19 / 33
売られます
しおりを挟む
「エリーゼさんを困らせてしまったのは申し訳ありません。」
「え?」
「だってあんなゴリラに言い寄られてさぞかし不快だったでしょう?」
「まあ...そう、ですね。」
「どうにかして婚約破棄させたいのですが、どうしましょう...。」
確かに不快ではあった。散々私のことを愚弄していたのに急に溺愛するようになって、私がどこで何をしていても興味なかったのにいつの間にかどこで何をするのにもガロン様が近くにいて。けれどその不快感も薄れてきていたりもした。
「どうしてそこまで婚約破棄させたがっているのですか?」
「それは契約っていうのもあるけど、僕が君と結婚したいからだよ。」
「は?」
「いやだから、君と結婚したいんだ。契約内容に君との結婚の手助けをしてくれるって項目もあるし、何よりガロンとくっついてほしくないしね。」
突然のこと過ぎて思考が追い付かない。10年以上も会ってないし、5歳の頃に会った時もさほど会話をした印象がない。ガロン様も急にべたべたしてきて気持ち悪かったが、ウェン様はウェン様で気持ちが悪い。前世でもそうだったが私はとことん男運が悪いようだ。
「急にそんなこと言われても困ります。」
「そうですよね。だからまず婚約破棄させて、ことが落ち着いてから君に婚約を申し込もうと思ってる。」
そう真面目な顔で言われても困る。先ほどまではガロン様との縁を切られることをちょっとでも嫌だと思っていたが、今愛?を向けられて我に返った。やはりガロン様に好かれているのは気持ちが悪い。そしてウェン様に好かれているのも気持ち悪い。
とにかく今のガロン様の様子では婚約破棄どころか正式な結婚を申し込まれてもおかしくはない。今すぐこの状況を打破しなければならない。
「今記憶を失っている状態のガロン様ではいつ結婚を申し込んでもおかしくはありません。今すぐに記憶を戻すべきです。」
「やっぱりそう思いますよね。しかしそう簡単に戻せないのですよ。」
「どうしてですか?ウェン様の魔法でどうにかできないのですか?」
「あれは魔法薬です。特別な毒草を配合したせいでそのための解毒草が別途必要なんです。」
「その毒草が入手できたなら解毒草も入手できるのでは?」
「いや~...。」
ウェン様は大きく私から視線を外した。斜め右上を見て現実逃避?をしていた。さっきまで悠々としていたからその態度にびっくりしてしまう。
「実はあれ、闇市場で手に入れました。」
「つまり?」
「つまり、解毒草も多分闇市場で売られていると思います。」
「闇市場って簡単にお金では物が買えないのでは?」
「そうだね、大体は人間1人差し出せば売ってくれます。毒草を買ったときはツケてもらったんです。もう2度と顔を出す予定ではないのでバレないかなと思ったのですが...。」
爽やかイケメンが冷や汗を垂らしながら何か言っている。闇市場の存在は風の噂で知ってはいたがまさかそこに関わっているとは思ってもみなかった。その闇市場はお金で売買せず、物で売買される。そのことは知っているがまさか人だとは思ってもみなかった。
「ガロン様には元に戻って頂きたいです、けれど人を売買したくは...。」
「それは僕もそうです。本当ならエリーゼさんにも同じ手口で買っていただきたいのですが生憎闇市場は招待された者しか入ることはできません。僕が買うとなるとツケも込みで払うので上等な女性でも差し出さなければいけません。」
薄々嫌な予感はしていた。人を売買はしたくない。ただツケがあるとある程度の人を差し出さなければいけない。こんな変な事に巻き込んでも問題がなく、それに匹敵し、私が許せるとなると。
「私が売られます。」
「えっ。」
「私が生贄になります。」
「え?」
「だってあんなゴリラに言い寄られてさぞかし不快だったでしょう?」
「まあ...そう、ですね。」
「どうにかして婚約破棄させたいのですが、どうしましょう...。」
確かに不快ではあった。散々私のことを愚弄していたのに急に溺愛するようになって、私がどこで何をしていても興味なかったのにいつの間にかどこで何をするのにもガロン様が近くにいて。けれどその不快感も薄れてきていたりもした。
「どうしてそこまで婚約破棄させたがっているのですか?」
「それは契約っていうのもあるけど、僕が君と結婚したいからだよ。」
「は?」
「いやだから、君と結婚したいんだ。契約内容に君との結婚の手助けをしてくれるって項目もあるし、何よりガロンとくっついてほしくないしね。」
突然のこと過ぎて思考が追い付かない。10年以上も会ってないし、5歳の頃に会った時もさほど会話をした印象がない。ガロン様も急にべたべたしてきて気持ち悪かったが、ウェン様はウェン様で気持ちが悪い。前世でもそうだったが私はとことん男運が悪いようだ。
「急にそんなこと言われても困ります。」
「そうですよね。だからまず婚約破棄させて、ことが落ち着いてから君に婚約を申し込もうと思ってる。」
そう真面目な顔で言われても困る。先ほどまではガロン様との縁を切られることをちょっとでも嫌だと思っていたが、今愛?を向けられて我に返った。やはりガロン様に好かれているのは気持ちが悪い。そしてウェン様に好かれているのも気持ち悪い。
とにかく今のガロン様の様子では婚約破棄どころか正式な結婚を申し込まれてもおかしくはない。今すぐこの状況を打破しなければならない。
「今記憶を失っている状態のガロン様ではいつ結婚を申し込んでもおかしくはありません。今すぐに記憶を戻すべきです。」
「やっぱりそう思いますよね。しかしそう簡単に戻せないのですよ。」
「どうしてですか?ウェン様の魔法でどうにかできないのですか?」
「あれは魔法薬です。特別な毒草を配合したせいでそのための解毒草が別途必要なんです。」
「その毒草が入手できたなら解毒草も入手できるのでは?」
「いや~...。」
ウェン様は大きく私から視線を外した。斜め右上を見て現実逃避?をしていた。さっきまで悠々としていたからその態度にびっくりしてしまう。
「実はあれ、闇市場で手に入れました。」
「つまり?」
「つまり、解毒草も多分闇市場で売られていると思います。」
「闇市場って簡単にお金では物が買えないのでは?」
「そうだね、大体は人間1人差し出せば売ってくれます。毒草を買ったときはツケてもらったんです。もう2度と顔を出す予定ではないのでバレないかなと思ったのですが...。」
爽やかイケメンが冷や汗を垂らしながら何か言っている。闇市場の存在は風の噂で知ってはいたがまさかそこに関わっているとは思ってもみなかった。その闇市場はお金で売買せず、物で売買される。そのことは知っているがまさか人だとは思ってもみなかった。
「ガロン様には元に戻って頂きたいです、けれど人を売買したくは...。」
「それは僕もそうです。本当ならエリーゼさんにも同じ手口で買っていただきたいのですが生憎闇市場は招待された者しか入ることはできません。僕が買うとなるとツケも込みで払うので上等な女性でも差し出さなければいけません。」
薄々嫌な予感はしていた。人を売買はしたくない。ただツケがあるとある程度の人を差し出さなければいけない。こんな変な事に巻き込んでも問題がなく、それに匹敵し、私が許せるとなると。
「私が売られます。」
「えっ。」
「私が生贄になります。」
12
あなたにおすすめの小説
「君は悪役令嬢だ」と離婚されたけど、追放先で伝説の力をゲット!最強の女王になって国を建てたら、後悔した元夫が求婚してきました
黒崎隼人
ファンタジー
「君は悪役令嬢だ」――冷酷な皇太子だった夫から一方的に離婚を告げられ、すべての地位と財産を奪われたアリシア。悪役の汚名を着せられ、魔物がはびこる辺境の地へ追放された彼女が見つけたのは、古代文明の遺跡と自らが「失われた王家の末裔」であるという衝撃の真実だった。
古代魔法の力に覚醒し、心優しき領民たちと共に荒れ地を切り拓くアリシア。
一方、彼女を陥れた偽りの聖女の陰謀に気づき始めた元夫は、後悔と焦燥に駆られていく。
追放された令嬢が運命に抗い、最強の女王へと成り上がる。
愛と裏切り、そして再生の痛快逆転ファンタジー、ここに開幕!
記憶喪失の私はギルマス(強面)に拾われました【バレンタインSS投下】
かのこkanoko
恋愛
記憶喪失の私が強面のギルドマスターに拾われました。
名前も年齢も住んでた町も覚えてません。
ただ、ギルマスは何だか私のストライクゾーンな気がするんですが。
プロット無しで始める異世界ゆるゆるラブコメになる予定の話です。
小説家になろう様にも公開してます。
転生したので推し活をしていたら、推しに溺愛されました。
ラム猫
恋愛
異世界に転生した|天音《あまね》ことアメリーは、ある日、この世界が前世で熱狂的に遊んでいた乙女ゲームの世界であることに気が付く。
『煌めく騎士と甘い夜』の攻略対象の一人、騎士団長シオン・アルカス。アメリーは、彼の大ファンだった。彼女は喜びで飛び上がり、推し活と称してこっそりと彼に贈り物をするようになる。
しかしその行為は推しの目につき、彼に興味と執着を抱かれるようになったのだった。正体がばれてからは、あろうことか美しい彼の側でお世話係のような役割を担うことになる。
彼女は推しのためならばと奮闘するが、なぜか彼は彼女に甘い言葉を囁いてくるようになり……。
※この作品は、『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。
"番様"認定された私の複雑な宮ライフについて。
airria
恋愛
勝手に召喚され
「お前が番候補?」と鼻で笑われ
神獣の前に一応引っ立てられたら
番認定されて
人化した神獣から溺愛されてるけど
全力で逃げ出したい私の話。
コメディ多めのゆるいストーリーです。
完璧すぎる令嬢は婚約破棄されましたが、白い結婚のはずが溺愛対象になっていました
鷹 綾
恋愛
「――完璧すぎて、可愛げがない」
王太子アルベリクからそう言い放たれ、
理不尽な婚約破棄を突きつけられた侯爵令嬢ヴェルティア。
周囲の同情と噂に晒される中、
彼女が選んだのは“嘆くこと”でも“縋ること”でもなかった。
差し出されたのは、
冷徹と名高いグラナート公爵セーブルからの提案――
それは愛のない、白い結婚。
互いに干渉せず、期待せず、
ただ立場を守るためだけの契約関係。
……のはずだった。
距離を保つことで築かれる信頼。
越えないと決めた一線。
そして、少しずつ明らかになる「選ぶ」という覚悟。
やがてヴェルティアは、
誰かに選ばれる存在ではなく、
自分で未来を選ぶ女性として立ち上がっていく。
一方、彼女を捨てた王太子は、
失って初めてその価値に気づき――。
派手な復讐ではない、
けれど確実に胸に刺さる“ざまぁ”。
白い結婚から始まった関係は、
いつしか「契約」を越え、
互いを尊重し合う唯一無二の絆へ。
これは、
婚約破棄された令嬢が
自分の人生を取り戻し、
選び続ける未来を掴むまでの物語。
静かで、強く、そして確かな
大人の溺愛×婚約破棄ざまぁ恋愛譚。
追放された悪役令嬢はシングルマザー
ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。
断罪回避に奮闘するも失敗。
国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。
この子は私の子よ!守ってみせるわ。
1人、子を育てる決心をする。
そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。
さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥
ーーーー
完結確約 9話完結です。
短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。
冷徹と噂の辺境伯令嬢ですが、幼なじみ騎士の溺愛が重すぎます
藤原遊
恋愛
冷徹と噂される辺境伯令嬢リシェル。
彼女の隣には、幼い頃から護衛として仕えてきた幼なじみの騎士カイがいた。
直系の“身代わり”として鍛えられたはずの彼は、誰よりも彼女を想い、ただ一途に追い続けてきた。
だが政略婚約、旧婚約者の再来、そして魔物の大規模侵攻――。
責務と愛情、嫉妬と罪悪感が交錯する中で、二人の絆は試される。
「縛られるんじゃない。俺が望んでここにいることを選んでいるんだ」
これは、冷徹と呼ばれた令嬢と、影と呼ばれた騎士が、互いを選び抜く物語。
当て馬令嬢は自由を謳歌したい〜冷酷王子への愛をゴミ箱に捨てて隣国へ脱走したら、なぜか奈落の底まで追いかけられそうです〜
平山和人
恋愛
公爵令嬢エルナは、熱烈に追いかけていた第一王子シオンに冷たくあしらわれ、挙句の果てに「婚約者候補の中で、お前が一番あり得ない」と吐き捨てられた衝撃で前世の記憶を取り戻す。 そこは乙女ゲームの世界で、エルナは婚約者選別会でヒロインに嫌がらせをした末に処刑される悪役令嬢だった。
「死ぬのも王子も、もう真っ平ご免です!」
エルナは即座に婚約者候補を辞退。目立たぬよう、地味な領地でひっそり暮らす準備を始める。しかし、今までエルナを蔑んでいたはずのシオンが、なぜか彼女を執拗に追い回し始め……? 「逃げられると思うなよ。お前を俺の隣以外に置くつもりはない」 「いや、記憶にあるキャラ変が激しすぎませんか!?」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる