変人令息は悪女を憎む

くきの助

文字の大きさ
11 / 56

悪女と謎の女性 ーアベルー

しおりを挟む
部屋に入ると独特な柄の壁紙が目に入った。
薄明かりの室内でもよくわかるくらい派手だ。

部屋を見回す。

この部屋の大きさに似つかわしくない豪華な意匠のテーブルセットが置いてある。
窓際にはよくわからない美術品。
大きな絵画まで飾ってある。

統一感も何もない下品な部屋だ。


私は夜になっても一睡も出来ず、夜明けを迎えることになった。
そこで離れの件の部屋に行くことにしたのだ。

まだ辺りはぼんやり薄暗い。

部屋続きの衣装部屋に入る。
派手なドレスや靴がぎっちり詰まっていた。
まだ自宅の屋敷にもドレスを置いてあると言うのだから呆れる。
外出する時はここからドレスを着て出て行く訳にもいかず、自宅で用意していたらしい。

私は軽く頭を振ると衣装室を出る。

反対の続きの部屋は寝室だ。
そこは鍵がかけられていた。
本来鍵などなかったのだが、付けたらしい。

ここまで好き放題やっていたとは。

一度部屋から出て寝室に入った。

昨日から離れにはメイドを入れていない。
部屋は昨日のままになっていた。
ドレッサーに教科書とノート、ティーカップが置いてある。

(こんなのを机にして勉強していたのか。)

以前訪れた時のことを思い出した。
ベッドに教科書を広げていた。
あの時はあまり気にしなかったが……

気がつけば強く拳を握り締めていた。

なんとも言えぬ気持ちになり窓際に歩く。
ぼんやりと窓の外を見る。

あれは?

朝靄の中、本邸から人が出てきた。
ずいぶん慌てている。

ブリジットだ。


こんな明け方にどこに行く気だ?
いや、門衛に止められ出ることはかなわないだろう。
しかしおかしい。

気がつくと私は部屋を飛び出していた。



彼女の後を追うように門に走る。
門が見えると彼女が誰かを門の中に引き入れていた。

引き入れているのはプラチナピンクの髪をした女性だった。
しかしなんだか女性の様子が変だ。

思わずじっと凝視する。

そうしてヒュッと息を呑む。
女性の手でキラと何か光った。

「ブリジット!」

気が付いたら走りながら叫んでいた。

ブリジットがこちらを向いた。
何か言っている。

違う!
その女から離れろ!!

女がブリジットにぶつかった。彼女の体が揺れる。
ブリジットのブラウスが赤に染まってゆく。

女はブリジットから体を離すとナイフを持ち直し、ブリジットに向かってまたナイフを突き立てようと大きく振りかぶった。

「ブリジット!!」

怒鳴るように名前を呼んだ。

ブリジットが静かに崩れ落ちる。


「ブリジット!!」

走り寄るとブリジットは気を失っていた。

女性はナイフを振り下ろす直前に門衛に取り押さえられた。

ブリジットの服の袖がザックリ切れ、べっとりと血がついている。

腕を切り付けられていた。

私は無我夢中でシャツを脱ぐとブリジットの腕を縛り付け、彼女を抱えて屋敷に戻り、大声で使用人を叩き起こした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私が、良いと言ってくれるので結婚します

あべ鈴峰
恋愛
幼馴染のクリスと比較されて悲しい思いをしていたロアンヌだったが、突然現れたレグール様のプロポーズに 初対面なのに結婚を決意する。 しかし、その事を良く思わないクリスが・・。

【完結】先に求めたのは、

たまこ
恋愛
 ペルジーニ伯爵の娘、レティは変わり者である。  伯爵令嬢でありながら、学園には通わずスタマーズ公爵家で料理人として働いている。  ミゲル=スタマーズ公爵令息は、扱いづらい子どもである。  頑固者で拘りが強い。愛想は無く、いつも不機嫌そうにしている。  互いを想い合う二人が長い間すれ違ってしまっているお話。 ※初日と二日目は六話公開、その後は一日一話公開予定です。 ※恋愛小説大賞エントリー中です。

【完結】ルイーズの献身~世話焼き令嬢は婚約者に見切りをつけて完璧侍女を目指します!~

青依香伽
恋愛
ルイーズは婚約者を幼少の頃から家族のように大切に思っていた そこに男女の情はなかったが、将来的には伴侶になるのだからとルイーズなりに尽くしてきた しかし彼にとってルイーズの献身は余計なお世話でしかなかったのだろう 婚約者の裏切りにより人生の転換期を迎えるルイーズ 婚約者との別れを選択したルイーズは完璧な侍女になることができるのか この物語は様々な人たちとの出会いによって、成長していく女の子のお話 *更新は不定期です *加筆修正中です

【完結】お荷物王女は婚約解消を願う

miniko
恋愛
王家の瞳と呼ばれる色を持たずに生まれて来た王女アンジェリーナは、一部の貴族から『お荷物王女』と蔑まれる存在だった。 それがエスカレートするのを危惧した国王は、アンジェリーナの後ろ楯を強くする為、彼女の従兄弟でもある筆頭公爵家次男との婚約を整える。 アンジェリーナは八歳年上の優しい婚約者が大好きだった。 今は妹扱いでも、自分が大人になれば年の差も気にならなくなり、少しづつ愛情が育つ事もあるだろうと思っていた。 だが、彼女はある日聞いてしまう。 「お役御免になる迄は、しっかりアンジーを守る」と言う彼の宣言を。 ───そうか、彼は私を守る為に、一時的に婚約者になってくれただけなのね。 それなら出来るだけ早く、彼を解放してあげなくちゃ・・・・・・。 そして二人は盛大にすれ違って行くのだった。 ※設定ユルユルですが、笑って許してくださると嬉しいです。 ※感想欄、ネタバレ配慮しておりません。ご了承ください。

手作りお菓子をゴミ箱に捨てられた私は、自棄を起こしてとんでもない相手と婚約したのですが、私も含めたみんな変になっていたようです

珠宮さくら
恋愛
アンゼリカ・クリットの生まれた国には、不思議な習慣があった。だから、アンゼリカは必死になって頑張って馴染もうとした。 でも、アンゼリカではそれが難しすぎた。それでも、頑張り続けた結果、みんなに喜ばれる才能を開花させたはずなのにどうにもおかしな方向に突き進むことになった。 加えて好きになった人が最低野郎だとわかり、自棄を起こして婚約した子息も最低だったりとアンゼリカの周りは、最悪が溢れていたようだ。

25年の後悔の結末

専業プウタ
恋愛
結婚直前の婚約破棄。親の介護に友人と恋人の裏切り。過労で倒れていた私が見た夢は25年前に諦めた好きだった人の記憶。もう一度出会えたら私はきっと迷わない。

愛する人は、貴方だけ

月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
下町で暮らすケイトは母と二人暮らし。ところが母は病に倒れ、ついに亡くなってしまう。亡くなる直前に母はケイトの父親がアークライト公爵だと告白した。 天涯孤独になったケイトの元にアークライト公爵家から使者がやって来て、ケイトは公爵家に引き取られた。 公爵家には三歳年上のブライアンがいた。跡継ぎがいないため遠縁から引き取られたというブライアン。彼はケイトに冷たい態度を取る。 平民上がりゆえに令嬢たちからは無視されているがケイトは気にしない。最初は冷たかったブライアン、第二王子アーサー、公爵令嬢ミレーヌ、幼馴染カイルとの交友を深めていく。 やがて戦争の足音が聞こえ、若者の青春を奪っていく。ケイトも無関係ではいられなかった……。

置き去りにされた恋をもう一度

ともどーも
恋愛
「好きです。付き合ってください!」  大きな桜の木に花が咲き始めた頃、その木の下で、彼は真っ赤な顔をして告げてきた。  嬉しさに胸が熱くなり、なかなか返事ができなかった。その間、彼はまっすぐ緊張した面持ちで私を見ていた。そして、私が「はい」と答えると、お互い花が咲いたような笑顔で笑い合った。  中学校の卒業式の日だった……。  あ~……。くだらない。  脳味噌花畑の学生の恋愛ごっこだったわ。  全ての情熱を学生時代に置いてきた立花美咲(24)の前に、突然音信不通になった元カレ橘蓮(24)が現れた。  なぜ何も言わずに姿を消したのか。  蓮に起こったことを知り、美咲はあの頃に置き去りにした心を徐々に取り戻していく。 ──────────────────── 現時点でプロローグ+20話まで執筆ができていますが、まだ完結していません。 20話以降は不定期になると思います。 初の現代版の恋愛ストーリーなので、遅い執筆がさらに遅くなっていますが、必ず最後まで書き上げます! 少しでも楽しんでいただければ幸いです。

処理中です...