62 / 117
第62話 カニツアー5
しおりを挟む「で、アサンがカニを食い尽くしたんか?」
「そんな訳ないでしょ。いくらなんでもそんなに食べられるわけないよ。」
「いっぱいいるよ。」
それじゃなんで漁師に獲れんのじゃ。
「見に行く?」
面白そうじゃな。
アサンがプクーっと泡の玉を吹く。
大きくなってみんなを包み込む。
「このまま行くのか。」と、こういうことにはびびりのマッテオの腰は引けている。
魔物相手だとバカみたいに飛びかかっていくのに。
重力だとか気圧だとかの理屈を無視して泡の玉は水中に沈んで行く。
「きれいね。光が水面の波の動きにきらめいて海底に差し込んでいるわ。」
まだ浅いところなので光が行き渡って明るい。
泳ぐ魚の彩りもきれいだ。
水深が深くなるに連れて薄暗くなってゆく。
だんだん魚の姿も減って行く。
「なんだか不気味ね。」
巨大な白いものが近づいてくる。
でっかい目玉がギョロリとわし達を見る。
クラーケンじゃな。
イカ焼きにしたらうまいかな。
「あれは私の従者なので食べないでね。」
ってアサンが言う。
すぐにバレた。
クラーケンは先っぽの太い2本の足を手のように振ると離れて行った。
大陸棚の様なところに着底した。
「なーんにもいないね。やっぱり食べちゃった?」
とユリアンナが聞く。
「その棚の端から下を見て。」
とアサンが言う。
一つ下の海底にうじゃうじゃとカニがいた。
それも海底の見渡す限りいっぱいに。
「前はこの棚にもいっぱいいて漁師が獲っていたんだけど、少し前に月の引力が少しの間変わった時があって棚がずり落ちたの。」
「その時にカニも一緒に落ちたのよ。漁師の網はそこまでは届かないみたい。」
そんな事起こるんか?
で、わしか?わしのせいなんか。
わしがなんとかせんといかんのかー。
「この棚の上にカニを持って来れんのか?」
「クラーケンに運ばせられるけどー。ずーっとは無理ね。あの子たちすぐに飽きちゃうから。階段でもつけたら自分で上がって行くんじゃないかしら。」
と言うわけでわしは土系の魔法で大陸棚に階段を作りとりあえずクラーケンにカニを追いたててもらった。
ついでにカニを何杯か捕まえて海岸に戻った。
漁師達にカニが獲れることを伝えると疑うこともせずに漁に飛び出して行った。
カニを旅館のご主人に渡して料理してくれるように頼んだら喜んで厨房に走って行った。
とっても素直でせっかちじゃな。
さんざんカニを食べたのじゃ。
満腹じゃ。
カニすき、やきガニ、カニの作り、
カニみそ、カニの炊き込みご飯。
フルコースじゃった。
そして旅館と言えば大浴場、露天風呂じゃ。
アサンがお風呂ですいすいと泳いでいる。すっと上半身をもたげた姿が美しい。
「きれいじゃなーアサンは。」
アサンが顔を赤くして照れている。
アサンの頭を撫でるとムートもリルもわしに頭を向けてくる。
人の姿はしていてもペット達は邪心がなくて素直でかわいいもんじゃ。
「あれ、マッテオとタピタは?」
「男湯に決まってるじゃない。」とレティシアが答える。
「えっ、ここは?」
「女湯よ。あんた知らなかったの普通にノコノコついて来たのよ。」
日頃が日頃なので無意識にレティシアについて来てしまった。
「あんたはちっちゃいんだからいいのよ。」
そう言う問題か?
「ユウト頭洗ってあげるからしっぽ洗って」とムートがわしを抱える。
私も私もとリルもアサンもわしの手や足を持つ。
「あんた達ちゃんと洗いなさいよ。」
とレティシアが笑っている。
10
あなたにおすすめの小説
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活
シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
序盤でざまぁされる人望ゼロの無能リーダーに転生したので隠れチート主人公を追放せず可愛がったら、なぜか俺の方が英雄扱いされるようになっていた
砂礫レキ
ファンタジー
35歳独身社会人の灰村タクミ。
彼は実家の母から学生時代夢中で書いていた小説をゴミとして燃やしたと電話で告げられる。
そして落ち込んでいる所を通り魔に襲われ死亡した。
死の間際思い出したタクミの夢、それは「自分の書いた物語の主人公になる」ことだった。
その願いが叶ったのか目覚めたタクミは見覚えのあるファンタジー世界の中にいた。
しかし望んでいた主人公「クロノ・ナイトレイ」の姿ではなく、
主人公を追放し序盤で惨めに死ぬ冒険者パーティーの無能リーダー「アルヴァ・グレイブラッド」として。
自尊心が地の底まで落ちているタクミがチート主人公であるクロノに嫉妬する筈もなく、
寧ろ無能と見下されているクロノの実力を周囲に伝え先輩冒険者として支え始める。
結果、アルヴァを粗野で無能なリーダーだと見下していたパーティーメンバーや、
自警団、街の住民たちの視線が変わり始めて……?
更新は昼頃になります。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
【完結】発明家アレンの異世界工房 ~元・商品開発部員の知識で村おこし始めました~
シマセイ
ファンタジー
過労死した元商品開発部員の田中浩介は、女神の計らいで異世界の少年アレンに転生。
前世の知識と物作りの才能を活かし、村の道具を次々と改良。
その発明は村の生活を豊かにし、アレンは周囲の信頼と期待を集め始める。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる