声の出ない少年と心を読む少女

てけと

文字の大きさ
6 / 44

王国勇者は試練の洞窟へ

しおりを挟む

「はははは!魔物がまるでバターのように切れる!」



 平原でのゴブリンを真っ二つに切り裂く。俺の勇者としての才能と、聖剣の力。それを合わせれば勝てない敵などいない。



「さすが勇者様。強すぎる」

「流石アル!向かうところ敵なしね!」



 そう言って左右から抱きついてくる美女の2人。うむ。苦しゅうない。



「試し斬りも終わったし、次は聖なる鎧だ!これで無敵の防御力を得られる。2人とも…付いてきてくれるか?」



「「もちろん!」」



 試しの祠の次は試練の洞窟。国からの許可を得て、そこに向かっている途中だった。

 聖剣を手に入れたことで無敵の攻撃力を手に入れ、尚且つ国から莫大な資金が提供された。

 近くの街に着いたら豪華な宿でしっぽりと一泊して、英気を養ってダンジョンに向かおう。



 そうして俺達勇者パーティはダンジョン近くの町へと向かった。















 朝起きると可愛いエリーと美人のアンジュから熱烈なおはようのキス。しばし裸で2人と抱き合い、俺の気が済んだところで着替えて宿を出る。



 馬車で少し走ると、白い石柱が見える。

 勇者専用装備のあるダンジョンは特別だ。普通のダンジョンと違い、神々しい入口で神聖なる雰囲気を感じる。
 
 その建物を見て気を引き締め、俺達はダンジョン内へと入って行った。





 前回の祠が全10階層だった。だからこのダンジョンもそのくらいだろう。

 1階層に足を踏み入れた途端に狼のような真っ黒い魔物が現れる。祠と同じ魔物だった。



「なんだ。拍子抜けだな。あのゴミ野郎が容易く一刀で殺してた魔物かよ」



 俺は剣を抜き、後ろの2人も戦闘体制に入る。

 魔物もこちらを認識したようで、グッと屈み、こちらに飛びかかる。



「オオオォォォン!!」

「なんだ!?遠吠え?うるせぇぞ雑魚!!」



 オオカミに向かって真っ直ぐに走る。



 聖剣を上段に構え、オオカミに向かって振り下ろす!



「ふん・・・雑魚め・・・?」



 振り下ろした先に狼はおらず、目の前から消えていた。

 ダンジョンに吸収された?



「勇者様!上!ファイヤアロー!!」



 エリーの魔法が俺の真上に飛んでいく。そこに張り付くように佇んでいた魔物は、即座に飛んできた魔法を避ける。



「雑魚のくせにすばしっこいやつだ!」



 再び狼のような魔物に突撃し、剣を振るうが当たらない。



「エリーバインドだ!」

「分かった。サンダーバインド!!」



 広範囲で当たれば麻痺するサンダー系の魔法さすがに避けれまい!動けなくなったあいつを切り飛ばして終わりだ!!



 そう思っていた。



「嘘・・・あれも避けるの?」



 魔物は嗅覚にて魔力を感知しているのか、エリーの魔法を完璧に避けて見せた。



「不味いわ!!アル!奥から大量の魔物の反応が!!」

「なんだと!?最初の遠吠えは仲間を・・・」

「どうする勇者様?大魔法を使えば一網打尽にできるかもだけど・・・」

「1階層では引き下がれない・・・エリー頼む」



 大魔法を使えばエリーはこの先当分何も出来ない。魔力切れを起こすからだ。



 こいつとは相性が悪かっただけ。この先は聖剣のパワーで行けるはずだ!



「大地の神よ 我らを見守りし地母神よ 我に仇なす敵を穿て グランドギガランス!!」



 洞窟内の至る所に大きなトゲがドドドドンッと生えていく。

 避けるすべはない。避けられるはずがない。







 そう思っていた。









「嘘・・・数匹逃した・・・」

「なっ!?」



 トゲの間をくぐり抜け、数匹がこちらに向かってくる。



「くっ!撤退する!」

「分かったわ!」



 アンジュがエリーを方に担ぎ、一目散に走る。



「追いつかれる・・・」



 後ろの方で2人が徐々に魔物に追いつかれそうになっていた。



 そんなの関係ない。自分は生き延びなければならない。たとえ賢者と聖女を犠牲にしても。

 勇者とは唯一無二の存在なのだから。



 だから俺は振り返らない。2人が無惨に食い殺されようとも。



「勇者様っ!」

「うるせぇ!お前が魔法で殺せなかったのが悪い!お前たちで何とかしろ!!」



 そう言って駆け抜ける。出口まではあと少しだ。



「これでも喰らいなさい!!」



 そう言ってアンジュは小さな玉を投げる。地面に当たった瞬間に眩い光を放ち・・・。













 命からがら何とか出口までたどり着いた。アンジュとエリーも無事だった。



 しかし・・・1階層すらまともに攻略できない事に頭を悩ませた。







~~~~~~~~~~~~~~~~~~







「タンク役をパーティに入れよう」



 俺はそう2人に提案した。今回の敗因は、やはりゴミとはいえ、肉壁が無くなったのが原因だろう。



「そ・・・それがいい」

「私も賛成ね」



 昨夜からエリーの様子がおかしい。ベッドに入ってこないし、俺に対して距離があるように感じる。

 1階層を攻略できなかった負い目でも感じているのか?



「気にするなよエリー。お前のせいじゃない。足りなかったものがあっただけだ」

「うん・・・そうだ・・よね」

「魔物に襲われそうになって怖かったのね。ほとんどの怪我は私が直せるから安心していいのよ?」

「ありがとう。アンジュ」



(勇者様は私たちをいとも簡単に切り捨てようとした・・・それに・・・あの魔物を瞬殺してたあいつ・・・もしかして私たちは・・・とんでもない過ちを犯したのでは・・・)



「どうしたエリー何が心配事か?」

「なんでもない。勇者様」



(パーティとのコミュニケーションも取れないあいつが・・・そんなまさか・・・だよね)
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

追放貴族少年リュウキの成り上がり~魔力を全部奪われたけど、代わりに『闘気』を手に入れました~

さとう
ファンタジー
とある王国貴族に生まれた少年リュウキ。彼は生まれながらにして『大賢者』に匹敵する魔力を持って生まれた……が、義弟を溺愛する継母によって全ての魔力を奪われ、次期当主の座も奪われ追放されてしまう。 全てを失ったリュウキ。家も、婚約者も、母の形見すら奪われ涙する。もう生きる力もなくなり、全てを終わらせようと『龍の森』へ踏み込むと、そこにいたのは死にかけたドラゴンだった。 ドラゴンは、リュウキの境遇を憐れみ、ドラゴンしか使うことのできない『闘気』を命をかけて与えた。 これは、ドラゴンの力を得た少年リュウキが、新しい人生を歩む物語。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

無能烙印押された貧乏準男爵家三男は、『握手スキル』で成り上がる!~外れスキル?握手スキルこそ、最強のスキルなんです!

飼猫タマ
ファンタジー
貧乏準男爵家の三男トト・カスタネット(妾の子)は、13歳の誕生日に貴族では有り得ない『握手』スキルという、握手すると人の名前が解るだけの、全く使えないスキルを女神様から授かる。 貴族は、攻撃的なスキルを授かるものという頭が固い厳格な父親からは、それ以来、実の息子とは扱われず、自分の本当の母親ではない本妻からは、嫌がらせの井戸掘りばかりさせられる毎日。 だが、しかし、『握手』スキルには、有り得ない秘密があったのだ。 なんと、ただ、人と握手するだけで、付随スキルが無限にゲットできちゃう。 その付随スキルにより、今までトト・カスタネットの事を、無能と見下してた奴らを無意識下にザマーしまくる痛快物語。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

処理中です...