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ありがとう また会いましょう
しおりを挟む「デルさん!レンのやつどこいったか知らない?」
夕食の時間が終わり、一息ついていたデルの元に、グラスが駆け込んできた。
「明日から東の町に向かうからその準備でもしてるんじゃないのか?」
ここ数日冒険者に交じってやってくる魔物を狩って、ある程度はお金を稼いでいたはずだしとデルは思っていた。
「あいつ銅貨一枚も持ってないぞ?魔物の素材とかも全部俺に預けてたし・・・」
「は?なんでそんな事を・・・ってあいつはそういうやつだったか」
(どうせグラスへの恩が~とかいう甘っちょろいやつだ。だがそうなら一体どこに・・・)
「まあそのうち帰ってくるだろう。お気に入りだからと言ってそこまで粘着せんでもいいだろう。あいつのことが好きなのか?」
ここ数日グラスはレンにベッタリくっついていた。まるで恋仲のように見えるほど。
「そそそそんなわけないだろ?俺みたいな男女なんて眼中にないだろうし・・・あいつに剣を教えてもらってただけだよ!」
「ふ~ん。そう言うことにしといてやるよ」
「そっか明日には出るのかレン」
「まあ冒険者になるらしいからな。どこかで会う事もあるだろう。そうあからさまにがっかりするなよ」
「しししてない!!もういい!部屋に帰る!」
「おう。おやすみ」
生娘のように顔を真っ赤にして去っていくグラス。というか生娘だっけか・・・。
結局夜が深くなっても、レンが帰ってくることはなかった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
翌日の朝。デルはいつも通り朝食の仕込みをしていると、宿の扉が開き、それに応じて鈴がなる。
「こんな朝早くから誰・・だ・・・」
客に対応するために、カウンターから表に出ると、そこに立っていたのは・・・血まみれのレンだった。
「どうしたんだ?どこで怪我をした。治療するからさっさと自分の部屋のベットまで――」
ぶんぶんと横に首を振る。どうやら怪我はしていないと言っているみたいだった。
「なんだ・・・夜どうし魔物とでも戦っていたのか?」
コクリと首を縦に振るレン。
「馬鹿なのかお前は・・・せっかく儂とグラスが救った命を大切にせんか!」
滅多に怒らないデルが語尾を荒げる。そのことに目を見開いて驚くレン。
「まったく。お前が強いのはわかっているが、もうちっと自分の命をだな!」
しょんぼりしつつも、レンは持っていた大袋をカウンターに置く。
「なんだこれは?」
レンは木の板にナイフで文字を刻む。
『お礼。ダンジョンの最奥で取ってきた』
デルが袋を開けると、そこから出てきたのは大量の金、宝石、希少金属の数々だった。
「・・・こんなにもらえねえよ。なんだよこれ。帝都に豪華な屋敷を建てても余るぞ・・・ってまさかお前・・・捨てられたダンジョンに?」
コクリとレンは頷く。
『グラスにも分けてあげてください。俺はここから もう一度人生をやり直してみます』
『ありがとうございました またどこかで』
その文字をデルが読み終わると同時に、レンは宿を出て行った。
「おい!ちょっと待て!レン!」
デルは後を追いかけるためにすぐに宿を出たが・・・すでにレンの姿はなく・・・。
「はぁ~・・・でたらめな奴だな・・・まぁ、悪いやつではないんだがな。あわよくば嫌われ者のアイツを救ってやってくれるといいんだが・・・」
そう言ってデルは東の方を見る。
そしてレンが残していったとんでもない財宝をどうするべきかと、頭を悩ますのであった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
捨てられたダンジョン。魔の山に生成されたこのダンジョンはかなり狭く、パーティーで攻略できるほどの広さがない。その割の敵は強く、道中には何もない。きっとダンジョンコアが宝を最奥にため込んでいるのだろう。
何ともいやらしいダンジョンだ。入り口をふさいでもすぐに穴を開けられ、外から狩った冒険者をダンジョン内に引きづりこんで殺す悪しきダンジョンだ。
町の警護は大勢の冒険者によって守られている。パーティー単位で組めば、後れを取ることはない。
あのダンジョンの難しいとこはソロで挑まないといけない所にある。
一匹でも一人で勝てない様なレベルの魔物を、大量に相手どらないといけない。
こんなダンジョンクリアできるはずがない。帝国で屈指の強さを誇る私でもそう思うのだ。
それが・・・なんなのだこいつは。
迫ってくる狼のような魔物を躱し際カウンターを当てる様に切り刻んでいく。まるで後ろにも目があるのでは?と思うほど視野が広く、初見であろう相手の弱点や攻略法を即座に思い付き実行していく度胸と思考の柔らかさ。
力や速度だけならこれに匹敵する人物は数多にいるだろう。
彼の強みは・・・圧倒的な経験値による予測と頭の回転の速さだ。
彼の剣に一切の迷いはなく、ただ目の前の魔物の命に届きうる攻撃をしているだけだ。
それが常軌を逸している。
あっという間に最奥のダンジョンコアのあるところまでたどり着く。
ダンジョン最奥。そこに到達できる人間など、ほんの一握りだろう。それをこうも容易く・・・。
彼は血まみれのまま、無言でコアを破壊しようとする。
「ちょちょちょっとまって~~!」
ピタッ!とか彼の剣が止まる。
ダンジョンコアが意思を宿しているのは有名な話だ。有益なダンジョンの場合は交渉し、ウィンウィンな関係を持つこともある。
「私はまだこの力を扱えきれなくって~魔物が溢れえだしているのは私の意思じゃないの~」
嘘だな。断言できる。もし自身の命をを維持したいだけなら、冒険者に攻略を進めてもらったほうがいい。冒険者が死ななくても、出入りするだけで彼らの魔力を多少吸収することもできる。そうやって自らを維持しているコアたちもいる。
「だから~・・・許して?」
彼は判断しかねているのだろうか。喋れない故に何も言葉を返すことはできないようだが・・・。
「なんちゃって~ヒヒッ」
ガンッという音と共に入ってきた入り口が閉ざされる。まずい・・・このままでは私も・・・。
「ここまで来たご褒美に~とっておきで~殺してあ・げ・る!」
ブンッと何かが転送される音と共に、大きな蛇のような物が召喚される。
大蛇。その目は対象を石化させ、牙から垂れる毒は全てを溶かし、皮膚に触れれば一時間以内に激痛と共に死ぬ。巻きつかれれば即座に全身の骨を砕かれ、飲まれればゆっくりと全身を溶かされるだろう。
冒険者ランクAのパーティーで対処するような魔物だ。流石に私もこれ以上隠れている場合ではないだろう。
姿を現そうと思った矢先に・・・。
ザンッ!!と大蛇の首がはね飛ばされる。そのまま大蛇の体も輪切りに切り刻んでいく。
躊躇がない。最速で命を奪う攻撃。さらに念を押して追撃の手も緩めない。
さっきまで彼を見下ろし、威嚇していた大きな蛇は、今や彼の足元で肉塊となっていた。
「ひぃ!?」
ダンジョンコアが悲鳴を上げる。
「殺さないで!財宝は全て上げますから!たすけ・・・」
そこでコアの声は途切れた。彼が剣で真っ二つに割ったからだ。
コアが割れた瞬間、大きな袋が落ちてくる。今までため込んでいた財宝だろう。これを餌に人間をおびき寄せていたに違いない。
彼はじーっとこちらを見ている。もしかしてバレているのか?
しかし、彼は首を傾げたあと、コアを壊して開いた入り口から来た道を帰っていった。
「皇帝陛下・・・彼は我らが想っているより規格外ですぞ・・・」
そうポツリとひとり呟き、彼の後を追う事にするのだった。
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