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第42話 盗賊団1
しおりを挟む「ああ、いいなあ俺も行きたかったなあ。」
マッテオが残念そうに言う。
「温泉なんて行ったことないもんな。」
お土産のペナントをパタパタさせて羨ましがる。
「タピタには木刀ね。カーラとユリアンナには温泉まんじゅうとキーホルダー。」
「ユウト、このキーホルダーってなんに使うの。」
カーラがキーホルダーについた魔人族のマスコット人形ーをぶらぶらさせて聞いてくる。
そういやこの世界でカギなんて持って歩いているのかな?
「こういうお土産のセレクトってどうなん?」
わし達が温泉に行っている間マッテオのパーティは他のパーティや騎士団とで盗賊の討伐の依頼を受けてトリミド村に行っていた。
いくら討伐しても盗賊はいなくならない。
「帝国や帝国の属国の元農民や兵士が多いんだ。あの国は税金が高いし、農地も少ないから農家の長男以外は家を出て冒険者か兵士になるぐらいしか出来ないんだ。」
「で、それもうまくいかないと盗賊でもやらないと生きていけないって訳ね。」
「同情したいところだけど、実際やっている事は悪辣だからね。」
盗賊は捕まえるまでもなく見つけ次第討伐しても良いし、捕まえても奴隷か死罪だ。
盗賊になると言うのは生きるには過酷な選択だ。
その場の空腹はしのぐ事ができるが。
それでもなかなか捕まらない盗賊団などが義賊風のことをして見せれば行き場のない者達にとっては魅力的な受け口になる。
「まあ、とりあえずは奴らの拠点の一つは潰してきたんだけどまだまだ、うじゃうじゃいるって感じさ。」
マッテオは遠足に行って来たみたいに言う。
マッテオ達のステータスもあのパワーレベリングのせいでギルドでトップクラスになっているから盗賊相手なら負ける事はないんじゃろう。
盗賊のなり手が帝国やその属国にいっぱいいるから本当はそこに手をつけないときりがないじゃろな。
「明日からまた出かけるからユウトも行こうよ。」
なんかちょっと遊びに行くみたいねノリで誘うんじゃな。
ロイス邸に戻ると今までのメイドさんに加えて3人の女の子がエントランスで待ち構えている。
「おかえりなさい勇者様。」
と声を揃えて言う。
やめる様に言うとそろって目をうるうるさせるのでたまらず好きにさせる事にした。
王宮からそうする様に言われて来たのじゃろう。
わしの見た目に合わせてまだ10歳にもならない娘たちにそうさせても勇者を引き止めなければならない切実な理由があるんじゃろう。
わしにすれば孫みたいもんじゃな。
お土産の温泉まんじゅうを配り部屋に戻って休むように言う。
王宮では王はロイス邸に預けられた勇者について他の王族や貴族達にしばらくは手を出さないように命じていた。
なにしろ勇者が小さすぎてどう扱っていいのかわからないのだ。
この世界では勇者の権威と言うのは王以上で王は勇者に仕える立場なのだ。
勇者イコール正義で法律なので誰も逆らう事など許されない。
幸いにもこの国を建国した勇者はちょっとあれじゃが良き勇者だったし、これまで勇者が召喚された事はなかった。
だがあの子供が同じに良き勇者なのかはわからない。
「勇者様はどうしておる。」
あいまいな王の問いにロイス邸に預けられた3人の王女達の世話のためについている侍女の一人が答える。
「ロイス邸の図書室で読書しているか厨房でプリンやカレーを作るなどで、たまにギルドにいって冒険者に遊んでもらっている様です。」
「それでは勇者様がどれだけの力を持っているのかさっぱりわからん。」
今まででわかっているのは、人さらいの馬車の荷台を吹き飛ばした事。
ギルドのテーブルを真っ二つに割った事、魔国の将軍と戦った事ぐらい。
スタンピードの時に魔物を吹き飛ばしたのは一緒にいる竜のブレスだったらしい。
まあそれも力の内と言えばそうなんだが。
まだ小さい子供だし気長にみておればいいか。
とりあえず勇者様は召喚されているのだから。
面倒くさくなったのか王は適当に納得することにした。
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