転生勇者の異世界見聞録

第63話 カニツアー6

帰りは「私がみんなを乗せるわ、いいでしょうご主人様。」

目をうるうる作戦かーっ。

「もちろんアサンが良ければそうしよう。」

パッと顔を輝かせるアサン。

めんこいのー。

「俺もその方がいいな。あんな高いところに行かなくていいからな。」

とびびりのマッテオが言う。

ムートが泣きそうな顔をする。

「マッテオ、ムートいじめた最低。」

ユリアンナが言う。

「アサン、マップの共有化をしよう」

と言うとアサンはわしの額に自分の額を触れさせた。

ムートもリルも既にマップの共有化をしてある。

だからわしが目的地を設定すると迷わずに到達出来るのじゃ。

ナビ付きの乗り物みたいじゃな。

実際ゲームのなかでは乗り物扱いで彼女たちに出会うことで新しいクエストの目的地に行ける様になるという設定じゃった。

水中翼船のように海面から浮かび上がって超スピードでアサンは泳ぐ？いや飛んでいるのかな。

マッテオはあまりのスピード感に真っ青になってアサンの首に張り付いている。

空では対象物が雲ぐらいしかないから速度は感じにくいけど海上では波を切って進んでいくのでめっちゃ早く感じるんじゃ。

アサンを追う様にたくさんのクラーケンがついて来る。

水中から水を噴き出して空中に飛び出すと、耳を翼の様に広げて滑空する。

あのでかいクラーケンが群れを成して飛んでくるなんて船に乗って遭遇したら悪夢じゃな。

しかし、こうして安全なところから見ている分には壮観で美しい。

じゃがこんなにたくさんのクラーケンを王都近くにつれて行って大丈夫なんじゃろうか。

帰路の途中小さな島を見つけたので休憩に立ち寄る。

島はドーナツ状で大きな洞窟があり内側の海岸に通じている。

島から少し離れたところに３本マストの大型の帆船が停泊している。

ここから手漕ぎのボートを下ろして小島に上陸したんじゃろう。

わし達も島の近くでアサンの泡玉に乗り換えて上陸する。