冷酷王子が記憶喪失になったら溺愛してきたので記憶を戻すことにしました。

八坂

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綺麗な瞳

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 「お父様、あれは何?」

 その少女は馬車を見たことがないのだろう。物珍しそうにこちらを覗いていた。その綺麗な瞳に俺はまるで吸い込まれる感覚を覚えていた。

 「エリーゼ!あれは王宮の馬車だ。あまり無礼なことをすると良くないことが起きるから早く中に帰っておいで。」
 「へ~!」

 するとエリーゼという少女は父親の意向に背きこちらに近づいてきたのだ。

 「こんにちは!」
 「やあ、お嬢さん。こんにちは。」

 国内外問わず恐れられている父上だがそんなのも知らないのだろう、物怖じもせずに話しかけてきたのだ。俺は何故だか胸が苦しくなってしまい、父親の背中の後ろに隠れてしまった。

 「ああ申し訳ございません!うちの馬鹿娘が!!」
 「いや気にするな。随分と幼子だが言葉を流暢に喋るのだな。」
 「そうなんですよ!何故か語学は堪能でして...」

 父上とエリーゼの父親が談笑を始めていた。俺は父上に隠れてしまったけれどもう一度エリーゼを見たいと思って父上の背中からチラッと覗いてみた。しかしそこにエリーゼの姿はなかった。もうすでに戻ってしまったのではないのかと考えて落ち込んでいると俺がいる側のドアがコンコンと叩かれた。俺はそっとドアを開けるとあの少女がこちらを見ていた。

 「わっ!」
 「貴方は王子様なの?」
 「ま、まあそうだな...。」
 「ここの王子様はかっこいいね!」
 「え。」
 「こらエリーゼ!もう王様方はお帰りになるのだから邪魔するんじゃない!」

 いつの間にやら談笑が終わったエリーゼの父親はエリーゼを叱った。エリーゼは満足そうに微笑みながら

 「じゃぁね王子様!」

 と俺に手を振って見送ってくれた。俺はその姿を目に焼き付けながら王宮へと帰っていった。


 俺はあの日からエリーゼの瞳を忘れることが出来ないまま日が経った。ある時に父上から舞踏会へ招待された。今までは訓練や筋トレなどに時間を使っており、舞踏会や宴などには時間を割いていなかった。しかしそんな俺を不安に思った父上は半ば無理やり俺を舞踏会に連れて行ったのだ。
 舞踏会では騎士団の同期であるウェンと会った。

 「あれガロン!こんなパーティーに来るのは珍しいね?」
 「ああウェンか。父上に連れてこられたのだ。」
 「じゃあ僕とお話ししようよ。僕もうつまんないからさ!」
 「知らん。俺は来たくて来たわけではない。」
 「ちぇ。つまんないの~。」

 そう言ってウェンは違う所へ向かって行った。どこに行くのか少し気になったので軽くウェンを目で追っていたらとある少女の所へ向かっているのを見た。その少女を見て俺の心臓はドクンと大きく跳ね上がった。あの子は俺がずっと想い焦がれている少女だったのだ。
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