皇后はじめました(笑)

ルナ

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芍薬

世間は狭いよ

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午後まで時間があるので、その辺にあった本を読む。文字が読めたため、「これ、書けんじゃね?」と思い試しに書いてみると書けた。"美皇后"として今後やっていくための必要な知識を学べることにほっとした。蓮絡さんによれば、美皇后は詩集と花の鑑賞が趣味だったようで今読んでる本も牡丹の花を褒めた詩集である。
「にしても、美皇后。優雅な生活をしてたんだなー。」
私は貪るように詩集を読み続け、気づいた頃には布団には沢山の詩集が散乱していた。
「あ、やっちゃった。集中すると周りが散らかるのよね」
よく、ルナに「また、散らかして」と言われてしまっている事を思い出す。
「みんな、大丈夫かな?」
麗華が家出した事でルナは探し回っているだろう。リンは麗華がいない事で起きてしまっているかもしれない。
「早く帰って、麗華をみつけて話合わないとなぁ」
反抗期は私にもあったから気持ちはわかる。でも、家出は良くない。もし、両親がいたら張り倒すだろう。
「どうして、家出なんか」
反抗期だから、という理由では無い気がしてきた。麗華は家族や他人に迷惑をかけるような事はしない。麗華は学校では成績優秀で学年トップだし、リンの面倒を良く見ている。帰りがマスコットのせいで遅いのも理解してくれるし、お昼のお弁当を作ってくれるのだ。
「思いあたる事といえば」
一回、家に泣いて帰ってきたことがあったとルナから聞いた。理由は教えてくれなかったらしい。その次の朝、いつも通りに接していた。
「まぁ、麗華も年頃だしなぁ」
天井を仰ぐ。気持ちは本人にしかわからないというがまさにその通りだ。
「皇后様?皇后様!」
「え?!あ、蓮絡さん」
「もう!「さん」付けはおやめください!陛下と皇太子様と公主がお見えですよ。」
家族の心配をしていたせいか、話かけられた事に気付かなかった。
「(てか、子供と旦那が来るのか)」
少し、複雑な気持ちなのもお構い無しにドアが開いた。
「え?!」
私が驚いた理由がある。それは美皇后の娘が
リンにうりふたつであることにだった。
「お母様~!!!」
バッと私に飛びつき涙をボロボロと流しながら「お体は大丈夫ですか?死んでしまうかと思いました‥」といってきた。
「これこれ、母上を困らせてはいけないぞ?鈴音?」
ひょいと中学生くらいの男の子が公主を抱えた。
「母上、お元気でなによりです。お体は大丈夫ですか?」
多分、この子が皇太子なのだろう。キリッとした顔立ちをしていて、背も高い。絶対、将来的に何人もの女性を泣かせてそうだ。
「え、えぇ。ありがとう。大丈夫よ」
とにかく"美皇后"になりきらなければ。後々面倒な事になるだろうし。
「蓮絡、公主を連れて遊びに行け。」
「はい、皇太子様。」
蓮絡に連れられて鈴音公主は部屋を出て行く。去り際に、「お母様!またきますね!」と手を振りながらでていった。あの笑顔といい、完全にリンだ。声まで一緒とはだれが想像したのか。
「父上がもうすぐ来ます。母上、一つ伺います。やはり‥」
なにか、言いかけた時「陛下の御成り」と声がかかった。皇太子がひざまついたので、私も真似をするため皇太子のとなりでひざまづいた。
「陛下!ご機嫌麗しゅう。」
「へ、陛下、ご機嫌麗しゅう。」
「うむ。立て。皇后よ!何故ひざまづいている?!早く寝台にもどれ。」
「え、あ、はい。」
いそいそと宮女の手をかりて戻る。陛下の顔をみると端正な顔立ちをしている。
「(これは、ロリコンだけが原因ではなさそうね)」
陛下は寝台の横に腰掛け、私をじっと見つめ頭を撫でられた。
「(は、はず!!)」
すると、ちょうどいいとこに陛下の従者だろうか?なんかの瓶を持ってきた。
「おう、やっと持ってきたか。皇后の好物のナツメの砂糖漬けだ。食べるといい。」
「あ、ありがとうございます。陛下。」
従者は、瓶を宮女に手渡し顔を上げた。
「皇后様、どうか早くお元気になりますよう。陛下がとても心配なさっておられましたよ?。」
「あ、あ、そ、そうなのね。へ、陛下心配をおかけいたしました。私は、大丈夫です。」
「皇后?」
「え、だ、大丈夫ですよ!!私は!」
「なら、良いが。」
そそくさにその場を退場する従者。それを見送ると陛下は
「それで、皇后。記憶はやはり戻らぬか?」
「え、あはい。」
記憶自体ははあるが、「OLをしてました」なんて言っても知らないだろうし、それこそ頭がおかしいと言われてしまう。
「母上!私は絶対に犯人を探します!どうか、自暴自棄ならないでください!」
いや、ならないから!どんだけ、繊細な生き物だって思われてんの?!
「皇太子のいう通りだ。皇后、この件は厳罰に処する。それに、私も許せぬ。気を落とさぬように。」
「はい。ありがとうございます、陛下。」
「うむ。今日は休むと良い。明日、また来よう。皇太子、今日は大臣が来る。共に参るぞ。」
「はい。陛下。」
陛下は皇太子とともに去った。
「‥‥‥ぷっ」
顔を枕に埋める。笑いが止まらない。
「な、なんで従者が、じゅ、従者がマスコットそっくりなわけ?笑」
娘といい、従者といい
「世間は狭いわ!くっくっー!!」
ばたばたと布団を叩く。
「ちょっと、この世界おもしろいかも!」




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