はしていた。人を売買はしたくない。ただツケがあるとある程度の人を差し出さなければいけない。こんな変な事に巻き込んでも問題がなく、それに匹敵し、私が許せるとなると。

 「私が売られます。」
 「えっ。」
 「私が生贄になります。」
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