37 / 56
そしていなくなった ーアベルー
しおりを挟む
3日はあっという間に過ぎ、怪我の経過も良好なブリジットは母上と王都のタウンハウスへと行く事になった。
この3日間私はブリジットを見舞うことができなかった。
母上に止められていたのもあるが、どう言う顔で見舞えばいいのかわからなかったのだ。
謝らねばならないと思うのだが一体なんて言えばいいのか。
そもそもどう考えても到底許してもらえるとも思えなかった。
私が王宮に仕事へ行っている間に母上は着々と全ての事を片付けていた。
カトリとマリーは、旦那であり父親であるホプス男爵が引き取りに来た。
事件化しない代わりに、横領したお金の返金と二度とこちらに関わらない事を約束した。
こちらに関わらないとは物理的に遠く離れて二度とスラビーズ周辺に立ち入らないと言うことだ。
しかしそんな約束はなくとももう王都には住めないだろう。
突然羽振りの良くなったカトリ母娘を訝しんでいる者も居たようだった。
そのタイミングでスラビーズ子爵家に解雇されたと聞けば、推して知るべしだろう。
噂はあっという間に広がるに違いない。
男爵は屋敷を売りこちらへの返済に充てるようだ。
ホプス男爵家は投資家で領地を持たない。
王都から遠く離れた地方の出身でそちらに戻ることにした様だった。
カトリは夫の実家は雪に年中囲まれている土地で結婚してから一度しか行っておらず、二度と行きたくないとよく話していた。
夫の実家に帰るだけで罰になるとは皮肉な話だ。
マリーの方は修道院に入ることになったらしい。
私は悪くない。騙された。と未だ支離滅裂な発言を繰り返しており手に負えないそうだ。
セドリックとアリス嬢のことは、母上がドリンコート侯爵家と色々話している様だが、詳しくは教えてもらえていない。
軽く息を吐いて立ち上がる。
そろそろ仕事に行く用意をせねばならない。
母上は私が仕事に行く前にこの屋敷を出ると言っていた。
もうすぐだろうか。
コンコン
そう思った時私の執務室のドアがノックされた。
「もう奥様とブリジット様が出られる様です。お見送りいたしますか。」
セバスだった。
三日間の空白が後ろめたい。
しかしけじめだ。
「今行く。」
返事をして上着を着ると玄関に向かった。
玄関に行くと母上とブリジットがいた。
「あら、お見送りありがとう。ではまた報告すべき事は報告するわね。じゃあ、とりあえず私達は帰るわ。お仕事頑張って。」
私の姿を見るなりあっさりと母上が言った。
ブリジットはそんな母上の横で少し驚いた顔をして私を見ていた。
(見送りなんてすると思わなかった、と言う顔だな。)
そういう男だと思われていても仕方がない。
しかしチクリと胸が痛んだ。
見送りに来たと言うのに目を逸らしてしまった。
そんな私を呆れた様に見た母上は「行きましょう、ビジイ。」とブリジットをうながした。
しばらく沈黙があった後だった。
「言いたい事があるなら言ってもいいのよ、ビジイ。」
優しく語りかける様な母上の声に私は視線を戻す。
ブリジットがこちらを見ていた。
視線が交わる。
と思った瞬間ブリジットがこちらに走り寄った。
(ぶたれる?)
いや、それもやぶさかではない。
すべて受け入れよう。
ドっと衝撃があった。
思わず目を瞑る。
「ごめんなさい。」
囁くような、風が吹いたら消えてしまいそうな、小さな声が耳元で聞こえた。
「え……」
目を開けるともう玄関に向かって小走りのブリジットの後ろ姿が見えた。
呆然と立ち尽くす私を母上はチラと見て嘆息すると、そのままブリジットの後を追う様に出ていった。
残ったのはブリジットの甘い香りと
後悔。
この3日間私はブリジットを見舞うことができなかった。
母上に止められていたのもあるが、どう言う顔で見舞えばいいのかわからなかったのだ。
謝らねばならないと思うのだが一体なんて言えばいいのか。
そもそもどう考えても到底許してもらえるとも思えなかった。
私が王宮に仕事へ行っている間に母上は着々と全ての事を片付けていた。
カトリとマリーは、旦那であり父親であるホプス男爵が引き取りに来た。
事件化しない代わりに、横領したお金の返金と二度とこちらに関わらない事を約束した。
こちらに関わらないとは物理的に遠く離れて二度とスラビーズ周辺に立ち入らないと言うことだ。
しかしそんな約束はなくとももう王都には住めないだろう。
突然羽振りの良くなったカトリ母娘を訝しんでいる者も居たようだった。
そのタイミングでスラビーズ子爵家に解雇されたと聞けば、推して知るべしだろう。
噂はあっという間に広がるに違いない。
男爵は屋敷を売りこちらへの返済に充てるようだ。
ホプス男爵家は投資家で領地を持たない。
王都から遠く離れた地方の出身でそちらに戻ることにした様だった。
カトリは夫の実家は雪に年中囲まれている土地で結婚してから一度しか行っておらず、二度と行きたくないとよく話していた。
夫の実家に帰るだけで罰になるとは皮肉な話だ。
マリーの方は修道院に入ることになったらしい。
私は悪くない。騙された。と未だ支離滅裂な発言を繰り返しており手に負えないそうだ。
セドリックとアリス嬢のことは、母上がドリンコート侯爵家と色々話している様だが、詳しくは教えてもらえていない。
軽く息を吐いて立ち上がる。
そろそろ仕事に行く用意をせねばならない。
母上は私が仕事に行く前にこの屋敷を出ると言っていた。
もうすぐだろうか。
コンコン
そう思った時私の執務室のドアがノックされた。
「もう奥様とブリジット様が出られる様です。お見送りいたしますか。」
セバスだった。
三日間の空白が後ろめたい。
しかしけじめだ。
「今行く。」
返事をして上着を着ると玄関に向かった。
玄関に行くと母上とブリジットがいた。
「あら、お見送りありがとう。ではまた報告すべき事は報告するわね。じゃあ、とりあえず私達は帰るわ。お仕事頑張って。」
私の姿を見るなりあっさりと母上が言った。
ブリジットはそんな母上の横で少し驚いた顔をして私を見ていた。
(見送りなんてすると思わなかった、と言う顔だな。)
そういう男だと思われていても仕方がない。
しかしチクリと胸が痛んだ。
見送りに来たと言うのに目を逸らしてしまった。
そんな私を呆れた様に見た母上は「行きましょう、ビジイ。」とブリジットをうながした。
しばらく沈黙があった後だった。
「言いたい事があるなら言ってもいいのよ、ビジイ。」
優しく語りかける様な母上の声に私は視線を戻す。
ブリジットがこちらを見ていた。
視線が交わる。
と思った瞬間ブリジットがこちらに走り寄った。
(ぶたれる?)
いや、それもやぶさかではない。
すべて受け入れよう。
ドっと衝撃があった。
思わず目を瞑る。
「ごめんなさい。」
囁くような、風が吹いたら消えてしまいそうな、小さな声が耳元で聞こえた。
「え……」
目を開けるともう玄関に向かって小走りのブリジットの後ろ姿が見えた。
呆然と立ち尽くす私を母上はチラと見て嘆息すると、そのままブリジットの後を追う様に出ていった。
残ったのはブリジットの甘い香りと
後悔。
184
あなたにおすすめの小説
あの、初夜の延期はできますか?
木嶋うめ香
恋愛
「申し訳ないが、延期をお願いできないだろうか。その、いつまでとは今はいえないのだが」
私シュテフイーナ・バウワーは今日ギュスターヴ・エリンケスと結婚し、シュテフイーナ・エリンケスになった。
結婚祝の宴を終え、侍女とメイド達に準備された私は、ベッドの端に座り緊張しつつ夫のギュスターヴが来るのを待っていた。
けれど、夜も更け体が冷え切っても夫は寝室には姿を見せず、明け方朝告げ鶏が鳴く頃に漸く現れたと思ったら、私の前に跪き、彼は泣きそうな顔でそう言ったのだ。
「私と夫婦になるつもりが無いから永久に延期するということですか? それとも何か理由があり延期するだけでしょうか?」
なぜこの人私に求婚したのだろう。
困惑と悲しみを隠し尋ねる。
婚約期間は三ヶ月と短かったが、それでも頻繁に会っていたし、会えない時は手紙や花束が送られてきた。
関係は良好だと感じていたのは、私だけだったのだろうか。
ボツネタ供養の短編です。
十話程度で終わります。
もう一度、君を好きになる時間
なべぞう
恋愛
結婚後、夫とのすれ違いと孤独な生活の中で心身を壊し、若くして病死した女性・相沢美月。
後悔だけを残して人生を終えたはずの彼女は、目を覚ますと――大学時代へと時間が巻き戻っていた。
二度目の人生を得た美月は決意する。
「今度こそ、自分を大切にして生きる」と。
前の人生で結婚した元恋人・恒一との再会。
しかし、同じ未来を辿るつもりはない。
そんな中、前の人生では出会うことのなかった青年・三浦との出会いが、彼女の未来を少しずつ変えていく。
「我慢すること」が正解だと思っていた彼女は、二度目の人生で初めて自分の幸せを選び取る勇気を学んでいく。
――人は、やり直せたなら本当に幸せになれるのか?
失敗した人生をもう一度歩き直す、一人の女性の再生と恋、そして本当の愛を見つける物語
全部私が悪いのです
久留茶
恋愛
ある出来事が原因でオーディール男爵家の長女ジュディス(20歳)の婚約者を横取りする形となってしまったオーディール男爵家の次女オフィーリア(18歳)。
姉の元婚約者である王国騎士団所属の色男エドガー・アーバン伯爵子息(22歳)は姉への気持ちが断ち切れず、彼女と別れる原因となったオフィーリアを結婚後も恨み続け、妻となったオフィーリアに対して辛く当たる日々が続いていた。
世間からも姉の婚約者を奪った『欲深いオフィーリア』と悪名を轟かせるオフィーリアに果たして幸せは訪れるのだろうか……。
*全18話完結となっています。
*大分イライラする場面が多いと思われますので苦手な方はご注意下さい。
*後半まで読んで頂ければ救いはあります(多分)。
*この作品は他誌にも掲載中です。
【完結】伯爵令嬢は婚約を終わりにしたい〜次期公爵の幸せのために婚約破棄されることを目指して悪女になったら、なぜか溺愛されてしまったようです〜
よどら文鳥
恋愛
伯爵令嬢のミリアナは、次期公爵レインハルトと婚約関係である。
二人は特に問題もなく、順調に親睦を深めていった。
だがある日。
王女のシャーリャはミリアナに対して、「二人の婚約を解消してほしい、レインハルトは本当は私を愛しているの」と促した。
ミリアナは最初こそ信じなかったが王女が帰った後、レインハルトとの会話で王女のことを愛していることが判明した。
レインハルトの幸せをなによりも優先して考えているミリアナは、自分自身が嫌われて婚約破棄を宣告してもらえばいいという決断をする。
ミリアナはレインハルトの前では悪女になりきることを決意。
もともとミリアナは破天荒で活発な性格である。
そのため、悪女になりきるとはいっても、むしろあまり変わっていないことにもミリアナは気がついていない。
だが、悪女になって様々な作戦でレインハルトから嫌われるような行動をするが、なぜか全て感謝されてしまう。
それどころか、レインハルトからの愛情がどんどんと深くなっていき……?
※前回の作品同様、投稿前日に思いついて書いてみた作品なので、先のプロットや展開は未定です。今作も、完結までは書くつもりです。
※第一話のキャラがざまぁされそうな感じはありますが、今回はざまぁがメインの作品ではありません。もしかしたら、このキャラも更生していい子になっちゃったりする可能性もあります。(このあたり、現時点ではどうするか展開考えていないです)
【本編完結】王子の寝た子を起こしたら、夢見る少女では居られなくなりました!
こさか りね
恋愛
私、フェアリエル・クリーヴランドは、ひょんな事から前世を思い出した。
そして、気付いたのだ。婚約者が私の事を良く思っていないという事に・・・。
婚約者の態度は前世を思い出した私には、とても耐え難いものだった。
・・・だったら、婚約解消すれば良くない?
それに、前世の私の夢は『のんびりと田舎暮らしがしたい!』と常々思っていたのだ。
結婚しないで済むのなら、それに越したことはない。
「ウィルフォード様、覚悟する事ね!婚約やめます。って言わせてみせるわ!!」
これは、婚約解消をする為に奮闘する少女と、本当は好きなのに、好きと気付いていない王子との攻防戦だ。
そして、覚醒した王子によって、嫌でも成長しなくてはいけなくなるヒロインのコメディ要素強めな恋愛サクセスストーリーが始まる。
※序盤は恋愛要素が少なめです。王子が覚醒してからになりますので、気長にお読みいただければ嬉しいです。
※本編完結しました。
※後日談を更新中です。
【完結】お荷物王女は婚約解消を願う
miniko
恋愛
王家の瞳と呼ばれる色を持たずに生まれて来た王女アンジェリーナは、一部の貴族から『お荷物王女』と蔑まれる存在だった。
それがエスカレートするのを危惧した国王は、アンジェリーナの後ろ楯を強くする為、彼女の従兄弟でもある筆頭公爵家次男との婚約を整える。
アンジェリーナは八歳年上の優しい婚約者が大好きだった。
今は妹扱いでも、自分が大人になれば年の差も気にならなくなり、少しづつ愛情が育つ事もあるだろうと思っていた。
だが、彼女はある日聞いてしまう。
「お役御免になる迄は、しっかりアンジーを守る」と言う彼の宣言を。
───そうか、彼は私を守る為に、一時的に婚約者になってくれただけなのね。
それなら出来るだけ早く、彼を解放してあげなくちゃ・・・・・・。
そして二人は盛大にすれ違って行くのだった。
※設定ユルユルですが、笑って許してくださると嬉しいです。
※感想欄、ネタバレ配慮しておりません。ご了承ください。
嘘が愛を試す時 〜君を信じたい夜に〜
月山 歩
恋愛
サラとマリウス・ハンプトン侯爵夫婦のもとに、衝撃的な告白を携えた男が訪れる。「隠れてサラと愛し合っている。」と。
身に覚えのない不貞の証拠に、いくらサラが誤解だと訴えてもマリウスは次第に疑念を深めてゆく。
男の目的はただ一つ、サラを奪うこと。
*こちらはアルファポリス版です。
報われなかった姫君に、弔いの白い薔薇の花束を
さくたろう
恋愛
その国の王妃を決める舞踏会に招かれたロザリー・ベルトレードは、自分が当時の王子、そうして現王アルフォンスの婚約者であり、不遇の死を遂げた姫オフィーリアであったという前世を思い出す。
少しずつ蘇るオフィーリアの記憶に翻弄されながらも、17年前から今世まで続く因縁に、ロザリーは絡め取られていく。一方でアルフォンスもロザリーの存在から目が離せなくなり、やがて二人は再び惹かれ合うようになるが――。
20話です。小説家になろう様でも公開中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる