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そもそも認識されていない
しおりを挟む長い洞窟を抜けたその先は、何にもない平原だった。
周りに何かあるわけでもなく、ただただ草が生い茂る場所だった。
「ここが・・・帝国?」
「何とも言えない」
二人はしばらくまっすぐ歩く。すると途中から街道が現れて・・・。
「獣人っ!」
正直二人が今戦っても、一人の獣人にも勝てないであろう。しかしカタリーは王国騎士であった頃の癖で、つい構えてしまう。
「ん?お嬢さん方王国から来たのかい?」
「え・・ええ」
「そっか辛かったろうに。この先に村がある。そこでゆっくりして、今後の人生をどうするか考えるといい」
「はい・・・ありがとうございま・・・す」
拍子抜けしたのか、カタリーは肩の力を抜く。
「行こう」
エリーがカタリーの手を引き、立っていた獣人の横を通り過ぎる。
「・・・獣人と言えば悪人・・・そうなってしまっていたのも・・・」
「・・・ここは王国と違う。すぐ戦おうとしないで」
「ええ。その通りですね」
少し歩くと木の柵で外壁を作った村があった。
住民のほとんどは獣人で、耳と尻尾の生えた小さな子供が元気良く走り回っていた。
王国では獣人は駆除すべき対象であり、スラム街か奴隷としてしか見ることはなかった。
この光景を見て、カタリーはあらためて認識する。彼らも人なのだと。
村の入り口にいた獣人に王国から来た旨と、カタリーは立って歩くのも精一杯の体。エリーは魔力量が低すぎる魔術師として迫害を受けたと説明した。
するとタダで泊まれる宿を提供してもらい。今後どうするか決めたら教えてほしいと言われた。
私たちの目的は・・・エリーはレンという剣士を見つけて、謝罪したい。私はこの脱力症状を直したい。
その為に何をすればいいのか、途方に暮れて村の中を歩いていると・・・。
「えっ・・・あれはっ!」
エリーが突然走り出す。私は歩くのがやっとなので、のろのろと彼女の後を追う。
「見つけた・・・レン・・・」
エリーの視線の先には、仲睦まじく手を繋いで歩く男女二人。
「どちらさまです?」
男の横にいた少女がエリーを睨むようにそう言う。
「レンっ!私・・・」
レンと呼ばれた少年は、ジーッとエリーを見つめる。
そして、ポンッと手のひらに拳を打ち付け・・・。
「ええ・・・こいつが王国の賢者なんです?なんでここに・・・」
そう少女が言った。
「・・・なんで知ってる。あなたはレンの何?」
「レンのパーティー仲間です。あなたこそなんなんですか。さっさと王国に帰りやがれです」
睨み合う二人。レンは文字を書いた木の板を取り出し・・・。
『まぁまぁ落ち着いて二人とも』
「落ち着いてるです!」
「っ!?レン・・・言葉が分かる・・・の?」
エリーは衝撃を受けた。レンは言葉もわからない人で、だからアンジュが面倒を見てるそう聞かされていたからだ。
「ふーん。なるほどです。じゃあ私はレンの通訳に徹するです」
「何を言って・・・」
「『どうしてここに賢者様が?』」
「・・・レンに・・・謝りたくって・・・」
エリーは不思議に思ったが、確かにレンはそう言っているような気がした。だからこの少女の事を気にしないことにした。
「『謝る?俺は賢者様に謝られるようなことはされてないと思いますけど・・・』」
「え?だって・・・レンの実力を・・・知らずにひどいことをしたから・・・」
普段物のように扱い、いらなくなったから捨てた。そんなの酷い事だし、謝って許される事ではないことを、エリーはわかっていた。
だから・・・どんな暴言を吐かれても、仮に殺されたとしてもいい、そう思っていた。
しかし彼はキョトンとしてこう言った。
「『いい装備を手に入れたら、今まで使っていた装備は捨てますよね?それが悪い事なのですか?
俺はアンジュ・・・聖女様の盾であり、勇者様の剣だった。勇者様は聖剣という最強の武器を手に入れ、俺という剣を捨てた。それだけだと思うのですけど・・・?なんかおかしいですか?』」
おかしいに決まっている。自分を物のように思う事はあっても、そこまで徹底はできないだろう。
「私を助けたのはレン・・・あいつじゃない」
「『いいえ。勇者様です。俺という剣を巧みに使い賢者様を救ったのは紛れもなく勇者様です』」
「そんなことっ!」
「『ん?よくわかりませんが、賢者様が謝る必要なんてないです。これからも王国の三賢者として、輝かしい未来を進んでください。その道に俺はいりませんから』」
「レン・・・どうして・・・」
「王国の賢者様でしたっけ?」
「・・・」
「レン。こいつの名前は知ってるです?」
「ッ!?」
レンは後頭部を掻き、苦笑いをする。
「つまりそう言う事です。レンはお前なんかに興味がないんです。だから嫌・わ・れ・る・こ・と・もできないんですよ」
「うぅ・・・どうしてっ!」
「レン先に宿に戻ってるです。こいつらとお話をさせるです」
コクリとレンは頷き、その場を去っていく。
エリーはレンに向かって手を伸ばすが・・・レンは一回も振り向くことなく、その姿を消した。
「さて、雑魚賢者と馬鹿騎士にありがたいお話をしてやるです」
「なっ!?」
「・・・」
エリーは既に何もしゃべる元気はなく、カタリーは騎士という職業を当てられて驚く。
「私は人の心の声が聞こえます。嘘を言ってもわかるです。まず雑魚賢者」
既に目が死んで、地面に崩れ落ちているエリーに話しかけるマリー。
「自業自得ですね。最初の一回は襲われたのでしょうが、その後はお前が安易に快楽に走っただけのことです。お前みたいな何も考えない頭の悪い賢者が報われるわけないです。ただ・・・賢者としての責務は果たすべきです。あと馬鹿騎士」
「な・・・なんですか」
「努力の結果地位を得た?勘違いもそこまで行くと笑い話になるですね。お前は利用されただけです。勇者の慰め物としてもともと用意された駒に過ぎなかったのです。考えなかったのです?いくら鍛えようが、女が王の護衛なんてつけるはずないです。王妃が嫌がるに決まってます。
つまりどうせお前は王の都合のいい愛人か、譲って惜しくない娼婦のような者扱いだったのです」
「そ・・・んなはずは・・・」
「私は常に最悪を想定するです。なにせ周りはすべて悪だと思ってるですから。今私が本当に信じているのはレンだけです。それ以外の人は常に・・・っと私のことはいいです。それより二人の力になれそうな人の元へ行くです」
「それは・・・?」
「この国の三賢者に会いに行くです。お前の能力ダウンの事は聖女なら知ってるです。どうせ王国に帰る気はねぇんですよね?だったら帝国の為に力になるです。特にそこの賢者」
「・・・」
「レンにうつつを抜かしてる場合じゃねぇです。賢者としての仕事を全うしてからレンに会いに来いです。その時は歓迎してやるです」
そう言ってマリーは賢者の前に金貨の入った小袋を投げる。
「旅の資金にするといいです。私のへそくりです・・・お前たちの為に、大好きな甘味を我慢してやるです・・・」
「すまない・・・君の名前を聞いてもいいだろうか?」
「私の名前はマリーです。全ての人が恐れおののく魔女であり・・・レンの大切な人です!」
そう言うとマリーはその場から去っていった。
「大丈夫かエリー?」
「・・・マリー覚えた。今度はちゃんと賢者として・・・会いに行く」
エリーの死んでいた目が、徐々に光りを取り戻していく。
「まずは情報収集・・・カタリーすぐ動く」
「ええ。目的は出来ましたね。ならばその為に動くとしましょう」
こうして彼女たち二人は目的を手に入れた。
ひとまずこの国の三賢者と会うために、動き始めたのだった。
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