声の出ない少年と心を読む少女

てけと

文字の大きさ
4 / 44

帝国民になった

しおりを挟む

 豪華絢爛な城の一室。黒髪で筋骨隆々の大柄の男が真剣な顔で手紙を読んでいた。



「ほう。ここに書かれていることが真なら・・・誰か!」

「はっ!」



 声をかけるとすぐさま背後に立って膝をつく執事服の男性。



「ガゼル。お前なら魔の山を踏破することが可能か?」

「・・・補給線を維持できるならば」

「単独でだ」

「不可能でございます。最速で走っても一週間はかかり、一瞬たりとも気が抜けません。常に死と隣り合わせ、人の域ではとても・・・」

「それを成したかもしれない人物が王国から亡命してきたらしい」

「・・・冗談にしては笑えないかと」



 ゴクリと生唾をのむガゼルと呼ばれた男。



「そいつの処遇をどうするか。お前はどう思う」

「もしそれが本当なら、すぐにでも貴方様直属の兵士にするべきかと」

「そうだよなぁ・・・しかしそいつは声が出ないようだが・・・」

「その程度で何か問題でも?」



 ふむ。と大柄の男は少し考え・・・。



「しかし、デル爺は国民権だけ与えて放置しろという。なんともったいない事よ」

「デル様が・・・」

「そこでお前に王命を与える。レンとやらの国民権の発行と監視を言い渡す」

「はっ!」

「もし我に仇成す存在なら消せ。益をもたらすなら良し。逐一報告せよ!」

「はっ!皇帝陛下の御心のままに」



 そう言うと執事の男は姿を消す。そして誰もいなくなった部屋で皇帝、カリニュールは大笑いする。



「王国とは馬鹿が治める国らしい!唯一無二の強さを持つ存在を追放とは!ははははは!!」



 もし魔の山を越えられるほどの戦力を持っているなら、すでに戦端は開かれているだろう。それが無いと言う事は・・・。





 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~





「レン!喜べ!皇帝直々に国民権が発行されたそうだぞ!今日からお前も立派な帝国人だな!」



 そう言ってレンの元に走ってくるのはグラス。赤い短髪で鉄の胸当てと皮の軽装備で身軽な格好をしている。



 剣の素振りをやめ、首をかしげるレン。何の事だろう?という顔だろうか。



「喜べよ!?王国から亡命したんだろ?」



 するとレンは膝を折ってしゃがみ、地面に文字を書く。



『何の事?』



「ええ!?デルさんからそう聞いてたんだけど・・・ひとまずこれ渡しとくな」



 グラスはポケットから銀色のカードをレンに渡す。



「無くすなよ。それがお前の身分を証明するものだからな!」



 レンはそれを受け取り、じろじろと見て、自分のカバンに乱暴に突っ込む。



「レン。お前さんはこれで好きに帝国を動けるようになる。そこでわしから提案だ」

「うぇ!?デルさん!?いつの間に・・・」



 いつの間にかグラスの後ろに立っていたデルがレンに話しかける。



「この村の東から続く街道を道なりに行くと、大きな町がある。そこの冒険者ギルドで冒険者として登録するといい。お前さんも仕事はあった方がいいだろう?」



『まだあなた達への恩を返せてません』



 レンはそう地面にかく。



「律儀な男だ。別に出世払いでもいいぞ?お前さんなら名のある冒険者になるだろうし」



『俺みたいな声の出ない奴が 冒険者になれるのでしょうか』



「関係ないだろ?王国はどうか知らないけど、帝国の冒険者は来るもの拒まずだぜ?戦えなくっても、仕事はあるからな」











「大量の魔物がまた来やがった!!動ける奴は援護頼む!!」



 弓を背負った男が村を走りながら大声で叫ぶ。



「最近多いな・・・それじゃあ俺は行ってくる!」



 そう言うと村の外へと走っていくグラス。レンも手伝うためには知ろうとするが、ガッとデルに肩を掴まれて止めれらる。



「あいつらの仕事を取ってやるな。こんなのこの村じゃいつもの事だ」



 そう言われて力を抜くレン。再びしゃがみ、地面に文字を書いていく。



『大量の魔物の発生がいつもの事ですか?』



「ああ。いつもの光景だな」



『この辺の魔物は大体殺したと思ったんですが』



「山の魔物はな・・・この近くには捨てられたダンジョンがあるんだよ。そこから溢れてきているんだ」 



 ダンジョンは貴重な宝や素材が豊富であるが、そこに住む魔物はかなり強い。

 ハイリスクハイリターンなダンジョンもあれば、危険は少なく見返りも少ないこともある。



 ダンジョンが捨てられる理由は二つ。敵が弱く、得られるものがない。もしくは、敵が強すぎる割に道中に何もない。

 敵が弱すぎるなら、ダンジョンの入り口をふさげば魔物は溢れないが、溢れているということは後者なのだろう。



‘なるほど’



「だからわしらの事は気にせず、東の町へ行くといい。そこでお前さんにとってきっといい出会いがあるはずだ」



『わかりました 明日出発します』



「うむ。そうするといい」



 そう言ってデルは診療所に戻る。



 レンはというと、村の外へと歩いて行く。誰にも見つからない様にこっそりと・・・。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

追放貴族少年リュウキの成り上がり~魔力を全部奪われたけど、代わりに『闘気』を手に入れました~

さとう
ファンタジー
とある王国貴族に生まれた少年リュウキ。彼は生まれながらにして『大賢者』に匹敵する魔力を持って生まれた……が、義弟を溺愛する継母によって全ての魔力を奪われ、次期当主の座も奪われ追放されてしまう。 全てを失ったリュウキ。家も、婚約者も、母の形見すら奪われ涙する。もう生きる力もなくなり、全てを終わらせようと『龍の森』へ踏み込むと、そこにいたのは死にかけたドラゴンだった。 ドラゴンは、リュウキの境遇を憐れみ、ドラゴンしか使うことのできない『闘気』を命をかけて与えた。 これは、ドラゴンの力を得た少年リュウキが、新しい人生を歩む物語。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

無能烙印押された貧乏準男爵家三男は、『握手スキル』で成り上がる!~外れスキル?握手スキルこそ、最強のスキルなんです!

飼猫タマ
ファンタジー
貧乏準男爵家の三男トト・カスタネット(妾の子)は、13歳の誕生日に貴族では有り得ない『握手』スキルという、握手すると人の名前が解るだけの、全く使えないスキルを女神様から授かる。 貴族は、攻撃的なスキルを授かるものという頭が固い厳格な父親からは、それ以来、実の息子とは扱われず、自分の本当の母親ではない本妻からは、嫌がらせの井戸掘りばかりさせられる毎日。 だが、しかし、『握手』スキルには、有り得ない秘密があったのだ。 なんと、ただ、人と握手するだけで、付随スキルが無限にゲットできちゃう。 その付随スキルにより、今までトト・カスタネットの事を、無能と見下してた奴らを無意識下にザマーしまくる痛快物語。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

処理中です...