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第58話 カニツアー1
しおりを挟むロイス邸の中庭で人化を解いた大きなリルのふわふわしっぽにくるまれてうつらうつらと眠っている。
暑くもなく寒くもない。
丁度いい気温の午後。
ぽかぽかと暖かな陽の光。
静かにそよぐ風。
極楽じゃな。
レティシアもリルにもたれてうとうとしている。
リルが耳をひくつかせ頭をもたげフワーっとあくびする。
「ご主人様ーっ、ねえ、ねえねえカニってなに。おいしいの。」
ムートが1枚のチラシを持ってリビングから走って来る。
どうやら聖女の企みに喰いついたのはムートの様だ。
「ん、カニ?この世界でもカニを食べるのか?」
ユウトがムクッと起き上がる。
「ドルツリア大陸の北海岸の街、えーっとホビエの港街がカニ料理で有名よ。」
とレティシアが寝ぼけまなこをこすりながら言う。
「旅行ガイドに載ってたわ。」
「これの事だよね。」
と言ってムートがチラシを見せる。
「うん、これこれ。これからが美味しいシーズンって言われているわ。」
「レティシアは食べたことあるの?」
「ないわ、遠いし高いし。」
ムートがチラシをユウトに差し出しながら目をうるうるさせて
「ねえ、ご主人様遊びに行こうよ面白そうだし、お願い。」
と言う。
これ、この目で訴えられると弱いのじゃ。
ムートめっちゃ可愛いいし。
「そ、そうじゃな。いい感じの宿の絵も描いてあるし楽しそうじゃ。」
カニなんて久しぶりじゃな、前世で鳥取のカニ食べバスツアーに行ったきりじゃ。
「マッテオ達も誘うか。温泉に行った時は羨ましそうにしてたしな。」
ムートはもう聞いていない。
小さくなったリルの手を取って飛び跳ねて喜んでる。
リルはわかっていない様子で困っている。
レティシアが小さな声で言う。
「3人の王女様達はどうするのよ。全然かまってあげてないじゃない。」
「パスじゃ、子供を連れて行くのは面倒くさいのじゃ。」
王女達はまだ幼い事もあって全然わしに関心がない。
さらに一人じゃなくて3人にしたのは都合がいい。
同じ年頃なので自分達で遊ぶことが出来て寂しくない。
王宮もなかなか気が効いている。
まだ今のところは問題を起こすこともないじゃろう。
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