変人令息は悪女を憎む

くきの助

文字の大きさ
10 / 56

悪女と思い込み ーアベルー

しおりを挟む
「マリーは支離滅裂で何を言っているのか分からなかったな。」
「ええ、そうでございましたね。」

私が離れに行くと、カトリや使用人からの聞き取りは終わっており、丁度地下牢でセバスがマリーの聞き取りをしている途中だった。

しかしマリーは興奮しているのか、何が言いたいのか分からぬことを喚いているだけだった。
そのため聞き取りは中断し、本邸の私の執務室に戻ってきたのだ。
そこでセバスからの報告を聞くことにした。

「カトリと使用人の話だけで事は足りるかと存じます。報告書も作成いたしますが、ざっくりとお話しいたしましょう。」

そういうと聞き取ったメモだろう。
パラパラとめくる。

「ブリジット様の予算を使っていたのはやはりカトリとマリーでございました。最初はマリーだけが使っていた様なのですが、ブリジット様が使ってない予算を使っているだけだから問題がないと言われカトリも使う様になったそうです。」

「なぜそうなる?」

カトリはそんな浅はかな女性だったのか?

「アベル様とマリーが恋仲だという話を信じたという事でございました。」

何の話だ?
突飛な話すぎて眉根を寄せる事しかできない。

「他のメイドには声をかけないのに、自分だけにはよく声をかけてもらえてるとマリーが言ったそうでございます。」

「カトリの娘だから何度か声をかけただけだぞ。」

「ええ、ですがマリーはそれを特別だと感じた様でございました。そうしてブリジット様とマリーが揉めた日。あの時アベル様はブリジット様を非難しましたが、マリーの話は信じ気遣いました。その事で自分は婚約者よりも大事にされていると思った様です。」

確かに私はブリジットからは話を聞かなかった。
しかしだからと言って

「どうしてそうなるんだ?」

「あの時ブリジット様は怪我をされていたそうです。」

息を呑んだ。

「マリーの手がブリジット様の顔に当たり、目が腫れ鼻血が出たそうです。
だからこそ態々2人でアベル様に謝罪に訪れたとカトリは申しておりました。ですがアベル様はブリジット様から話を聞きに行く様子すらなかった。その事でマリーはすっかり舞い上がり、ブリジット様は嫌われているが自分は大事にされている。だから自分は婚約者の予算はつかっていいのだ、部屋も使っていいのだと考え、カトリもその考えに乗った、と言う事でございました。」
まあ、都合のいい話だけ信じただけでございましょうが、と続ける。

「部屋……?」

いつの間にか口の中がカラカラだ。

「ブリジット様の部屋はカトリとマリーが使っておりました。ブリジット様が使っておられたのは寝室だけだった様でございます。」

言葉など出なかった。

「ブリジット様とマリーが揉めた時、私もカトリに聞いたのです。ブリジット様は大丈夫だったのかと。カトリはきちんと対応しましたと申しました。アベル様に詳しく聞かれなかった事で娘の失態を誤魔化すことにしたのでございましょう。私もカトリが対応したのなら、とその時は納得いたしました。」

言葉に詰まった様にセバスは黙った。
しかしすぐ口を開く。

「今回のことは私にも責任がございます。ご主人様からなんらかの処罰を受けることになるでしょう。」

私は愕然としていた。

どうして

どうして私はブリジットも怪我をしていると思わなかった?
あの簡素な寝室をみてなぜ違和感を感じなかった?


彼女が悪女だからだ。


悪女は浪費は当たり前。
悪女は理不尽に人を貶めて当たり前。


わかっている。

少しでも交流をもっていればこんなことにはなっていなかったんだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】先に求めたのは、

たまこ
恋愛
 ペルジーニ伯爵の娘、レティは変わり者である。  伯爵令嬢でありながら、学園には通わずスタマーズ公爵家で料理人として働いている。  ミゲル=スタマーズ公爵令息は、扱いづらい子どもである。  頑固者で拘りが強い。愛想は無く、いつも不機嫌そうにしている。  互いを想い合う二人が長い間すれ違ってしまっているお話。 ※初日と二日目は六話公開、その後は一日一話公開予定です。 ※恋愛小説大賞エントリー中です。

【完結】ルイーズの献身~世話焼き令嬢は婚約者に見切りをつけて完璧侍女を目指します!~

青依香伽
恋愛
ルイーズは婚約者を幼少の頃から家族のように大切に思っていた そこに男女の情はなかったが、将来的には伴侶になるのだからとルイーズなりに尽くしてきた しかし彼にとってルイーズの献身は余計なお世話でしかなかったのだろう 婚約者の裏切りにより人生の転換期を迎えるルイーズ 婚約者との別れを選択したルイーズは完璧な侍女になることができるのか この物語は様々な人たちとの出会いによって、成長していく女の子のお話 *更新は不定期です *加筆修正中です

【短編】記憶を失くした令嬢が、二度目の恋に落ちるまで

夕凪ゆな
恋愛
 ある雪の降る日の朝、ヴァロア伯爵家のリディアのもとに、信じられない報せが届いた。  それは、愛する婚約者、ジェイドが遠征先で負傷し、危篤であるという報せだった。 「戻ったら式を挙げよう。君の花嫁姿が、今から楽しみだ」  そう言って、結婚の誓いを残していったジェイドが、今、命を落とそうとしている。  その事実を受け入れることができないリディアは、ジェイドの命を救おうと、禁忌魔法に手を染めた。

私の容姿は中の下だと、婚約者が話していたのを小耳に挟んでしまいました

山田ランチ
恋愛
想い合う二人のすれ違いラブストーリー。 ※以前掲載しておりましたものを、加筆の為再投稿致しました。お読み下さっていた方は重複しますので、ご注意下さいませ。 コレット・ロシニョール 侯爵家令嬢。ジャンの双子の姉。 ジャン・ロシニョール 侯爵家嫡男。コレットの双子の弟。 トリスタン・デュボワ 公爵家嫡男。コレットの婚約者。 クレマン・ルゥセーブル・ジハァーウ、王太子。 シモン・グレンツェ 辺境伯家嫡男。コレットの従兄。 ルネ ロシニョール家の侍女でコレット付き。 シルヴィー・ペレス 子爵令嬢。 〈あらすじ〉  コレットは愛しの婚約者が自分の容姿について話しているのを聞いてしまう。このまま大好きな婚約者のそばにいれば疎まれてしまうと思ったコレットは、親類の領地へ向かう事に。そこで新しい商売を始めたコレットは、知らない間に国の重要人物になってしまう。そしてトリスタンにも女性の影が見え隠れして……。  ジレジレ、すれ違いラブストーリー

【改稿版・完結】その瞳に魅入られて

おもち。
恋愛
「——君を愛してる」 そう悲鳴にも似た心からの叫びは、婚約者である私に向けたものではない。私の従姉妹へ向けられたものだった—— 幼い頃に交わした婚約だったけれど私は彼を愛してたし、彼に愛されていると思っていた。 あの日、二人の胸を引き裂くような思いを聞くまでは…… 『最初から愛されていなかった』 その事実に心が悲鳴を上げ、目の前が真っ白になった。 私は愛し合っている二人を引き裂く『邪魔者』でしかないのだと、その光景を見ながらひたすら現実を受け入れるしかなかった。  『このまま婚姻を結んでも、私は一生愛されない』  『私も一度でいいから、あんな風に愛されたい』 でも貴族令嬢である立場が、父が、それを許してはくれない。 必死で気持ちに蓋をして、淡々と日々を過ごしていたある日。偶然見つけた一冊の本によって、私の運命は大きく変わっていくのだった。 私も、貴方達のように自分の幸せを求めても許されますか……? ※後半、壊れてる人が登場します。苦手な方はご注意下さい。 ※このお話は私独自の設定もあります、ご了承ください。ご都合主義な場面も多々あるかと思います。 ※『幸せは人それぞれ』と、いうような作品になっています。苦手な方はご注意下さい。 ※こちらの作品は小説家になろう様でも掲載しています。

全部私が悪いのです

久留茶
恋愛
ある出来事が原因でオーディール男爵家の長女ジュディス(20歳)の婚約者を横取りする形となってしまったオーディール男爵家の次女オフィーリア(18歳)。 姉の元婚約者である王国騎士団所属の色男エドガー・アーバン伯爵子息(22歳)は姉への気持ちが断ち切れず、彼女と別れる原因となったオフィーリアを結婚後も恨み続け、妻となったオフィーリアに対して辛く当たる日々が続いていた。 世間からも姉の婚約者を奪った『欲深いオフィーリア』と悪名を轟かせるオフィーリアに果たして幸せは訪れるのだろうか……。 *全18話完結となっています。 *大分イライラする場面が多いと思われますので苦手な方はご注意下さい。 *後半まで読んで頂ければ救いはあります(多分)。 *この作品は他誌にも掲載中です。

手作りお菓子をゴミ箱に捨てられた私は、自棄を起こしてとんでもない相手と婚約したのですが、私も含めたみんな変になっていたようです

珠宮さくら
恋愛
アンゼリカ・クリットの生まれた国には、不思議な習慣があった。だから、アンゼリカは必死になって頑張って馴染もうとした。 でも、アンゼリカではそれが難しすぎた。それでも、頑張り続けた結果、みんなに喜ばれる才能を開花させたはずなのにどうにもおかしな方向に突き進むことになった。 加えて好きになった人が最低野郎だとわかり、自棄を起こして婚約した子息も最低だったりとアンゼリカの周りは、最悪が溢れていたようだ。

25年の後悔の結末

専業プウタ
恋愛
結婚直前の婚約破棄。親の介護に友人と恋人の裏切り。過労で倒れていた私が見た夢は25年前に諦めた好きだった人の記憶。もう一度出会えたら私はきっと迷わない。

処理中です...