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熱をみつける
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「少し1人になりたいの。エリック様にはもう少し時間が経ってから知らせてもらえるかしら。」
ネリーにそう言い残し私は図書室から見える日当たりのいい庭のベンチに腰掛けていた。
侍女と護衛がすこし離れたところに待機している。
今日の午前はお医者様が来る日だったため、エリック様には遠慮してもらっていた。
そしてエリック様に診察が終わったと報告に行く様に侍女に言っているネリーを止めてそう言った。
なんだか1人になりたかった。
昨日のティータイム以来なんだかエリック様に抱き寄せられると落ち着かない。
口付けを落とされたところがいつまでも気になる。
そんな事を考えると、耳に口付けされたのは昨日の事だと言うのに思わず耳をさすっていた。
すっかり慣れたと思っていたけれど、ここに来てどういう態度を返していいのかわからない。
今までどうしていたかしら。
どこに口付けを落とされたなんて気にもしていなかった気がするわ……
ぽふ
頭に何か載った感覚があった。
上を見るとエリック様の顔がベンチの後ろから覗き込んでいた。
頭に感じたのは彼の手のひら。
「こら。ひとりでウロウロして何かあったらどうするんだ。」
不意打ちのように現れ、ドキリとした。
「大丈夫です。護衛も侍女も来てくれましたから。」
動揺を隠して言い切る。
「心配するだろ。」
ため息混じりに言いながらベンチを回り込んでこちらに来ると、ひょいと抱き上げられた。
そんな軽々と……
私の腰にまわされているのは鍛えられた逞しい腕だ。
反射のように首に手を回している自分に驚く。
(いつもこうだったかしら?)
いつも腕に乗せられて鷹にでもなった気分だわ位にしか思っていなかった。
「医者には植物園に行くくらいは大丈夫だと言われたって聞いたぞ。」
言いながら肩にちゅっと口付けを落とす。
「だからさ。体調もいいみたいだし、天気もいいし、午後に植物園へ行かないか?今日は休園日で丁度いいんだ。特別に少しの間入れてもらえるように手をまわすから……どうしたんだ、ローズ。」
私はエリック様から顔が見えないように彼の首元に顔を隠していた。
「いえ……少し、日差しが眩しくて……」
咄嗟に嘘をついた。
なんだかみっともない顔をしているような気がしたのだ。
この腕で抱き上げられ、甘く囁くような声を耳元で聞いて、私を映すオニキスの黒い瞳は熱を帯びている。
どうして今まで無視できたのだろうか。
気付いてしまうと、とてもまともじゃいられない。
そう舞い上がったのは一瞬だった。
すぐ現実が頭をよぎる。
今エリック様の熱を向けているローズが前と変わらず23歳だと知ったら彼はどうするのかしら。
スーと体が冷えていく。
アドニスといると群がってくる学園の御令嬢がそういえばこんな感じで落ち着きのない様子だった。
それを年増令嬢がやってどうするの。
「ローズ?」
「素敵ですね、楽しみです。」
パッと隠していた顔をエリック様に向ける。
(恥ずかしくて顔を隠すのが可愛らしいのは学園生までよ。)
もう1人の私が私の勘違いを許さない。
急にエリック様の熱も私には関係の無いものと思えた。
「では出かける準備をし始めなければ!部屋に帰りましょう、エリック様。」
「ん?ああ、そうだな。久しぶりの外出になるもんな。」
楽しみだな、弾む声で嬉しそうに続けると屋敷に向かって歩き出した。
いつも歪な形の私たち。
今が一番不協和音だ。
エリック様は私を庇護対象として見ているが実際は違う。
私がいつまでもグズグズしているから……
先延ばしにすればするほど打ち明けた時の傷がどんどん深くなる気がした。
ブンブンと頭を振る。
「え?どうした?ローズ。」
「いえ、少し浮かれてしまいました。午後が楽しみです、エリック様。」
そう微笑むと、彼も眩しそうに微笑み返してくれた。
いつまでも続く関係ではない。
そう考えながらも先延ばしにしていた。
そろそろ覚悟を決めなくては。
ネリーにそう言い残し私は図書室から見える日当たりのいい庭のベンチに腰掛けていた。
侍女と護衛がすこし離れたところに待機している。
今日の午前はお医者様が来る日だったため、エリック様には遠慮してもらっていた。
そしてエリック様に診察が終わったと報告に行く様に侍女に言っているネリーを止めてそう言った。
なんだか1人になりたかった。
昨日のティータイム以来なんだかエリック様に抱き寄せられると落ち着かない。
口付けを落とされたところがいつまでも気になる。
そんな事を考えると、耳に口付けされたのは昨日の事だと言うのに思わず耳をさすっていた。
すっかり慣れたと思っていたけれど、ここに来てどういう態度を返していいのかわからない。
今までどうしていたかしら。
どこに口付けを落とされたなんて気にもしていなかった気がするわ……
ぽふ
頭に何か載った感覚があった。
上を見るとエリック様の顔がベンチの後ろから覗き込んでいた。
頭に感じたのは彼の手のひら。
「こら。ひとりでウロウロして何かあったらどうするんだ。」
不意打ちのように現れ、ドキリとした。
「大丈夫です。護衛も侍女も来てくれましたから。」
動揺を隠して言い切る。
「心配するだろ。」
ため息混じりに言いながらベンチを回り込んでこちらに来ると、ひょいと抱き上げられた。
そんな軽々と……
私の腰にまわされているのは鍛えられた逞しい腕だ。
反射のように首に手を回している自分に驚く。
(いつもこうだったかしら?)
いつも腕に乗せられて鷹にでもなった気分だわ位にしか思っていなかった。
「医者には植物園に行くくらいは大丈夫だと言われたって聞いたぞ。」
言いながら肩にちゅっと口付けを落とす。
「だからさ。体調もいいみたいだし、天気もいいし、午後に植物園へ行かないか?今日は休園日で丁度いいんだ。特別に少しの間入れてもらえるように手をまわすから……どうしたんだ、ローズ。」
私はエリック様から顔が見えないように彼の首元に顔を隠していた。
「いえ……少し、日差しが眩しくて……」
咄嗟に嘘をついた。
なんだかみっともない顔をしているような気がしたのだ。
この腕で抱き上げられ、甘く囁くような声を耳元で聞いて、私を映すオニキスの黒い瞳は熱を帯びている。
どうして今まで無視できたのだろうか。
気付いてしまうと、とてもまともじゃいられない。
そう舞い上がったのは一瞬だった。
すぐ現実が頭をよぎる。
今エリック様の熱を向けているローズが前と変わらず23歳だと知ったら彼はどうするのかしら。
スーと体が冷えていく。
アドニスといると群がってくる学園の御令嬢がそういえばこんな感じで落ち着きのない様子だった。
それを年増令嬢がやってどうするの。
「ローズ?」
「素敵ですね、楽しみです。」
パッと隠していた顔をエリック様に向ける。
(恥ずかしくて顔を隠すのが可愛らしいのは学園生までよ。)
もう1人の私が私の勘違いを許さない。
急にエリック様の熱も私には関係の無いものと思えた。
「では出かける準備をし始めなければ!部屋に帰りましょう、エリック様。」
「ん?ああ、そうだな。久しぶりの外出になるもんな。」
楽しみだな、弾む声で嬉しそうに続けると屋敷に向かって歩き出した。
いつも歪な形の私たち。
今が一番不協和音だ。
エリック様は私を庇護対象として見ているが実際は違う。
私がいつまでもグズグズしているから……
先延ばしにすればするほど打ち明けた時の傷がどんどん深くなる気がした。
ブンブンと頭を振る。
「え?どうした?ローズ。」
「いえ、少し浮かれてしまいました。午後が楽しみです、エリック様。」
そう微笑むと、彼も眩しそうに微笑み返してくれた。
いつまでも続く関係ではない。
そう考えながらも先延ばしにしていた。
そろそろ覚悟を決めなくては。
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