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必殺技
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フィルは未だに無言を決めており雰囲気はよろしくない。
「戦闘開始。両者転送開始。」
いよいよ始まる。
「クリスさんはやっぱり強いですよね?フィルさん勝てると思いますか?」
キリヤが先程クリスと戦ったアルゴに聞いてみる。
「クリスさんは強いよ。3属性持ちでもあるから、有象無象の相手には属性のゴリ押しでも楽に勝てるくらいには力を持ってる。」
「じゃあ、フィルさんはこの勝負厳しいですかね、」
ランクではフィルの方が確実に上ではあるが、3年以上戦闘から離れており、対人戦の経験もほぼ無い。この勝負は大方クリスの優勢だろうとキリヤは思っていた。
しかし、アルゴとアルバードは全く違う意見だった。
「そんな事は無いよ、属性はあればある程良い訳じゃ無いからね!無いよりは間違いなく良い。だが!複数属性を持つと魔力が大幅に割かれてしまう。つまり!洗練された単属性こそが最強という訳だ!そしてフィルさんは氷の単属性!火属性とは少し相性が悪いが、まあ何とかなるだろう!!」
ここで更なる新情報が手に入る。属性についてだ。
まず属性には有利不利があるのは分かっていたが、そこまで重要では無いという事だ。無いのは論外だそうだが、結局は一つのことを極めることが大切である。
「そーだぞキリヤ、俺達が救われた時、フィルさんの攻撃を俺達は見えたか?」
「……見えなかった!!」
フィルは魔力量に目が行きがちだが、基礎能力の最高水準だ。特に技術、速度、知力において、最高評価を受けている。
「始まるぞ、!!しっかり二人の試合を見ておくんだ!」
「はい!!」
「はい」
3人は2人の試合を腰を下ろし見守る。
そして試合が始まり、勝負は一瞬で動く。
「おいおい、もう終わりか?情けないな、弟子の前で、」
試合開始と同時にクリスが風と火属性を合成させ、辺り一面を赤色に染め上げる。一歩も動こうとしない、フィルにクリスは落胆する。
「これでも動かないのか、それとも俺にビビって動けないのか!?」
そのままクリスは手を上に振りかぶり指をフィルに向け雷を放つ。
それでもフィルは一歩も動かない。しかし、フィルの防御魔法は一向に砕ける雰囲気すら感じられない。
「本当に大丈夫ですか、フィルさん………」
何も出来ていないフィルを見てキリヤが心配になる。ここまで反撃をしないともなると、ずっと冷静で口数の少なかったアルバードも流石に不思議に思う。
「どうして、フィルさんは人間を攻撃しようとしないんですか?」
「どうして、アルバード君はフィルさんが人間を攻撃できないと知っているのかな?」
「あ、いや、、そんな感じがしまして、合ってましたか?」
おっと、危ない。踏み込みすぎは危険だ。
「これは噂ではあるんなんだけど、フィルさんは元々人間嫌いだったらしい。性格は元気少年って感じだったらしいんだけどな、そんなフィルさんが、突然人が変わったかの様に雰囲気が変わる時がたまにあったらしいんだ、その時にリューニスって言う人を殺したとか何とかっていう噂。ようはフィルさんは二重人格と言う噂が立っているんだ。」
「二重人格ですか、、」
この噂を聞くとやっぱフィルは人殺しでは無いかと思ってしまう。全ての疑問が、全て繋がったかの様に。
だが、キリヤの見る限りではフィルには二つの人格が見えた事は無い。
「その話、ビーフさん的にはどう思いますか?」
「こんな時にビーフ呼びかい、、うーん俺的にはやっぱ信じたく無いな!以上!!」
この話を聞いてキリヤもそうしておくことにした。
アルバードも聞いていて、少し言葉が出なくなっていた。何か思うところがあるのか。
一方戦闘中
相変わらず戦況は大きく変わらず、クリスが一方的に攻撃をし続け、それをひたすらに防御するだけの試合が続く。
しかしこのただの泥試合でもレベルの高さは感じてくる。
「良い加減攻撃をしろ!!人殺し!リューさんを殺したみたいに俺を攻撃して来いよ」
「五月蝿い初めから俺は攻撃しないって言ってただろ。分かってんなら勝負すんなよ。」
2人は防御魔法越しに喧嘩をする。
クリスは絶えず火で氷を溶かそうとするが、フィルの魔力量の防御には崩せそうに無い。
「リューさんは、リューさんはいつも俺に弟の自慢話をしていた!俺の弟は凄いんだって、そしていつか俺とリューさんとその弟で任務に行って世界を救うんだって、嬉しそうに俺に話してくれていたよ、、、でもその夢を、リューさんの夢をお前は殺して壊した。俺の恩人を大切な恩人を許さない。いくら同業者だからって俺は許さねえ!!」
そう言ってクリスはバックステップで距離をあけ、風で空に浮く。
「リューさんの夢は俺の夢でもあった。だから俺はお前を絶対に殺す。乱れ雷火」
クリスの持ち味である複数属性の合成技が容赦なく繰り出される。
しかし────
「そうだったのか、兄さんにそんな夢があったんだ。」
クリスの声が届いたのか、
ついに防御しかしていなかった、フィルが、ついに防御魔法を解除し、前へ少しずつ歩く。
そして、クリスの攻撃を軽々と全て躱し、近寄る。
「お前の言ってる弟それ、、俺だ」
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